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2010年9月 7日 (火)

映画「キャタピラー」と株安のメドと政策

「キャタピラー」は若松孝二監督の反戦映画。主演の寺島しのぶが、ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を獲得した話題作だ。江戸川乱歩の短編「芋虫」をモチーフにしている。

 第2次世界大戦末期、シゲ子の夫久蔵が戦地から生還するが、胴体と首以外は切断され、顔の半分は焼けただれ、声帯も耳も損傷している。勲章を3つももらい、村人からは軍神と称えられ新聞にも載ったが、何にもできない半面、食欲と性欲は衰えない。シゲ子は 夫への嫌悪感、軍神の妻というプライドのなかで次第に精神をゆがめてゆく。久蔵は戦地での残虐行為がトラウマになる。

 手足を失った久蔵のように、今の株式市場は資本調達の場としての機能を喪失してしまった。売買金額が1日5000億円にも達しないし、トヨタのような一流株でも何千株の買い注文しかない。

 株価の現水準は異常としか言いようがない低さだ。主要銘柄の株価収益率は過去30年で最低だし、全銘柄の益回りは6%以上、配当利回りは2%。解散時の1株当たり純資産と株価との比率はわずかに0.6倍台だ。

 日経平均9000円近辺は、ここ2年ほどのチャートを見ると大事な止まり場だったが、円買いと同時に日本株売りを米系ヘッジファンドが強行している。高値から20%以上の下落は中、長期の下げ相場入りを暗示している。米欧経済の回復ペースが急減速し、ド ルもユーロも通貨安による近隣窮乏化政策を強行し始めた。中国の人民元切り上げはほとんど0%。日本国債を買っている。

 円高と株安で国内空洞化  

 ドル・円相場はこうして1995年4月の79円75銭に接近、輸出株の多い日経平均の企業収益の先行き悪化が懸念され、株安につながっている。実効レートで10%の円高は経常利益を5.3%押し下げる。高値から2000円下落した株安も4%の減益要因 だ。だが、11年3月期の日経平均の1株当たり利益は、前期から94%の大幅増益が見込まれている。為替と株安合わせて10%に満たない減益なら、そう大した悪影響にはならない。本当なら、8000円台のどこかで下げ止まるところだ。

 やはり、為替と株式市場への政権の無関心が投資家のやる気を削いでいるのだろう。国難に対処しなければという意欲が感じられない。日銀も同じだ。

 円高と株安が続けば、輸出企業はますます生産を海外に持ってゆき、雇用は減少し空洞化が進行する。中国・韓国など為替安でメリットを受けている国との競争にますます不利になる。菅首相は必死になって、円安・株高になるような、例えば金融緩和、ドル買い、 法人税引き下げなどを早急に決めるべきだ。ただし、投機筋は強力だ。粘り強く。

 映画のセリフから。久蔵の父が言う。「こんな姿で生きて帰されたってよ。どうしろっていうんだよ」。芋虫みたいな日本にされる前に、手を打たなきゃあ。

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