今井澂プロフィール

講演・出演など

お問合せ


« 2011年2月 | トップページ | 2011年4月 »

2011年3月25日 (金)

映画「荒野の七人」と為替市場〈第547回)

ご存知黒沢明監督の傑作「七人の侍」のリメーク。志村喬に当たる頭目はユル・ブリンナー。当時まだ無名に近かったスティーブ・マクィーン、チャールズ・ブロンソンなどが起用された。監督ジョン・スタージェス。そして作曲はエルマー・バーンスタイン。1960年の西部劇の名作だ。

 毎年野盗の群れに襲われるメキシコの寒村がついに耐えられず、村の長老はガンマンを雇って戦うことを決意する。

 わずか20ドルの報酬だが、村人の熱意に打たれて凄腕の七人の男たちが集まる。30人を超える野盗との戦いが始まる。

 貧しい村人たちの自衛の戦いを七人が身を賭して守ってくれたように、投機勢のオモチャにされそうだった日本の円を、主要七カ国が為替市場で協調介入してくれた。

 3月18日、10年半ぶりの協調介入で17日の超円高76円25銭から円レートは82円近くまで円安。市場の期待通りには円安トレンドはまだ定着していないが、まあ市場にサプライズを与えたことは十分に評価していい。

 もうひとつ評価されるのが、介入が存外効率がよかったということ。日銀が5~6000億円、ECBが50億ユーロ(5600億円)FRBが5000億万ドル(41億円弱)ですんだ。

 市場では介入宣言発表時で「2兆円は必要だろう」と見ていたので、介入が本気かどうか疑う声もある。しかし、円高は掛け人のヘッジファンドの当面の動きには強烈なブレーキがかかったことは間違いない。しかも金額の割にはキキメがあった。

 その後も為替市場に影響力のある要人が、口先介入を繰り返している。

 ECBのシュタルク専務理事が「日本が必要とするなら再度介入する用意がある」と述べた。またユーログループのユンケル議長(ルクセンブルグ首相)も「円の上昇抑制のためならば、主要7カ国の中央銀行は更なる行動をとる用意がある」とも。米FRBよりも多額の介入金額とともに欧州勢の熱意を示す。

 ストラテジストの近藤駿介さんは、欧州勢の「友達作戦」には、日本復興のためという美しい理由だけでなく、ECBにはECBの動機がある、と推論している。

 円売りユーロ買いの動機としては、「4月に予定される①ポルトガル国債45億ユーロ②スペイン国債155億ユーロの大量償還に必要な資金の調達にはユーロ安はこの際避けたい。」

 本来ならドル売りユーロ買いだが、ドル安による資源価格上昇が懸念される中で、ドル売りはしにくい。円売りユーロ買いの要請は「渡りに舟」だっただろう。少なくとも4月一杯は市場介入が繰り返される、と見ていい。なるほど。このご意見に私も賛成だ。

 もうひとつの動機として、日本が欧州金融安定ファシリティの第1回発行債50億ユーロの20%以上を購入。今後も買う、と表明したことがある。いわば「恩返し」というわけ。

 チャートでは31日の引け値が82円以上なら88~9円も望めそう。外国人勢が「円買い株売り」から「円売り株買い」に転換しているのもそうした流れからだろう。

 映画のセリフから。野盗の頭目が射たれて瀕死の苦い息の中から7人のガンマンの頭目に聞く。「なぜなんだ。こんな関係のないところになぜ命をかけるんだ」。義に応じて立った戦いだ。返事はない。今回の市場介入には理由があったが。

2011年3月20日 (日)

映画「ブラインドネス」と東北関東大震災の日本経済への打撃(546回)

 「ブラインドネス」はノーベル賞作家サラマーゴの小説「白い闇」の映画化。私は大傑作と思う。2008年カンヌ映画祭のオープニング上映だけでなく本命コンペ部門にも出品されただけのことがある。監督フェルナンド・メィエレス。主演ジュリアン・ムーア。

