今井澂プロフィール

講演・出演など

お問合せ


« 映画「引き裂かれた女」と外国人投資家の弱気転換〈第551回) | トップページ | 映画「ダイ・ハード」とQEⅡと金価格・株〈第552回) »

2011年4月21日 (木)

映画「キラー・インサイド・ミー」と米国の株急落不安〈第552回)

 先日私はニューヨークとワシントンに出張して、機関投資家やヘッジファンドの運用担当者と面談した。その後も連絡を取り合っている。

 只今ヒット中の映画「キラー・インサイド・ミー」は、ちょうど現在の米国株式市場の状況に似ている。まず映画の方からー

 ジム・トンプソンという原作者はごく近年再発見され評価が高まっている。ペキンバー監督、スティーブ・マクィーン主演の「ゲッタウエイ」の原作者。スティーブン・キングによると「白鯨」や「ハックルベリー・フィンの冒険」に並ぶアメリカ文学の傑作がこの「おれの中の殺し屋」だそうだ。いかにも、ものすごい小説だ。

 1950年代テキサスの田舎町の保安官補ルーは、上司に最近流れてきた娼婦を町外に追放せよと命令される。職場では勤勉で人当たりがよく婚約者もいるルーだが、この娼婦と会って関係して、長年封じ込めてきた暴力衝動が抑えられなくなり、人を計画的に殺して殺して殺しまくる。私は高く評価する映画だ。マイケル・ウィンターボトム監督。

 一見順調に見える主人公の毎日が、内面にコワーい暴力への憧れを抱えている。ちょうど現在の市場に似ている。

 なぜニューヨークの株価がコワーいのか。理由は後で説明する。

 ともかく「現時点で米国の大手資産運用会社と銀行でトリプル安うを検討していないところはない。とくに日本の大震災とS&P社の米国国債の格下げ検討ーのニュース以来、どこも真剣になっている」と現地の事情通は言う。

 トリプル安というと、株安、債券安(長期金利上昇)、ドル安のこと。1987年10月19日ブラック・マンデー、ダウ平均508ドル、23%の暴落が想起される。

 「恐らく秋と考えていたが、場合によってはもう少し遅れるかも。それは明年の大統領選にブツける反オバマ暴落の性格があるからだ。」たしかに年末あたりから予備選挙が始まる。

もともとウォール街じめのオバマ政権には弱点が多い。

 中間選挙で勝利した共和党は財政赤字の巨大化に反対。債務の上限引き上げを強行するなら米国国債を無理やりデフォルト〈債務不履行)させるゾとおどしている議員もけっこういる。4月9日には民主。共和両党の争いがこじれた挙句、予算切れで政府業務ストップ寸前という危機的状況があったほどだ。S4P社の米国国債格下げはこれが背景である。

 このほか、トリプルやすにつながる不安材料は数多い。

 まず東北大震災。日銀は米国国債の有力な買い手だが、当分買える状況にない。すでに昨年10~12月で米国国債の63%はFRBの買いによるもの。もっとFRBへの比重が高まることは下げ材料だ。

 肝心の株価。昨年から量的金融緩和(QEⅡ)で6月まで6000億ドルを使ってFRBは米国債を購入、同時にリーマン・ショック以降購入した住宅ローン担保証券(HBS)の満期になった分、大手証券会社に資金を回して株価を支えている。

 住宅価格が依然下落を続けている米国、マイナスの資産効果を補うための株高で、ダウ1万4000ドルが目標と聞いた。無理して支えている株価なのでどこかで破綻する。

 QEⅡが6月に期限が切れた後、QEⅢが債券・株式を支えればいいが、前記した政治情勢からかなり難しい状況だ。以上から、そう遠くない将来、第2のブラックマンデーは必至と見られているわけだ。

 米国の大幅株安が発生すれば日本も影響大。世界にも伝播しショックが起きよう。次のツナミはウォール街から、となりそうだ。

 小説の中で主人公ルーが娼婦に悪態をつかれ、平手打ちにあいながら考える。「この場所から出て行かなくては。絶対に。殺すまでいかなくても、オレの体の中の病気がぶり返すかもしれない。。」でもルーの体のもう一人の自分が目覚めてしまう。解説の中でスティーブン・キングは「人類愛の時代を迎えてはずの世界に広がった孤立感」と表現した。うーん、そうかも。

« 映画「引き裂かれた女」と外国人投資家の弱気転換〈第551回) | トップページ | 映画「ダイ・ハード」とQEⅡと金価格・株〈第552回) »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 映画「引き裂かれた女」と外国人投資家の弱気転換〈第551回) | トップページ | 映画「ダイ・ハード」とQEⅡと金価格・株〈第552回) »