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2011年1月30日 (日)

映画「RED」と尖閣諸島と財政破綻回避〈第534回)

 「RED」の題意は「途方もなく危険なご隠居たち」。ブルース・ウィルス主演だが、モーガン・フリーマン、ヘレン・ミレン、ジョン・マルコビッチ、リチャード・ドレィファスといった大物に、93歳のアーネスト・ボ-グナインが顔を出した。この顔ぶれで面白くないはずがない。

 引退したCIAエージェントのフランクは、ある夜更けに最新鋭火器で武装した三人のコマンドに襲撃される。これを倒したが、自分が何十回も電話して気を紛らしていたサラが危ないと気付き、暗殺者から救う。

 フランクは80歳を超えた元上司、英国の諜報機関M16の女性名狙撃手、元CIAの同僚などの協力を得て、どうして暗殺されかかっているかを探る。次第に陰謀の全貌が見えてくる。

 平和に暮らしていた老人が、襲撃をきっかけにして、眼が覚めたように巨大組織に挑戦する。

 この映画を見て、昨年9月の尖閣諸島での中国漁船の海上保安庁の巡視船への衝突事件をきっかけに、全ての日本人が中国という国の露骨で自分勝手な強欲ぶりに気付いたのに似ている、と私は考える。

 1960年代、中国は尖閣諸島近辺の海底資源が存在すると判明した時期から、領有権を主張し始めていた。

 この海底には1000億バレル、イラク級の巨大な原油があると推定されている。現在バーレル90ドル、1ドル80円としても720兆円の富がある。

 現在日本が輸入している原油は天然ガスと合わせてGDPの2%強ある。これが海底油田開発でまず支払わずにすむし、輸出に回して外貨を稼ぐことも出来る。

 これをやったのが英国。1975年から商業生産を開始した北海原油は81年末には推定埋蔵量148億バレルの中型油田だったが、輸出の2割、財政の10数%の収入をもたらした。

 最近は生産は減少中で魔術の効き目は弱っているが、それでも30年間、英国は巨大な政府債務の重荷から解放された。

 日本も同じかそれ以上の復活を遂げる可能性がある。

 尖閣は中国と共同開発の約束が出来れば、いいのだが、あの中国の外交姿勢では、交渉のテーブルに着くか、どうか。

 それと平行して日本はメタンハイドレートと海底熱水鉱床の開発がある。この二つがどんなものかは、私の毎日新聞「エコノミスト」1月25日号に書いた論文をこのブログでご覧頂きたい。

 メタンハイドレートは2013年1~3月ごろには世界初のテスト採掘が始まる。日本の天然ガス使用量を見ると、百年分に近い埋蔵量がある。この開発で日本は世界に先行している。まだずい分気が早いと思うので私は推奨しないが、関連銘柄の日本海洋掘削の株価が動き始めた。

 2018年度には海底熱水鉱床の商業システムの段階に入る。

 私は2020年度近辺から、「経済大国」から「技術大国」「資源大国」としての日本に変わると思う。私は日本の将来を信じる。

 映画のセリフから。フランクとサラの会話。「本当は、人間ってやさしいものなのよ。」「オレの経験では、ちがうね。」中国が強欲ぶりを捨てるか、それとも日本は米国を味方にして開発するか。国の将来を、どうするかの時期に入った。

2011年1月27日 (木)

映画「白夜行」と日本国債格下げ(533回)

 ご存知東野圭吾の大ベストセラーの映画化。原作どおりの緊張に満ちたストーリーの展開を、長廻しを多用してじっくりと見せる。

 話は19年前、大阪の質屋の主人が廃屋の中で死体となって発見される。殺された男には愛人があり、その愛人は10歳の娘の雪穂と二人暮らし。疑いはかかるがアリバイがあった。事件は迷宮入り。

 質屋の女房の方にも、10歳の息子の亮司とTVを見ていた、と。この女房は質屋の番頭と不倫の仲だった。刑事たちが調べているうち愛人がガス中毒で死ぬ。

 児童施設で同い年の亮司と雪穂は仲がいい。雪穂が親戚に引き取られるとき、二人は泣いて別れた。

 その後、質屋の番頭が殺され、雪穂の高校時代にいじめた女子生徒は何者かにレイプされるなど不可解な事件が続発する。

 この小説のキーワードは並外れて美しい少女と暗い目をした少年が、全く別の道を歩きながら実はつながっていた、というところだ。

 27日、米格付け会社のS&P社が日本国債の格付けを「ダブルA」から「ダブルAマイナス」に引き下げた。

 何となく気分の悪いニュースで、明日以降のマスコミの騒ぎ方は目に見えているが、私は「またヘッジファンドの仕掛けが始まったな」と見る。格付け会社とヘッジファンドは私に言わせれば一つ穴のムジナで暗黙の了解があるからだ。

 たしかに、日本人のプライドを損ねる事実に違いない。

 S&P社によると

 トリプルA 米、英、スイス、ドイツ、フランス、カナダ、オーストラリア

 ダブルA スペイン

 ダブルAマイナス 日本、中国、台湾、クエート、サウジアラビア

 シングルAプラス イタリア

 シングルA アイルランド

 シングルAマイナス ポルトガル

 えーっ。スペインより下?と誰しも思う。おかしい。経常収支の黒字国、日本なのに。

 だが、大事なことがある。S&P社は一昨年4月に日本国債の格付けを引き上げており、その後昨2010年1月に「格付けを引き下げる方向で検討中」と発表した。

 当時は米バロンズ誌の「日本の落日」特集や日本国債の債務不履行保険料のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のレートが0.4%から0.9%に急浮上。同時に某大手ヘッジファンドは日本の国債の先物売りを開始した。

 これは完全にヘッジファンドの負けで、その後長期金利は当時の1.3%が0.9%台へ下がった。大損失を出したはずだ。

 日本国債は96%が国内で消化され、他国のように投機資金の売りで長期金利急上昇(債券価格急落)にならない。そこいらを読み違えたのだろう。

 今回は菅内閣は与謝野起用に見られるとおり、消費税引き上げやマニフェスト訂正などでバラまき政策を止める方向を打ち出している。

 それでも仕掛けているのは、「どうせ菅内閣は空中分解。次の政権は消費税による財政再建に手がつけられない」というヨミからだろう。

 たしかに、次の格付け引き下げ、つまりAプラスになると問題が発生する。リスクウエイトが20%にカウントされるため、期間投資は日本国債を保有しずらくなるからだ。しかし、それは目先の問題ではない。

 今回の格下げ仕掛けは、恐らく円高、株安で、誰もが考える長期金利上昇と円安ではないのではないか。あくまでも私の推論だが。

 そうでないとここ3週間シカゴ通貨先物市場で円の投機買いが大きく増加しているのが説明つかない。少なくとも、仕掛けの一巡後は、国債の利回りはせいぜい1.3~4%に止まるとみる。