 どこかの外国。町の真ん中で日本人の若い男性が運転中の車を急停止させる。突如としてこの男は失明してしまった。診断した医師も全く原因がわからない。医師自身を含め失明する人が続出。政府は多数の患者を強制隔離して施設に入れる。

 失明した医師の妻は夫を支えるため、自分も感染したふりをして刑務所のような施設に入る。食糧は差し入れのわずかな量。入浴設備もない、何もかもないないづくしの生活が始まる。

 東北関東大震災のニュースには本当に胸が痛む。改めて被災者の方々に、お悔やみを申し上げる。また寒さの中、食糧も水も灯油も薬もない生活を我慢しておられる生活が、一日も早く終わることを切に祈る。

 暴力の支配する映画の中の施設と全く異なり、他人を思いやりながら生きていることが、世界中の驚嘆と賞賛の的になっている。日本人のよさが、改めて注目されていることが誇らしい。

 しかし、経済の方は、恐らく月曜か火曜に出てくる経済週刊誌で特集されるだろう。私が大手シンクタンクに対抗できるはずがないので、一応、阪神淡路大震災のときの記憶を申し上げておこう。

 第一はこのての災害のときは成長意与える短期的な打撃は過大評価されやすい。また電力の供給制限からの生産ダウンも同じ。逆に震災の復興特需も過大に見積もられやすい。要するにオーバーな予想は信じるな、ということだ。

 クレディスイスの白川浩道さんは、阪神淡路震災時との比較を行っている。

 第一に被災地の総生産規模は兵庫を中心に70兆円。これに対し、岩手、宮城、福島、茨城の4県で32兆円。

 第二は被災地の経済的損失。直接的な家屋などの建物被害にプラスして間接的な物流、生産、雇用などを合わせてみると阪神が40兆円。これに対し今回は17~18兆円。

 そこで被災地に限定した政府の緊急経済対策の規模は、阪神の3兆8000億円に対し三分の二程度で2兆円台の半ば、と白川さんは推定している。

 阪神の1995年は地下鉄サリン事件や1ドル79円75銭の超円高があり、道路などのインフラ障害も懸念されていた。それでも7~9月期まで年率3%台のプラス成長が続いた。

 今回は電力などの生産障害が注目されているが、日本の企業のこの種の対策は速い。成長率への打撃はごく軽いと考える。神戸のような都市部でなく、今回は地方の災害なので、影響は少ないと思う。

 それでも福島第一原発の問題があるではないか、といわれるかもしれない。

 しかし、英国の原子力専門化数人のミーティングの報告によると「あと1週間後には、海水注入を続けることが出来れば原子炉は冷え、大きく状況は改善される」。

 「現在の20キロ回避の政策は現状の放射能のレベルに対し適切で、東京の住人の健康に悪影響はない。」

 「日本政府からの情報は複数の独立した団体でモニタリングされ続けているが、正確である。

 また私が注目しているのは米国の空母が日本海側にいるのは、中国人民軍の日本侵略を防ぐため、という情報だ。そうかも。

 原子炉に対する海水注入を含めて米国の支援は、かなり大きい。

 米中の対立は激しく日本がしっかり復興されるためには米国は対日援助は惜しまない、と見ていい。普天間、TPP参加に伴う農産物市場開放など、対米関係はまあ日本は米国へのへの借りを作ったと考える。この件は別途またブログに書くつもり。また私は3月26日から8日間主にニューヨークとワシントンに行くので、その間はお休み。あしからず。

 映画のセリフから。日本人の男が最後に急に眼が見え出すのだが、その前に言う。「オレたちは以前はほんとうはモノが見えていなかったんじゃないか。」災害のおかげで助け合いの大切さをわかった若い人たちが多いのは、暗い時期での大きな光明だ。

2011年3月17日 (木)

映画「悪魔を見た」と円高、株安〈第545回)

 韓国映画のクライムものの秀作。パンフレットにニーチェの言葉が引用されている。

 「怪物と闘うものは自らが怪物と化さぬよう心せよ。」その通りで、この映画に出てくる悪の化身がスゴい。あのレクター博士を思わせる狂気が全身から発散する。「オールド・ボーイ」のチェ・ミンシクが怪演。

