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2010年8月10日 (火)

映画「インセプション」と中国・米国経済の行方

 「インセプション」はただ今ヒット中のSF超大作。ディカプリオと渡辺謙が主演。見ごたえのある力作だ。映像も素晴らしい。

 

 他人の夢の中から深層心理に侵入し、まだアイデアの段階で企業機密を盗み出すスペシャリスト・チーム の首領コブ。大実業家のサイトーはコブに、世界的大財閥の御曹司の潜在意識に入り込んで、あるアイデアを植えつけることを依頼する。命がけの困難な仕事だ が、国際指名手配中で米国に戻れないコブに、家族のもとへの帰国を条件に押し付ける。

 

 手首にケーブルをまいてターゲットと一緒に眠り、夢を共有するという発想が秀逸。まるで今のグローバル化した世界経済と同じだ。

 

 いま、中国では、これまで「夢を共有」してきた外国企業が戦略の転換を始めた。外資企業でストが頻発、大幅な賃上げに応じざるを得なくなった。徐々にインドや東南アジアへ生産拠点を移転し始めている。

 

 大幅賃上げは中国企業にとっても大きな負担になる。『北京週報』は「最低賃金引き上げは時に20%以上に及び、安さを売り物に輸出で稼ぐ時代は終わりつつある」と警告した。高成長の支えがなくなりつつある。

 

 ◇来年は世界の成長率ダウン  

 

 中国政府によると、経済成長率は2008年までずっと2ケタだったが、09年には8.7%になり、今 年は政府のテコ入れがあっても8%台で、不動産バブルが崩壊すればもっと成長は低くなる。イベントの種も尽きたし、来年の成長率ダウンは必至だろう。中国 が大量に購入している資源価格がもう急落している。鉄スクラップ安に私は注目している。

 

 米国も経済が回復軌道に乗っていることは間違いなさそうだが、そのモメンタムはひところの予想を大幅に下回る。金融緩和政策の段階的収束、つまり出口論議は影を潜め、バーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長は最近の議会証言で追加緩和策を考慮していると述べた。

 

 景況感の変化は金利低下に明白に表れている。2年物米国債利回りは、7月下旬に史上最低水準を更新した。超低金利政策の一段の長期化を市場は読んでいる。

 

 ユーロ安は米国債とドルへの信認を高めたが、米国の多国籍企業の海外部門収益はほぼ半分が欧州子会社 なので、ユーロの対ドルレートの下落は収益低下と株安につながる。景気刺激策のために投入した財政資金7870億ドルも、効果が少ないまま来年にはタネ切 れになる。雇用者数の減少トレンドを抱えたまま、オバマ政権は「容易でない2011年」を迎えることになる。

 

 IMF(国際通貨基金)の予想では世界経済は今年4.2%、来年4.3%成長だが、今年はともかく来年は前年比成長率ダウンではないか。不況ではあるまいが。

 

 映画のセリフから。コブがチームの一員にいう。「人は知らない間に夢に入り込んでいる。ここからが夢だと分かる夢なんてない」。夢が現実でないと知ったとき、株式市場は反応する。

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