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2010年10月28日 (木)

映画「インシテミル」と尖閣と中国株(第514回 10月28日)

上映当初は大した入りではなかったようだが最近ではヒットし上位に。映画「インシテミル」はホリプロ所属のスターがズラリと並んだホラー。藤原竜也、綾瀬はるか、阿部力、石原さとみ、片平なぎさ、北大路欣也。

 題名は「淫してみる」という意味で原作者米澤穂信氏によると「伝統的な本格的なミステリーの世界に淫している反面、ミステリーという作り物のあり方に揺さぶりをかける」意。

 時給11万2000円という求人広告につられた10人の男女がある場所に閉じ込められる。仕事は7日間経過するか、生存者が二人になった場合にのみ1600万円の金を手にする。個室は与えられるが24時間監視され、各室には武器が置いてある。そして連続殺人。

 平和ボケしていた日本人が、尖閣事件がウエイク・アップ・コールになって、国益をどうしたら守れるかを考えるようになった。映画で集められた10人が、遊び半分のつもりが容易でない環境を認めたとたん、隣人を疑い始めたのに似ている。

 尖閣問題の中国側の違法行為は、西沙、南沙諸島で、ベトナム、フィリピン、インドネシアなどを押さえて実効支配したやり口と同じ。

 史実も現実も無視して中国の領有を宣言する。漁民を装った中国人を、自分たちの領土と主張する島や海に侵入させる。本来の領有権を持つ国が中国船を拿捕したり漁民を逮捕すると、軍事力を背景に相手を屈服させる。

 今回もいろいろ調べてみたが、菅内閣の無能力と国家意識の欠落を見越しての、十分に準備された戦略戦術だ。

 幸い、レアアース輸出差し止めなどで中国異質論は欧米に拡まった。日本は国際世論をバックに、次の更なる外交的敗北をしないよう準備しなくてはなるまい。

 中国の反日デモは沿海部大都市では起きていない。反政府デモに転化しかねないし、江沢民院政の匂いのする習近平の後継者就任ほぼ確定で一応ヤマは越えているが、従来の中国の領海浸出の手口から見て、必ずまたやってくる。

 少々ワキ道に行過ぎた。

 経済面での「中国問題」は現在の意図的な景気減速がかなり進んでいるにもかかわらず0.25%の利上げを発表していること。

 中国の実質成長率は7~9月期前年比9.6%と立派なもの。しかし「先進国と同様に季節調整をかけて前期比年率で表示すると6%前後で、5カ年計画の7.5%にも及ばない。」(スフィンクス・リサーチ藻谷俊介代表)。

 にもかかわらず利上げしたのは、G20での中国包囲網を緩和するために、小幅でやったのだろう。来春には利下げが始まると思う。

 中国株は過熱の気配はあるが、まだ上値が十分見込める。上海総合指数は2007年10月の高値6124で、最安値は2008年の1665、戻り高値は昨年8月の3478。現在の3100近辺は株価収益率17倍で、まだ割安だろう。

 しかし、そろそろ人件費の高騰で外国系企業はベトナムなど他国に移転し始めた。10年先には高齢化の時代が始まる。中国株はあと5年間。人民元の預金はもう少し先まで。

 私は中国株を薦める本を2004年4月に書き、ペトロチャイナ、チャイナインシュアランスなど注目株7銘柄は丸4年で目標通り5倍。春に利食って頂いたので、リーマン・ショックの影響なしに済んだ。私にとり中国株はゲンがいい。

 映画のセリフから。主人公が「武器を捨てよう」というと他の者は「抑止力になるから持っていたほうがいい」。狡猾な相手には、賢く、同時に強くなくては。

 

2010年10月24日 (日)

映画「エクスペンダブルズ」と量的金融緩和と円高」513回

 映画「エクスペンダブルズ」はシルベスター・スタローンの主演、監督のアクション。ともかくズラリと並んだスターたちが凄い。シュワルツネッガー、ブルース・ウイリス、ジェイソン・スティサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン、それにミッキー・ローク。