 自分の婚約者を惨殺された国家情報員(イ・ビョンフォン)が独自捜査でこの犯人を見つけるが、左の手首を折ってGPSを入れたカプセルを飲ませ、解放してしまう。

 目的は犯人にさらなる苦痛を与えることで、次の犯行に及ぼうとすると情報部員が必ず現れてぶちのめす。しかしとどめはささない。そのうちに苦痛を与えることに快感を覚え始めるー。

 前回、13日に書いたこのブログで、私はヘッジファンドの円高戦略が恐るべきことをもっと警戒せよと主張した。

 その後わずか5日目。対ドル76円台に。1日で3円50銭も暴騰。しかもニューヨーク市場で、である。派手にやってくれたものだ。

 再びこの円高について説明する。

 ヘッジファンドは何か大量の買いをいれると、その分どこかで売ってヘッジする。だからヘッジファンドだ。

 今回は原油の先物市場で大量買いし、その分ドルを売った。売ったといっても通貨市場での売りだから代わりにどこかの通貨を買う。そこで円が買われた。地震と津波と原発という三重苦の中で、円が弱いどころか強くなるという奇怪なことになったのは、このヘッジファンドのせいである。

 表面上の円買いの理屈は「95年の阪神淡路大震災の時にはやはり円高だった」。何を言っている!

 私は94年9月に当時の米クリントン政権の意を受けたヘッジファンドの円高作戦を察知「95年春1ドル80円」と署名入りで一流経済誌に論文を書き警告した。

 ヘッジファンドは「日本は輸出国だから生産者物価で、一方米国は輸入国だから消費者物価で計算し、購買力平価で妥当円レートを算出する」という理屈だった。

 今回はそちらは放棄し、損保会社が外貨建て資産を売却して円に替え、本国送金するーというストーリーだ。これは損保協会会長が否定している。

 17日にこの否定報道があり、また売買量から見てとりあえず76円台で目先は止まる可能性大。

 17日にセミナーを開いた若林栄四氏は以前から「2012年74円」が円高の大天井、という見方を早くから公表していた。同氏はこの見通しは変えていない。しかし同氏は「原発騒動は今月一杯で終わる」という楽観論に立ち、「3月末に82円以下で終われば、その後6ヶ月で80円台の上の方(88~90円)までドル高」と見ている。従来も適中させてきた人の意見だけに貴重だ。

 私が最も円高対策で待っているのは、短期金利の引き下げ、具体的には0.1%から0.01%へオペ金利、当座預金付金利を引き下げる。

 いま民間金融機関(外銀も含む)の日銀当座預金のうち必要準備を超過する分に0.1%の利息をつけている。この政策は2008年11月に導入され、当初2009年3月までのはずだったが、いまだに実施されている。

 このためドルを売って得た円資金を、外銀の日銀に預けている。この残高は急増している。0.1%は米国並みで、日米の金利差はゼロだが、これが円高の要因になっている。

 要するにドルと円との短期金利差を再拡大させない限り、円高基調は不変である。日銀の猛省を望みたい。

 映画のセリフから。ラストに主人公は犯人に言う。「お前には死んだ後も苦しんでほしい。」これがこりずに何回も犯行を重ねた悪のシンボルの最後。そろそろヘッジファンドのカラクリに当局も気がついてもいいころだが。

2011年3月13日 (日)

映画「ジョーズ」とヘッジファンドの円高仕掛け〈第544回)

 スティーブン・スピルバーグがわずか27歳で監督し、あの「激突!」に続いて一挙に名匠の名をほしいままにした傑作中の傑作だ。これがアカデミー賞の作曲、音楽、編集しか取れなったのは不思議というほかない。

 海水浴場のアミティ島で若い女性の遺骸が発見される。警察署長のブロディはサメの被害者と考えビーチの閉鎖を主張する。

 しかし観光客による町の収入を重視する市長は取り合わず、そのうちにビーチで少年が第二の犠牲者になる。

 ブロディは経験ある漁師と海洋学者と三人で小さな船に乗って、途方もない巨大な人食いザメに立ち向かう。ジョン・ウイリアムスのあの恐ろしい音楽!

