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2010年8月24日 (火)

映画「瞳の奥の秘密」と円高防止策

 「瞳の奥の秘密」は今年度アカデミー賞外国語映画賞を獲得したアルゼンチン映画。評判通りの傑作と思う。一見をおすすめする。

 

 裁判所の捜査官ベンハミンは退職後、記憶に残る殺人事件の回想を書く。せっかく逮捕した容疑者を1970年代の軍事政権は超法規措置で釈放した。何と大統領のガードマンになってしまった容疑者を見て歯噛みする捜査官。

 

 円買いによるヘッジファンドの対日攻撃がはっきりしてきた。ユーロ売りで大成功し、満を持しての円買 いなので、95年4月の歴史的高値1ドル=79円75銭を抜く公算大。IMF(国際通貨基金)の購買力平価だと昨年1ドル=111円だから、ヘッジファン ドの仕掛けは映画の容疑者釈放に似た無理無体なものに映る。

 

 しかし、10年続いたデフレの影響で実際の購買力平価はもっと低い。1ドル=60円まで行くのではないか。

 

 別に日本経済自体に円高の材料があるわけではなく、日本の体制に問題がある。まず菅首相の先般の消費税発言で財政均衡主義を継続することが明らかになったし、日銀がデフレ脱出を考えていないことも金融政策不変の声明で明白になった。円買いのお墨付きが出たようなものだ。

 

 一方、5年間で輸出倍増を狙う米オバマ政権のドル安志向は強いし、ユーロはまだ為替レート回復のメドさえ立たない。中国は人民元切り上げの悪影響を軽減する目的もあって、日本国債を大量買いしている。

 

 ◇1ドル=60円もありうる  
      
       94年夏に私が「95年春、1ドル80円」という論文を発表したときも現在と似たような状況にあった。日米の貿易不均衡で米クリントン政権は日本叩きを行い、日本は細川、村山政権で反米ムードがあった。

 

 当時の購買力平価は111円70銭で円は妥当値だったのだが、ヘッジファンドは「日本は輸出する側だ から輸出価格で、米国は輸入側なので消費者物価で購買力平価を算出するのが正しい」と言っていた。これをもとに私が算出したのが「95年春、83円」で、 市場は行き過ぎるものなので80円としたのである。これが正しかったことは歴史が証明する。

 

 同じ方法でヘッジファンドの今の目標値を計算すると、60円になる。

 

 また、クレディスイス証券の白川浩道氏は現在の購買力平価を、日米の貿易収支不均衡が最小の96年6 月当時の108円90銭を均衡値として両国の消費者物価で修正し、78円10銭と算出する。購買力平価からの乖離度でみると「95年の79円75銭は現在 のレートでは56円」という。

 

 円高防止策としては、中国や韓国のように市場介入を行っている国を見習うか、ゆうちょ銀行やかんぽが保有する米国債を日銀が買い、空いた枠で米国債を買う。また、記念金貨を大量発行すれば、金購入資金を外為市場に供給できる。何にもしないのが一番悪い。

 

 映画のセリフから。捜査官の恋人の検事が言う。「私たちは前向きの人生、過去は管轄外なの」。要は関係者の覚悟次第だ。

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