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2011年2月24日 (木)

映画「パトリオット・ゲーム」とアイルランドとユーロ危機(第542回)

 トム・クランシーの世界的ベストセラーの映画化。1992年、主演のハリソン・フォードが一番輝いていた時期の、アクションに満ちた傑作スリラーだ。

 CIA分析官を辞職し海軍兵学校の教官となったライアンは、ロンドンに妻と娘と三人で休暇旅行。

 バッキンガム宮殿前で英王室の一人で北アイルランド担当相の貴族を狙った、アイルランド過激派のテロに巻き込まれた。

 ライアンは襲撃犯と戦って英王室の一員を救い、弟を殺されたテロリストから逆恨みで狙われてしまう。ライアンの家族が被害者に。

 現在アイルランドは選挙戦の最中で、近く政権交代は必至。少数与党の共和党政権から統一アイルランド党と労働党の連立政権になりそうだ。

 統一アイルランド党のエンダ・ケニー党首は、先般行われたEUによる金融支援に批判的。まず国際支援融資の金利を引き下げ、銀行債(優先債)にも、銀行救済コストを負担させたい考えだ。

 すでに銀行債のうち劣後債は70%の債権切り捨てを要請されているが、優先債は国外、主にドイツや英国、仏の投資家への影響から損失負担は求められていない。

 統一アイルランド党は「国内経済を疲弊させる一方で銀行の対外債務の支払いとするためにアイルランド国民の血税をつぎ込んだ」とした。

 同時に欧州金融安定基金(EFSF)の機能を拡充し、アイルランドの銀行を含め重要な欧州の銀行に対し資本注入をせよ、と呼びかけている。

 ところがこの救済策交渉が極めて難しい状況にある。

 主導権をもつ独メルケル首相が率いるキリスト教民主同盟(CDU)が、ハンブルグ特別市選挙(州に相当)で大敗、3月に二つの地方選挙があるが敗北必至。

 「金融安定基金の規模拡大は、ドイツなど債権国にとってリスク増大に他ならない(ドイツ連銀)」とい声が高まっているからだ。メルケル首相が救済システム見直しに、なかなか踏み切れないだろうと観測されている。

 ということはEUサミットの3月24・25日には、ユーロ圏の債務危機問題が十分な対処されない危険性が十分にある、ということだ。

 2月下旬現在、ECBの翌日物の融資残高が激増し、どこかユーロ圏内の有力大手銀行の資金繰りが急迫しているのではないか、といわれている。

 従来から不安視されているポルトガルなどの国債金利は上昇中。市場の不安を示している。

 JPモルガンの推定では、ECBは昨年5月以降に発行されたポルトガル国債のほとんどを購入している。最近ではベルギーまで危機説が出ているのは、市場が危機の可能性を忘れていないということだ。

 結論。いぜんユーロは「嵐の前の静けさ」の段階にある。危機感が後退、という新聞の見出しは信じちゃいけない。

 映画のセリフから。IRAの幹部がTVで言う。「我々は関係ない。犯行声明があったか?やっていたら誇りを持って自分がやったと言うはずだ。」誇り高い700万のアイルランド人が、EU全体を振り回すか,どうか。

映画「ナイル殺人事件」と中近東の政変と株、金(第541回)

 アガサ・クリスティ原作の紀行ミステリーの映画化。1978年、米、英、仏のスターがズラリと顔をそろえ、雄大なエジプトの風景と古代遺跡、ニーノ・ロータの音楽も加わってこの種の映画の最高峰だろう。ジョン・ギラーミン監督。

 ナイル川を下る豪華客船内で、ハネムーン最中の美貌の富豪令嬢リネットが殺される。リネットに婚約者を奪われた女友達ジャッキーを始め、乗客全員が被害者に何らかの遺恨を抱いている。

 たまたま船が乗り合わせた名探偵エルキュール・ポワロが早速捜査に入るが、事件は第二、第三の殺人を生み、意外や意外の展開に。

 中近東ではチュニジアに始まり次にエジプト、リビアと拡大、一時的と思うが原油価格はバーレル100ドルを突破する騒ぎになった。名探偵ポワロでも先が読めない状況に違いない。