 観測史上最大の地震、津波、そして原発のメルトダウン危機。週明け以降の株と為替が不安視されている。

 私は、恐らく円高と株安のセットになるーと考える。不安である。

 そんなバカな。円安のはずだ、といわれるかも知れない。

 しかし、為替市場の動向を握っているヘッジファンドの現在取っている作戦は、原油市場の先物買いとドル売り(円買い)である。

 なぜか。

 ご存知の通りリビア情勢が緊迫化した2月下旬から、NY市場の原油先物買いが、大量に積み上がった。この先物買いと同額が、ドル売り・円買いだ。

 最近のヘッジファンド中心の外国人投資家の国債投資は、短期国債を中心に国内金融機関の投資を上回っている。

 日本国内では財務省の財政破綻懸念キャンペーンを中心に不安感が言われている。しかしヘッジファンドはまるっきり信じていない。

 日本の銀行は預金をそのまま国債の購入に当てている。また世界最大の債権国であるし、貿易収支の黒字も巨額だ。

 だから円も国債も急落する心配はほとんどゼロだ。原油市場の動きを見てから、日本国債を売買できるのだから、石原都知事と同じ。後出しジャンケンだ。

 具合の悪いことに、日銀の政策も、円高にかける外国勢に有利に働いている。

 民間の金融機関の日銀当座預金のうち必要準備額を上回る分に0・1%の金利が付く。これは2008年11月に導入され、本来は2009年3月で終了のはずだがまだ止めていない。

 外国銀行はドルを売って円の買いを、安全で保証され金利が付く日銀にあづける。円高が進行するのも当然である。

 本来なら、今回の大震災は円安材料のはずだが、私は日銀がもう少しヘッジファンドの動きを研究して対策を講じない限り、円高はまだ続くと見るほかない。残念だが。

 恐らく95年のときとおんなじストーリーが言われるのだろう。つまり日本の投資家があわてて外貨建て資産を売却して円に換え、本国送金した、というものだ。ウソツケ。

 映画のセリフから。巨大サメは何と体長8メートル、3トンはあろうという怪物だった。この姿をはじめて見たブロディが言う。「もっと大きな船が要るゾ。」もう1兆9200億ドルに近いヘッジファンドを軽く見ないことだ。

2011年3月 9日 (水)

映画「ツーリスト」とあえて言う「菅総理留任せよ」(番外編)

 ジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリーという大スター二人。舞台はヴェニス。只今ヒット中の楽しいミステリーだ。

 「ツーリスト」というタイトルだけからは旅情ものと思うが、ヒッチコックの「北北西・・・」型の誘い込まれ型のサスペンス。

 当局から監視されている美女が勿論アンジーで、その恋人の重要指名手配犯を逮捕すべく大捜査網が敷かれている。

 その恋人からのメールで体格の似ている男を探して同行せよ、と。そこで車内で平凡な数学教師を逆ナンパ。自分のホテルに誘い込む。そこからの展開はー。まあ見てのお楽しみだ。最後のオチも後から考えれば伏線十分。

 前原外相の辞任やら予算関連法案の見通し難とか、不支持率急上昇とか。やけっぱち解散説、内閣総辞職説が飛び交っている。

 ちょうど映画の終わりに主役二人が、どうにもならない窮地に陥ってしまったようなものだ。

 しかし、私は敢えて言う。菅総理は少なくとも6月か7月までは、辞めるべきではない。頑張るべきだ。まあ私がこう言っても、世論どおりになってしまうかもしれないが。

 以下、私が留任すべきと思う理由を述べる。

 第一。予算関連法案が否決されても、政府短期証券などで7月か8月までは財政は保つはずだ。

 否決されたら野党に責任があるはずだから議員報酬を停止するか、官僚のサラリーを何十%かカットすればいい。世論は支持するだろう。

 第二。民主党内部は勿論、私の聞いているところでは自民党も少なくとも当分は選挙は望んでいない。先日のあの16人のうち5人が民主党の地盤だった東海地区だ。落選は誰でも怖い。 

