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2010年7月27日 (火)

歌舞伎「助六」と中国人民元預金

「助六由縁江戸桜」は勧進帳と並ぶ人気演目。4月には歌舞伎座の建て替え休館前の御名残公演で市川団十郎が主役の助六を演じ、5月には新橋演舞場で子の海老蔵が。やはり、若さは強い。海老蔵には華やかなオーラを感じる。       

 お芝居の筋は単純。奪われた名刀を探すため、助六は吉原に来る侍に次から次へとケンカを吹っかけ抜いた刀を調べる。これを助ける花魁揚巻の胸のすくような悪態、立ち回り、そして捕り方に囲まれた助六をかばう揚巻のタンカ。見せ場が多い。

 

 助六の名刀探しのように、資産運用者は今、混迷に陥っている。それはそうだろう。自他共に認める世界の専門家が、自分の得意の分野で「ダメだ」と言い始めたのだから。

 

 まず債券。世界最大の債券投資信託ピムコのビル・グロス氏がつい先日「今後、米国の国債、政府関連債、先進国の債券は売り(組み入れ比率引き下げ)」と言いだした。

 

 続いて株式。強気派で通り、今回の戻り相場をピタリと予言したバートン・ビッグス氏が得意のハイテク株を大部分処分してしまったとか。

 

 株も債券もだめなら日本人の好きな預金。ところが利率が悲しいほど低い。普通預金が年0.04%。1年物定期預金が年0.06%。仕方がないから外国もの、と考えていたところに中国が人民元の為替弾力化を打ち出した。

 

 人民元は40%割安
      
        中国銀行は在日支店で人民元建て預金を扱う。普通預金で0.3%、1年物定期預金が0.45%。また英HSBCは日本居住者でも人民元建て預金ができる サービスを開始した。普通預金0.36%、1年物定期が2.25%。1000万円以上の預け入れが条件だが、ぐんと割がいい。

 

 利率もさることながら、為替差益が期待できるのが人民元預金のメリット。大きく利を得るにはやはり長期で。だから余裕資金で。なにしろ人民元はIMF(国際通貨基金)の購買力平価での推計では40%も割安。すぐにその分が上昇するわけではないが、長期の利幅は大きい。

 

 私が中国についてお勧めするとゲンがいい。2004年4月に『中国株で資産5倍』という本を書き、ペ トロチャイナ、チャイナライフなど7銘柄をお勧めした。私のファンである上場会社の経営者たちも私と同時に購入。4年で5倍の目標を達成した。どうしま しょう、と言うから、(1)全部利食い、(2)半分売ってコストをタダにして、あとは長期保有--の2案を述べた。その後、リーマン・ショックを乗り切っ た。

 

 それにしても、である。人民元を為替先物取引(FX)で買いたい投資家は文字通りヤマのようにいるはずなのに、取り扱うFX会社を聞かない。教えてほしい。

 

 助六を間夫(本命の男)とする揚巻が、名刀を持つ髭の意休に悪態をつく。「並べてみるときは、こちらは立派な男振り。こちらは意地の悪そうな顔つき。たとえて言えば雪と墨」。中国投資の方針をはっきり明確にしたらどうか。

2010年7月20日 (火)

映画「ザ・ウオーカー」と菅首相の消費税発言

映画「ザ・ウオーカー」は核戦争後の近未来を舞台にしたアクション映画。デンゼル・ワシントン主演。
      
        戦争で文明が崩壊して30年。文字の読めない無法者が暴れまわる無法世界で、人肉を食う人さえいる。貴重品は小瓶に入ったシャンプーの試供品という中 を、修道士イーライは1冊しかない聖書を、夢で神に告げられた場所まで届ける旅を続ける。そこに無法者の親分が本を探しており、二人は対立することにな る。
      
       選挙戦がたけなわ。もっとも注目されているのは、やはり菅首相の諸費税率引き上げ発言だろう。記者クラブでは衆院解散・総選挙で信を問う可能性に言及し「政治生命をかける」とまで述べた。映画のイーライの本を守る意志に似ている。
      
        ソブリン・リスクが言われている現在、財政再建は重要だ。すでに日本はスペインより格付けが下という状態なのだから、私はこの発言の勇気を好感してい る。しかし、この7月に限ればタイミングが悪かったのではないか。恐らく米国から内々で自国の政策への協力要請があり、仕方なく決断したのだろうが。
      
        というのはここへ来て、日本の景気に下振れリスクが見えてきたからだ。例えばこれまで景気を引っ張ってきた輸出と鉱工業生産は、増加ペースの鈍化が見え るし、消費など内需の伸びもイマイチ。だからまずデフレ脱却、次に財政再建という順序で参院選の争点を置くべきだったが、対米関係の回復のためには仕方が ない。消費税が騒がれれば騒がれるほど子供手当ても消費に向かわず、預金に化ける。また「資産家への課税化」も税制改革の一環という声が聞こえてくる。株 式市場での売買高が増えない理由だ。
      