 映画のセリフから。雪穂が自分の過去を振り返って言う。「いつも夜。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。」海洋資源開発を急げば、かつての英国のように、政府の借金を返せる希望は十二分にある。もっと、急げ。

2011年1月25日 (火)

映画「黄金の7人」とオンス6300ドル(?)説〈第532回)

 1965年作の「黄金の7人」はイタリア映画空前の大ヒットで、シリーズ5作までつくられた。アニメ「ルパン三世」のモデル作だ。

 ジュネーブの大手銀行の厳重な大金庫を「教授」と呼ばれる首領と6人の手下が奇想天外な方法で破る。これが「黄金の7人」だ。

 7トンもの金塊を盗み出す鮮やかな手口と、セクシーこの上ないロッサナ・ポデスタ演じるナゾの美女が展開する金塊争奪戦が見もの。

 えっ、といいたくなるようなニュースがあった。米FOXテレビのインタビューで、アラン・グリーンスパンFRB前議長が述べた発言だ。

 ドルの過剰発行についての意見を求められた同氏は「(ドルの過剰発行を防ぐため)金本位制と、金と連動した固定相場制が必要だ。そうしないと過去のから判断してインフレが起こり経済に大打撃を与えてしまう。」と。

 いま米国が保有している金は8134トン(2億6300万オンス)。通貨量は1兆7000万ドルだから、金本位制に戻すとオンス1340ドルだ。まあ今後の増発があっても、オンス4000ドルにはなる計算だ。

 まさか、と見る向きが圧倒的だろう。しかし、金を再認識すべし、との論議そのものは、比較的早くから行われている。

 昨年11月7日、ロバート・ゼーリック世界銀行総裁は英フィナンシャル・タイムズ紙に寄稿した。

 同総裁は「金を通貨価値に対する市場の期待を見る参考指標として重視されていい。経済学の教科書は金を過去の通貨と言っているが、現在の市場は金を一つのマネタリー・アセットとして扱っている」と述べた。大事なのは米国の金融界のリーダーたちの発言であることだ。

 金が通貨の裏づけとして再認識され始めたのは、中国の大量買いの期待。

 ある高官は「今後10年のうちに中国は1万トンを保有する」と目標を述べた。中国がドルに代わって人民元を基軸通貨にさせることを重視しているのは周知の事実だ。

 中国は世界最大の産金国で年320トン生産しているが、市場の最大の買い手でもある。2008年12月末の金保有600トンが、昨年末に1054トンに達していた。今後10年で3000トン生産しても、市場から5千トンは購入しなければならない。

 -だから金はモロ買い、とチョウチンをつけるつもりは毛頭ない。むしろ逆で、1400ドル台はもっともっと時間をかけて次の目標に移るべき、と考えている。

 金の価格は1980年1月21日にオンス875・00ドルをつけた後長期で下げて1999年7月21日に253・20ドルまで下げた。

 その後上昇に転じて1400ドル突破に至ったのだが、前に付いたことのない高値は一つのメドがある。「倍返し」というもので、下げた621・80ドルを高値にたしたところが目標値になる。経験則だが良く当たる。これだと1496・80ドル。もみ合いは長いほうが、抜いた後のはずみがつく。

 結論。現物を長期で持つご投資家には、いまの1300ドル台はおすすめ。しかし短気な方はご辛抱が肝心、と申し上げておこう。もうひとつ、日本は660トンぐらいしかもっていないのだが、海底資源の開発でプラス4000トンは固い、とされている。期待は高まる。

 映画のセリフから。教授がいう。「この通り金塊は完全にうまく手に入った。あとの心配は不測の事態、悪魔のいたずらだ」まあ金の現物買いは利息はつかないものの、財産のひとつとして持っておくべき投資だろう。買う材料は山ほどあるのだから。

2011年1月24日 (月)

映画「昨日・今日・明日」と女性労働力拡大〈第531回)

 映画「昨日・今日・明日」は1963年のイタリア映画の秀作。米アカデミー賞外国語映画賞を獲得した。三つの物語からなるオムニバス映画だが、主演はソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニの二人。監督は名匠ビットリオ・デ・シーカ。

 第一話が傑作。軍隊帰りの夫には職がなく、妻アデリーナのヤミ煙草の街頭販売で生計を立てている。そこに警察の取締りで刑務所に送られそうになる。

 ところがイタリアの法律では妊娠中の女性は、産後6ヶ月まで入所を猶予してもらえる。

 夫婦が考えたのは、次から次へと子づくりに励むこと。出産後半年が経過し警察が逮捕に来ると、アデリーナは医師の妊娠証明を誇らしげに見せる。何と警官は「おめでとう!}と笑顔で帰ってゆくのが、なんともオカしい。

 かくして、夫婦は7人の子持ちにー。それでもますます美しくなってゆくアデリーナ。「作れるだけ、産むわ」とタンカを切る。

 いまの日本。30歳女性で出産経験のない人が50%を超えている。最近5年間の出生率は1.34でしかない。人口維持に必要な出生率は2.08だから、人口は減ってゆく。ご存知の少子化だ。アデリーナのように6人も7人も産んでくれないものか。

 お仕事をしているミセスの方々に聞くと、子供の出産を機に仕事と育児の両立が困難になり、仕方なく離職「する」か「させられる」のだ、という。

 だから女性の年齢別就職率をグラフにすると、30代でガタンと落ち、M字型のカーブになる。

 野村総研のアンケート調査(22年6月)によると「以前は働いていたが離職し、現在働いていない」人の理由は次の通り。(NRIパブリックマネジメントレビユー2010年7月)

 ①仕事と育児の両立を許す職場環境でなかった26.5%②結婚や出産後の退職が慣習となっていたため22.4%③両立を許す家族環境でなかったため13.5%④預かってくれるところがなかった9・4%。以上合計71.4%。

 仕事と育児の両立のため、たしかにいろいろな支援策が講じられてきた。しかしなかなか成果は挙がらない。

 ごく一例が保育所の「待機児童」だろう。いま80万人いる、という。

 解決のため幼稚園と保育所を統合する「幼保一元化」がいわれるが、これがまた遅々として進まない。

 その理由が「保育士の既得権益」にある、という。〈奥谷礼子さんの「ザ・R」)。公立保育所の保育士の年収は800万円。この高サラリーを守るため組合が統一を嫌がる。

 奥谷さんは、働く女性の言い分として、保育所が決まらないため就職活動が阻害されるのが問題だ、とも。

 就職のため子供を預けたいが、就職していないと子を預けられない。「結婚するには結婚証明書を先に見せろ、といっているようなもの」。

 まあ早くこうした問題点を解決し、働く女性へのシワ寄せがなくなることを切望したい。

 前記した野村総研の社会産業コンサルティング部主任コンサルタント武田佳奈さんは「家庭生活サポートサービス産業」の成長を願って、その市場規模を2800億円、今後5500億円まで伸びる。また132万人の労働力確保につながる。