 第三。TPPも農業改革も、税と年金との絡みも「6月には」と公約している。これらは私は支持する。正しい政策だ。これらの政策パッケージを通せ。

 政治家として後世に名を残すようなことをしてから、辞めればいい。サミットもあるし、やはり出たいだろう。三木おろしに似た周囲の動きだが、総理の権力は強い。

 かつて仏大統領ミッテランは民主党のマニフェストに似た公約で当選、発足後しばらくは国有化など社会主義政策を推進した。

 しかしすぐに現実に目覚めて180度転回、長期安定政権になった。この例を学ぶべきだ。

 第四に「反菅」を主張している自民党も小沢氏をそのグループにも論理上のムリが目立つ。

 まず自民党。消費税にしても日米関係にしても、自分たちの主張に相手側が寄ってきたのだから歓迎していい所だが「マニフェスト違反」を追及。軍事外交で最も近い前原外相を攻撃した。ロジックにムリがある。

 小沢氏も同じ。いわゆる政界再編に伴って行き場を失った助成金とか、時効になった違法政治献金の説明が出来ていない。あるベテラン政治部記者によると30億円以上。1回も公開したことがないとも聞いた。

 潔白ならそれが証明されるまで、蟄居というのがスジだろう。昨年の代表選のときの政策には見るべきものがあったが、カネの問題で何も進展がないのには大失望だ。

 結論。私はヘソ曲がりかもしれないが、後任の総理がアンチTPPとか税と年金とかでポピュリズムに陥るのがイヤだ。与論とやらは間違っている。

 映画のセリフから。警察の首脳が追求している理由を言う。「巨額のカネをギャング団から盗んで7億4400万ポンドの脱税をしているんだ。」そういえば、巨大脱税のあの人を税務当局は放置しておくのかしら?

 ついでに。61年ぶりに鉱業法を改正するとのニュースは大吉報だ。これは近いうちに。

 

心配でならない6月17日の尖閣(先見経済2011年3月15日号)

 昨年9月の尖閣島での中国人船長の事件を、忘れている方はいないだろう。誰しもが中国の無法な強欲振りと自分勝手な押し付け、そして日本の政治家の弱腰ぶりに憤りを感じたはずだ。

 あの事件の後、海外に移住した華僑の二世、三世のグループ「新華僑」が「1,000艘の船をチャーターして尖閣列島に押し寄せ、同島を占拠する」という記事が香港の「亜州週刊」に掲載されている。

 その日が「6月17日」というところに私は深く懸念している。

 この日は、昭和46年(1971年)に沖縄返還協定が調印された日である。つまり尖閣列島を問題としているなら、明治28年(1895年)の日本領編入の日を問題とするはずなのだが、中国の一部の人たちは沖縄も問題としているのである。

 言葉を変えれば、この日を選んだということは、単なる領土意識や中国人独特の拡張主義の発想ではない。 日米が調印した日を問題とする、というのは国際政治で米国が世界を支配していた時代の国境は認めない、ということだ。

 恐らく共産党指導部とか人民解放軍の参謀本部が立案し、中国の民衆や在外華僑団体を指導していなくては、民衆の中からの自然を発想ではありえない、と思うのである。

 これに対し、日本側の対策は十分なものなのだろうか。先日の船長開放を思い出すと私は不安でならない。

 というのは中国の最近の国内情勢が民衆の不満を高めており、先日の反日デモと同じく主に権力闘争を背景にした官製の反日運動なので、そう簡単におさまらないと考えられるからである。

 中国はこれまででも次から次へと反日テーマを見つけてきた。歴史教科書、靖国問題、南京大虐殺、旧日本軍の遺棄した化学兵器などなど。その都度、進歩的文化人が必ず日本の方に非がある、として結局中国側は自国の意図を貫徹させてきた。