       現在の経済活動水準を鉱工業生産と輸出で判断すると、リーマン・ショック当時の80%程度。デフレ・ギャップはまだ25兆円は残存しているだろう。設備過剰感は残るし、雇用も失業率の低下はあるものの、就職を諦めた人の増加が主因だろう。
      
        輸出も楽観できまい。高い伸びを続けてきた中国も不動産ブームはひと山越えているし、4兆元の景気刺激策の効果も終わる。息の長い拡大はあるだろうが。 ユーロ圏は緊縮財政でドイツをのぞいて明年は不況だろうし、米国は家計部門の回復の遅れがある上、予算や金利などの対策も議会、FRBで議論が二分されて いる。そこでオバマ政権は国税としてのVATを考慮しているのではないか。英国がVATの引き上げを決めたが、米国の露払いをしてやっているのだろう。つ づいて日本。
      
       コスト面では資源価格の上昇で、交易条件(輸出価格/輸入価格)の悪化が続いている。半年くらいの時差で企業収益の減少につながる。
      
        私は今2011年3月期が大幅増益で、これが来期も増益が続くと期待していた。しかし、どうも減益の公算大。為替面では人民元の切り上げが「中国の米国 債購入足踏み→米国長期金利上昇→ドル高(円安)」という動きにつながると想定しているが、中国政府はまじめに通貨価値の正常化を進める意志はなさそうで ある。
      
       要するに中国をのぞいて世界の需要不足が問題なのだが、中国がバブル最盛期の日本
       と同じく、持続的好況を確信しているので、中国の経営者は、労働者確保こそ勝利のカギと考える。労働者の奪い合いが始まるか、ストライキが続発する。人件 費がふたケタ増の中で、インフレは沈静化するはずがない。また原油、鉄鉱石なども価格は高水準が続くだろう。安い人件費が魅力だった外資系輸出産業の打撃 は大きいに違いない。
      
       株価はまだ強い反発を材料にしたリバウンドが終わってしまったーとは見ていない。しかし、いつかは何らかの形で、恐らく人気企業の業績悪のニュースで変化を悟るのだろう。
      
       映画のセリフから。核戦争前の時代を振り返ってイーライが言う。「何が大切かまるで分かっていなかった。以前は平気で捨てていたものを今は手に入れるために殺し合う。」いま問題なのは需要不足だ。

2010年7月13日 (火)

映画「アウトレイジ」と人民元切上げ

 「アウトレイジ]は北野武監督、主演。只今ヒット中のB級バイオレンス映画だ。
      
       関東一円を支配する巨大暴力団の幹部会で、直参の幹部部組長は弱小ヤクザとの親密
       関係をとがめられる。そこで直参の組長は、いわば2次下請けの組にその弱小のヤクザを痛めつけさせる。次から次へと連鎖的に波紋が広がり、2次下請けはト ラブルを治めるために使い捨てられる。出てくる人物全てが、金と権力を握るために平気で他人を蹴落としゆくワルばかり。次から次へと展開するバイオレン ス・シーンのまあ激しいこと。コワいもの見たさでヒットするわけだ。
      
        中国人民元銀行が人民元の為替レーtの柔軟性を高めると声明。小幅だが切り上げが始まった。不動産バブルが終わりになり、目先は金融機関の損失が懸念さ れる時点なので、本当はいやだったのだろうが。恐ら国際投機筋にどこか弱点を握られてしまったので仕方なく発表したと思う。映画のヤクザのように。
      
        都市部不動産の価格下落は、先日上海万博を見に行った時に確認した。すでに統計でも中国全都市中もっとも早く動く深センの地価が、ここ3ヶ月下落してい る。5月の不動産販売は前月比25%減少。まあ北京五輪、上海万博のあとは広州アジア大会ぐらいでイベントがなくなる。不況にはなるまいが成長率の若干の ダウンは不可避だろう。
      
        その代わりにご存知の大幅賃上げ。ストを容認し5年間で労賃倍増というから年15%。豊かになった労働者たちが消費に向かい、「世界の工場から世界の市 場」に変わる。ちょうど強い円のおかげで日本の1970年代にはパリのシャンゼリゼ通りを農協のオジサン、オバサンが闊歩したものだ。カー、クーラー、カ ラーテレビの3C時代の再現もすでに始まった。日本からの輸出、現地工場を含め、企業の業績に大いにプラスになるだろう。
      
       いま銀座をちょっと歩くだけで、中国人がブランド品を銀聯カードで買っている光景を目にする。日本新華僑報によると、銀座を訪れる中国人観光客の半数以上が2万元(27万円)以上消費する。人民網日本語版では日本で消費する額は一人当たり32万円だ。
      