 題は「消耗品」という意味で、傭兵軍団のこと。スタローン率いるエクスペンタブルズは、南米の島国を押さえる独裁者の将軍の抹消を依頼される。視察に向かうと、独裁者の娘ながら民衆の苦しみを知る女性と出会い、心を惹かれる。

 いま米国、FRBが計画している量的金融緩和のもたらす効果を読んで、ヘッジファンドの仕掛けが花盛りだ。映画の中のアクション・スターたちの、ご自慢の肉体美の活躍に似ている。

 11月2,3日のFOMCで、ある情報レターによると6ヶ月間で5000億ドルの米国国債購入。FRBの資産2兆2800億ドルから見て半端な額じゃない。市場は半年でこの金額ですまないから1兆ドル、と解釈し、米国債利回りは急低下、NY株も戻り高値を更新。

 超金融緩和を材料にした金融相場で、従来からの研究によると「1兆ドルの国債購入は2年間でGDPを1・7%上昇させ、長期金利を0・3%引き下げ、インフレ率は0・6%上昇させ、ドル価値は5%ダウン」というストーリーが信じられている。

 ヘッジファンドは三方向の投機を開始した。①通貨市場でスイスフラン、豪ドル、円、ユーロの買い②商品では金、銀、銅、WIT原油先物、綿花、小麦などの買い③エマージング株式、とくにインドネシア、フィリピン、タイ、インドなど。

 一部は不動庵市場にも廻っている。尖閣列島問題でチャイナ・リスクを意識した日本企業が例えばベトナムに向かう、とよんでハノイ近辺の土地が上昇中。

 ともかくコストがゼロのFRBの資金供給によって、米国経済がデフレの恐怖から脱却する前に、皮肉にも世界でマネーゲームが展開し始めた。

 いい例が円だろう。G20の間は投機筋は遠慮しているが、終了後は動き始めよう。すでにスイスフランは史上最高値を更新。円も95年4月の史上最高値を抜きそうだ。

 G20共同声明時にガイトナー米財務長官は「強いドル」を強調したが、何と言ってもFRBの第二次金融緩和はこれから。ドルの下落が懸念される。

 たしかにFRBがゼロ金利政策に続いて大規模な量的緩和は踏み切ろうとしていることは理解できる。経済指標は停滞が続いており、このままではデフレが始まり不況は長期化。おわゆる「日本化」の不安が頭をもたげる。

 当然かつて「日銀はケチャップを買え」と日本のデフレ対策の生ぬるさを罵ったバーナンキ議長としては、メンツがかかる。

 やはり、1兆ドル。途方もない資金が供給される。日本人としてはドル安=円高が心配。

 先日榊原英資氏の講演を聴いたが「95年の79円75銭は現在の感覚では65円」とまだ続く流れを示唆した。私は最近述べたように大局観としては「2011年、7~9月に74,5円」という天井を予想している。

 映画のセリフから。傭兵の一人が敵地に乗り込む飛行機で叫ぶ。「オレたちは生まれたときな別々だが、死ぬときは一緒だ!」ヘッジファンドが一斉に始めた投機。本番はこれからだ。私は来年から強気を言うつもりだが、目先は警戒。

2010年10月20日 (水)

映画「大奥」と流れの逆転(第513回 2010年10月20日)

 ただいまヒット中の「大奥」は、よしながふみの漫画の実写化で金子文紀監督。

 若い男性だけがかかる伝染病で、日本中の男性人口は激減。男女の役割は逆転し、肉体労働を含め外で働くのは女性だけ。男性は子ダネが貴重とされる世界だけに、体を売って生計を立てる。

 当然将軍家も女子相続で、八代目は英明の誉れ高い吉宗(柴崎コウ)が就任。一方貧乏旗本水野祐之進(二宮和也)は家を救うため、3000人の美男がひしめく男の園に身を投じる。大奥は陰謀の渦巻く巣窟(ソウクツ)だった。