 ただ、中近東最大の国家エジプトの情勢分析を知ると「軍主導の民主化」プロセスが慎重に進められたことがわかる。

 1月25日に始まった反政府デモから18日目の2月11日に、ムバラク辞任と軍最高評議会に大統領権限が移されたことをスレイマン副大統領が発表。直ちに6ヶ月以内の民主的な大統領選挙と議会選挙が実施される。

 この間、米国オバマ政権は親米独裁政権を取るか民主化要求の反政府デモを支持するかの難題に苦しんだだろうが、米国と安定的な関係を持つエジプト軍部への隠れた支援に努めた。これでイスラム原理主義の台頭もイラン革命の再現も食い止めることに成功した。

 恐らく次期大統領はアムル・ムーサ・アラブ連盟事務局長だろう。3月に任期が満了するし。

 74歳のムーサ氏は外交畑で1991年から2000年までムバラク政権の外相を務めた。反政府に受けがいいし、軍部も支持しよう。

 本当は原油高はおかしい。肝心要のスエズ運河の船舶船行にはほとんど影響がない。イランがエジプトの体制を試そうと30年ぶりに自国軍艦のスエズ航行を申請、認められているが。

 エジプトの段階では大きな原油高はなかったのに、リビアでは反政府運動の激化が内戦状態になるにつれ、原油の供給不安が言われだしている。

 これは東部のズワイヤ部族が欧米諸国に対し「カダフィーを支持するなら原油の輸出を止める」と言い出したためだ。一過性だろう。

 カダフィーには勝ち目がないだろう。人権団体フリーダム・ハウスによると、世界の政治的・市民的自由の採点で最悪の国は北朝鮮、ミャンマー、そしてリビアだ。

 リビアは豊かな国だ。一人当たりGDPはエジプトの8倍で教育は大学まで無料。医療も住居もタダ。それでも反体制デモが起きた。それは「自由」を求めてに違いない。だから閣内からはデモ隊対策の要てある公安相が辞任し、デモ隊に合流するよう呼びかける始末だ。

 あと、昔山一證券の支店があったバハレーンのマナマでも大規模デモが。あんな静かなところでー。

 こうなると、誰でも「次はサウジ?」と考える。そうなれば、現在中東で起こっていることは「第二のベルリンの壁崩壊」かもしれない。

 どうしてもリスク回避になり、NY株は大幅安、米国債金利安(債券価格上昇)。プラチナ、パラジウム、銀も下げがきつい。

 逆に金は先物買いの残高は急増中で、再びオンス1400ドルを抜いてきた。やはり金融引き締めが行われても、多くの国の人々がインフレを抑えきれない、と読んでいるのだろう。

 映画のセリフから。ポワロがルクソールの神殿で言う。「カネがありすぎると、凶器になります。昔のエジプトの大臣は死刑を宣告され銀で押しつぶされました。これ、事実ですよ。」中東のオイル・マネーが今後どう動いてゆくのか、権力がどんな勢力が握るのか。

2011年2月21日 (月)

夢のある日本の新製品・新技術〈先見経済2011年2月15日号)

先日の英エコノミスト誌の日本特集は面白い内容を含んでいた。(2010年11月号)。

 やはり日本のモノづくりはすごい。まもなく市場に出る新製品としてー。

 ベッドが車いすに形を変えるパナソニックのロボットベッド。衝突回避センサーが搭載されているトヨタの一人乗り電動三輪車。尿糖値を測定できるTOTOの高性能トイレ。

 また事故などで損傷を受けた神経系と信号を伝達しあった人間が歩けるようにするサイバーダインのロボットスーツ「ハル」。

 同誌は「やはりトヨタのプリウスの世界累計販売台数200万台突破はすごい」。この技術で住宅とハイブリッド車を組み合わせで省エネ、CO削減が出来るーと感嘆している。

 実は昨年、株式市場で電気自動車用の急速充電器メーカーの株価が急騰した。電気自動車本体を販売している三菱自動車、日産がすでに量産を始め、2012年にはフォード、トヨタ、ホンだダ。2013年にはフォルクスワーゲンがこの  市場に参入する。