 また上場企業ではダスキン、イトーヨーカ堂(アイワイネット)、セコム、綜合警備保障など。助成制度が望まれる、とも。

 映画のセリフから。字の読めない主人は友人の果物屋に聞く。「例の計算を頼むよ。」。「出産日は?」「10月28日」「うーん、イチジクを売る時期だな。それから6ヶ月。サクランボの季節にキミは忙しくなるぜ。」働く女性が安心して生める社会環境づくりを私は心から願う。日本のために。

2011年1月19日 (水)

映画「ソーシャル・ネットワーク」とオバマ=胡錦鋳会談(第530回)

 映画「ソーシャル・ネットワーク」は近く決定される米アカデミー賞の最有力候補。デビット・フィンチャー監督。

 不特定多数を対象とするマスメディアから、知人・友人関係中心のソーシャルメディアに。インターネットを使った、人付き合いの革命を起こした男を画く。

 2003年ハーバード大学の学生マークはコンピューターの天才。マシンガンのように早口で、コロコロと話題が変わる。ガールフレンドを平気で傷つけ、女の子の品定めサークルを、振られた腹いせにネット上で立ち上げる。これが世界最大のサービス「フェイスブック」に成長してゆく。社会現象を巻き起こし、巨大企業に。

 マークは金儲けや売名に関心が薄く、ドラッグや遊びにも興味が薄い「パソコンおたく」で、未成熟な子供同然。周囲を傷つけ、仲間からも離反されても、たいした打撃にはならない。他人のアイデアをイタダいたり、ハッキングしても罪悪感がほとんどない。

 この主人公を見ていて「まるで中国だな」と感じる人は多かろう。平気でヨソの国の技術を盗み、尖閣列島のあの事件で日本人がみんな理解したように、強欲で身勝手で傲慢だ。

 評論家で中国に精通している宮崎正弘氏のお話を聞く機会があった。以下ご紹介しよう。

 中国の軍部は、実は国家ナンバーワンのはずの胡錦鋳も全てを掌握できていない。行政のトップの温家宝も「お飾り」。

 中国軍部は①総装備部②総参謀 部③総後勤部④総政治 部という四つのタテ割り組織があり、それぞれに武器輸出企業、運輸会社からホテル経営などを通じて利権を奪い合っている。

 宮崎正弘氏によると「中国という国は行政がリンゴの皮、中身が共産党、軍も役人も末端はすべて党に属する。」

 そして党の内部も一枚岩でなく、江沢民率いる上海派、胡錦鋳・温家宝率いる団派、それに習近平を中心とする太子党の三派が、地域ごとに激しくせめぎ合っている。

 こうした中国人は外交とは「官場」、つまり交渉して歩み寄る場でなく、自分たちのパフォーマンス、威張って見せるための場である。

 だからこそ、ウォール・ストリート・ジャーナルに胡錦鋳は訪米前の「いまの国際通貨制度は時代遅れ」とこき下ろした。かつて江沢民がわが国の宮中晩餐会で人民服で出席して威張って見せたのがいい例だ。また陛下に謁見を懇願した習近平がふんぞり返って見せたのも同じ。

 そんな国なのだから、オバマがどんなに米中両国のきずな構築を願っても無駄骨だろう。

 胡錦鋳はNYタイムス紙によると「共産党独裁政治の歴史で、最も弱い指導者」(1月18日付)。

 その前の週、米国ゲーツ国防長官が訪中したタイミングを狙って中国製ステルス爆撃機の試験飛行を公開した。ところが胡錦鋳はこの軍の動きを知らなかった。胡は共産党中央軍事委主席で軍を統率する立場なのに。

 2007年の衛星破壊実験、2009年の中国艦隊による米海軍音響測定船への妨害も、胡・温首脳部は知らされていなかったという。

 たしかに米スコウクロフト元大統領安全保障担当補佐官が嘆いたように「中国軍は開放路線に参画していない」のである。

 今回の訪米で、米中関係の悪化はひとまず終わったように一見、見えるが、現実にはどんどん悪化してゆくだろう。逆に日米関係の緊密化が進行する。

 映画のセリフから。仲間に訴えられ落ち込んだマークに女性弁護士が示談をすすめて、いう。「裁判でも証券の85%は誇張、15%の偽証なの。そして神話には、”悪”が必要とされてあなたは悪人にされるの。」そして映画の終わりに言う。「あなたは別に性格が悪いんじゃないの。ただ、やっていることがひどいだけ。」うーん、ますます中国だ。

2011年1月18日 (火)

新年の日本株見通し「天気晴朗ナレドモ波高シ」(エコノミスト1月25日号)

 「株式投資は必ずしも幸せを持ってきてくれると限らないが、投資をやらなければ幸福感を味わえないーというのも、また事実である。」

 在香港の伝説的投資の名人マーク・ファーバー博士は、年頭に私に送ってきた投資レターでこんな名言を述べた。

 新年の見通しを立てるにあたって、有力ストラテジストの皆さんのご意見を拝見した。強気が圧倒的だ。

 理由はさまざまだが①企業収益の増益が3年続きで見込まれ②米国のQEⅡの影響もあり、アジアを中心とした新興国の株価上昇に対し日本株の出遅れ③円高ドル安は続くが、円高抵抗力はぐんと強化されている、などなど。年末1万2000円以上の目標が多い。

 金融緩和でしかも増益期待というのは、たしかに株高に最適の環境に違いない。

 私もご存知の通り強気で通っている。89年から90年にはメチャ弱気で米ビジネス・ウィーク誌に「東京のビッグ・ベア」と評されたが、2003年の7607円での日経平均のとき以降ずっと強気。毎日新聞社刊「日本株『超』強気論」で「とりあえず2万円」とした。現実には1万8000円台だったからまあ私の勝ちだ。

 現在は「今後、30年以上の株価の長期上昇相場」を主張している。目標値はきめていないが、89年の歴史的高値更新さえも想定している。

 なぜか。2018年以降、海底資源の開発を中心に「資源大国日本」の夢が生まれ、いま四苦八苦している政府予算の財源も相当楽になるはずーと考えているからだ。

 なぜ海底資源か。騒ぎになっている尖閣列島近辺でも1000億バーレルの原油がある。イラク並みの超大型油田だ。

 このほか海底熱水鉱床といって地下にしみこんだ海水がマグマによって熱せられ、地殻中の金属元素を抽出して海中に噴出、堆積させた資源鉱床が、沖縄周辺や伊豆・小笠原諸島周辺海域で見つかっている。ふくまれるのは金、銀、非鉄金属、レアメタルなどだ。日本の使用量から見て資源によっては百年分以上の量がある。

 すでに商用化に向けて開発予定があるのが「メタンハイドレート」である。2012年から日本近海の海底から世界初の採掘試験が開始される。これはメタンが海底の低温、高圧でシャーベット上の氷になったもの。日本の近海に90年分以上のこの資源がある。