 ところが将軍の初夜のお相手に選ばれたのがこの水野。破瓜 で将軍の身体を傷つけたという理由で、打ち首、というなんとも不条理な展開に。さあ、どうなるか。

 昔私は掛け算で「マイナスとマイナスをかけると、プラスになる」という価値の逆転に驚かされた記憶がある。この映画の男女逆転に似ている。

 山一證券に入って、株式相場の世界を見て、この逆転のロジックが、ほとんどそのまま、株価の動きに現れるのを見た。

 あるところまで、「好」でも「悪」でも材料が株価を動かす。まあ昨年からだと①民主党②円高③株主無視の増資④デフレ。それにグローバルなデフレ「日本化」シナリオとか、まだくすぶる米国の住宅バブル後始末と中国の不動産バブル破裂説、つまり世界長期不況説。このあたりだろう。

 これに日本株の「持ち合い解消」、日本全体の「老齢化・少子化」、あと「日本国財政破綻」。これで「株価が安い」「だからオレは株は買わないの一覧表は終わり。あと何かあったら教えてください。

 ともかく、この悪材料のマイナスが過大視されると、株価の下げが行過ぎてしまう。そこいらで、株価は底値で,買いの大チャンス。

 まあこれらの悪材料の中で、最大で最も見通しの立てにくいのが、カワセ、つまり円高問題だろう。

 財務大臣が「断固として」を連発し、先日は2兆円以上の市場介入を実施したが、効果は少ない。

 TVを見れば意地悪そうな女性エコノミストは1ドル50円、なんていう!。

 私は実は「2011年1ドル74円」というのが最も信頼しうる予想、と考えている。

 これは1971年の1ドル360円からの8年サイクルの波動からみたもの。若林栄四さんが何年も前から言っている。(「2019年までの黄金の投資戦略」2009年2月日本実業出版社)。

 この円高のピークは明年7~9月について、その後は若林さんによると、2015年には1ドル147円をこえる円安、ドル高局面もありうるという。ついでにいうと「そのあたりで日本経済はデフレ脱出」とも。

 この人は永い間私は注目してきたが、予測精度は高い。

 79円75銭という対ドル円レートの高値は切ったら、マスコミは大騒ぎし株価もベタ安が予想される。しかし私はそのあたりで全力を挙げてドル建てMMFや輸出株を買うつもりだ。

 米FRBの2008年ごろの研究では、1兆ドルの量的緩和は10年もの米国債の利回りを0.5%押し下げる。この金利下落はGDPを1.17%押し上げ、インフレ率は0.6%上昇。そしてここが肝心だが「ドルは5%下落。」別の研究でも大体同じ。

 いまの円の対ドルレート81円の5%高だと77円。まあ少しサバをよんでも74円というのはいい水準。あと上昇余地は知れている。

 映画のセリフから。予算緊縮のため吉宗は美男50人を庭に呼んで、大奥を去り江戸市中で女性に子種を与えてやれ、という。あまりの宣告に身動きできぬ50人に言う。「聞こえなんだか。下がりゃ!」そして吉宗は「さて、この国をこれからどう動かすか。」この国の転機はあと半年と少し。まあ、そろりと参ろう。

2010年10月18日 (月)

映画「グレン・ミラー物語」と「そろそろ株を」と言う理由(第512回)

 私の好きな映画だ。スイングの人気楽団のリーダーで「ミラー・サウンド」を創造した男の一生を画くのだが、ジェームス・スチュアートとジューン・アリスンの夫婦愛で、観るものを泣かせる。傑作と思う。

 「真珠の首飾り」や「ムーンライト・セレナーデ」などのヒット曲や、ルイ・アームストロングやジーン・クルーパなどのスターの出演もいいのだが。この二人、本当に息のあった名コンビだった。

