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2010年6月29日 (火)

映画「孤高のメス」と管政権の経済運営

映画「孤高のメス」はミリオンセラー外科医当麻鉄彦シリーズの映画化で只今ヒット中。堤眞一主演、成島出監督。手術シーンのリアルさが凄い。 
      
        1989年地方の市民病院に米国で肝臓移植も経験した外科医当麻が赴任。事なかれ主義で、患者よりも医師のメンツを重視する病院の雰囲気を変えてゆく。 そこに病院の支持者だった市長が倒れ、命を救うには生体肝移植しかない。事故で息子が脳死と診断された母が臓器を使ってほしいと願い出る。当時の法律では 認められていなかった手術だが、当麻は断行を決意する。生命を救う確率は半々。
      
        新内閣がスタートした。経済成長、財政再建、社会保障充実という三位一体の目標追求がうたわれている。ロジックとしては、増税で社会保障を充実させると 雇用が増えて、成長率が高まるというもの。要するに増税で増えた財源を、効率よく配分することが焦点になる。
      
        私はこの政策は不可能だと考える。まず財政再建のためには、消費税増税を含む税制の抜本政策を、と管首相は主張している。私はその前にとるべき政策があ ると考える。名目成長率を高めて税収増加を図ることが必要だが、それにはインフレ目標を明確化しなければならない。日銀を説得出来るか、どうか。
      
        また増税の前に巨額な政府資産を圧縮し、公務員の人件費支払いをカットしなくてはならないが、政府資産の多くは特殊法人つまり天下り先への貸付金、出資 金である。官僚組織の反発を押し切れるかどうか。この二つの前提という、患者の複合した病状に似た難問を解決しないで、手軽に増税で片付けようとしたら、 やはり国民は怒るに違いない。
      
        それに「効率の良い金の使い道」にも疑問がある。第一は自民党時代の公共投資、第二が小泉・竹中時代の供給サイド強化でともに失敗した。だから第三の 道、というわけだ。ブレーンとされる小野善康大坂大学教授によると「例えば失業率が3%以下になれば、政府はその事業から手を引くという取り決め」が重要 という。
      
       確かに一理はある。増税で増えた政府収入を100%使えば日本全体の消費は上昇し、雇用は増える。国債で資金調達するより財政破綻の心配は少ない。しかしこの考え方は、新たな増税で奪われる民間需要を、無視又は軽視している。
      
        また失業率が3%以下になれば政府が事業から手を引くという「取り決め」は恐ろしく非現実的だ。100%政府出資の会社にして、後に民営化し売却すると いう形式にしても、政府から有形、無形の援助が流れる実質官営になる公算大。つまり官製社会主義化だ。かつてのソ連と変わりない。これが非効率的なことは 誰でも知っている。
      
       むしろ経産省調べでは大手企業の半分近くが高い法人税や規制、との絡みで本社機能
       を含めて海外への移転を考えているーという事実に管内閣は注目すべきだ。企業いじめをやっていたら、成長は起きない。左派出身の多い管内閣は目的どおり小 沢はずしで支持率は上昇したが、これを怪しげな経済政策支持と勘違いしないことだ。私は株に強気だが、企業収益の増加に注目しているだけで、政治が材料で はない。念のため。
      
       映画のセリフから。主人公が言う。「ドナー(臓器提供者)、レシピエント双方の願いが一致しない臓器移植はやってはいけない。僕はそう信じています。」管政権はソ連型社会主義革命をやってはいけない。国民との合意が必要だ。

2010年6月22日 (火)

映画「川の底からこんにちは」と新内閣と株価

映画「川の底からこんにちは」は新鋭監督石井裕也の傑作コメディ。上映館がまだ少なくてかわいそうだが、今年のベスト5に入るだろう。

        主人公は上京して5年目のOL佐和子(満島ひかり)。しようがないが口癖の無気力な毎日で何回も男に捨てられ、付き合っているのは子持ちのバツイチで まったく頼りない。そこに父親が重病。ひとり娘として帰京しシジミの加工工場を継ぐ。ところが工員のオバサンたちはやれ駆け落ちして逃亡した女、とかいっ て嫌う。子連れでついてきた男は子供を残して逃げ出す。