 しかし、昨年末の市場の人気をさらったのは急速充電器のメーカー。米国政府が日本の統一規格である「チャデモ」方式の急速充電器を購入したと報じられたのがキッカケとなった。

 実はドイツのダイムラーが日本と別の欧州仕様の充電方式でワールドスタンダードを競っていた。日本はこれに対抗した東京電力と自動車5社が「CHAdeMO(チャデモ)」協議会を設立して国際社会に訴えてきた。米国が動けば、日本は勝利に一歩も二歩も近づく。ちなみにチャデモとは進むためのチャージ(充電)の意味だ。

 具体的には高岳製作所、シンフォニアテクノロジー(旧社名神鋼電機)、菊水電子工業、日新電機、三社電気製作所など。恐らく本誌の読者はほとんどご存知あるまい。

 電気自動車の関連ではリチウムイオン電池では日本がダントツだ。

 この電池は電極になる正極材と負極材、両極を絶縁するセパレーター。イオンが動く電極液の四部門に分かれるか、日本のシェアは順に40%、50%、65%、65%という高い比率だ。

 まず現在のところ正極材の田中化学研究所、戸田工業の人気が高い。しかし負極材の日立化成、セパレーターの旭化成、電解液の宇部興産、全て世界ナンバーワンの企業にも期待がかかる。

      あのiフォンも日本の実力だ

 アップル社のiフォンの人気を見ていると「なぜ日本発でないのか」と歯がゆくなる。

 しかしアジア開発銀行が中国から世界に輸出されている3G型の中味を調べたところ、やはり日本はすごい。

 この型の製造コストは178・96ドルだが、日本製部品の比重は35.8%で一番大きく、ついでドイツの16.8%、韓国が12.8%、米国が6.0%だった。

 

 中国の組み立て費はたった3.5ドル、つまり3.6%しかなく、しかも台湾企業が深センに建てた工場が製作している。部品の中で台湾と中国の部品供給者の文がある程度あっても「メイド・イン・チャイナ」ではなく、実は日本製といっても過言でない。

 部品メーカーとしてのTDK、第一精工、シスー、アルプス電気などなど。改めて、日本は電子部品、自動車部品などで世界トップシェアの製品の多い世界最強の部品王国だ。

 だからこそ、韓国に完成品で負けたという印象があっても、現実の日韓の貿易収支は大幅な日本の黒字。対中国・香港、対台湾みな同じで拡大傾向がある。

 これらは全て価格主導権を持ち、円高時にはドル建て輸出価格引き上げが行われている。もうそろそろ日本悲観論は、終わりにしたらどうか。

2011年2月20日 (日)

映画「ウォール・ストリート」とヘッジファンドと金価格〈第540回)

 1987年、あのブラック・マンデーの年の傑作「ウォール街」から23年後に続編「ウォール・ストリート」が作られた。監督は名匠オリバー・ストーン、主演は勿論マイケル・ダグラス。十分に見ごたえのある佳作だが、前作には及ばない。前作にあった社会悪への怒りが極めて薄いからだ。

 2008年ウォール街で働くシェイコブは、非営利ニコースサイトの運営者ウィニーと結婚間じかで順風満帆の人生を送っていた。

 ところが所属している投資銀行が破綻し父とも師とも仰ぐ社長は自殺してしまう。復讐を誓ったジェイコブは、かつてのウォール街のカリスマ投資家でインサイダー取引で投獄され7年目に刑期を終え出所したゴードン・ゲツコーに言う。「あなたの娘さんの婚約者です」。

 娘と完全な絶縁状態にあるゲツコーは、ジェイコブの復讐計画に協力する代わりに、ウィニーとの仲を取り持つよう頼む。一方、ウォール街では金融パニックが深刻化してゆく。

 かつて買占め屋として一世を風靡したゲッコーが、この映画ではロンドンでヘッジファンドを開業して、元手の1億ドルを11倍にする凄腕を見せる。

 これはサブプライム危機を早くから予測し2008年には資産5倍、翌年も倍増というジョン・ポールソンがモデルだろう。同氏のファンドをストーン監督は買っているというし、映画にはチョイ役で顔を出す。