 お話はトロンボーン奏者で作曲、編曲者のグレンは常に新しい自分のサウンドを追及。散々苦労するが、あるハプニングからサウンドを発見、空前の人気と名声を得る。

 いまの株式市場は全く人気離散、配当利回りが2%、全銘柄の益回りは7%近い。歴史的に見ても割安だが、株を買わない(又は買えない)理由はヤマほどある。

 まず円高。多少の介入をしても、ドル安はFRBの超金融緩和もあるし、まだまだ安くなる。輸出メーカーの収益はガタ落ちし、韓国にシェアを奪われる。

 このままでは国内はどんどん空洞化し雇用は増えない。円高のメドもつかない。

 だいいち、米国経済はまだ住宅不況から脱出できていない。現に最近住宅ローンの所有権のペーパーワークのトラブルでメルトダウンが起きているじゃないかー。

 「イマイさん、あなたはNY株はいっぺん、わりと大きな下げがある、と8月に言い出したじゃないか」。

 その通り。11月2日の中間選挙も、2~3日のFOMCでの超金融緩和後の材料で尽くし感も心配。

 「それよりも何よりも、米国経済はもうダメなんじゃないの?」

 実は私もそう思っていた。しかし、私は見方を変えつつある。

 10月13日付のフィナンシャル・タイムスの言うように「現在、米国は自分の国以外の世界各国をインフレにしたいと思っており、逆に米国以外の国は、米国をデフレにしようと試みている。」ずいぶん乱暴な言い方だが、その通りだ。

 同紙は言う。「この戦争では、米国が必ず勝つ。なぜなら米国には弾薬が無尽蔵にあるからだ。FRBはドルをいくらでも創り出せるからだ。」

 現にマーケットではFRBによる数千億ドルから1兆ドルの米国国債購入を見込んでおり、超金融緩和相場を織り込みつつある。

 FRBの現在の資産規模は2兆3000億ドル。弾薬はたしかに無尽蔵だ。この分ではNY株価は下押ししても10%以上の大幅なものになるか、どうか。

 世界がインフレになれば、また米国が「日本化」をまぬがれれば、日本の成長率を上回る成長は固い。そうなれば今度は円安だ。もちろん株価の方もイキを吹き返す。時期が問題だが、2011年前半のどこか、だろう。

 その転換点がいつで、円レートがいくらの時か。まだ、正確には私には見えない。しかし、私がこの円安=株高への反転がそう遠くないと確信しているのは、米国の対日政策の転換だ。

 米国経済の方をくわしく述べることが出来なくなった。これは次回に。

 映画のセリフから。奥さんのヘレンが新婚の夜に言う。「私はものすごくケチなの。あなたの洋服のポケットからおカネを盗んで貯金を始めるわ。」グレンが自分の楽団をスタートさせるとき、開業資金は奥さんのヘソクリから。準備は早ければ早いほど、いい。

2010年10月13日 (水)

映画「ナイト&デイ」と米連銀の超金融緩和への期待(511回)

 映画「ナイト&デイ」はトム・クルーズとキャメロン・ディアスの二大スターの娯楽アクション。

 題名のナイトは夜でなく騎士。ハークレイン・ロマンスに登場する白馬の騎士、運命の男性のこと。平凡な女性ジェーンが空港でロイに出会い、機内で近くの席になる。

 機内でジェーンがトイレに入っている間にロイは大格闘で機内の全員と操縦士までを殺してしまい、そこから逃避行が始まる。お話はかなりご都合主義だが、天然ボケのジェーンと組織に追われるスパイのロイが、南の島からスペインまで世界中を駆け巡る。まあテンポのいい楽しい映画だ。この映画に出てくるFBIとギャングがそれぞれ二人を追う。

 もう休刊になってしまった「エコノミスト マネー」の最終10月号に私は「年内にNY株に大幅下落の売りサインが出ている」と述べた。すぐではなく3,4ケ月のあとに実現する売り指標だが。映画で何人もが追い駆けているある未完成の大発明と共通点がある。出来れば世界を変えるが、今回もあたるか、どうか。

 「ヒンデンブルグ・オーメン」と呼ばれるテクニカルなサインで、細かくは省略。87年のブラック・マンデーでも、2008年のリーマン・ショック時も3~4ヶ月前にこれが出ていた。今回は8月に数回、出現している。

 はてな、と思っていたら、9月27日米CNBCテレビで「米国株は株高が演出されている」という爆弾発言があった。

 発言した人は英国の大手証券会社のストラテジスト。「8月以降11%のNY株高があったが、米連銀が銀行に資金を入れ、そのカネで株式をプログラム売買させ株価を吊り上げている」と。

