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2010年9月30日 (木)

映画「13人の刺客」と尖閣問題と円レート 第508回

 久しぶりに本格的なアクション時代劇を見た。1963年の工藤栄一作品のリメークだが、三池崇史監督はスケールアップして現代風ギャグを入れ、前作よりもぐっと魅力的な作品に仕上げた。

 江戸時代末期、横暴の限りを尽くす明石藩の藩主は将軍の弟で誰も手をつけられず、しかも将軍は近く老中にすることを内定。前途を憂いて幕府首脳は御目付役島田新左衛門(役所広司)に暗殺部隊の編成を指示。13人の精鋭が集まる。

 これに対し、悪逆無道な主君でも武士として命がけで守ろうとする200人とが、ガチンコでぶつかり合う。守る明石藩の武士も悪者ではないところが、この映画のポイントだ。役者もうまく、主役のほかに目立ったのは内野聖陽、平幹二朗、松本幸四郎、稲垣吾郎、伊勢谷友介、松方弘樹すべていい。一見をおすすめする。

 日本がダメな首相をトップにしていることが、世界中に明らかになってしまった。私は日本人であることが恥ずかしい。明石藩武士と違って、私は生命までささげる気にならないが、当分外国人と会う気になれない。

 領土問題は現在世界で171箇所もあり、米国とカナダの間でも6箇所。全てが軍事的あるいは国交上の深刻な対立になっているわけではない。大切なのはその地域あるいは海域を実効支配しているかどうかだ。日本の場合だと尖閣諸島は日本、竹島は韓国、北方領土はロシアである。

 スフィンクス・リサーチの藻谷俊介さんによると「実効支配者側は領土問題は存在しないという立場。非実効支配者は世界の注目を集めるため領土問題を表沙汰にしたがる」。したがって日本がとるべき道は、世界の実効支配国がしているように「静謐に」物事を処理すべきであった。最初に逮捕したのが間違っており、臨検だけ済ませて、何度でも黙って押し返せばいい。軍艦は直せばいい。ところが問題の船長を拘留し、中国の強腰にすぐに帰国させてしまった。日本人ならみんな、中途半端な政府の態度にあきれ、落胆しているはずだ。

 菅外交のもうひとつの間違いは米国に安全保障の言質をとりたがったこと。無人の係争地でのトラブルに、米国が軍人の血を流すはずがない。それなのにまた米国に借りを作った。なんというおろかな政権をわれわれは持ってしまったのだろう。報道を見ていると主犯は官房長官らしいが。琉球地検への責任転嫁なんて全く男らしくない。

 ダメボスでも就任直後に断行した円売りドル買い介入は評価されていい。しかも日銀が「非不胎化介入」という市中にカネが余るような手法を用いているのは大変にいいことだ。デフレ対策として有効だし、円安につながる。

 しかし問題点はふたつある。これは日本が通貨安競争への参入を宣言したことになる。近隣窮乏化政策を主要国すべてが始めたわけで、長期的には保護主義。世界経済の縮小均衡につながりかねない。内需の振興をもっとピッチを上げなくては。

 もうひとつ。たしかに円安は韓国や中国など通貨安で競争力を高めている国が、日本品を押さえてシェアを上げてるのに多少、効果はある。しかし、基本的には円はここ10年のデフレのために、世の中で言われている妥当レートよりももっと強い。1995年4月の対ドル80円は、今なら56円だ。そこまでゆくと思わないが、いま行っている円売り介入は正直言ってリスクが大きい。このことはよーくワカッていないといけない。粘り強く。

 映画のセリフから。暴君に対し島田新左衛門が言う。「まつりごととは、下が支えて初めで上であることが、まだお分かりになりませぬか。」「まつりごとはまつりごとを行うもののみ都合よく、万民はその下僕として生きるしかない。」「たとえ仕組みはそうであろうと、下僕が下僕として刃向うことがある。殿、お覚悟召されい。」あまりにもひどい対中国政策は国民のの負担だ。

 

2010年9月24日 (金)

