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2011年1月18日 (火)

新年の日本株見通し「天気晴朗ナレドモ波高シ」(エコノミスト1月25日号)

 「株式投資は必ずしも幸せを持ってきてくれると限らないが、投資をやらなければ幸福感を味わえないーというのも、また事実である。」

 在香港の伝説的投資の名人マーク・ファーバー博士は、年頭に私に送ってきた投資レターでこんな名言を述べた。

 新年の見通しを立てるにあたって、有力ストラテジストの皆さんのご意見を拝見した。強気が圧倒的だ。

 理由はさまざまだが①企業収益の増益が3年続きで見込まれ②米国のQEⅡの影響もあり、アジアを中心とした新興国の株価上昇に対し日本株の出遅れ③円高ドル安は続くが、円高抵抗力はぐんと強化されている、などなど。年末1万2000円以上の目標が多い。

 金融緩和でしかも増益期待というのは、たしかに株高に最適の環境に違いない。

 私もご存知の通り強気で通っている。89年から90年にはメチャ弱気で米ビジネス・ウィーク誌に「東京のビッグ・ベア」と評されたが、2003年の7607円での日経平均のとき以降ずっと強気。毎日新聞社刊「日本株『超』強気論」で「とりあえず2万円」とした。現実には1万8000円台だったからまあ私の勝ちだ。

 現在は「今後、30年以上の株価の長期上昇相場」を主張している。目標値はきめていないが、89年の歴史的高値更新さえも想定している。

 なぜか。2018年以降、海底資源の開発を中心に「資源大国日本」の夢が生まれ、いま四苦八苦している政府予算の財源も相当楽になるはずーと考えているからだ。

 なぜ海底資源か。騒ぎになっている尖閣列島近辺でも1000億バーレルの原油がある。イラク並みの超大型油田だ。

 このほか海底熱水鉱床といって地下にしみこんだ海水がマグマによって熱せられ、地殻中の金属元素を抽出して海中に噴出、堆積させた資源鉱床が、沖縄周辺や伊豆・小笠原諸島周辺海域で見つかっている。ふくまれるのは金、銀、非鉄金属、レアメタルなどだ。日本の使用量から見て資源によっては百年分以上の量がある。

 すでに商用化に向けて開発予定があるのが「メタンハイドレート」である。2012年から日本近海の海底から世界初の採掘試験が開始される。これはメタンが海底の低温、高圧でシャーベット上の氷になったもの。日本の近海に90年分以上のこの資源がある。

 資源開発のおかげで斜陽国が再生、累積政府赤字を軽減した実例がある。第二次大戦後の英国だ。

 旧植民地との英ポンドの交換を割高なレートで強行。米国からの援助ストップ、労働党政権の社会福祉政策による「英国病」。IMFから68年に救済融資を受けるほどだった。

 ところが領海の北海からの原油採掘の75年開始で英国は再生した。輸出と政府収入の20%近くを北海原油が占めるようになるなか、79年に登場したサッチャー首相は前向きの政策をうつ。ビッグバンを敢行、シティを活性化した。

 とはいえ北海原油の魔術は長続きしない。もともと130億バーレルの中型油田だったし、最近は「そろそろ終わり」といわれている。それでも30年続いた。日本の方は、埋蔵原油のケタが違う。もっと長期で、もっと好影響の効果は大きいはずだ。

      日本始まって以来2回目のゴールデンクロス

 このように私は、長期の超大型相場を予想するものの、ことしについては、恐らく後半にNYは「債券安(長期金利上昇)、株安、ドル安」のトリプル安、1987年のブラック・マンデー型の大波乱があると想定している。ないことを切望しているが、不可避だろう。

 その理由は後述するが、その前に、まずは、長期の株価買いサインがすでに出ていることを述べておかなくてはなるまい。

 図に示したのは野村證券金融経済研究所のシニアテクニカルアナリスト山内正一郎さんの明治11年以来の日本株の推移である。

 1928年ごろまでの棒グラフは年間の高安しか分からなかったためでその後は月末値のグラフになっている。

 明治維新から日本が目指したのは「軍事大国」。恐らく国民にはあまりいいことがなかったのだろう。全体としては横ばいのまま、昭和20年8月の敗戦を迎える。

 戦後の焼け跡を私は忘れない。日本中全部が貧しく、絶望し、飢えていた。その中で「いや40年後には日本は世界第2位の経済大国になり、普及率で言うと一家に1台の自動車を持つようになる」と予言したら、まあ誇大妄想狂と扱われただろう。

 しかし、1945年(昭和24年)5月 には長期波動上昇のサインが出ていた。60ヶ月〈5年〉移動平均線が120ヶ月〈10年〉移動平均線を抜いた。「ゴールデンクロス」である。

 この年はお隣の中国に共産党政権が成立、日本は冷戦のいわば最前線として、米国は資本主義国のモデルケースに日本と西ドイツを選んだ。為替レートは360円の円安とし、米国企業の世界最先端技術も安いライセンス料で利用することが出来た。「軍事大国」としての望みの絶たれた日本は、今度は「経済大国」としての道を辿ることになる。

 その結果はどうだったか。

 1949年から89年まで、40年間、株価上昇が続き、日経平均は100円近辺から3万8915円に。行過ぎてバブルが形成され、また半導体、自動車など日本の圧倒的優勢だった分野にクリントン政権のイジメがあり、94年10月にはゴールデンクロスの逆、デッドクロスの売り信号が出た。キメ打ちとなった95年の超円高を経て、日本はデフレに突入する。

