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2011年2月 6日 (日)

映画「完全なる報復」と再びエジプト、原油、海運、米国〈第536回)

 「完全なる報復」は只今ヒット中のクライム・アクション映画だが、お話が一ひねりしてあり、意外性が売り物。主演のジェラルド・バトラーがカッコいい。

 妻と娘を突然侵入した二人組強盗に殺されたクライドは、残虐極まりない主犯格の男に数年の禁固刑しか求めない検事に、強い不満と恨みをもつ。

 実はこの検事は有罪判決を得ることが主目的で、主犯と司法取引した。この司法制度の不備の是正を求めたクライドは、関係した全ての人間を抹殺しようとする。10年かけて準備し、「完全なる報復」をたくらむ。

 前回に引き続いてエジプト問題。カイロの広場に集まっている民衆は、圧制と汚職への「報復」の立場にある。

 私は1981年に前任のサダト大統領暗殺のときアブダビに滞在。ムバラク副大統領の昇格が決まったところまで現地のTVで見ていた。

 ムバラク政権は、サダトが実現した対イスラエル和平の継承者だった。この政権が終われば中東和平そのものが不安になる。

 というのはイスラム原理主義のグループ「ムスリム同胞団」が明らかに反ムバラクの民衆をリードしているからだ。あのオサマ・ビン・ラディンはかつてこの同胞団に所属していた。反米主義でもある団体だ。

 私は今回のエジプト政変は、1979年のイランでのイスラム革命に似ていると考える。

 パーレヴィ皇帝による民衆を圧迫した親米帝政がホメイニ師によって打倒される。テヘランの米国大使館が原理主義の学生によって占拠され、大使館員は人質になった。

 当時のカーター大統領は特殊部隊で人質奪還を狙ったが、これが完全に失敗。1980年の大統領選でカーターは落選した。レーガンの時代に入った。

 実はこれまでの世界経済の景気上昇期が終わりになり、下降期に向かうきっかけは①米国内での金融ショック②中近東での政治変動、の二つのどれかが主因だった。今回のエジプト政変がそんな「大変」になるか、どうか。

 イランとエジプトとは違うかもしれない。イランのシャー(皇帝)は財産なしで放り出されたが、エジプトのファルーク国王は財産とともに亡命が許された。

 ポスト・ムバラクは恐らく選挙で決まり、シーア派の宗教指導者がリードしたイランの革命と違うだろう。スンニ派で産業社会化が進んだエジプトとやはり違う。

 まだ事態は流動的だが、この原稿を書いている2月6日現在、スエズ運河の船舶運航に支障はほとんど出ていないし、海運指数も弱含み。

 原油価格の方もイラン革命当時の急騰にはほど遠い。

 デモが本格化した1月28日にNY株式市場は急落したが、まあ様子見が当分続く。サイコロが丁と出るか、半と出るか。

 大事なのは、米国の大統領選挙への影響だろう。

 エジプト情勢を契機として「外交に弱そうな候補」はどんどん除外される、と米国在住の作家・冷泉彰彦さんは予想している。サラ・ペイリンへの評価は急降下。また地方行政しか知らない知事出身者も分が悪くなる、とも。市場に与える影響としては、この方が大きいかもしれない。

 映画のセリフから。クライドが検事に言う。「血で学ばない限り、人は教訓をすぐに忘れてしまうものなんだ」。歴史が繰り返すか、どうか。ここ何週間の動きで決まる。

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