       全く希望の持てない状況。ところがそこで主人公は開き直る。「所詮自分は中の下」だが世の中みんなそうじゃないか。コペルニクス的な大転回。

        上海万博に行っていたが留守中に政変。まあ誰がどう見てもひどすぎる首相だったから、後継者に期待がかかる。私の見るところ選挙管理内閣だが、父親や祖 父が首相でない政治家、脱(かどうか分からないが)小沢というのがセールスポイント。だが普天間とか政治とカネとか負の遺産は多い。ひるがえって世界を見 ると①欧州財政危機②金融規制導入③中国のバブルは列懸念④朝鮮半島の緊張⑤流動性危機とこれまた容易に解決しそうもない問題点ばかり。映画の主人公が押 し込められた環境に似ている。

       しかし私は日本株について楽観的だ。まずNY。乱高下を繰り返しているが、これは大底圏の特徴だ。

        株価が上昇基調にあることを数字で示そう。株価の基本は企業収益。日経平均225種の予想一株当たり利益はリーマン・ショック後瞬間マイナスに下落し た。2008年末から2009年初頭の金融危機が一番ひどい時期である。結局2010年3月期は343円だが、ピーク時の2007年11月の1000円近 くの三分の一。

       しかし2011年3月期の予想利益は650円。2012年3月期は野村證券金融経済研予想では792円。増益基調が続く。NYも。また一株当たり純資産と株価との比率が1倍割れとか。騰落レシオ63ポイントとか、底値を示す指標が続出している。

       実は実体経済のほうでもあまり注目されていないのが不思議だが、長い間苦しめられていたデフレに終わる兆しがすでに目立ってきている。

        これは実績で示した方がいいだろう。第一・四半期のGDPが5月20日に発表されたが、勇気付けられるポイントが多い。まず成長率。2009年度の実質 成長率は-1・9%と政府や日銀の予想より上振れし、ゲタとのからみで2010暦年が3%台、年度でも2%台となること確実だ。

       デフレについてだが、2008年10~12月期から5四半期連結して下落した国内需要デフレーターが前期比プラス0・4%とプラスに転じた。これにもっと注目されていい。

       恐らく名目の雇用者報酬の好転が寄与している。8四半期ぶりに前期比①・6%の上昇に転じ、実質でも2四半期ぶりに上昇した。

       GDPの6%30兆円が需給ギャップというのが定説だったが、輸出を中心に急速に縮小している。このため現金給与と雇用者数が前期比でプラスに転じたのが雇用者報酬の基調変化につながっているのだろう。

       では1~3月期に良くて4~6月期はダメかというとほとんどの景気指標は好調持続。もう少し時間がたつと皆が言い出すだろう。

       映画のセリフから。主人公の作った社歌。「上がるゾ上がるゾ消費税。来るゾ来るゾ大不況。そうなりゃ政府をぶっつぶせ。」そりゃそうだ。                                                                                           

2010年6月15日 (火)

映画「春との旅」と長寿リスクと北朝鮮、ユーロ、株価

映画「春との旅」は仲代達矢主演、小林政広監督の秀作。恐らく今年の日本映画のベストワンを争うだろう。
      
        北海道のかつてニシン漁で栄え、今はその面影もない寒村に住む老漁師忠男とその孫娘春。春は小学校の給食係をしていたが廃校で失職、東京に働きに出よう と考える。足が不自由で老いた祖父をどうしたらいいか。永年疎遠になっていた忠男の姉兄弟たち三人を尋ねる旅に出る。しかし再会しても解決がつかない。そ のうち春は長く離別していた父親に会いたくなる。ラストにちかく、忠男と春がソバやで会話するシーンでは私は涙した。
      
        急速に日本の老齢化が進む。75歳以上の後期高齢者はこれから20年で倍増し2000万人。長寿化も進みそのころには男性90、女性100が普通だろ う。としたら65歳を基点としてそれぞれ25年、35年という途方もなく永い、永い老後になる。その期間、財産の食いつぶし。これは保険会社にとって大き なリスクになる。年金も同じだ。この問題はじつは日本の財政破綻と直結しているので、大いに私は注目している。
      
       なぜかを説明する前にまず海外の例を。ニッセイ基礎研REPORT5月号で青山麻理さんが、保険先進国の英国での最近の動きをまとめている。
      
       英国では、進行する長寿化のため年金や保険業の支払う負担の増大が懸念されている
      。対策として再保険、長寿債発行、長寿スワップ、年金買収等々、紙数の関係で一つ一つ解説できないが、その中では長寿スワップが注目されている。これはプレミアムを受け取れる買い手が、年金や保険会社に代わって生存者に対し給付を払うシステム。
      