 資源開発のおかげで斜陽国が再生、累積政府赤字を軽減した実例がある。第二次大戦後の英国だ。

 旧植民地との英ポンドの交換を割高なレートで強行。米国からの援助ストップ、労働党政権の社会福祉政策による「英国病」。IMFから68年に救済融資を受けるほどだった。

 ところが領海の北海からの原油採掘の75年開始で英国は再生した。輸出と政府収入の20%近くを北海原油が占めるようになるなか、79年に登場したサッチャー首相は前向きの政策をうつ。ビッグバンを敢行、シティを活性化した。

 とはいえ北海原油の魔術は長続きしない。もともと130億バーレルの中型油田だったし、最近は「そろそろ終わり」といわれている。それでも30年続いた。日本の方は、埋蔵原油のケタが違う。もっと長期で、もっと好影響の効果は大きいはずだ。

      日本始まって以来2回目のゴールデンクロス

 このように私は、長期の超大型相場を予想するものの、ことしについては、恐らく後半にNYは「債券安(長期金利上昇)、株安、ドル安」のトリプル安、1987年のブラック・マンデー型の大波乱があると想定している。ないことを切望しているが、不可避だろう。

 その理由は後述するが、その前に、まずは、長期の株価買いサインがすでに出ていることを述べておかなくてはなるまい。

 図に示したのは野村證券金融経済研究所のシニアテクニカルアナリスト山内正一郎さんの明治11年以来の日本株の推移である。

 1928年ごろまでの棒グラフは年間の高安しか分からなかったためでその後は月末値のグラフになっている。

 明治維新から日本が目指したのは「軍事大国」。恐らく国民にはあまりいいことがなかったのだろう。全体としては横ばいのまま、昭和20年8月の敗戦を迎える。

 戦後の焼け跡を私は忘れない。日本中全部が貧しく、絶望し、飢えていた。その中で「いや40年後には日本は世界第2位の経済大国になり、普及率で言うと一家に1台の自動車を持つようになる」と予言したら、まあ誇大妄想狂と扱われただろう。

 しかし、1945年(昭和24年)5月 には長期波動上昇のサインが出ていた。60ヶ月〈5年〉移動平均線が120ヶ月〈10年〉移動平均線を抜いた。「ゴールデンクロス」である。

 この年はお隣の中国に共産党政権が成立、日本は冷戦のいわば最前線として、米国は資本主義国のモデルケースに日本と西ドイツを選んだ。為替レートは360円の円安とし、米国企業の世界最先端技術も安いライセンス料で利用することが出来た。「軍事大国」としての望みの絶たれた日本は、今度は「経済大国」としての道を辿ることになる。

 その結果はどうだったか。

 1949年から89年まで、40年間、株価上昇が続き、日経平均は100円近辺から3万8915円に。行過ぎてバブルが形成され、また半導体、自動車など日本の圧倒的優勢だった分野にクリントン政権のイジメがあり、94年10月にはゴールデンクロスの逆、デッドクロスの売り信号が出た。キメ打ちとなった95年の超円高を経て、日本はデフレに突入する。

 それから13年7カ月、2008年5月に、59年ぶり、日本の株式市場始まって以来第2回目のゴールデン・クロスが発生したのである。

 何が理由なのか。私が調べたら、ちょうどその近辺で日本の技術がカナダとシベリアでメタンハイドレート採掘成功をもたらした。

 日本は世界60位の小さな島国だが、領海と排他的経済水域では世界6位。しかもそこには前記したように豊かな資源がある。

 政府があまりPRしないのは、円がこれ以上買われる材料にされてしまうのでは、と財界が恐れているからだろう。また現在の政権では、先日の船長釈放のように、中国に押しまくられて結局、取られてしまうかも。

 それでも、中国やインドの現在の資源消費の急増ぶりと資源ナショナリズムの高まり、そして日本の労働力の老齢化・少子化を考えると、自国の支配海域内の豊富で多様な資源の活用は大きな意味を持つ。21世紀の20年代以降の日本の見通しに、私は強気だ。

      秋~年末の大波乱

 その長期上昇の過程で、毎年毎年必ず株高が続くわけではない。今年は恐らく秋から年末のどこかで、前記したように1987年のトリプル安に近い市場の大波乱があると考えている。

 なぜブラック・マンデーの再来か。三つの理由が考えられる。

 第一は米・中間で今起こっている「新冷戦」。

 米国の方はQEⅡなどで、自国も含めて世界をインフレ気味にしたい。一方中国は中国で人民元を割安なまま輸出を拡大し、いわば世界をデフレに導いている。最後はドル札をいくらでもすれる米国が勝ちと思うが、中途で波乱がある。それが今年だ。

 なぜか。明2012年は20年に1回の米・中両国の最高指導者の同時交代年だ。米国では今年末から予備選挙が始まるし、現在の情勢から見て、米国から何らかの形で中国にペナルティを与えたい。対中制裁か、為替操作国認定か。一方、中国は中国で、たとえば手持ちの米国国債を大量に売って見せて優位を誇示したがるかもしれない。

 勿論ドル安は人民元高に直結するので本気で売るまいが、わざと市場に判明するような形で米国債売却ショックを与えることはありえよう。

 第二は逆に中国内部の問題の表面化による「チャイナ・ショック」だ。

 金融引き締めの度がすぎてハードランディング、というよりも、食料品中心の価格上昇が背景での社会不安か。

 何しろニンニク、ショウガ、砂糖、食用油、豚肉など。とくにニンニクは2年で実に6倍だ。最近は事情通に聞くと、5,6人集まるとすぐ公安当局がやってきて解散させられるとか。暴動もストライキも空前の水準だし。

 この中国関連ショックのバージョンだが、北朝鮮がらみで、何か発生するかもしれない。金一族の放逐、亡命とか、第三次実験強行に並んでのクーデターや中国の「北」制圧とか。ついでに言及すると、ユーロ圏の騒ぎは限定的だろう。もう市場は織り込んでいる。

 第三の理由が「本命」で、債券バブルの終焉だ。あのリーマン・ショック以降、ともかく安全をと債券へ資金はシフトし、10年もの国債金利は2・04%まで下落した。どう見ても行きすぎだ。

 当然、ここ何ヶ月かの米国の景気回復を期待させる指標を評価し、10年もの国債金利は3・3%まで上昇している。

 今後はどうか。2・7~2・8%のGDPの実質成長率とFRBの目標としている2%直前のインフレ率をあわせると、場合によっては5%台まで行ってもおかしくない。

金利が上昇し債券価格は下落を続けるので、資金の株式市場シフトは続く。しかしある日突然、理論的に割高、と気付いた投資家が売りに転じて、急落が起きる。あるいは米国債の格付けのワンノッチ引き下げかも。

     5~6月には1万2000円

 実は以上の私の懸念は、ブログ「まだまだ続くお愉しみ」〈http://kiyoshi-imai.cocolog-nifty.com/〉の読者はお馴染みだろうが、本稿ではさらに第四の理由、不安の根源についてふれることにする。それは現在のNY株式市場の上昇振りはまだ実体景気と差のある「つくられた株高」であることだ。