映画「終着駅 トルストイ最後の旅」と連載最終回ごあいさつ

 「終着駅 トルストイ最後の旅」は82歳で家出し寒村の小駅の駅長官舎で死んだ文豪の最後を描いた。監督マイケル・ホフマン。

 古今三悪妻と呼ばれる女性がいる。ソクラテスの妻クサンティッペ、モーツアルトの妻コンスタンツェそしてトルストイの妻ソフィヤである。しかしこの映画ではトルストイを偶像化してゆく側近に対抗し、家族が相続すべき財産を保全しようとする母、そして無名時代から苦楽を友としたかわいい女性、としてのソフィヤを名女優ヘレン・ミレンが熱演する。48年間連れ添い13人の子供を生み、悪筆のトルストイのために大長編「戦争と平和」を6回も清書した。世に言われている悪妻像と大分違う。

 世間で流布されているイメージをブチ壊すのは勇気がいる。9月9日付の米国フォーブス誌が掲載した「『中国の時代』は短命」は「どんな預言者もしり込みするような大胆な予測」を述べている。

 この記事によると『中国の世紀は長くて数年。世界市場最も早く過ぎ去る世紀になりそうだ。』2011年末までに中国の経済成長率はふたケタを割り込み、10年にわたる低成長が始まる。

 理由の第一は不動産特に居住用マンション市場の崩壊。8000万戸以上の空室がある。中国政府は人為的に市場を支えるだろうが、その代わり日本より深刻な停滞になろう。2013年には日本は再び中国を追い越し、世界第2位の経済大国に返り咲くだろう。(ホントカネ)。

 第二は「2015年までに200万人の難民が発生するような環境災害が起こるだろう。世界銀行は全国的な水不足から2020年までに3000万人の環境難民が生まれると見ている。

 第三は人口。今中国では女児が足りない。女児100人に対し男児119人以上。中国の人口は2020年までにピークに達し、人口増加ペースの減速は明瞭になろう。

 結論。現代の中国に対する思い込みは捨てた方がいい。10年後の中国は我々の目に今と全く違う姿に写っていることだろう。

 この見通しを書いたのは従前から中国の成長に弱気で「やがて中国の崩壊がはじまる」の著者ゴードン・チャン氏。またカアといわれる向きもあるかもしれないが、ご本人は「今後10年の中国について確実に言える」と自信満々だ。

 私は日本のバブル崩壊と同じに考えるのはムリ。今回の不動産不況は人民元切り上げ回避のための人為的なものに、ポストオリンピックの調整が加わったもの。中国人の利を追求したい国民性から、値が下がれば必ず回復する。いつかはそのサイクルは終わるだろうが、まだまだ。早ければ明年央あたりから再び価格上昇の芽が見えると見ている。11月に訪中するので、そこいらは確認したい。

 映画のセリフから。ソフィヤが夫に言う。「私があなたを、あなたが私を作ったの。それが愛なのよ!」住宅関連のブームの日本人の体験はあの国では違うかも。国情と発展段階の違いだ。おんなじ不動産ブームでも成り立ちをよくみなくっちゃあ。

 〈お知らせ〉507回、足掛け10年のこの連載も今回で終わりです。ご愛読を感謝します。この続き、つまり映画やオペラ、歌舞伎など私の好きな楽しいものと市場、、経済をつなげるコラム「まだまだ続くお愉しみ」としてブログとしてパソコンで始めます。では、再見!http://kiyoshi-imai.cocolog-nifty.com/

2010年9月21日 (火)

映画「TSUNAMIーツナミー」と朝鮮半島の激変

「TSUNAMIーツナミー」は韓国で1300万人を超える観客を集めたパニック映画。対馬近辺の大地震が高さ100メートルのメガ津波を生み、韓国の代表的リゾートで夏に100万人が訪れるヘウンデを襲う。

このテの映画は、見せ場の津波の前にたくさんの人のドラマが進行し、そこに悲劇がーとなる。そこいらが平凡なので少々辛抱が要るが、CGを使った巨大津波のシーンは大いに見ごたえがある。

いま、北朝鮮に異変が起こりつつあるらしい。マスコミは独裁者、金正日総書記の3男で、まだ20代の金正銀が後継者となることに関心を集中している。しかし、ある事情通は「実権は金正日の妹の夫で経済改革派の張成沢に与えられる。44年ぶりに開かれる労働党代表社会で、改革開放路線が採択される」とみる。