       とくに90歳以上の人たちへは、政府の長寿債発行によるリスクヘッジが論議されている。
      
        実例を挙げてなぜかを説明しよう。日本の終身年金を例にとる。65歳の男性が年80万円づつ保険料をもらうには、保険会社は一時払いで1350万円の保 険料を取る。17年以上長生きされると保険会社は赤字になってしまう。これが長寿リスクである。保険会社が運用でよほど巧みに利益を挙げないと大変だ。英 国のように政府が何らかの策を考えないとかならず問題が起きる。これが国債の重要な買い手が売り手に転じるカギだ。参院選でこれが政策に入るか、どうか、 私は注目している。
      
        長期の問題は措いて目先の不安について一言。まず北朝鮮だが、突発的開戦のリスクはないではないが、万博開催期間は中国がメンツからも押さえ込む。準備 にタマと時間がかかる長距離ミサイルは上空から見ればすぐ分かる。心配する必要なし。ウワサでは金成日亡命説も。
      
       ユーロ売りはヘッジファンドの目標値1ドル1ユーロを、もう方々で言い出したので、先は見えた。騒ぎは大きいが米FRBとECBのスワップ協定が再締結されたことは安定化に役立つ。
      
        日本株と円高。株価は年初来で世界株を相対的にアウトパフォームし、株価収益率、株価資産比率など株価水準指標を見ると割安ゾーン。円高は通貨市場での 円売り買戻しが一巡したので再び円安への流れ。リーマンショックのときは株価底入れに5ヶ月かかったが、あれを震度6とすると今回はせいぜい3.私は弱気 じゃない。
      
       映画のセリフから。春が父親に聞く。「過ちって償えないものなの?」リーマンの経験が今回のユーロ騒ぎのキズを軽くする。なんといってもどこの国も企業収益が急増中だ。世界大不況説を私は信じない。

2010年6月 8日 (火)

映画「グリーン・ゾーン」と金価格の私の目標値

映画「グリーン・ ゾーン」はイラクの戦争の内情を描いた戦場サスペンス。ボーン・シリーズを大ヒットさせたマット・ディモン主演・ポール・グリーングラス監督のコンビ。凄い迫真性がある。
      
        題はバグダッド中心部の米軍駐在区域のこと。周囲は危険に満ちているが、ここは絶対安全。そのゾーンの中心で情報戦争が始まる。映画は戦争のきっかけと なった大量破壊兵器がどこにあるのか、兵器捜し部隊長が疑問を持つ。国防総省とCIAの対立が明瞭に。ついにナゾの核心に迫ってゆく。
      
       いまやユーロは対ドルで4年ぶりの安値。まだ通貨市場では米系ヘッジファンド中心の売り越し額が増加を続けている。
      
        年初から手揃いで売り仕掛けをはじめたときの売り目標は、ユーロの対ドルレート1対1.まあこれは信用しない方がいいが。ただ売りのテーマが「ソブリ ン・リスク」つまりユーロ圏のリスクの高い国が、次から次へ債務不履行(デフォルト)に陥ることだ。これは容易じゃあない。
      
        今年一杯このソブリン・リスクがテーマになりそうだ。それは米国景気の回復、中国など新興国の内需拡大で「百年に一度」の世界大不況どころか、かなりの 好況。当然、現在の超低金利とか過剰流動性は修正に入る。あと1年もすればグローバルな投資資金の争奪戦が始まる。米系ヘッジファンドの仕掛けの目的は ユーロを投資地域から外させ、その分対米投資が増えること。ギリシャ危機は資金獲得戦争の開幕戦だ。現に米国債への投資は急増中。
      
       それでもやはりペーパーマネーに対する不信感は拭い切れない。
      
       ユーロに劣らず米ドルも大幅財政赤字で大いに問題があるし、円だってヒト様のことをいえる状況にない。人民元は別だが。
      
       となると金だけが安全な「グリーン・ゾーン」の中にいる。新高値更新も当然だろう。
      
       利子のつかない金への投資。しかも歴史的高値更新なので、早くから強気を申し上げてきた私のところにはお問合せが多い。以前から言っているのだが、あらためてお答えしよう。
       
        とりあえずの目標はオンス1400ドル台のどこか。次は1900ドル近辺。
      
       理由は次の通り。主に経験則だ。
      
       金価格は1980年1月にオンス875・00ドルの高値。その後下落を続け1999年7月に253.20ドルの安値をつけた。下げ幅621・80ドル。
      
       株や商品で価格が何年も下落を続けていたのが反転上昇に転じたとき、目安として「倍返し」つまり下げ幅の分がかつての高値にプラスされることが多い。この場合875プラス621・80だから1496ドル。
      