 そのヘッジファンド業界髄一の当たり屋が、現在は金に投資するほぼ専門のヘッジファンドに注力している。昨年金価格は3割も上昇したのだから運用成績もすごいだろう。

 ところで、最近の高値1430ドル〈オンス〉は「10年続いた金価格上昇はついにピークか(フィナンシャル・タイムス紙)」など警戒論が出てきている。

 金の先物市場では買い建てもピークの800トンから400トンに半減、金ETFも1500トンとピーク時比4割減少ーとなると「宴のあと」説も無理からぬかも知れない。

 FT紙は「米国の超低金利が推進力だったが、下期にこれが解消するだろうから、金価格は上昇し続けることはない」としてゴールドマン・サックス、UBS、クレディスイスなどの「今年年末か2012年初頭にピークアウト」説を紹介している。

 要するに「そろそろ出口を探したら」という結論である。

 私はまだ弱気になるのは早すぎると考える。昨年の金の買い材料になったユーロ圏のソブリン危機はPIIGSに加えてベルギーも激震が起こりそうは気配だし、アイルランドが2月25日の総選挙次第では、反旗を翻して債務リストラ(デフォールト)するかも知れない。

 一方、JPモルガンチェーすが金を担保に認め始めたし、ジョージア州アトランタでは銀行が金の口座を作る準備を始めている。米国では金本位制に戻るのではという噂が絶えない。そして金よりも米国人の好む銀価格が金に遅れて1月に新高値をつけた。

 世界の需要も旺盛だ。インドと中国の個人需要に加えて、新興国の中央銀行が外貨準備に金の保有を増やそうという意欲が強い。ロシアは「今後毎年100トンは保有を増やす」としている。インドは昨年300トン増加させたし、中国も「あと数年で1万トン保有を目指す」としている。

 私は従前から「オンス2000ドルをほぼ全投資家が共有し、1800ドルの上の方から1900ドル台」というメドを述べてきた。この見方を変えない。

 映画のセリフから。ジェイコブがいう。「バブルは何回も何回も起きるものだ。人間に欲がある限り。」1980年代のオンス800ドルの高値はインフレ修正すると2300ドルに当たる。まだまだ、先はある。慌てることはない。

2011年2月17日 (木)

映画「冷たい熱帯魚」と中国経済(第539回)

 R18だから目を背けたくなるような残酷シーンが多い「冷たい熱帯魚」。上映館が少ないのだが立ち見が出るくらいの盛況ぶりだ。ことしのベスト5に入りそうな力作でもある。

 小さな熱帯魚店を経営する社本夫妻は娘がスーパーで万引きしたため店に呼び出される。しかしスーパー店長と親しい村田にその場を救われる。村田は同業の巨大な熱帯魚店主だった。

 数日後もうけ話があるからと呼び出された社本は、村田のオフィスで顧問弁護士と投資家に会う。巨額な出資をした投資家は、判を押した直後殺される。村田の妻が飲ませたビタミン剤が毒だった。悪人に豹変した村田夫妻に命じられ、妻と娘を人質に取られた社本は地獄を体験することになる。

 好人物のように見えた村田だが、にわかに何人もの人を殺した悪漢の顔をむき出しにしたように、このところ中国に投資して事業を行っている外資が、変貌した中国の住みにくさに「脱中国」を図る動きが続出している。

 ある事情通に聞いた話。合弁でなく1社だけの出資会社「独資」の韓国の会社のことだ。

 韓国の仁川から山東省の青島へは一時9000社も出ていた。両都市はフェリーが通っているので便がいい。ところが2009年ごろから韓国の経営者が夜逃げして、いまは2000社に減少してしまった。

 理由はやはり労働問題。ストで賃上げが重なり安い労賃というメリットが消えた。その上に、私がある経営者に聞いたところでは、地方自治体の勝手に外資と見るとかけてくる”税金”が負担だという。