 それから13年7カ月、2008年5月に、59年ぶり、日本の株式市場始まって以来第2回目のゴールデン・クロスが発生したのである。

 何が理由なのか。私が調べたら、ちょうどその近辺で日本の技術がカナダとシベリアでメタンハイドレート採掘成功をもたらした。

 日本は世界60位の小さな島国だが、領海と排他的経済水域では世界6位。しかもそこには前記したように豊かな資源がある。

 政府があまりPRしないのは、円がこれ以上買われる材料にされてしまうのでは、と財界が恐れているからだろう。また現在の政権では、先日の船長釈放のように、中国に押しまくられて結局、取られてしまうかも。

 それでも、中国やインドの現在の資源消費の急増ぶりと資源ナショナリズムの高まり、そして日本の労働力の老齢化・少子化を考えると、自国の支配海域内の豊富で多様な資源の活用は大きな意味を持つ。21世紀の20年代以降の日本の見通しに、私は強気だ。

      秋~年末の大波乱

 その長期上昇の過程で、毎年毎年必ず株高が続くわけではない。今年は恐らく秋から年末のどこかで、前記したように1987年のトリプル安に近い市場の大波乱があると考えている。

 なぜブラック・マンデーの再来か。三つの理由が考えられる。

 第一は米・中間で今起こっている「新冷戦」。

 米国の方はQEⅡなどで、自国も含めて世界をインフレ気味にしたい。一方中国は中国で人民元を割安なまま輸出を拡大し、いわば世界をデフレに導いている。最後はドル札をいくらでもすれる米国が勝ちと思うが、中途で波乱がある。それが今年だ。

 なぜか。明2012年は20年に1回の米・中両国の最高指導者の同時交代年だ。米国では今年末から予備選挙が始まるし、現在の情勢から見て、米国から何らかの形で中国にペナルティを与えたい。対中制裁か、為替操作国認定か。一方、中国は中国で、たとえば手持ちの米国国債を大量に売って見せて優位を誇示したがるかもしれない。

 勿論ドル安は人民元高に直結するので本気で売るまいが、わざと市場に判明するような形で米国債売却ショックを与えることはありえよう。

 第二は逆に中国内部の問題の表面化による「チャイナ・ショック」だ。

 金融引き締めの度がすぎてハードランディング、というよりも、食料品中心の価格上昇が背景での社会不安か。

 何しろニンニク、ショウガ、砂糖、食用油、豚肉など。とくにニンニクは2年で実に6倍だ。最近は事情通に聞くと、5,6人集まるとすぐ公安当局がやってきて解散させられるとか。暴動もストライキも空前の水準だし。

 この中国関連ショックのバージョンだが、北朝鮮がらみで、何か発生するかもしれない。金一族の放逐、亡命とか、第三次実験強行に並んでのクーデターや中国の「北」制圧とか。ついでに言及すると、ユーロ圏の騒ぎは限定的だろう。もう市場は織り込んでいる。

 第三の理由が「本命」で、債券バブルの終焉だ。あのリーマン・ショック以降、ともかく安全をと債券へ資金はシフトし、10年もの国債金利は2・04%まで下落した。どう見ても行きすぎだ。

 当然、ここ何ヶ月かの米国の景気回復を期待させる指標を評価し、10年もの国債金利は3・3%まで上昇している。

 今後はどうか。2・7~2・8%のGDPの実質成長率とFRBの目標としている2%直前のインフレ率をあわせると、場合によっては5%台まで行ってもおかしくない。

金利が上昇し債券価格は下落を続けるので、資金の株式市場シフトは続く。しかしある日突然、理論的に割高、と気付いた投資家が売りに転じて、急落が起きる。あるいは米国債の格付けのワンノッチ引き下げかも。

     5~6月には1万2000円

 実は以上の私の懸念は、ブログ「まだまだ続くお愉しみ」〈http://kiyoshi-imai.cocolog-nifty.com/〉の読者はお馴染みだろうが、本稿ではさらに第四の理由、不安の根源についてふれることにする。それは現在のNY株式市場の上昇振りはまだ実体景気と差のある「つくられた株高」であることだ。

 図に示したとおり、NYダウ平均は米FRBのドル発行による資産膨張と、気味の悪いほど符合している。

リーマン・ショック後、FRBは住宅ローン担保証券(MBS)を大量に購入し、FRBの資産は9000億ドルから一挙に2兆3500億ドルに増加した。2010年4月にFRBがMBS購入を停止したら、株価は急落。

 そこでFRBは8月からMBSの元本償還金を市場に投入、この資金を受け取った大手金融機関は株価の指数先物を購入し、NY株価は再び勢いを取り戻す。

 さらにバーナンキFRB議長は「11月から6ヶ月間で6000億ドルの資金を市場に投入する」として株価は戻り新値更新に。これがQEⅡである。

このFRB資金による株買いは、別に違法ではない。1987年のブラック・マンデーの後の大統領行政命令で創設された「金融市場作業チーム」が行っており、財務長官、FRB議長、それに民間金融機関代表と協議して実施されている。

 問題はQEⅡがことし6月までと期限が決まっていることだ。資金供給が止まれば株価下落となるのは、昨年4月以降のNY株式市場の動きを見れば明らかである。

QEⅢを要請する声が高まればいいが、表面しか見えない政治家は多いから、何ヶ月か情勢を見て、ということになり、2010年4月から8月までの株価下落に似た下げが発生するーというウォール街の仕掛け暴落になるかもしれない。その場合は短期で騒ぎは終わることになる。

結論。世界の景気は新興国中心に好況持続で金融緩和、企業収益上昇期待で明るい1年になる。5~6月ごろには日経平均1万2000円は固い。晴天である。

 しかし秋には波乱必至。やはり「波高シ」ではないか。     

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