その根拠は8月下旬の金正日訪中と胡錦とう中国主席との会談である。ここで中国側は「自力発展策では経済発展を達成できない。市場原理を導入せよ」と強く勧めている。

金成日は、失敗したら責任を中国が取ってくれるか尋ねているはずだ。中国の保障があれば、経済的にも政治的にも破綻のリスクは低下する。だから同時期に訪朝していた米カーター元大統領に会わなかった。

 統一コリアは50年に世界2位へ

北朝鮮の改革開放が進めば中国のメリットは大きい。核廃棄の見返りに在韓米軍を撤退させ、朝鮮半島から米国の影響力を低下させられる。

韓国紙「中央月報」(9月9日付)は「南北間の激変が突然発生する可能性が非常に高い」とし、「統一コリア」への韓国の財政負担は数百兆項ウォンと推定した。津波のような事態と考えているらしい。韓国国防研究院は、その相当な分は日本から賠償金として取れる、とリポートをまとめている。

「統一コリア」については、米ゴールドマン・サックスが従前からメチャメチャに強気な見通しを発表している。同社のソウル支社のクオン・グフン氏の書いたリポートでは、2020年代に統一が成立し、その後の15年間、北は年15%成長、南は3%成長と見込んでいる。シナジー効果で2050年には一人当たり所得は北が7万ドル、南が9万6000ドル、平均して8万6000ドル。これは仏、独、日本を抜いて世界第2位になる。北の鉱物資源の活用と、優秀で安価な労働力の利用が強みになる。

これまで韓国経済の大きなリスクは朝鮮半島の冷戦だった。これが中国との関係が強化されると北は軍事的暴挙が出来なくなり、在韓米軍、そして沖縄の海兵隊駐留の必要度も低下してゆく。北朝鮮の軍部が抵抗して、改革解放どころか、何か大変なことが起きるかもしれないが。

映画のセリフから。津波を予想した地質学者が、対策をためらう上司に言う。「中国の四川省地震もインドネシアの津波も、予想もつかなかった。災難には予測はありません」。ある日突然、起きるかもしれない激変事態、案外近いのではないか。

2010年9月14日 (火)

傑作西部劇と民主党代表選

 映画「ワーロック」は1959年の西部劇の異様な傑作。亡くなった映画評論家瀬戸川猛資さんが絶賛してやまなかった。

 西部の町ワーロックで無法者どもがしたい放題に暴れている。町の住民は連邦保安官を呼ぶ。これがヘンリー・フォンダで無類の拳銃の使い手。相棒がアンソニー・クインでこれも腕っこきのガンマン。2人は華麗なガンプレーで悪党どもを消す。

 普通の西部劇と違い、ここで映画は終わらない。残り3分の1は正義の士のはずのフォンダとクインが決闘、生き残った1人は町の人々の冷たい視線を浴びて去ってゆく。

 政権交代で古い勢力は倒される。しかし倒されたあとは革命家自身が悪い権力と化し、血で血を洗う抗争が始まる。今回の民主党代表選挙で私はこの映画を思い出した。監督エドワード・ドミトリクは「赤狩り」旋風の犠牲者で、理想主義の崩壊を目の当たりにした人だ。

 私がある有力政治家から聞いていたお話は、円高・株安の国難を理由に、無競争の選挙にする。出馬断念の代わりに小沢氏は、腹心を幹事長職に据えるというもの。事実、鳩山氏はそう動いたが、世論の高い支持率を見て菅氏が拒否したのだろう。

 円高・株安は止まらない  

 代表選のシステムが現職国会議員の比重を大きくしており、現時点では圧倒的に小沢氏有利。この人は負ける戦に出る人じゃない。ただ、党代表になっても自分が首相になるかどうかは疑問だ。恐らく元自民党勢と救国連立政権を作り、ねじれ国会を切り抜けるつもりだろう。

 この間、円高・株安は止まらない公算大。ヘッジファンドは真空状態の日本で円買い・株売り戦略を止めることはあるまい。特に外資系証券が大量の先物売りで既に大きな利を取っている。簡単には終わらない。

