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2011年2月20日 (日)

映画「ウォール・ストリート」とヘッジファンドと金価格〈第540回)

 1987年、あのブラック・マンデーの年の傑作「ウォール街」から23年後に続編「ウォール・ストリート」が作られた。監督は名匠オリバー・ストーン、主演は勿論マイケル・ダグラス。十分に見ごたえのある佳作だが、前作には及ばない。前作にあった社会悪への怒りが極めて薄いからだ。

 2008年ウォール街で働くシェイコブは、非営利ニコースサイトの運営者ウィニーと結婚間じかで順風満帆の人生を送っていた。

 ところが所属している投資銀行が破綻し父とも師とも仰ぐ社長は自殺してしまう。復讐を誓ったジェイコブは、かつてのウォール街のカリスマ投資家でインサイダー取引で投獄され7年目に刑期を終え出所したゴードン・ゲツコーに言う。「あなたの娘さんの婚約者です」。

 娘と完全な絶縁状態にあるゲツコーは、ジェイコブの復讐計画に協力する代わりに、ウィニーとの仲を取り持つよう頼む。一方、ウォール街では金融パニックが深刻化してゆく。

 かつて買占め屋として一世を風靡したゲッコーが、この映画ではロンドンでヘッジファンドを開業して、元手の1億ドルを11倍にする凄腕を見せる。

 これはサブプライム危機を早くから予測し2008年には資産5倍、翌年も倍増というジョン・ポールソンがモデルだろう。同氏のファンドをストーン監督は買っているというし、映画にはチョイ役で顔を出す。

 そのヘッジファンド業界髄一の当たり屋が、現在は金に投資するほぼ専門のヘッジファンドに注力している。昨年金価格は3割も上昇したのだから運用成績もすごいだろう。

 ところで、最近の高値1430ドル〈オンス〉は「10年続いた金価格上昇はついにピークか(フィナンシャル・タイムス紙)」など警戒論が出てきている。

 金の先物市場では買い建てもピークの800トンから400トンに半減、金ETFも1500トンとピーク時比4割減少ーとなると「宴のあと」説も無理からぬかも知れない。

 FT紙は「米国の超低金利が推進力だったが、下期にこれが解消するだろうから、金価格は上昇し続けることはない」としてゴールドマン・サックス、UBS、クレディスイスなどの「今年年末か2012年初頭にピークアウト」説を紹介している。

 要するに「そろそろ出口を探したら」という結論である。

 私はまだ弱気になるのは早すぎると考える。昨年の金の買い材料になったユーロ圏のソブリン危機はPIIGSに加えてベルギーも激震が起こりそうは気配だし、アイルランドが2月25日の総選挙次第では、反旗を翻して債務リストラ(デフォールト)するかも知れない。

 一方、JPモルガンチェーすが金を担保に認め始めたし、ジョージア州アトランタでは銀行が金の口座を作る準備を始めている。米国では金本位制に戻るのではという噂が絶えない。そして金よりも米国人の好む銀価格が金に遅れて1月に新高値をつけた。

 世界の需要も旺盛だ。インドと中国の個人需要に加えて、新興国の中央銀行が外貨準備に金の保有を増やそうという意欲が強い。ロシアは「今後毎年100トンは保有を増やす」としている。インドは昨年300トン増加させたし、中国も「あと数年で1万トン保有を目指す」としている。

 私は従前から「オンス2000ドルをほぼ全投資家が共有し、1800ドルの上の方から1900ドル台」というメドを述べてきた。この見方を変えない。

 映画のセリフから。ジェイコブがいう。「バブルは何回も何回も起きるものだ。人間に欲がある限り。」1980年代のオンス800ドルの高値はインフレ修正すると2300ドルに当たる。まだまだ、先はある。慌てることはない。

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