 この発言には根拠がある。米連銀は米国債や不動産担保証券を売買する「恒久公開市場操作(POMO)」昨年春から設定。去る8月17日からNY連銀担当デスクが活発に売買を開始した。

 取引担当は米ゴールドマン、英バークレイズ、独ドイツ銀行の3社。このPOMO資金が株式売買システム(アルゴリズム)で株価上昇を演出している。

 いつまで保つか、という不安のほかに、11月2日の米国中間選挙結果次第という面もある。人為的にいったん下げて不況対策の予算を通すための株安、という、あのリーマン・ショックに似た危機演出だ。まあ、そこまではやるまいがー。

 しかも、現実には米国株は「不況になるサインが出るほど株高」という、何とも怪しげなロジックで上がっている。

 11月2~3日のFOMCで「米連銀は上限1兆ドルの米国国債を購入する」と市場では予測。米連銀の資産規模が2兆3000億ドルだから、超超金融緩和だ。

 つれて10年もの米国債利回りは、2・3%台と2008年12月の2・035%の史上最低利回りに接近し、株高の援護射撃になっている。

 勿論米連銀の首脳部にでも異論が多いが、バーナンキ議長が押し切るだろうと市場では期待している。これが万一スケールダウンしたら、米国株安だが。

 コストがゼロに近い米ドルで資金調達し、投機筋は①金、原油、農作物などのコモディティ②円、ユーロ、スイスフランなどの外貨③インドネシアなどの新興国株式市場への投資を猛烈な勢いで行っている。この流れでは、円高(ドル安)は止まるまい。11月に決算が多い米系ヘッジファンドにとり、こんなにオイシイ話はあるまい。何せウオールストリートでは昔から「絶対にフェド(FRB、米連銀のこと)と戦うな」というから。

 映画のセリフから。ロイがジェーンに言う。「君をつかまえる連中が”安全で安心”といったら、すぐ逃げろ。信用するな。」投資シナリオに「絶対」はない。皆が言い出したら終わり。当分ローラー・コースターのような相場つきだろう。

2010年10月 7日 (木)

続いて「ロッキー」と日本の幸運と株価(第510回 10月8日)

私の大好きな「ロッキー」の音楽をDVDで聴きながら。本当に元気の出るファンファーレだ。

 先週に続いて「自分が知らないうちに巨大なチャンスを貰った」ロッキーの状況に今の日本は、いる。私だけがどうも強気に考えているらしいんだが、そこいらを書いてみよう。

 今週、日経主催景気討論会を聴きに行った。スピーカーの中にシャープの町田会長がおられて注目すべき発言をしていた。

 「中国では豊かな消費者層が生まれていて、そのひとたちは性能の良い機能も多彩な日本品を買い始めた。液晶TVで始めて安価な中国、韓国品を日本が上回り始めたんです。」

 他業界でも、中国で「80后」つまり80年代生まれの一人っ子層がモノを買い始め、それが日本製品にフォローの風になり始めたという声を聞く。この層はブランド志向、性能注視、価格はかまわない。

 円高と尖閣問題が気になるが、この新しい流れは非価格競争力重視だから心強い。

 ついでに。尖閣問題での弱腰は日本人として口惜しい限りだが、結果オーライというか、なんというか。

 米国始め世界の世論が「中国横暴」「世界市場で自由貿易の果実を得ている中国がレアアース禁輸というのは最大の矛盾」という「中国異質論」(丸紅ワシントン事務所)が出始めた。

 切り上げを渋っている中国に、人民元の正常なレートをどう戦い取るか(FT紙)が論じられ始めた。米国でもNYタイムス、ワシントンポストなど有力紙が同調し、また米議院では中国制裁法案が圧倒的多数で通過した。