 円高を止める妙案は財政出動と為替介入の組み合わせである。新政権になってもすぐには政策が出ないので、暗い時期がまだまだ続く。というのも米国、ユーロ圏共に通貨安を示唆する悪材料が出ているからだ。

 まず米国。住宅も雇用も悪いし、耐久財受注(除く航空機)が前月比8%も急低下し、設備投資の先行き悪化を示している。オバマ政権の支持率は急低下中で、中間選挙での大敗=レームダック化がほぼ確実だ。

 ユーロ圏では、ギリシャをはじめとした南欧諸国の信用リスクが再び注目されている。ユーロ加盟国スロバキアがギリシャ支援融資計画を国会で否決、ユーロの構造的問題が明らかになっている。

 こうした悪環境のなか、ニューヨーク株に「ヒンデンブルグの凶兆」という大幅下落の予告指標が8月中下旬に4回も出た。この指標はリーマン・ショックを3カ月先行して予告しただけに、不安は高まる。

 映画のセリフから。着任した保安官が町の人に言う。「初めは歓迎されますが、本当に平和が来ると冷ややかな批判に変わるんです」。マスコミの小沢氏叩きが当選後どう変わるか。まず歓迎か。その後が問題だ。

2010年9月 7日 (火)

映画「キャタピラー」と株安のメドと政策

「キャタピラー」は若松孝二監督の反戦映画。主演の寺島しのぶが、ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を獲得した話題作だ。江戸川乱歩の短編「芋虫」をモチーフにしている。

 第2次世界大戦末期、シゲ子の夫久蔵が戦地から生還するが、胴体と首以外は切断され、顔の半分は焼けただれ、声帯も耳も損傷している。勲章を3つももらい、村人からは軍神と称えられ新聞にも載ったが、何にもできない半面、食欲と性欲は衰えない。シゲ子は 夫への嫌悪感、軍神の妻というプライドのなかで次第に精神をゆがめてゆく。久蔵は戦地での残虐行為がトラウマになる。

 手足を失った久蔵のように、今の株式市場は資本調達の場としての機能を喪失してしまった。売買金額が1日5000億円にも達しないし、トヨタのような一流株でも何千株の買い注文しかない。

 株価の現水準は異常としか言いようがない低さだ。主要銘柄の株価収益率は過去30年で最低だし、全銘柄の益回りは6%以上、配当利回りは2%。解散時の1株当たり純資産と株価との比率はわずかに0.6倍台だ。

 日経平均9000円近辺は、ここ2年ほどのチャートを見ると大事な止まり場だったが、円買いと同時に日本株売りを米系ヘッジファンドが強行している。高値から20%以上の下落は中、長期の下げ相場入りを暗示している。米欧経済の回復ペースが急減速し、ド ルもユーロも通貨安による近隣窮乏化政策を強行し始めた。中国の人民元切り上げはほとんど0%。日本国債を買っている。

 円高と株安で国内空洞化  

 ドル・円相場はこうして1995年4月の79円75銭に接近、輸出株の多い日経平均の企業収益の先行き悪化が懸念され、株安につながっている。実効レートで10%の円高は経常利益を5.3%押し下げる。高値から2000円下落した株安も4%の減益要因 だ。だが、11年3月期の日経平均の1株当たり利益は、前期から94%の大幅増益が見込まれている。為替と株安合わせて10%に満たない減益なら、そう大した悪影響にはならない。本当なら、8000円台のどこかで下げ止まるところだ。

 やはり、為替と株式市場への政権の無関心が投資家のやる気を削いでいるのだろう。国難に対処しなければという意欲が感じられない。日銀も同じだ。

 円高と株安が続けば、輸出企業はますます生産を海外に持ってゆき、雇用は減少し空洞化が進行する。中国・韓国など為替安でメリットを受けている国との競争にますます不利になる。菅首相は必死になって、円安・株高になるような、例えば金融緩和、ドル買い、 法人税引き下げなどを早急に決めるべきだ。ただし、投機筋は強力だ。粘り強く。

 映画のセリフから。久蔵の父が言う。「こんな姿で生きて帰されたってよ。どうしろっていうんだよ」。芋虫みたいな日本にされる前に、手を打たなきゃあ。

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