今井澂プロフィール

講演・出演など

お問合せ


« 映画「白いリボン」とテン・サプライズ〈第527回) | トップページ | 映画「相棒 劇場版Ⅱ」と与謝野氏入閣と株〈第259回) »

2011年1月11日 (火)

映画「アンストッパブル」と中国の国家としての不安(第528回)

 「アンストッパブル」はトニー・スコット監督、デンゼル・ワシントン主演の快作。只今ヒット中だ。

 大量の危険物資を積んだ無人の貨物車777号が、整備員のミスから走り出し、コンピューター制御も効かず加速してゆく。この暴走列車はどんどんスピードを上げ、停止のための装置は全く効かない。

 同じ路線で旧式機関車の1206号を走らせていたベテラン機関士フランクと新米車掌ウィルの二人は、777号の最後尾に自分の機関車を連結させ、暴走貨車を止めようとする。

 フランクはリストラで解雇を告げられており、あと3週間の任期だが、10万人の死者が出そう、と聞かされ奮起する。

 暴走し誰も止められない全長800メートル、39両の大編成の列車。これに似て誰もが恐怖感を持つのが、中国政府のここ1年余りの高圧的なまた独裁的で押し付けがましい姿勢だろう。

 初めは昨年7月のASEAN会議で楊 外相が南シナ海での領土紛争の解決交渉に米国の関与を望む東南アジア諸国に対し「中国は大国であり、ほかの諸国は小国である。単なる事実だ」と述べた。

 9月の尖閣諸島での呆れるほど無法ぶりは、日本人全員が唖然としたに違いない。フジタ社員の監禁とかレアアースも含めて。

 15年間の「微笑外交」を台無しにしたのが、12月のノーベル平和賞の劉暁波氏の受賞に対する反発ぶりだ。オスロの授賞式に出席しないよう働きかけまで行った。

 私の知っている大手商社の中国通は「もともと中国はそんな国なんですよ」とニベもない。「そこに鳩山前首相が尖閣の埋蔵原油についてうんと甘いことを言ってしまったから、9月に仕掛けたんです」と。沖縄についてのあの無責任と甘ちゃんぶりを考えれば、うーん、そうかも。

 このままどんどん中国が大きくなり、あと何年かすると米国も抜く。となると「日本の成長を必死になって米クリントン政権が押さえ込んだように、中国に対しオバマ政権は何かするんじゃないか」と、私は考える。

 QEⅡみたいな量的金融緩和は中国のインフレを悪化させるし、これを押えるために利上げすれば、ヤミルートで資本が流入。人民元の切り上げ圧力が高まる。

 結局、バブルがいっぺんに弾けるようになれば、快哉を叫ぶ人は、日本だけでなく米国のほうが多かろう。私はかつて中国株で投資資産を5倍にしたが、もう中国株はやめる。

 中国の成長への厳しい告発文が昨年12月の「中国日報」に掲載された。筆者は中国人民銀行の元通貨政策委員余永定氏。

 将来への脅威として①社会的緊張の高まり②環境汚染③公共サービスの欠如(ズバリいえばワイロ)④過度な輸出依存⑤不動産への過度な投資依存、を同氏は挙げた。

 「いま中国は成長のための潜在力をほぼ使い果たした。中国は重大な岐路にあり、痛みを伴う構造調整がなければ、経済成長の勢いは突如失われかねない。」、そうかも。

 ごく一例。中国紙「大紀元」によると地下鉄。

 対先日北京で一気に5本の地下鉄が開通し、総距離は300kmに達した。現在でも20以上の都市で建設。2006年に10本の地下鉄路線だったが、現在37本で2015年に85本。

 同紙のよると「交通渋滞緩和のために地下鉄がつくられたのではなく、『地下鉄があると一流都市になると党幹部が思っているから』である。」

 ほとんどの地下鉄は赤字。また路線の地価を吊り上げ、不動産価格上昇に拍車がかかった。いやはや、である。(私の言うことはいつも早すぎるので、そこはご注意だが)

 映画のセリフから。鉄道会社の幹部が言う。「少し先に大きなカーブがある。近くに住宅地域があるんだ。」映画では決死的な機関車連結でブレーキがかかり、車体は斜めになるが、何とか奇跡的に曲がりきる。中国がこのカーブを曲がりきれるか、どうか。

« 映画「白いリボン」とテン・サプライズ〈第527回) | トップページ | 映画「相棒 劇場版Ⅱ」と与謝野氏入閣と株〈第259回) »