 いまの中国の最大の問題点は、主として内陸部の公共事業投資の行き詰まり。高速鉄道や地下鉄など、巨額な投資をしたが乗客の利用が予定よりずっと少なく、大赤字が出ている。

 こういう公共事業は北京の中央政府が三分の二、残る三分の一は地方自治体だ。この赤字事業への出資と赤字は、地方自治体としては増税によるしかない。そこで色んな名目を設けて、とくに日本の中国での合弁企業が狙われているらしい。

 いま日本からの対中投資は5兆円、4万箇所に達し12万人が駐在している。これが「人質」になっている。

 中国では食料品を中心としたインフレもあり社会情勢は不穏。これに労働力の不足も絡んで賃上げのピッチは早い。昨年相次ぐ労働者の自殺で注目を集めた富士康科技集団(フオックスコン)は30%以上の大幅賃上げ。日系ではホンダやオムロンなどスト続発に苦しめられた。

 ILOによると中国人労働者は2000年から2009年にかけ年間平均12.6%の実質賃金上昇を獲得した。

 その結果、ベトナムやバングラディシュ、カンボジアなどに生産拠点を移転させる企業が多い。

 私の聞いたところではすでに40社以上の日本企業が中国での生産を止めたという。本当はもっと多いのだろうがー。

 外資をよべなくなれば中国の打ち出の小槌がなくなる。外資との合弁に土地を提供して出資に当てるのが地方自治体の財源だったからだ。中国からの逃避資金で東京のマンションが丸ごと買われるケースが増えている。いまアメリカや欧州のソブリン・ショックが懸念されているが、本当は中国ショックの方が私は恐ろしい。

 映画のセリフから。吉田が言う。死体をバラバラにしながら「ボデイが透明になっちまえば何もわかりゃしねえ。」言論統計で悪い話が出ないようにしているが、中国の実態はムバラク政権以上ではないのか。

2011年2月12日 (土)

映画「ザ・タウン」と日米関係と株、円〈第538回)

 映画「ザ・タウン」は只今米・日でヒット中のクライムもの。主演、監督ベン・アフレック。けっこう女性ファンが多い。

 広いアメリカのどこよりも銀行強盗が多発する地域の、ボストン北東部のチャールスタウン。住民は先祖代々銀行強盗がショウバイで、休日ともなると友人、家族と連れ立って川向こうの景気の良い街に強盗をしに行く。

 閉鎖的なムラ社会から抜け出そうと苦闘する若者というと、お決まりものだが、銀行を襲う手口はまことに鮮やかで面白い。

 主人公は人質の女性が「ザ・タウン」の住人とわかって正体がばれたのではーと焦る。一方FRBも次第に捜査の網を狭めてくる。

 生まれ持った宿命から逃れるのが大変な主人公のように、日本はタチの悪い隣国、ズバリ言うと中国や北朝鮮の脅迫からなかなか逃れられない。

 ごく一例が尖閣。昨年9月のあの中国漁船の体当たり、その後の中国のさまざまな無法で横暴な態度。これに対し民主党政権のあまりにも弱腰な外交姿勢を、苦々しく思わなかった日本人は一人もいないだろう。

 原油があるとわからない時代は、せいぜい靖国問題や南京大虐殺を言っていた程度だったが、大量な埋蔵量〈イラク並み、1000億バーレル)が確実視された途端「オレのものだ」。

 私は香港の「亜州週刊」に載っていた在外華僑2世、3世達の「新華僑」集団の「6月17日、1,000隻の漁船をチャーターして尖閣諸島を取り巻き、何人か定住」という計画を深く懸念している。

 この集団は恐らく中国共産党の指導を受けているのだろうが、民間の在外団体だから、外交上は知らん顔をしていられる。タチが悪い。

 6月17日という日にも意味がある。

 この日は昭和46年(1971年)に沖縄返還協定が日米間で調印された日。尖閣だけでなく、沖縄も中国のもので、米国が世界の覇権を握っていた時代の取り決めなど、無効、といいたいのだろう。

  要するに「中国こそ世界だ」といっている。昨年7月のAPEC会議でベトナム、フィリピンなどが南沙諸島への中国侵略を問題とした。揚中国外相は「オレの国は大国、あなた方は小国。これが現実だ」と答えた。この呆れるほどの尊大さ!