 今回だけは違う。民主党政権のあまりの弱腰にあきれ果てて、中国支持どころか反中国デモも発生した。

 それはそうだろう。中国はあまりに勝手で自己中心だ。かつては尖閣のセの字もいわなかったのに、大量の原油・ガスが発見されてから急に自国のものだ、と言い出した。同時に「600億バーレルないし1500億バーレル」という推定埋蔵量を発表した。これならイラク並みの産油大国だ。

 しかも中国は無謀なまでのエネルギー消費の拡大を続けている。

 国際エネルギー機関IEAの調べでは、すでに2009年に米国なみの石油換算エネルギーに達した。勿論一人当たり消費量に直すと中国は先進国の三分の一に過ぎないが。

 しかし中国は今後20年間、7%成長という目標を掲げている。7%成長で20年ならGDPは4倍になる。4倍になったGDPを支えるエネルギー、資源、食糧も4倍か、場合によっては4倍以上になる。まあ資源は有限であり、かつての日本が石油ショックから10%成長が4%に成長したようなことになる、とは思う。そうは思うが私は中国が他国から資源を奪って成長を続けよう、としているのだろうと考える。

 狙われている日本。6月17日には何としても1,000艘の漁船が尖閣を占領する事態を避けなくてはならない。その覚悟が、民主党政権にあるのか、どうか。

2011年3月 8日 (火)

雲散霧消しかねないユーロ圏(「選択2011年3月号)

この稿を書いている2月下旬現在、市場では国債入札が順調に行われ、危機感後退。ユーロの対ドル、対円レートは上昇、欧州財政問題はもう大丈夫―という声すらある。

 飛んでもない。現在はいわば春の嵐の前の一時的な小春日和で、問題はこれからだ。

 ごく一例。アイルランドは本号が刊行されるころには総選挙が終了、政権交代となっていようが、公的債務を返済すべく中央銀行は四半期のGDP予測を前期の2.3%から今期1%に下方修正、つれて財政削減幅も前期予測の倍の60億ユーロとした。あまりにも厳しい緊縮政策に、アイルランド国民も悲鳴を上げ始めた。

 表面上国債は消化できているが、調達金利は9%と、持続的に返済可能な 水準ではないことは明らかだ。

 そこで国家としての選択は①昨年11月決定のIMF,EU,EFSF(欧州金融安定機構)の援助を受けながら、時間をかけて返済に努力する②債務リストラ(デフォルトと同意)の2案あり、三分の一の債務削減で負担を軽減すべし、の2案が浮上、新政権が②を採択する可能性もいわれ始めた。

 市場が一時的にパニック状態に陥るかもしれないし、欧州の銀行は資本増強が必要になる。

 どうしてそんな乱暴な話が出るのか、それはアイルランドの銀行の発行している銀行債の元本削減(ヘアカットと呼ばれる)があるからだ。

 日本は銀行の資金調達は個人を中心とした預金だが、欧州では銀行債が普通だ。

 銀行債は元利金支払いが優先的に受けられる優先債と支払い順位が後の劣後債とがあり、これまでは劣後債が元本7割減という負担を受けさせられてきた。しかし最近「優先債にも」元本削減して負担させるべきだという声が高まっている。まあアイルランド国民としては、痛みを共有してほしい、というのは当然だろう。

 こうして3月のアイルランド危機は必至という情勢になりつつある。

 どうしてアイルランドをここまで書いたかというと、同じ財政危機でも放漫財政の典型のギリシャとまったく状況が異なり、ポルトガルやスペイン、場合によってはイタリアまで銀行危機が波及しかねないためだ。

 アイルランド危機は住宅バブルだ。ユーロ参加のメリットを生かしてアイルランドの銀行は欧州の各国から資金を借りまくり、10年間で不動産価格は4.5倍。ところがリーマン・ショックで資金調達が不可能になり、アイルランド政府の財政赤字対GDP比32%のうち20%を銀行の損失を埋める増資資金に充当した。