 図に示したとおり、NYダウ平均は米FRBのドル発行による資産膨張と、気味の悪いほど符合している。

リーマン・ショック後、FRBは住宅ローン担保証券(MBS)を大量に購入し、FRBの資産は9000億ドルから一挙に2兆3500億ドルに増加した。2010年4月にFRBがMBS購入を停止したら、株価は急落。

 そこでFRBは8月からMBSの元本償還金を市場に投入、この資金を受け取った大手金融機関は株価の指数先物を購入し、NY株価は再び勢いを取り戻す。

 さらにバーナンキFRB議長は「11月から6ヶ月間で6000億ドルの資金を市場に投入する」として株価は戻り新値更新に。これがQEⅡである。

このFRB資金による株買いは、別に違法ではない。1987年のブラック・マンデーの後の大統領行政命令で創設された「金融市場作業チーム」が行っており、財務長官、FRB議長、それに民間金融機関代表と協議して実施されている。

 問題はQEⅡがことし6月までと期限が決まっていることだ。資金供給が止まれば株価下落となるのは、昨年4月以降のNY株式市場の動きを見れば明らかである。

QEⅢを要請する声が高まればいいが、表面しか見えない政治家は多いから、何ヶ月か情勢を見て、ということになり、2010年4月から8月までの株価下落に似た下げが発生するーというウォール街の仕掛け暴落になるかもしれない。その場合は短期で騒ぎは終わることになる。

結論。世界の景気は新興国中心に好況持続で金融緩和、企業収益上昇期待で明るい1年になる。5~6月ごろには日経平均1万2000円は固い。晴天である。

 しかし秋には波乱必至。やはり「波高シ」ではないか。     

2011年1月13日 (木)

映画「相棒 劇場版Ⅱ」と与謝野氏入閣と株〈第259回)

 「相棒 劇場版Ⅱ」はご存知テレビの人気シリーズ。警視庁「特命係」という失敗を犯したものが着任するまあヒト捨て場で、へんくつで紅茶好きの杉下警部と若くて一途な神戸警部補の二人が在籍。勿論たいした仕事は与えられない。

 ところがこの特命係が明快な推理で難事件を解決するから面白い。

 劇場版Ⅰは2008年で大ヒット。今回も何週間も興行収入トップを続けている。いい出来で、一見をおすすめする。

 お話は込み入っている。まず7年前にテロリスト摘発のための捜査失敗で退職した元刑事がなんと警視庁本部ビル内に潜入、定例会議の最中だった警視総監以下12名の警視庁幹部を人質に立てこもる。

 機動隊の突入で12人は無事保護されたが、犯人はその直前に発砲され死亡。なぜか警視庁は形式的な事情聴取だけで、穏便に素早く処理しようとしている。特命係が動き出す。

 映画の舞台は政界、官界の奥の奥の深い闇で、陰謀が渦巻く世界。その中で1月13日「たちあがれ日本」の与謝野馨氏の改造内閣への参加が決まった。仙谷官房長官が枝野氏に代わるなども。映画と共通点が多い。

 私の聞くところでは菅直人首相は確固とした政見がなく「グラ菅」なので、仙谷氏がまる投げされて拙劣な結論を出すーということの繰り返しだった。

 与謝野氏は昔から「党僚」といわれる位、官僚との関係が深く、菅内閣を含めた民主党の欠陥を補う役だろう。

 しかし一般的には与謝野氏というと、消費税引き上げ論者として知られている。菅総理の6月から消費税引き上げ論議を開始する、との発言もあり、2,3年先の増税実施を市場は織り込みに入ろう。

 まず為替。増税で長期的には年金問題や財政バランスの改善はプラスだが、これで内需はもうダメ、せっかく景気の上り坂への傾向にブレーキがかかる。デフレ再燃、円高となる。

 勿論これは株安につながる。このところの株高は、円高が一服して小幅円安が続き、米国株の堅調と欧州の国債入札の不安感のヤマ越えしたのを好感したものだ。ごく目先は円高、株安だろう。

 ただ、私が注目している海洋資源開発関連株に明らかに胎動が見られる。私は押し目を買いましするつもりだ。

 私の見方は1月17日発売の週刊「エコノミスト〈毎日新聞社)でくわしく書いた。ご覧いただければ幸いだ。勿論このブログでもご紹介するが、やはり雑誌発売後、少し(1,2日)はおいてからになる。お急ぎの方は、雑誌をお買いください。

 映画のセリフから。警察庁幹部が言う。「米ソ冷戦終結後、公安部の存在は軽くなった。この辺で大手柄を立てて、その重要性を再認識させなくては。」増税で増える政府収入がどう使われるか、よーく国民は監視しなくては。

2011年1月11日 (火)

映画「アンストッパブル」と中国の国家としての不安(第528回)

 「アンストッパブル」はトニー・スコット監督、デンゼル・ワシントン主演の快作。只今ヒット中だ。

 大量の危険物資を積んだ無人の貨物車777号が、整備員のミスから走り出し、コンピューター制御も効かず加速してゆく。この暴走列車はどんどんスピードを上げ、停止のための装置は全く効かない。

 同じ路線で旧式機関車の1206号を走らせていたベテラン機関士フランクと新米車掌ウィルの二人は、777号の最後尾に自分の機関車を連結させ、暴走貨車を止めようとする。

 フランクはリストラで解雇を告げられており、あと3週間の任期だが、10万人の死者が出そう、と聞かされ奮起する。

 暴走し誰も止められない全長800メートル、39両の大編成の列車。これに似て誰もが恐怖感を持つのが、中国政府のここ1年余りの高圧的なまた独裁的で押し付けがましい姿勢だろう。

 初めは昨年7月のASEAN会議で楊 外相が南シナ海での領土紛争の解決交渉に米国の関与を望む東南アジア諸国に対し「中国は大国であり、ほかの諸国は小国である。単なる事実だ」と述べた。

 9月の尖閣諸島での呆れるほど無法ぶりは、日本人全員が唖然としたに違いない。フジタ社員の監禁とかレアアースも含めて。

 15年間の「微笑外交」を台無しにしたのが、12月のノーベル平和賞の劉暁波氏の受賞に対する反発ぶりだ。オスロの授賞式に出席しないよう働きかけまで行った。

 私の知っている大手商社の中国通は「もともと中国はそんな国なんですよ」とニベもない。「そこに鳩山前首相が尖閣の埋蔵原油についてうんと甘いことを言ってしまったから、9月に仕掛けたんです」と。沖縄についてのあの無責任と甘ちゃんぶりを考えれば、うーん、そうかも。

 このままどんどん中国が大きくなり、あと何年かすると米国も抜く。となると「日本の成長を必死になって米クリントン政権が押さえ込んだように、中国に対しオバマ政権は何かするんじゃないか」と、私は考える。

