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2010年11月18日 (木)

映画「ゴッドファーザー」と中国のレアアース禁輸の内幕(第518回)

 「ゴッドファーザー」三部作は映画史に燦然と輝く傑作。フランシス・フォード・コッポラ監督。マフィア抗争史だがある家族の歴史でもあり、その家族のキズナは強い。第一作でドンのマーロン・ブランドが射たれ、三男のアル・パチーノが復讐に出かけて二人の男を殺すシーン。トイレに隠しておいた拳銃を探すあたりの緊迫感がすごい。

 そのPARTⅢでは、三男マイケルは父親をしのぐ凄腕のドンになっていて、法王庁もからめた企業買収に乗り出す。そこをマフィアのほかの親分たちの裏切りがあったり、欧州エスタブリッシュメントの意地悪が絡んだりする。

 米中の新冷戦は通貨安戦争だが、内実は国同士の富の争奪戦。もちろん米国はドル安を狙い人民元高を押し付けようとして、先日のG20でも決着がついていない。私は利権をめぐって殺し合いをする「ゴッドファーザー」シリーズのマフィアの親分たちを思い出した。

 中国が持ち出したのはご存知レアアースである。

 かつての最高実力者鄧小平が「中東には石油があるが、中国にはレアアースがある」と言い放った。宝庫は内蒙古。その最大手企業が包鋼レアアースである。この企業は内蒙古支配者の同自治区党書記の胡春華氏で胡錦鋳国家主席の直系。今度同じ胡錦鋳派の山東省のレアアース企業を吸収合併し、この分野の利権をしっかり把握しようとした。

 2012年には胡錦鋳は任期満了で次の習近平に代をゆずるのだが、このレアアース利権の独占に待ったをかけているのが江沢民の影響力の強い江西省。広西チワン族自治区などのレアアース産出地域は前記した包鋼レアアースの独占に反抗している。これで輸出に強いブレーキがかかった。利権の配分にイチャモンをつけているのだろう。

 97%の世界市場を独占する中国は「生産を止める」とは言っていない。温家宝首相は再三再四、この禁輸は行政府の命令でないと述べている。現実には世界的な迷惑、商慣習の無視で、国際ルールなどどこへやら、だ。

 共産党内部の人脈同士の抗争が自動車、電子部品、ミサイルなどの生産をほとんどストップさせている現状。根本は「オレが世界を支配しているんだゾ」という中華意識だろう。

 しかし、マフィアの世界で親分に対し子分がすぐ寝返るように、「中国世界貿易帝国」にほころびが見える。それもメチャメチャに大きなほころびだが。

 第一は異常なまで高まった余剰マネーの引き起こすバブルとインフレ。

 最近人民銀行が発表したマネーサプライ統計によると、1978年のM2(広義マネーサプライ)はたった859億元だった。これが2009年末には60兆6000億元で31年間で705倍に膨らんだ。対GDP比で260%に達した。ちなみに日本のバブル時でも120%。

 余ったカネは株、不動産に流れたが規制で商品取引へ。同時に食糧インフレも始まった。最近月10月の統計では野菜、果物、食用油など31品目のうち24品目が9月比上昇。とくに食用油、インスタントラーメン、シャンプー、洗剤など1ヶ月で20%以上上昇した。日本のかつてと同じで食用油やトイレットペーパーの買占めが発生している。

 もうひとつ。例の巨大ダム三峡が最高水位175メートルに達し、近辺での大型の土砂崩れは40回を越えた。

 1977年に建設された長江大橋は水面との差が縮まり船との衝突は避けられまい。ここでダム壁の亀裂(数千箇所ある)が破裂したりしたら、被害は国土の何分の一、被害者は2億人を越えると推定されている。

 軍と公安警察で押さえ込んでいるこの体制。すぐに崩壊はないだろうが、いつまで続くやらー。

 映画のセリフから。「政治と犯罪は一つのコインの表と裏だ」。また「友情と金は水と油だ」。とも。民主党の前首相と元幹事長たちがもう少し中国をよく勉強してから、政権交代していればー。言ってもせんないか。

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