 幸い昨年9月にはただちに米クリントン国務長官が「尖閣は日米安保条約が適用される」と声明していっぺんに日本人は安心した。同長官はAPEC会議に出席した前記の揚発言を聞いていた。その後米国務省では「中国を甘やかしすぎだ」との反省が起き「日本にもっと元気になってもらわなくては」というムードも、と聞く。

 最近、いくつも経済面で対日協力を示してくれている例を見る。 

 第一が昨年末に「米政府は電気自動車320台の使用に当たって、急速充電装置を日本方式を採用」。従来の排日ムードのときは恐らくドイツの方式を採用していただろう。

 第二が「トヨタ自動車の急速加速が同社の電子装置の欠陥によるものではない」という発表。米運輸長官は「私の娘にもトヨタ社を使わせたい」とまで述べた。トヨタたたきが過去のもの、と印象づける出来事だった。

 そのせいか、米系ヘッジファンドは「円売り、日本株買い」で、ひところの円買い株売りを180度転換している。なかなか大きな押し目が発生していないのは、そのせいだろう。

 映画のセリフから。タウン以外の高級住宅地に住む住民を「トゥーニー」と呼ぶ。主人公が言う「トゥーニーはトヨタのプリウスに乗るんだよな。」トヨタのグレードがよくわかる。

2011年2月 8日 (火)

映画「英国王のスピーチ」とNY株高、米国景気(第537回)

 「英国王のスピーチ」はアカデミー賞候補の最右翼といわれている秀作。現エリザベス女王の父君のジョージ6世はドモリに悩まされている。内気な性格で人前に出るのが苦手、兄が継ぐはずだった王位を「王冠か恋か」で1年足らずで退位したときから悲劇は始まった。

 言語障害を克服するために契約した専門家と国王との苦闘が始まる。固く閉ざされた王の心に原因があると見抜いた専門家は、型破りの治療法で必死にレッスンに励む。なかなかうまくゆかないで、王は悩みに悩む。

 折も折、ヒトラーが開戦、英国王は不安に揺れる国民の心をひとつにすべく、世紀のスピーチに挑戦しなくてはならない。時間はない。さあ、どうするか。

 あのリーマン・ショック以来、米国のバランスシート調整の必要が言われ続けている。

 たしかに不動産保有残高つまり持ち家の評価額は、ピーク時に可処分所得の2.5倍もあったが現在1.6倍。しかもまだこの比率は10%や20%は下りそうだ。

 アメリカ家計は資産の目減りの中で借金を返さなければならないので、消費が増えるわけがない。ここいらがアメリカはダメ説の根本だ。国王が父王の厳しすぎる教育ですっかりちじこまった男になってしまったのに似ている。

 代わりに株価を上げて、マイナスの資産効果をプラスに変えようというのがバーナンキFRB議長の作戦だろう。

 ここ1,2年ほどNYダウ平均はFRBの資産の膨張とピタリと一致して上下してきた。

まずFRBの量的金融緩和(QE)第一弾は住宅ローン担保証券(MBS)を大量に購入した。FRBの資産の9000億ドルから一挙に2兆ドルに。

 つれて株価も回復したが、昨年4月にQEを止めたら株価は急落。そこでFRBは8月から、MBSの元本償還金により大手金融機関を通して株価指数の先物買いを始めた。

 さらにQEⅡとして11月から6ヶ月間で6000億ドルの量的金融緩和を決めた。私があるヘッジファンドの担当者に聞くと「NYダウ1万4000ドル近辺で資産効果はプラスに転じる」といっていた。そのあたりが高値目標だろう。

 実体経済はどうか。絶好調に近い。1月のISM〈供給管理協会)製造業景気指数は60.8となり、ピークだった2004年5月の61.4に迫っている。

 これまでのFRBの金融政策はこの水準だと少なくとも金融緩和は終了するのが通例だが、FFレートの最もの市場を見ると、利上げ着手は10月以降でまず0.25%、2012年春に0.75%、1%の大台のせは7月と読んでいるようだ。

