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2010年11月 9日 (火)

映画「クロッシング」と新冷戦と株・為替(第516回)

 映画「クロッシング」はニューヨークを舞台にした警官もの。犯罪が多発するブルックリンを担当地区にする三人の警察官の物語だ。

 まずサル(イーサン・ホーク)。病気の妻や子供のために、新しい家を購入しようとして悪事に走る。定年直前のエディ(リチャード・ギア)は苦手の新人教育を押し付けられてうんざりしている。またギャング組織に長い間潜入捜査をして来た黒人刑事タンゴ(ドン・チードル)は命の恩人のギャングのボス逮捕というミッションを与えられる。

 この三人はある警官が引き起こした殺人事件をきっかけに出会い、意外で悲惨な結末に向かう。

 いま中国に対し、世界中が「この国は全く異質の国だ」と思い始めたのではないか。ひところは「ダイ・ハード」のマクレーン警部のように不況脱出のヒーローと考えられていたが、この「クロッシング」の三人の警官のように、現実には、不可解な中国政府の言動に悩まされる国が多くなっている。

 日本のことはご存知の通りで、いぜん自分の国の領土的野心を隠そうとしない北京政府には呆れるばかりだ。

 米国でも同じ。最近のワシントン・ポスト紙は親中派の代表だったJ・スタインバーグ国務副長官が「中国の台頭が平和的である」ことを再確認しようとした。ところが「再確認の必要はなく、米国の動きこそ冷戦の再燃につながる」と拒否された、と報じた。

 これで人民切り上げ、貿易黒字、イラン・北朝鮮問題などで見せた中国側の非協力的態度を、ワシントンで弁護する勢力は一掃されてしまった。

 11月4日からのオバマ大統領のアジア歴訪でも、中国は意図的に外されている。また香港のTV局鳳凰衛視が、中国国内を対象に世論調査を行ったところ、84%の中国人が「米中間の新冷戦が始まった」という認識を示した。

 「冷戦」というとかつての米国対旧ソ連の全面対決を想起させるが、「新冷戦」は違う。経済とくに貿易、文化、スポーツなどで交流を深める一方、政治、外交、軍事では是々非々で対立が深まるもの。長期戦と考えるべきだ。

 今回の米FRBの量的金融緩和第2弾(QEⅡ)も、その文脈で考えるべきだ。

 中国の人民元を割安にしたまま自国の輸出を伸ばすという戦略は、世界、とくに米国をデフレに引きずり込むもの。一方QEⅡはデフレ心理を定着させないまま、インフレ期待感をもたせよう、という戦略で、全く好対照だ。

 ということは、QEⅡもQEⅢもありうる。同時に住宅などの資産価格がまだ反転上昇に至らないので、代わりにNY株式市場の株価を上げるという作戦だろう。

 市場内部要因で一押し、と見ているのは変わりはないが、調整は1,2月で、年内はダウ平均1万4000ドル近辺まで突っ走るのではないか。

 米中対立となれば、トクをするのは日本。先日の尖閣問題でも、いまや反中国のトップになったクリントン国務長官が「尖閣は日米安保条約の範囲内」と述べた。

 ヘッジファンドは米政府の動きに敏感だ。「円買い+日本株売り」の戦略を最近完全にストップ。日本株も弱気が多いうちに上昇するだろう。

 映画のセリフから。冒頭である情報屋が言う。「世の中には明確な善悪の境界線など存在しない。”より善”に向かうか”より悪”に向かうか、だ」。米中の戦いがすでに始まっている。株式、為替市場はそれを織り込み始めた。

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