       だが私はこの価格も上抜くと考える。理由は中国、インドなど新興国の購買意欲だ。
      
       中国は2008年末の保有分が600トン。これが昨年末に1054トンに。自国産出分と市場購入と両方だろう。ある高官は「数年間で1万トン保有」といっている。
      
       インドは同じように1年間で200トン保有を増やし557トンへ。つい先日オンス1060ドルで市場の売り物を全部さらっていった。かつての外貨危機の経験から金保有の意欲は強い。ロシアも同じ。
      
       これに米年金などの金ETF買い。恐らくオンス2000ドルが目標として広く共有され、現実にはその直前までゆく。そこらが天井ではないか。
      
       映画のセリフから。通訳のイラク人が隊長に言う。「俺だって自分の将来を考え、この国の未来を思ってるんだ。あんたたちの思いより強くな。」未来を考えると、やはり金投資か。

2010年6月 1日 (火)

映画「THE 有頂天ホテル」と日本の財政赤字許容限度

三谷幸喜脚本・監督「THE 有頂天ホテル」は2006年の大ヒット映画。私は三谷作品では最高と思う。楽しめる力作。
      
        舞台は新年のカウントダウン・パーティを2時間後に控えた一流ホテル。登場人物は皆、目前に突然発生した窮地をしのぐため、とっさに嘘をついたり、口か らでまかせのごまかしを言う。そのあたりが笑いを生む。役所広司のホテル副支配人は別れた妻と偶然再会して、つい恰好をつけるため嘘。松たか子の客室係り はある女性客と間違えられて、その女性客になりすます。佐藤浩市の国会議員は疑惑に直面して、真相を公表するかどうかで迷いに迷う。伊東四朗のホテルの支 配人も芸能プロ社長の唐沢寿明も、その場しのぎしか考えていない。
      
       当初マニフェストを神聖不可侵の黄門様の印籠のように扱っていた民主党政権が、修正を余儀なくされている。政権獲得のためについた嘘、というか、現実無視のツケ回しだろう。
      
       普天間問題がそのひとつだが、最大のものは財政のつじつまが合わないこと。10年度の税収は37兆円なのに鳩山政権は歳出92兆円の予算。差額は国債44兆円と埋蔵金の利用など11兆円。
      
       これが11年度になると一段とひどくなる。
      
       すでに法律にもとずいて基礎年金の国庫負担が三分の一から二分の一になる。これで2兆5000億円。高齢化に伴う社会保障費自然増が1兆円。
      
        さてここに民主党マニフェスト出費がのしかかる。子供手当てを満額支給すると2兆2600億円、高速道路無料化や農家への戸別所得保障が3兆5000億 円(毎日新聞エコノミスト誌4月10日号「東奔政走」)。この通りに11年度予算案がつくられると、9兆6000億円の支出増で歳出は100兆円を超え る。税収は多少伸びても埋蔵金は使い切ったし、やはり国債。63兆円という途方もない発行量になる。
      
        ところが菅財務相が「来年度の国債発行は10年度と同じ水準に」と発言すると鳩山首相がこれを否定。沖縄米海兵隊の存在意義を就任後8ヶ月もかかって漸 く分かったように、現実を知らない統治能力不足は、小沢幹事長の政治とカネ以上に深刻だ。しかも一部では首相も幹事長も辞めないという報道も聞く。支持率 が下落するわけだ。谷さんなどの著名人起用で人気回復すると考えているなら、甘すぎるのではないか。
      
       国債の発行はどのくらいが限界だろうか。現在のばら撒き政策を続けても消費が盛り上がらなければ、例えば子供手当てには預金に回る。銀行はまた国債を買う。国債を発行しても買い手があるから大丈夫、と言う皮肉な状況だ。
      
       経済学の教科書を見ると総貯蓄で赤字国債の発行限度が決まる。まあ30兆円の大台
      が限度だろう。
      
       私はお隣の中国が債券市場を確立し、中国の国債が投資できるようになれば日本の機
      関投資家はいくら財務省のご威光があっても日本国債への投資を減らして中国にカネは流れる。利率はいいし、人民元切り上げの魅力もあるからだ。大幅円安、インフレ必至だ。あと10年は持たないだろう。財政再建を本気で言う党を私は支持する。
      
       映画のセリフから。別れた妻は役所広司のウソは見抜いていた。「嘘をつく必要なんてなかったのよ。自分のやっていることに誇りを持ってちょうだい。」大切なことは、出来ないことをできない、と言い切る勇気だ。

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