 米国の個人金融資産では株式の比重は高い。昨年9月末で31・4%、これに年金、投信と合わせると50%には達していよう。日本の6・4%と大違いである。

 結論。ドル安も手伝って米製造業は好調。当分株高は続く。まだ回復してから丸2年。上昇は初期。秋には心配した方がいいが。

  副産物としての資源、農産物高だが、ドル安(円高)も、当分、つづく。関連株の大手総合商社に注目したい。

 映画では専門家が国王をスピーディの前に励ましていう。「危機時の王は通常の王以上に勇気と忍耐を続けなくてはなりませんが、あなたは立派な王になれます。」そして堂々とした国民全部に感銘を与えるスピーチ。ベートーヴェン交響曲7番第2楽章のバック音楽がおおいに盛り上げる。

2011年2月 6日 (日)

映画「完全なる報復」と再びエジプト、原油、海運、米国〈第536回)

 「完全なる報復」は只今ヒット中のクライム・アクション映画だが、お話が一ひねりしてあり、意外性が売り物。主演のジェラルド・バトラーがカッコいい。

 妻と娘を突然侵入した二人組強盗に殺されたクライドは、残虐極まりない主犯格の男に数年の禁固刑しか求めない検事に、強い不満と恨みをもつ。

 実はこの検事は有罪判決を得ることが主目的で、主犯と司法取引した。この司法制度の不備の是正を求めたクライドは、関係した全ての人間を抹殺しようとする。10年かけて準備し、「完全なる報復」をたくらむ。

 前回に引き続いてエジプト問題。カイロの広場に集まっている民衆は、圧制と汚職への「報復」の立場にある。

 私は1981年に前任のサダト大統領暗殺のときアブダビに滞在。ムバラク副大統領の昇格が決まったところまで現地のTVで見ていた。

 ムバラク政権は、サダトが実現した対イスラエル和平の継承者だった。この政権が終われば中東和平そのものが不安になる。

 というのはイスラム原理主義のグループ「ムスリム同胞団」が明らかに反ムバラクの民衆をリードしているからだ。あのオサマ・ビン・ラディンはかつてこの同胞団に所属していた。反米主義でもある団体だ。

 私は今回のエジプト政変は、1979年のイランでのイスラム革命に似ていると考える。

 パーレヴィ皇帝による民衆を圧迫した親米帝政がホメイニ師によって打倒される。テヘランの米国大使館が原理主義の学生によって占拠され、大使館員は人質になった。

 当時のカーター大統領は特殊部隊で人質奪還を狙ったが、これが完全に失敗。1980年の大統領選でカーターは落選した。レーガンの時代に入った。

 実はこれまでの世界経済の景気上昇期が終わりになり、下降期に向かうきっかけは①米国内での金融ショック②中近東での政治変動、の二つのどれかが主因だった。今回のエジプト政変がそんな「大変」になるか、どうか。

 イランとエジプトとは違うかもしれない。イランのシャー(皇帝)は財産なしで放り出されたが、エジプトのファルーク国王は財産とともに亡命が許された。

 ポスト・ムバラクは恐らく選挙で決まり、シーア派の宗教指導者がリードしたイランの革命と違うだろう。スンニ派で産業社会化が進んだエジプトとやはり違う。

 まだ事態は流動的だが、この原稿を書いている2月6日現在、スエズ運河の船舶運航に支障はほとんど出ていないし、海運指数も弱含み。

 原油価格の方もイラン革命当時の急騰にはほど遠い。

 デモが本格化した1月28日にNY株式市場は急落したが、まあ様子見が当分続く。サイコロが丁と出るか、半と出るか。

 大事なのは、米国の大統領選挙への影響だろう。

 エジプト情勢を契機として「外交に弱そうな候補」はどんどん除外される、と米国在住の作家・冷泉彰彦さんは予想している。サラ・ペイリンへの評価は急降下。また地方行政しか知らない知事出身者も分が悪くなる、とも。市場に与える影響としては、この方が大きいかもしれない。