 QEⅡみたいな量的金融緩和は中国のインフレを悪化させるし、これを押えるために利上げすれば、ヤミルートで資本が流入。人民元の切り上げ圧力が高まる。

 結局、バブルがいっぺんに弾けるようになれば、快哉を叫ぶ人は、日本だけでなく米国のほうが多かろう。私はかつて中国株で投資資産を5倍にしたが、もう中国株はやめる。

 中国の成長への厳しい告発文が昨年12月の「中国日報」に掲載された。筆者は中国人民銀行の元通貨政策委員余永定氏。

 将来への脅威として①社会的緊張の高まり②環境汚染③公共サービスの欠如(ズバリいえばワイロ)④過度な輸出依存⑤不動産への過度な投資依存、を同氏は挙げた。

 「いま中国は成長のための潜在力をほぼ使い果たした。中国は重大な岐路にあり、痛みを伴う構造調整がなければ、経済成長の勢いは突如失われかねない。」、そうかも。

 ごく一例。中国紙「大紀元」によると地下鉄。

 対先日北京で一気に5本の地下鉄が開通し、総距離は300kmに達した。現在でも20以上の都市で建設。2006年に10本の地下鉄路線だったが、現在37本で2015年に85本。

 同紙のよると「交通渋滞緩和のために地下鉄がつくられたのではなく、『地下鉄があると一流都市になると党幹部が思っているから』である。」

 ほとんどの地下鉄は赤字。また路線の地価を吊り上げ、不動産価格上昇に拍車がかかった。いやはや、である。(私の言うことはいつも早すぎるので、そこはご注意だが)

 映画のセリフから。鉄道会社の幹部が言う。「少し先に大きなカーブがある。近くに住宅地域があるんだ。」映画では決死的な機関車連結でブレーキがかかり、車体は斜めになるが、何とか奇跡的に曲がりきる。中国がこのカーブを曲がりきれるか、どうか。

2011年1月 7日 (金)

映画「白いリボン」とテン・サプライズ〈第527回)

 映画「白いリボン」は2009年カンヌ映画祭でグランプリ。近く発表されるアカデミー賞外国部門の最有力候補の秀作。ミヒヤエル・ハネケ監督。

 舞台は第一次世界大戦直前の北部ドイツの農村。大地主の男爵を中心に人々が静かに暮らすプロテスタントの村に、奇妙で不思議な事件が次々に発生する。医師が乗馬中に張られた針金で落馬、荒らされたキャベツ畑の放火、子供の失踪など。それぞれの事件が村の空気を変え、村人たちの素の顔が次第に明らかに。そして魔物の足音が聴こえてくる。

 これはクライム・サスペンスの形をとった人間の本性を暴く現代映画。ひとつひとつの犯罪は明かされないが、逆に恐怖が高まる。

 「白いリボン」は無垢と純潔を強制する因習の象徴。少年がこれを外すころに、ナチス・ドイツの興隆で今度は右腕に隊章がつけられる。

 2011年が始まった。この映画のように、何か大きな変化が起きる予感がする。例年のように著名ストラテジストのバイロン・ウィーン氏の「10サプライズ」が発表された。

 同氏はブラックストーン・グループの副会長。1986年以降「世の中の人が三分の一未満でしか起こらないと信じている事柄だが、ウィーン氏が70%の確率で起きると確信しているもの」をサプライズとして発表している。的中率は高く信者は多い。

 ただし、2010年の同氏の予想はあまり適中率は高くなかった。「米国経済は5%超の高成長で失業率は9%以下へ。FRBはこれを受けて第二・四半期から短期金利を引き上げて2010年末には2%へ。つれてドル高・円安で円レートは100円を超え、日経平均は1万2000円へ」。

 そうはゆかず米国景気の回復を維持するために、ブッシュ減税継続やQEⅡが決まり、ゼロ金利脱出はまだ先のこと。ご存知の通りだ。

 2010年について述べた強気見通しが、今年に再び繰り返されている。

 「ブッシュ減税や失職者への補助などで米国人のムードは好転、実質GDPは5%に接近し失業率は9%以下になる。」

 「財政収支の大赤字は米国国債金利の上昇を招く。10年もの国債金利の5%接近。」

 「株価はS&P500種で1500に迫り、企業収益上昇、M&A活発化で株式市場は人気絶頂。ただ年後半には長期金利上昇を嫌気して株価は調整。」

 「インフレ・ムードは高まる。外貨準備が多い国は金を購入。価格はオンス1600ドルを超える。」

 「中国は金融引き締めもあって経済成長は10%以下に、インフレ率を4~5%以下に。同時に中国は人民元をその一部にした基軸通貨のバスケット方式をドルの代役として推進。最後は人民元高。」

 「住宅は60万個以上の新設を見込み、ケース・シラー住宅価格指数は回復へ。」

 「商品価格は上昇。新興国需要は旺盛でトウモロコシ8ドル、小麦10ドル、大豆16ドル(ブッシェル当たり)。原油はバーレル115ドル。」

 「オバマ大統領はアフガニスタン、イラクからの撤兵を進め、中近東は米国勢力がいなくなる。テロ勢力が横行する。」

 「独メルケル首相の指導で、ユーロ地域の財政再建は進む。」

 今回は「追加10」として①パキスタンと北朝鮮のトラブルは激化②金利上昇でドル=対ユーロ、対円で上昇、日本経済は回復へ③サラ・ペイリンがティーパーティー派の支持もあり共和党候補としての地位を固める。対抗はペリー・テキサス州知事。オバマは再選へ、など。

 私の見方とずい分重なることは、このブログの読者ならお分かりだろう。別に知り合いだからといって、打ち合わせしているわけではありませんよ。念のため。そのせいか、今回は少しもサプライズではないのだがー。

 映画のパンフの中で、レンバッハの詩が紹介されている。「世界は壊れない。大人たちは言った。(しかし)あなたちは感じていた。世界は壊れていると。ただそれを言葉にするすべを知らなかった。」今の時期に必要なのは、正しい時代認識だろう。

ところで、ホンモノのサプライズがあった。北京市が自動車販売の制限を始めた!買い手は過去5年、各種の税金を完納し社会保険料も支払っているものに限られる。これで自動的に1000万人が資格を失う。また新車交付受付は24万台に限定する。ホンキで、中国は景気抑制に乗り出した。

この北京の新車制限は広州,深せんなどにも広まりそう。来年は首脳部の交代、その前年は従来は低成長だった。今回もそうらしい。中国株は、当分、お休み、と見る。

2011年1月 4日 (火)

2011年の景気はどうなる(先見経済2011年1月15日号)

今年の景気はどうなりますかと聞かれると、私の事務所は個人企業ですから、細かい成長率の数字なんかはムリです。その代わりに前の年の見通しをピタリと当てた個人か研究所の見通しを信用しています、と答えることにしている。 