 それでもアイルランドの国内銀行の総資産はGDPの4倍という途方もない規模になっている。その劣化は止まらず、まだ底が見えない。

      遅れている欧州の行動

 「要するに、米FRBのあのリーマン・ショックを救済できなかった状況と同じです」とロンドンに在住の国際金融のある専門家は言う。

 米FRBはサブプライム危機に対し、「流動性危機」への対応というルールに立っていた。ところが2008年9月15日のリーマン経営危機は「ソルベンシー危機」で取り付け問題だった。そこで救済できなかった埋め合わせにTARPを作った。 ところが昨年5月に作られたETFSは基本的には繋ぎ資金を供給する流動性危機対応型の仕組みに過ぎない。昨年末独メルケル首相が「ヘアカット」について言及したのは、ある意味で当然だった、といえる。「欧州の政治家で最初に本当のことを述べた」と前記の金融専門家は高く評価している。

 「それでも、問題の緊急性から見て、2013年の新発国債から」というのは遅すぎる。現時点で一刻も早く既 発の国債にもヘアカット(債務減免)を実施してBIGPISなど周辺国経済の債務リストラを実施しなければ、周辺国の経済が立ち行かなくなります。」

 アイルランド救済は、その後ポルトガル、スペイン、ベルギーなどの国債金利が跳ね上がったという意味で、ギリシャ危機以上の大失敗だったと同専門家は断言した。

 では、今後どうなるか。

 ギリシャでもアイルランドでお政府が負っている債務は「対外債務」なので、ソブリン問題の解決には大幅な貿易黒字が必要。しかし、ユーロ圏の国である限り、自国通貨安で貿易を有利に行うことは出来ない。

 となると「かつては独逸のユーロ離脱というシナリオが議論されたが、いまはBIGPISの離脱の方がより説得力が強い。」とある米系ヘッジファンドのマネジャーは言う。

 その離脱の前提として、次の三つの2011年の問題がある。第一はユーロ安のおかげで現在では輸出主導のドイツ経済の好調が続いている。しかし、ドイツの輸出の5割はユーロ圏向けなので、危機がスペインやイタリアまで及べば景気減速は避けられない。しかも欧州諸国は2011年から一斉に財政の大幅引き締めを実施する。

 第二の理由はユーロ圏銀行のソブリン債保有額は巨大でヘアカットと債務リストラが不可避になった場合の損失は大きいが、そり上に国債の売買市場が縮小して資金繰りがつかなくなった場合の影響が大きい。

 また第三に2011年はユーロ発足以来最大額の国債借り換えの必要性に迫られている。

 PIIGSプラスベルギーでBIGPISは賃金と物価を下げれば下げるほど債務負担は重くなってくる。

 そこで本来なら、財政収支の赤字を回復させてから始めて債務リストラ(デフォールト)を発表するのだが、その前に「ユーロを離脱して自国の通貨を復活させ、ユーロ建てのソブリン債はデフォールト、そしてその発表以降の国債の消化は中央銀行の直接引き受け」という、1930年代のナチが実行した政策が実行されるー。

 以上が大手米系ヘッジファンドの予想するシナリオである。このマネジャーは昨年秋から継続してアイルランド国債を売っていた。QEⅡの発動が確実になった10月末ごろから、アイルランドのほかスペイン、ポルトガルなどの国債のCDS(債券破綻保険)を大量に売った。これはギリシャのときの手口と同じである。

 11月10日にアイルランドで銀行倒産が起きたのを気にロンドンの債券市場のクリアネットはアイルランド国債の先物の預託証拠金を15%引き上げた。買い支えようとしていた欧州中央銀行は買い出動効果が著しく減殺された。これで危機は決定的となった。

 問題は、景気が良いドイツでさえ、将来のユーロ圏への不安感を持っていることだろう。

 昨年12月26日ドイツ紙ビルトは世論調査を発表、ドイツ国民の49%がマルク復活を支持しておりユーロ存続支持は41%、ユーロの将来に懸念している国民の比率は67%に及んだ。破局への予感はドイツでも拡まっている。

2011年3月 5日 (土)