 映画のセリフから。クライドが検事に言う。「血で学ばない限り、人は教訓をすぐに忘れてしまうものなんだ」。歴史が繰り返すか、どうか。ここ何週間の動きで決まる。

2011年2月 4日 (金)

映画「トゥルー・グリット」と北朝鮮の重大な変化と中国とエジプト(第535回)

 1969年に「勇気ある追跡」として主演のジョン・ウェインがアカデミー賞を獲得した西部劇の名作のリメーク。監督はコーエン兄弟。

 父をならず者に殺された14歳の少女マティは手元資金をはたいて、飲んだくれで片目の保安官を雇う。これをジェフ・ブリッジス。昨年のアカデミー主演男優賞受賞者だ。

 同行者にテキサス・レンジャー隊員のラビーフも加わり、犯人追跡の過酷な旅が始まる。

 米国で大ヒット中のアカデミー賞候補だが、私にはジョン・ウェインのユーモアに満ちた演技が忘れられない。結末も今回のは少々暗い。毒蛇に噛まれたマティが片腕を失うし、30年以上経過してから再開にゆく、とかー。やはり、リメイクは元の作品よりオチる。まあ水準以上の作品だが。

 ところで、このところ重要な変化があった。まず北朝鮮への中国軍駐留。

 朝鮮日報が15日付で「中国軍が北朝鮮の羅先特別市に駐屯」というニュースを報じた。

 この羅先はロシアと北朝鮮の国境にある港湾で、中国東北部の吉林省揮 春市から鉄道と高速道路も中国がつくる。別に豆満江に大きな橋を建設する。

 中国は日本海に港を得た。また北朝鮮に政府が崩壊するような有事の事態にも、韓国主導で統一させないための重要な一石になる。

 これまで中国は北朝鮮の無法ぶりを押さえ込めなかった。しかし中国人保護、施設保護の名目で軍が駐屯できれば話は別だ。平和的統一はなくなったが、「北」の暴発にも制御がかかる。ちょうど映画でマティが父を殺した犯人に肋骨を折る打撃を与えたのに似ている。

 これはわが国には暴発がなくなった分はプラスだが、次第に日本企業にとって中国で操業するメリットが消えつつあることが大問題だ。

 日本企業出資の中国現地法人は約5000社。安い人件費を巨大な市場に目がくらんで進出した。

 しかし、広東省を例にとると月額平均賃金は一昨年790元(1万円)だったが、昨年は1000元(1万5000円)をこえる。今年もっと上昇するだろう。

 昨年5月からの2ヶ月間、ストが発生し大幅賃上げを呑まされた外資系企業は多いが、そのほとんどは日本企業だ。

 当然、脱中国が図られる。ユニクロのファーストリテイリングはすでに製造の一部をバングラディシュに移し、今後製造の三分の一を「中国以外」へ。また先日私が訪問したベトナムやインドなども人気。

 私は早めに逃げ出したほうが賢明と思う。春節が終わったら、現地での労働力確保はまた困難になるだろうし。

 最後にエジプト。民衆の声が政権交代につながるかまだ不明。しかし、このニュースで金先物市場でQEⅡのスケールダウンの思惑で売っていた連中が買い戻しに入り、金価格は底を入れた。また上昇ペースを取り戻すだろう。

 米ABCテレビにスレイマン・エジプト副大統領は「大統領はこう言っている。次の選挙には自分も息子のガマルも出馬しない」とした。即時退任というデモ隊の希望は否定されたが、いぜん米国は早期に大統領改選を行うシナリオに固執している。まだ事態は流動的だが、スエズ運河の閉鎖という最悪の事態は回避されそうだ。原油価格の方は、ここいらが目先の上限と考える。

 今回の結論。金価格はいよいよ次の目標のオンス2000ドルに向かって前進を始める。

 映画のセリフから。保安官が言う。「相手が大勢でも、こっちが本気で闘い始めると、相手の方が自分が多数だということを忘れてしまうんだ」。金価格の上昇が終わるには、米国の短期金利がゼロから脱出、1%ぐらいになることが必要だろう。

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