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2010年7月20日 (火)

映画「ザ・ウオーカー」と菅首相の消費税発言

映画「ザ・ウオーカー」は核戦争後の近未来を舞台にしたアクション映画。デンゼル・ワシントン主演。
      
        戦争で文明が崩壊して30年。文字の読めない無法者が暴れまわる無法世界で、人肉を食う人さえいる。貴重品は小瓶に入ったシャンプーの試供品という中 を、修道士イーライは1冊しかない聖書を、夢で神に告げられた場所まで届ける旅を続ける。そこに無法者の親分が本を探しており、二人は対立することにな る。
      
       選挙戦がたけなわ。もっとも注目されているのは、やはり菅首相の諸費税率引き上げ発言だろう。記者クラブでは衆院解散・総選挙で信を問う可能性に言及し「政治生命をかける」とまで述べた。映画のイーライの本を守る意志に似ている。
      
        ソブリン・リスクが言われている現在、財政再建は重要だ。すでに日本はスペインより格付けが下という状態なのだから、私はこの発言の勇気を好感してい る。しかし、この7月に限ればタイミングが悪かったのではないか。恐らく米国から内々で自国の政策への協力要請があり、仕方なく決断したのだろうが。
      
        というのはここへ来て、日本の景気に下振れリスクが見えてきたからだ。例えばこれまで景気を引っ張ってきた輸出と鉱工業生産は、増加ペースの鈍化が見え るし、消費など内需の伸びもイマイチ。だからまずデフレ脱却、次に財政再建という順序で参院選の争点を置くべきだったが、対米関係の回復のためには仕方が ない。消費税が騒がれれば騒がれるほど子供手当ても消費に向かわず、預金に化ける。また「資産家への課税化」も税制改革の一環という声が聞こえてくる。株 式市場での売買高が増えない理由だ。
      
       現在の経済活動水準を鉱工業生産と輸出で判断すると、リーマン・ショック当時の80%程度。デフレ・ギャップはまだ25兆円は残存しているだろう。設備過剰感は残るし、雇用も失業率の低下はあるものの、就職を諦めた人の増加が主因だろう。
      
        輸出も楽観できまい。高い伸びを続けてきた中国も不動産ブームはひと山越えているし、4兆元の景気刺激策の効果も終わる。息の長い拡大はあるだろうが。 ユーロ圏は緊縮財政でドイツをのぞいて明年は不況だろうし、米国は家計部門の回復の遅れがある上、予算や金利などの対策も議会、FRBで議論が二分されて いる。そこでオバマ政権は国税としてのVATを考慮しているのではないか。英国がVATの引き上げを決めたが、米国の露払いをしてやっているのだろう。つ づいて日本。
      
       コスト面では資源価格の上昇で、交易条件(輸出価格/輸入価格)の悪化が続いている。半年くらいの時差で企業収益の減少につながる。
      
        私は今2011年3月期が大幅増益で、これが来期も増益が続くと期待していた。しかし、どうも減益の公算大。為替面では人民元の切り上げが「中国の米国 債購入足踏み→米国長期金利上昇→ドル高(円安)」という動きにつながると想定しているが、中国政府はまじめに通貨価値の正常化を進める意志はなさそうで ある。
      
       要するに中国をのぞいて世界の需要不足が問題なのだが、中国がバブル最盛期の日本
       と同じく、持続的好況を確信しているので、中国の経営者は、労働者確保こそ勝利のカギと考える。労働者の奪い合いが始まるか、ストライキが続発する。人件 費がふたケタ増の中で、インフレは沈静化するはずがない。また原油、鉄鉱石なども価格は高水準が続くだろう。安い人件費が魅力だった外資系輸出産業の打撃 は大きいに違いない。
      
       株価はまだ強い反発を材料にしたリバウンドが終わってしまったーとは見ていない。しかし、いつかは何らかの形で、恐らく人気企業の業績悪のニュースで変化を悟るのだろう。
      
       映画のセリフから。核戦争前の時代を振り返ってイーライが言う。「何が大切かまるで分かっていなかった。以前は平気で捨てていたものを今は手に入れるために殺し合う。」いま問題なのは需要不足だ。

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