 逆風から米国で起きている「シェールガス革命」は日本経済にとり、順風の最たるものだ。

 天然ガスの中で、頁岩(けつがん)という、粘土が岩石になった地層に入っているものがシェールガス。

 千立方フィート当たり3ドル台で原油バーレル当たり換算18ドル強、WTIが70ドル台だから「高エネルギーコスト」の時代は終わり。

 米国では埋蔵量は無尽蔵に近いし、中国、東欧でも。エネルギーコストの低下は日本にとって順風だ。

 円高があるじゃないか。オマエはヘッジファンドは1ドル60円と言ってるじゃないか。

 それでも私は、急激な円高には介入をするだろうからその悪影響は軽減されるし、かりに円高がそこまで進んでも、日本にはプラスと考える。

 みずほ総研の中島厚志専務によると「ドル建ての貿易収支は赤字なので円高は日本のイタダキ」。輸出のドル建て比率は49.5%、一方輸入の方は70.3%(2009年)なので、1ドル10円の円高は1兆円の差益となる。なるほど。

 とりあえず円高は輸出企業を直撃するが、輸入メリットは6ヶ月以上の時差がある。2011年央ぐらいからメリット。それにエネルギーコストの低下があるから、2011年は「日本にとり、意外なことに順風。これは私の意見。

 まだまだ私が希望を持つ点はあるが、それは次回以降に。チャートをご覧ください。

 映画のセリフから。老コーチのミッキーがロッキーに言う。「お前はバランスが悪い。ヒモを両足につけるからそれでステップを踏め。」原料価格の中で最大のエネルギーの低下は、日本経済のバランスを良くする。

Vol510_2

2010年10月 5日 (火)

米株式市場、秋口は要注意

「日経ベンチャー」経営者クラブから出版された『60分を10倍に生かすトップの情報CD』に、「米株式市場、秋口は要注意」というテーマで講演が収録されました。
 音声はこちら

映画「ロッキー」と日本の幸運と株価 第509回

 私は「ロッキー」が大好きだ。まあその後「ロッキー5」にもうひとつ「ファイナル」まで、やまほどつくられたので、これにはオェーッとなるが。

 あの音楽がまず、すごく、いい。始まりからひとを勇気づけ、ワクワクさせる。そして「一生にいっぺんあるかどうかのチャンス」に全力を挙げて戦う男。1976年のアカデミー作品賞、監督賞などをさらった。

 お話はもうご存知だろう。4回戦ボクサーのロッキーは、ヤクザの使い走りで日ゼニを稼ぐしがない暮らし。そこに世界ヘビー級チャンピオンのアポロの気まぐれで、無名の新人と1月1日の15ラウンドの話が持ち込まれる。老コーチのミッキーのサポートもあって、激しい孤独なトレーニングが始まる。内気な娘エイドリアンとの愛も重なる。そして猛烈な死闘。ラストシーンの盛り上がり。

 ロッキーのように自分の知らないところで運命が変わる話は、長い人生のうちに必ずある。私は今こそ前途が見えない日本だが、現在、気がつかないうちにあるチャンスを掴んでいると考える。

 日本の運?かつてのフビライの元寇のように台風が助けてくれる例とか、幕末のペリー艦隊の開国要請以降のとき、日本国内は混乱したが米国は南北戦争で侵略の余力がなかったし、英国、ロシアはクリミア戦争でこれまた日本征服の戦力がなかった。フランスも。そこに勝海舟という本当に凄い人がいて内戦を最小限に止めた。そして日英同盟と日清、日露戦争、まあ日本はツイていた。

 軍事大国日本が第二次大戦でコケてしまったあと、ツキは中国本土の共産政権化。翌昭和25年(1950年)には朝鮮動乱が始まり、あれが日本復興のきっかけになった。

 何で私がこんなことを言っているか。株価というものは実に不思議なもので、長期の買いサインが一昨年5月に。第1回目は戦後昭和24年5月に出ているのだ。日本の株式市場の歴史で、2回しかない。

 野村證券金融経済研究所の山内正一郎さんが発見したのだが、5年(60カ月)の移動平均が10年(120カ月)の株価の移動平均を上回り、「ゴールデン・クロス」という長期上昇予告が出ている。

 1949年5月当時日経平均に当たる指数はまあたった100円ぐらい。これが1989年12月で3万8900円までちょうど40年間上昇した。軍事大国から経済大国を目指した日本。成功しすぎでバブル。これがはじけて93年には売り信号が出た。デフレ。あとはご存知の通り。

えっ?買い信号?