映画「ヒアアフター」と中東ドミノと株式市場〈第543回)

 製作スティーブン・スピルバーグ、監督クリレト・イーストゥッドという物凄い組み合わせで、主演マット・ディモン。只今ヒット中だ。

 「ヒアアフター」とは来世のこと。誰でも幼いころ、大人たちに「死んだらどうなるの?」「死んだらどこへ行くの?」と聞いた記憶があろう。

 この死という、誰にとっても100%確実の未来にマトモに取り組み、しかも面白く充実した映画になっている。佳作と思う。年配の方にお薦めしたい。

 ストーリーは込み入っている。三人のキャラクターが並行して進む。フランス人のマリー、英国の少年マーカス、米国のジョージ、それぞれが最後には生きる喜びを見つけるが、その前に死に直面して苦悩する。

 いま展開している中東ドミノについて、私は2月末に書いた第541回で一過性の原油高という見方を述べた。再び書く。

 リビアの世界の石油市場におけるシェアが低いことやサウジの増産によるカバー、カダフィーの早期の失脚を前提とした一過性の上昇と見る。また世界の原油の18%を運ぶペルシャ湾の船舶の動きにも変化がない。

 私には「第三次石油危機」説は信用できない。

 市場での価格は現在の情勢だけでなく、将来をどう読むかで決まる。弱気説の高まりは原油高だ。

 たしかにドル安が過去2回の石油危機の引き金になった。その体験からすると、今回の「中東ドミノ」は基本的には米国を支持していた独裁者への反乱の成功で、イスラム化、米国への反感の高まりから、原油価格バーレル200ドル説が言われるのもうなづける。

 バハレーンやサウジの王政まで危ない、と見るなら、それは米ドルの基軸通貨制度の崩壊であり、超ドル安、そしてインフレだ。この世の終わり、といっても良かろう。

 そうなるか。私はまずエジプト軍部がこれまでのイスラエルとの平和条約を守ると声明。中東和平が守られることに注目している。

 第二はサウジアラビアへの革命波及の可能性が少ないこと。

 あの国は人口の85%をスンニ派の中のワッハーブ派が支配し、サウジ王家派はこの穏健な宗派指導者と共生している。

 だから1979年のイラン革命後、シーア派ホメイニ師の革命輸出に対抗した。またかなり暴力的なイスラム原理主義者の挑戦も退けてきた。

 今回もサウド王家は①バハレーン王家への支援②360億ドルもサウジ国内の公務員給料引き上げや住宅購入、企業支援などで国民にバラまく、などの対策を発表した。

 一人当たりGDP2万4000ドルと中東では豊かだし、英フィナンシャル・タイムス(2月28日付)が言うように「サウド王家は簡単に倒れない」。

 私も後何十年も保つ、とは思わない。しかし今回の中東ドミノがサウジ崩壊とまで行く可能性は極めて少ないと考えている。

 NY市場で「原油高→消費不況」のシンボルと考えられているウォールマート株は昨年末の58ドルから最近50ドル近くまで売られた。

 しかしこの株価は2009年4月と同水準。リーマン・ショック直後の39ドルよりずい分上だ。市場はまだ強気、と見ていい。

 世界中の中央銀行が、マネーサプライを増やしているし、物価上昇と比べて短期金利は日本や豪州を除いて、アジア諸国は低い。つまり実質政策金利は、マイナスだ。これは株高を支える。

 勿論、金価格は上昇。株価の調整も日本もNYも軽いだろう。

 私が海洋資源開発関連として注目していた日本海洋開発は、ここ3ヶ月で2000円近辺から3700円に上昇。いくらなんでも早すぎるが、株価は動き出した。強い相場の証拠。

 映画のセリフから。避暑地で津波に会い瞬間死んで蘇生したマリーが言う。「津波の水の中で何かが見えたのよ。」恋人が言う。「脳震盪のせいだろう?」長期にどう変わってゆくかは勿論不明だが、今はまだ過剰な不安は不要だろう。

« 2011年2月 | トップページ | 2011年4月 »