私の経験では、予測の世界では肩書きも有名度も関係ない。前回予想を適中させた方がまたヒットを打つ確率の方が、前回凡打、三振のところが急に適中する確率よりずっと高いのである。

国内景気は三菱UFJ証券景気循環研究所長の嶋中雄二さんがずっと当たり続けている。嶋中さんによると「踊り場の底は2010年10月、2011年は再び景気は加速化する」。 

同じ結論は、やはり的中が続いているスフィンクス・リサーチの代表取締役藻谷俊介さんで、この人はデフレ脱出も近いと見ている。

 一方、私が世界景気と株価で注目しているのはクレディ・スイス証券チーフ・エコノミストの白川浩道さんだ。注目される点が多いので、くわしくご紹介しよう。

最近のレターで「株価は長期的な上げ相場に」と題して白川さんはこう書いた。

 「世界景気は向こう4年半から5年は回復基調を続けると見られ、株価は向こう4年程度上げ相場。」

 この強気の理由の第一は米国経済の景気回復。とくに米国企業がリーマン・ショックを契機に雇用面でのゼイ肉を落とし、労働生産性を高めることに成功した。政府やFRBは10%近くの失業率への懸念を表明しているがこれはポーズ。労働生産性の上昇のおかげで給料は増加している。

 中間選挙での大敗でオバマ政権は富裕層に対する増税は見送るなど、平等社会志向を修正、再び競争社会志向へ。これは経済の先行きにプラス。

 第二の強気の理由はアジアやラテン・アメリカなど新興国経済の成長が、途切れそうにないこと。

 ドル過剰流動性が新興国経済のインフレ圧力を高め、急激な金融引き締めによってハードランディングーという懸念が言われているが、それは杞憂だろう。中国もブラジルも投機抑制を打ち出しているし、インフレ圧力もまだ懸念するほど大きくない。

 第三の理由は世界的な金融緩和状態が強まっており、長期金利は低位安定、景気回復を助ける。

 例外は財政危機の直面しているギリシャ、アイルランドなどユーロ圏の小国だが、こうした財政事情の悪い国の存在はプラス材料。金融緩和は長引き、バランスシートが健全の国の今後好景気が長期化する。

 ユーロ圏のGDPは1100兆円で日本の2倍あるが、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペインを加えても180兆円。4カ国がずっとゼロ成長を続けても(その可能性は低いが)ユーロ圏全体では2.5%は固い。悪い水準ではない。

 世界経済が回復基調なら日本経済も同じ。ひところ韓国企業の台頭や円高進行で、日本の競争力低下が心配されたが、多くの優良企業は良い決算内容だった。日本企業のマインドはこれから改善傾向に向かうだろう。

 白川さんが「4,5年」というのは1970年代以降の40年の世界経済の景気循環を調べて見ると、次の二点が判明したからだ。

 第一に景気後退から次の景気後退までのワンサイクルは7~10年。また第二に過去の全ての世界景気後退は中東がからんだ戦争、または米国の景気後退によって引き起こされている。

ということは米国景気の後退がない限り世界経済は、少なくともこれから4年は景気回復、上昇局面が続く。当然、株価も上昇、ということになる。私も同感なのでご紹介した次第だ、

中国「金保有1万トン」宣言の衝撃(選択2011年1月号)

 去る11月30日、中国国務院の通貨担当者で国有重点大型企業幹事会の李暁南主席は中国の金保有量1054トンを「3~5年以内に6000トンに、また8~10年以内に1万トンにする」意向を表明した。

 この金の大量購入方針は、金市場はもとより通貨取引市場でも大きな反響があった。1万オンス1460ドルという歴史的高値をつけ、その後も大きくは値下がりしていない。

 もちろん、金への投資は現時点では投機である。1976年1月のIMFの金を通貨として認めないという“金廃貨”の決定がなされ、1980年にオンス875ドルの高値が付いたものの長い間金価格は下降の一途。ついに99年には252ドルまで下落する。

 この金価格下落は主要国の中央銀行の保有金売却が主因。理由は①90年のドル高で「保険」としての金の存在意義が薄れた。②高金利時代に入り金利の付かない金投資が不利になった、ため。

しかし基軸通貨である米ドルが、リーマン・ショックに続く短期金利ゼロ時代に突入し、量的金融緩和や空前の財政赤字もあってドル安は必至。つれて2009年に世界の公的保有の金は2万9600トンを底に、2010年9月末現在3万600トンまで増加した。かつては3万6000トンあったものが6000トン売却され、そこから1000トン、公的保有が増加したことになる。

 どの国が買ったか。2008年末と2010年9月末と比較すると①中国が454トン増の1054トン②ロシアが230トン増の726トン③インドが200トン増の558トン、が目立つ。外貨準備の中で、ドル神話が崩壊、各国中央銀行がどんなときでも価値がゼロにならない金を見直さざるを得ない。

「まだ年間数字は出ていないがIMFやECBなどの売却を吸収して、22年ぶりに中央銀行が売り手から買い手に転換したことは間違いない」と金アナリストは言う。

 というのも11月8日、世界銀行ロバート・ゼーリック総裁は、為替市場を正しい方向に向かわせる指針として「新しい形の金本位制の採用を検討すべき」とする意見を英国フィナンシャル・タイムス紙に寄稿した。

 内容を見ると、単純な金を通貨の裏づけとして持つのでなく、価値基準の指標にする、ということだ。しかし、この機構が金保有の少ない国に、金買いの意欲をかきたてたことは間違いない。

      「10年で1万トン」の意味

 冒頭に述べた中国高官の1万トンと言う目標保有量は、実は「人民元が米ドルに代わって世界の基軸通貨になる」という宣言に他ならない。時期は8年から10年後。

 金の保有の世界トップは米国で、8134トン。かつては2万トン保有していたが、ベトナム戦争などが米国経済を圧迫、米国は金を放出して現在の状況になった。この間、1971年のニクソン大統領の、ドルと金の兌換  停止宣言があったのは、ご存知の通り。

 中国の「1万トン」は米国を通貨面でも抜くという意味に他ならない。

 中国は山東省中心に金鉱山があり、世界最大の産金国で2010年の推定生産量は320トン。現在の1054トンにプラスして、10年間間の生産を年320トンなら10年後に4254トン。残る6000トンは市場からの購入になる。

 では金は価格目標としてどの程度が見込めるのか。6月13日のNYタイムムス紙は「1980年のオンス875ドルをその後のインフレで修正すると2350ドル」として、まだ上値が50%以上あるとした。また「ITブームの時のナスダック,住宅ブームのときの米住宅関連株の上昇は11年間続いたが、金は6月現在で8年半」とした。またウォール・ストリート・ジャーナル紙は「中国が本気で買い出動すれば、金もレアメタル化(希少資源化)してしまうだろう」という業界関係者の言葉を掲載した。