 昭和24年に続いて、2008年5月、日本の株式市場が明治11年(1878年)に始まって以来、2回目のゴールデン・クロスである。

 一体何が材料なのだろうか?

 昭和24年のゴールデン・クロスの好材料は、今にしてみれば良くわかる。米国の対日政策が変わったのである。

 昭和20年(1945年)の終戦直後は日本が再び戦争がないように、工場設備など取り払ったりしていた、ところが毛沢東中国がメインランドを押さえると、巨大なソ連と合わせてユーラシア大陸のほとんどが共産主義国。

どうしても日本と欧州で西ドイツを再建して、資本主義は共産主義より優れているというショーウインドウにしなければならない。そこで技術を安いライセンス料で分けてくれたり、世銀を通じて幹線道路を作ったり、為替レートを輸出しやすい1ドル360円にしたリー。

 今回の「日本の幸運」について、私がどう考えているかは、次回に。いくつか考えられるのだが、いま、何人もの専門家にお会いしている最中だ。来週までお待ちください。

 映画のセリフから。ロッキーが言う。「オレは人間のクズだった。またチャンピオンに挑戦する資格もない。しかし、最後のゴングが鳴った時もリングに立っていられたら、オレはクズじゃない。」要するに、粘りだ。ダメ内閣でも、日本はまだいいところが沢山ある。希望を持ちたい。

Vol510_2

2010年10月 2日 (土)

世界経済は「インフレ」に向かう(選択 2010年10月号)

「市場」は織り込み始めている

 「リスク回避のしすぎだよ。グローバルなデフレシナリオは逆目が出ると思うよ。2012年をどう読むかなんだ。11年よりもね」

 サブプライム危機の頂点だったリーマンショックから2年、やれ日本の二の舞だのと世界的な長期不況説が急に語られ始めたが、それは間違いで、悲観論は飛んでもないないという。ある大手ヘッジファンドのマネジャーの発言である。

 たしかにギリシャ危機以降、米国景気の二番底不安、中国の不動産バブル破裂と景気失速感懸念などを根拠にした金融危機の再燃と、デレバレッジ(債務返済)が引き起こす長期不況説は定着したかに見える。キメ打ちは8月31日にフィナンシャル・タイムズ紙が紹介した人気経済学者ラインハート夫妻の「最悪は過ぎたと考える楽観論者に警告」というレポートだろう。過去75年間に起きた15の経済危機を分析し、過度の債務の積み上がりの結果としての金融危機が、高い失業率、低成長とデフレ、資産価格低迷の長期化となると指摘した。

 しかし、ヘッジファンドの資産運用担当者は「市場が織り込み始めた『次』のシナリオをこの学者さんたちは分かっていない」という。

二番底の可能性は低い

 市場の動きは現実に、悲観の行き過ぎの修正にかかっている。8月以降、買われすぎた債券価格は下落(長期金利は上昇)し、欧米株価は7月を底に上昇。特に注目されるのが米国社債のリスクプレミアムの低下、さらにこれまで敬遠されていたジャンク債や住宅ローン担保証券などの人気復活である。経験的には続いて中・長期の株高が起こる。

 まずジャンク債。BB格ものの利回りは5月ごろに12%を超えていたが、最近は6%台にまで下落。価格は倍以上になった。住宅関連では、悪名高いサブプライムローン担保証券はオルトAローンとともに、春先と比較してなんと3~5倍に急伸している。従前から「オバマは再選を狙って、これら信用度の低い住宅ローン関連証券の不渡りになった物件を抜き出して、証券を作り変える特例法を考えている」といううわさがあったが、案外本当かもしれない。

 今回の金融危機では素早く果断な米連邦準備制度理事会(FRB)の対策で、金融機関のバランスシートは急回復し、再び高収益を発表できるほどになった。米国企業は空前の資金を保有し、債務返済の必要は全くない。むしろグローバリゼーションとインターネット革命の余勢を駆って生産性のさらなる向上を狙っているのが現状である。失業率の高止まりを懸念する声は高いが、過去の平均では雇用増加は景気回復の後、9ヶ月目あたりで始まる。現時点で、二番底の可能性は低い。

