今井澂プロフィール

講演・出演など

お問合せ

広告


« 映画「ザ・タウン」と日米関係と株、円〈第538回) | トップページ | 映画「ウォール・ストリート」とヘッジファンドと金価格〈第540回) »

2011年2月17日 (木)

映画「冷たい熱帯魚」と中国経済(第539回)

 R18だから目を背けたくなるような残酷シーンが多い「冷たい熱帯魚」。上映館が少ないのだが立ち見が出るくらいの盛況ぶりだ。ことしのベスト5に入りそうな力作でもある。

 小さな熱帯魚店を経営する社本夫妻は娘がスーパーで万引きしたため店に呼び出される。しかしスーパー店長と親しい村田にその場を救われる。村田は同業の巨大な熱帯魚店主だった。

 数日後もうけ話があるからと呼び出された社本は、村田のオフィスで顧問弁護士と投資家に会う。巨額な出資をした投資家は、判を押した直後殺される。村田の妻が飲ませたビタミン剤が毒だった。悪人に豹変した村田夫妻に命じられ、妻と娘を人質に取られた社本は地獄を体験することになる。

 好人物のように見えた村田だが、にわかに何人もの人を殺した悪漢の顔をむき出しにしたように、このところ中国に投資して事業を行っている外資が、変貌した中国の住みにくさに「脱中国」を図る動きが続出している。

 ある事情通に聞いた話。合弁でなく1社だけの出資会社「独資」の韓国の会社のことだ。

 韓国の仁川から山東省の青島へは一時9000社も出ていた。両都市はフェリーが通っているので便がいい。ところが2009年ごろから韓国の経営者が夜逃げして、いまは2000社に減少してしまった。

 理由はやはり労働問題。ストで賃上げが重なり安い労賃というメリットが消えた。その上に、私がある経営者に聞いたところでは、地方自治体の勝手に外資と見るとかけてくる”税金”が負担だという。

 いまの中国の最大の問題点は、主として内陸部の公共事業投資の行き詰まり。高速鉄道や地下鉄など、巨額な投資をしたが乗客の利用が予定よりずっと少なく、大赤字が出ている。

 こういう公共事業は北京の中央政府が三分の二、残る三分の一は地方自治体だ。この赤字事業への出資と赤字は、地方自治体としては増税によるしかない。そこで色んな名目を設けて、とくに日本の中国での合弁企業が狙われているらしい。

 いま日本からの対中投資は5兆円、4万箇所に達し12万人が駐在している。これが「人質」になっている。

 中国では食料品を中心としたインフレもあり社会情勢は不穏。これに労働力の不足も絡んで賃上げのピッチは早い。昨年相次ぐ労働者の自殺で注目を集めた富士康科技集団(フオックスコン)は30%以上の大幅賃上げ。日系ではホンダやオムロンなどスト続発に苦しめられた。

 ILOによると中国人労働者は2000年から2009年にかけ年間平均12.6%の実質賃金上昇を獲得した。

 その結果、ベトナムやバングラディシュ、カンボジアなどに生産拠点を移転させる企業が多い。

 私の聞いたところではすでに40社以上の日本企業が中国での生産を止めたという。本当はもっと多いのだろうがー。

 外資をよべなくなれば中国の打ち出の小槌がなくなる。外資との合弁に土地を提供して出資に当てるのが地方自治体の財源だったからだ。中国からの逃避資金で東京のマンションが丸ごと買われるケースが増えている。いまアメリカや欧州のソブリン・ショックが懸念されているが、本当は中国ショックの方が私は恐ろしい。

 映画のセリフから。吉田が言う。死体をバラバラにしながら「ボデイが透明になっちまえば何もわかりゃしねえ。」言論統計で悪い話が出ないようにしているが、中国の実態はムバラク政権以上ではないのか。

« 映画「ザ・タウン」と日米関係と株、円〈第538回) | トップページ | 映画「ウォール・ストリート」とヘッジファンドと金価格〈第540回) »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 映画「ザ・タウン」と日米関係と株、円〈第538回) | トップページ | 映画「ウォール・ストリート」とヘッジファンドと金価格〈第540回) »