        訪日する中国人数も急増中で、1~4月で65万4000人前年比24・5%増。これまで首位だった韓国を抜いた。昨年7月の個人観光解禁は効果があった し、最近のビザの条件緩和により中国からの来日はペースアップしよう。中国人来日を年200万人、32万円だと6400億円だ。
      
        観光客だけではない。中国からの安値輸入品が日本のデフレの犯人だったのだから目先の効果はまだ少なくとも、中長期での日本の物価上昇の役に立つ。日本 の輸入はGDPの20%で中国製品はその五分の一。ともかく人民元はIMFの購買の平価で割安度40%と推定されている。かつての日本円と同じく多少の切 り上げだと「次」を催促して投機筋は動く。最大限1・6%の物価上昇要因だ。デフレ脱出効果。
      
       折もおり、1~3月の日本の国内物価デフレーターは6・四半期ぶりにプラス0・5%となった。タイミングもいいのではないか。
      
        人民元高になると円もつれて高くなる、といわれてきたが、現実にはそうなっていない。元高で米国債の入札が不調となり米長期金利上昇から円安、という流 れが市場では重視されているだろう。当面中国関連株を中心に日本株は戻り歩調で4月高値1万1339円に挑戦しよう。私は抜く可能性は実はあまり期待して いないが、くわしくは別の機会に。
      
       映画のセリフから。ビートたけしの親分が可愛がっている子分を逃がすときに言う。「一人くらい生きてねえとよ。結果わかんねえじゃねえか。」繁栄の歴史を経験したわれわれは、中国がこれからどんな段階に入るか、知っている。結果も。

2010年7月 6日 (火)

映画「告白」と女性の労働環境の改善

映画「告白」は湊かなえのベストセラーを松たか子主演、中島哲也監督で。衝撃的な傑作サスペンス。只今ヒット中。
      
        中学1年の教室。女性教師が数ヶ月前事故死した幼い娘は「実はこのクラスの生徒2名による殺人です」という。衝撃的な発言にも好き勝手に騒ぐ崩壊学級だ が、犯人の二人の牛乳にHIVの血液をいれて飲ませたと聞いて全員が凍りつく。善き母で教師だった女性の復讐譚だ。一方中学生は底意地が悪く残酷、他人の 痛みが分かるほど成熟していない。平気で他人を傷つける。
      
       主人公は娘を保育所に預けたが、6時まで。そこから悲劇が始まる。この映画は、子持ちの女性労働者の厳しい労働環境を紛糾している。
      
       総合研究開発機構の辻明子主任研究員によると、家庭と仕事の両立を希望する女性に
      実現のための支援が必要だ。ワークシェアバランスと呼ばれるもので、欧米では早くから実施されているが、わが国では明らかに立ち遅れている。
      
       現在、例えば第一子を産んだ後の女性が同一職場で継続して就業する比率は38%に過ぎない。これを2017年に55%にするのが目標とか。また育児休業の取得率は女性が72.3%、男性は0.5%。これをそれぞれ80%、10%に上昇させるのが目標。
      
        やはりこれらの条件が企業の協力を得て実行されないと、女性の労働参加と人口再生産の同時達成は夢物語に過ぎない。子供手当てを出しているではないか、 というかもしれない。しかし海外の例では充実した経済的支援が出生率の回復に直結しないことに気づいたので、ワークライフバランス重視に変わった。
      
       ドイツの例ではGDP比で1.4%と日本の0.3%の4倍以上だが、近年は保育所の抜本的は拡充に重点が置かれている。
      
        継続就業の意義はきわめて大きい。数字で示そう。生涯賃金は大卒で2億3000万円、高卒で1億6000万円。ところが出産のため30歳で退職し、その 後専業主婦になったとすると受け取る賃金は3000万円で、40歳で再就職しパートとすると6000万円に過ぎない。大卒で1億円以上の就職による生涯賃 金ロスが発生する。
      
        これに対して月間2万6000円(怪しくなったが)を子供が15歳になるまでもらっても500万円。どう考えても子供手当てより育児と仕事を両立できる 労働環境の整備、保育所の充実の方が、はるかに大切だ。この試算はみずほ総合研究所の大嶋寧子主任研究員の調べだ。
      
       大嶋さんによると待機児童は急増している。2009年4月1日次点の認可保育所への待機児童数は2万5000人と前年比24%、6000人も増加した。その後も雇用情勢から見てもっと増加していよう。
      
       まだある。主婦がパートとして働く場合の「130万円の壁」だ。時給1000円、週25時間労働が上限なのは社会保障制度と税制。この改善も緊急の課題だろう。選挙に目がくらんだ政党には分かるまいが。
      
       映画のセリフから。主人公は言う「やりたいことがすぐ見つかり従事できる人は少ない。目の前の仕事を精一杯こなしていかなくては。」働く環境を、もっともっと大切にしてあげなくちゃ。

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