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2010年11月14日 (日)

シェール・ガス革命、世界に飛び火(先見経済11月15日号)

 「石油が発見されて以来、最も重要な出来事」と評されている「シェール・ガス」について今回はご報告したい。

 ことの始まりは米国のチェサピークというベンチャー企業で、2006,7年ごろに別々の用途で開発された技術を総合して「シェール・ガス」を効率よく安価に生産することに成功。これが全米で開発ブームを呼んだ。

 このガスは大きな川の周辺の泥が岩石になった頁岩(けつがん)層に含まれ、地下3000米あたりにある。存在は早くから知られていたがチェサピークの技術で、千立方フィート当たり3~4ドル、石油に換算してバーレル当たり20ドルという安価なエネルギーが大量に発見されたことになる。

 チュー米エネルギー長官によると「米国のガス埋蔵量は2倍になる可能性がある。」現に昨2009年の米国のガス産出量は、ロシアを抜いて世界一になった。

 天然ガスの市場価格は急落し、昨年末の千立方フィート当たり13ドル(史上最高値20ドル)が3ドル台に暴落した。

 それもそうだろう。つい4,5年前まで米国は、国内産出のガス埋蔵量の減少と需要増とで、世界最大の輸入国になる、と見られていた。そこでロシアやカタールなどの中東諸国は、米国向け液化天然ガス(LNG)の輸出施設の拡充を熱心に行っていた。しかし米国が何とガス輸出国に変わる可能性が出てきたことで、このLNGへの投資はムダになる可能性が出てきている。

 この新型ガスの開発競争が始まった。まずシェール・ガスを開発していたベンチャー企業への買収が始まり、第2位のXTOをエクソンが4兆円で買収した。欧州では最有望とされるポーランドではエクソン、シェブロンなどが6月から探鉱を始めた。また中国はシェルとペトロチャイナが四川盆地で調査を開始し、30兆立方メートルと米国の埋蔵量よりややオオメの資源を推定している。

 「要するにこの分野でゲームが根底から変わってしまったのです」とエネルギー専門家は言っている。

 この状況はエネルギー資源を持たない日本には有利だ。

 日本にシェール・ガスは地質学的に存在している可能性は少なく、自前の開発は期待できない。また電力やガス会社も10年以上の長期契約なので、低下しているガス価格の恩恵はまだ受けていない。

 しかしエネルギー価格の低下が全く期待できないというわけではない。むしろ「最大のメリットは消費者」。ガスの供給が増加して価格が低下すれば、契約更改時に買い手側の価格交渉力が増すことは間違いない。また新しいシェール・ガスの開発のため住友商事、三井物産、三菱商事は米国に進出、豊田通商は豪州で投資を開始している。

 この革命の最大の受益者は米国だろう。リーマン・ショックから2年だが、景気回復はいまひとつなのはご存知の通り。11月には米国FRBは量的金融緩和、またオバマ政権はドル安で輸出5割増という非常時体制をしいている。

 そこにガス輸入国から輸出国への転換という大変化が起きつつあるのだから、大きなプラス材料というほかない。

 逆に打撃を受けているのはロシア。欧州へのガス供給の3割を握り、強気の販売姿勢を貫いていたガス大手ガスプロムはユーザー側がスポットものに切り替えて打撃を受けた。最近決算では7%減収、36%の大幅減益を余儀なくされている。

 米国では最近パーティなどで、高い失業など暗い話題が出てなんとなくムードが悪くなると、部屋の片隅から「シェール・ガス!」という声が出る。すぐに明るい雰囲気になって笑って終わり、となるとか。米国発のガス革命の明るいムード。早く日本にも移ってほしい。

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