 この強気の見通しを支えるのがドル・キャリー取引である。ドル金利がゼロに近いため、資産運用担当者は、ヘッジファンドを中心に高い利回りの国の資産に投資すれば収益を挙げられる。さらにドル安を見越して先物を売れば、ドルによる資金調達は年率30%以上の高利回りに達する。

 ご存知の通りヘッジファンドはギリシャ危機を材料にユーロ売りを仕掛け、大成功。ユーロの対ドルレートは1・54から1・18まで下落した。次に連中は円買いと日本株売りをセットで仕掛け、円は瞬間的に82円台まで上がり、株価も10%下げたから、こちらも一応成功。日銀の予想外の円売り単独介入で損失は被ったが、仙谷由人官房長官が「82円が防衛ライン」と口を滑らせた上、日本経済の10~12月期の経済指標は前年同期比でかなりの悪化が予想されている。ヘッジファンドのロジックでは「日本経済の悪材料は円買い材料」なので、次回は80円スレスレが目標だろう。

 話を米国経済に戻すと、オバマ=バーナンキ(FRB議長)のチームは消費を中心とする景気刺激策を充実させている。バーナンキは最近の議会証言で「必要ならば①準備預金金利引き上げ、②資産購入の再開、低金利政策持続の意思表明などの追加策がある」と述べた。一方、オバマは①インフラ投資計画、②企業研究開発減税、③年収25万ドル以下の世帯に対する「ブッシュ減税」の延長、などを発表した。

台頭する「工業バイオ産業」

 悲観論が何より好きなわが国のマスコミは、これらの効果を端から疑問視しているが、実は米国では彼らが報じない大型のニュービジネスが台頭。代表企業の株式公開が相次いでいる。「工業バイオテクノロジー産業」である。

 最も知られるところでは、これまで石油を原料にしていた化学製品などを農業生産品から作る試みも「工業バイオ産業」の一つだ。バイオ化学製品の市場規模は08年に1700億ドルだったがすでに2000億ドルを超え、20年には5000億~6000億ドルを超える見込み。バイオエネルギーの方は20年に3000億ドルの新市場創出が見込まれる。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが出資したコデクシス、仏トタルが出資したアミリスなど、関連企業の上場も進んでいる。

 日本では全く進んでいない工業バイオ産業だが、オバマはこの新産業の助成のため政府の追加出資を決めている。工業バイオテクノロジーに積極的なデュポンなどは「07年の売上高500万ドルが09年には2000万ドル。15年には10億ドルに成長する」とそろばんを弾いているほどだ。

 こうした市場動向は政府の政策効果などを材料に、「デフレでなくインフレ」と主張する学者も出てきた。06年9月の段階で金融危機の到来を予想し、その後の展開も正確に読んできたヌリエル・ルービニ教授もその一人だ。10月1日に邦訳本も出版される新著「大いなる不安定」の最終章「展望」で、同教授はこう述べている。

 「デフレ圧力は続くが、それは財や労働に対する需要が多くの国で低迷し、物価や賃金に低下圧力がかかっているため。(中略)しかし新興国は回復が速く、すでにインフレ再発の兆候が見られる。09年末ですでに中国、インドでは原油、食糧などの価格が上昇している。両国の経済はすぐに過熱し、インフレが現実化する可能性は先進国よりはるかに高い」

 その上で同教授は「先進国もインフレに戻る公算大」としている。理由は次の通り。①財政赤字を紙幣増刷で穴埋めするようになり、インフレ率上昇、②危機対策として供給された低利資金がだぶつき、市況商品の資産バブルに火がつく、③ドル安の進行で産油国がドル建て原油価格を引き上げる。「ここ1,2年は誰の目にも見えるほどにはならないが、条件が整えば12年」。米大統領選の年である。

 冒頭のヘッジファンドのマネジャーによると、②の過剰流動性が6~7月には国債に向かい、国債バブルを引き起こした。「その行き過ぎが戻るだけで、まあ我々には十分すぎるくらいのリターンが株式市場から期待できるからね」。その眼差しには「次の山」の姿がはっきり見えているようだ。

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