 中国政府自体は、価格上昇の理由に自国がなることを歓迎していない。最近中国人民銀行 鋼副総裁は「急激な市場価格上昇を煽る様なことはしない」と記者会見で述べた。しかし同時に「現在の金保有が外貨準備に占める比重は1%に過ぎない」と今後の購入意欲を表明することも忘れていない。

 大切なのは「2010年に人民元がドルに代わると基軸通貨になる」という目標があることだ。

 基軸通貨の役割は三つ。まず建値通貨で、たとえば金でも原油でもドル表示。次が決済通貨で各国同士の貿易取引は最終的には銀行間の決済になる。この市場は24時間動いており、何らかの事情で資金が不足したときには中央銀行が融資する。ちなみに現在世界でただひとつBA(バンカーズ・アクセプタンス)市場があって決済が行われるのはニューヨークで、NY連銀が責任を持っている。ユーロにはこれがない。

 そして第三には準備通貨で、これはそれぞれの国の貿易取引に応じてドル、ユーロ、円などを保有する。

 この基軸通貨の役割を人民元が達成するには、たとえば国債資本市場において人民元建てで資金調達できるとか、貿易に加え投資でも人民元が使えることで為替リスクとコストを減らせるように完全な自由化が必要になる。

 中国には日本円の国際化を研究して、基軸通貨に到達するため三つの段階が必要、とする研究資料がある。

 それによると①国境を接する周辺国での用途を限定した国際化②貿易と投融資に人民元通貨圏を形成③完全な国際化が達成され資本取引の自由化と自由な兌換   性が実現し、国際決済通貨であり国際準備通貨として米ドルにとって代わる。現在はこの②の入り口で、上海にBA市場が開かれる予定だが時期は明確でない。しかし、この第三段階が現在から10年後、という目標が決まっていることは現実である。

 人民元の基軸通貨作戦は2010年後半に加速化している。人民網モバイルニュースによると銀行間市場公益商協会の時文朝秘書長は「次の段階では国内の人民元市場の対外開放を加速化してゆく。外国機関による国内の人民元建て債券(パンダ債)の発行範囲を拡大する」と述べた。

 現時点では世銀とアジア開発銀行による起債が銀行間市場で行われているだけで、発行量も小さい。しかし今後は信用格付けが高くない外国事業会社にも開放される。従来のペースからこの開放は2013年のはずだった。

 また11月から中国はロシアのルーブルと人民元の取引を開始した。これまで中国の外為市場では米ドル、香港ドル、円、ユーロ、英ポンド、マレーシア・リンギットの6通貨だったが、これにルーブルが加わった。同時に中国は香港で人民元建て国債を発行する計画を発表した。また中国とロシアの取引は米ドルで決済されているが、これを人民元とルーブル決済に切り替える。計画は着々とベースをはやめている。

2011年1月 1日 (土)

映画「ロビン・フッド」と新年の見通し(第526回)

新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。

「ロビン・フッド」はリドリー・スコット監督、ラッセル・クロウ主演の「グラディエーター」コンビの最新作。ヒット中だ。

12世紀の英国。十字軍遠征から帰国中のリチャード獅子心王が戦闘中に落命。王冠を母国にもちかえる役割の領主はフランスのスパイに闇討ちされ、ロビンがうけつぐ。

身分制の下、兵士のロビンは王冠を王に渡すには身分を詐称しなければならない。殺された領主の身分に。父親に剣を返してくれと頼まれたロビンは、盲目の父親の領主に頼まれて領主の替え玉になる。

暴君ジョンは財政が破綻しているので一段の重税を宣言。フランスのスパイは国内の不満を募らせるため、搾取。そこへフランス軍が侵攻して、ロビンは国を守るために立ち上がる。

新年にあたり有力ストラテジストの皆さんの見通しが揃った。強気が圧倒的だ。たしかに企業収益の増加プラス金融緩和というのは、株高には、理想的な環境だ。

私は、このブログの読者がご存知の通り、「今後20~30年の長期株高」を予想している強気論者だが、今年は上昇過程の間の、避けがたい大波乱があると考える。

時期はわからないが、私の経験からみると秋から年末のどこか。NY発だろう。

債券安(金利高)、株安、ドル安のトリプル安。1987年型。その場合円レートは70円台に突入し、そこが長い間の円高の終わりだろう。日本の株価の下げは、NY株に比べて小幅に止まるだろう。

なぜトリプル安か。三つの理由が考えられる。

第一は米中の新冷戦。米国はQEⅡなどで、自国も含めて世界をインフレ気味にしたい。中国のほうは人民元を割安にしておいて、世界中にデフレを輸出している。

両国とも、政治サイクルは年末の激突を予見させる。

両国とも2012年は首脳の交代がある。米国では今年末には予備選挙が始まるので、ワシントンの政治情勢は、中国叩きを後押しする。中国のほうは何らかの形で、優位を示しておきたい。

ドル安になるので、本気で叩き売りはしないだろうが、手持ちの米国債を売却して、米国を困らせるかも。

米国債の格付け引き下げが契機になるかもしれないし、米国による中国の為替操作国認定かも。

まあこういうムシリ合いみたいな騒ぎは、騒音は大きいが、短期で終わる。

第二は中国内部の問題表面化による「チャイナ・ショック」だ。

食料品の値上がりはひどい。ニンニク、ショウガ、砂糖、食用油、豚肉など、ひどいものは実に6倍になった。ストライキも暴動も空前の水準だし。

この中国関連のバージョンとしては「北」の金一族放逐とかクーデターとか、第三次核実験のからんでのモメ事とか。

第三の「本命」は債券バブルの終焉。リーマン・ショック以降、ともかく安全性を、というわけで長期金利は2.04%まで下落した。

その後QEⅡと、景気の回復を予想させる指標への高い評価とで金利は3.3%まで上昇している。2%台後半の成長率と2%のインフレを考慮すると5%でもおかしくない。

債券価格は下落を続けるので、株式市場への資金シフトは続くが、ある日突然、理論的に割高,と気が付いた投資家が売りに転じて、急落が起きる。

2007年当時、悪い材料が見当たらない、として「ゴルディロツク〈ちょうどいい温度のスープ〉」と言う言葉が流行したし、ブラツクマンデー直前も楽観ムードが支配的だった。1989年の日本もおんなじだった。だから、1990年に私が長期のしかも大幅な株価下落を予想して、一流経済誌に発表したときには「何というバカなことを言っているんだ」と評判が悪かった。

私は今年中に起きる買いチャンスに、株と為替に本気で買い出動する。具体的な銘柄はいずれ別の機会に。

映画のセリフから。ロビンがジョン王に言う。「王様が自分の恣意で何でも決められる、というのは誤りだ。法律に基づいた自由を国民に与えてください。そのためにはルールをきめる憲章を書くことが必要です。」その後十年あとだが、マグナ・カルタが決められ、ジョン王はサインする。

株価には金利から水準を判断するという、いわばルールがある。私の警戒感はそのルールからのものだ。

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