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2011年5月26日 (木)

映画「アウェイク」と復旧・復興・成長(第558回)

 医療サスペンス・スリラーで、まことにユニークな佳作。只今ヒット中だ。

 1年で2100万人の患者が手術のため全身麻酔を受けるが、運の悪い3万人は「術中覚醒」になる。眠っているように見えるが意識や感覚ははっきりしており、想像を絶する苦痛から逃れられない。悲鳴を出そうにも声に出ない。

 主人公の若い億万長者の悩みは二つ。秘書サムとの身分違いの恋を母親が認めてくれないこと、それに生きるために心臓移植手術を受けなければならないこと。漸くドナーを得て手術を開始するが、そこでは飛んでもない陰謀が企まれていた。そして意外や意外の展開。

 今回の題は25日の日銀白川総裁の講演「大震災後の日本経済―復旧・復興・成長」からお借りした。講演そのものは国債の日銀引き受けを峻拒するのがポイントで、あまり前途に希望を持たすものではなかった。

 あの大震災から2ヵ月半。ようやく私には大震災で日本経済が真に取り組まなければならない問題が見えてきた。

 大切なことは、大方のエコノミストやシンクタンクの今後の予想が織り込んでいる前提が、恐らく間違っていることだ。

 第一。「6から9ヶ月もすれば、サプライチェーンの修復、電力不足の危険性のピーク越えで供給不足は終了する」。これはまだとってもそんな楽観的な立場に立てない。外国の日本部品のユーザーがたとえば韓国や台湾の商品に乗りかえる可能性は大きい。

 第二が復興需要への過度な期待。今回の震災被害地は国内で最も過疎で高齢化が進んだ地域で、再建資金を持つ個人や企業はごくごく限られている。応急措置の単純な復旧に限られ、経済効果は小さい。

 第三に企業が今後も日本に残るという思い込み、法人税の減税期待はどこかに吹っ飛んで、TPPも怪しくなっている。それなら関税面で有利、為替レートも常に安い韓国に行った方を自分の会社の生き残り戦略として考えない経営者はいないだろう。

 第四が政治面での混乱の軽視だ。無能で人気取りと保身しか考えない政権の迷走は、対東電原発処理の例を見ても良くわかる。しかも菅おろしの後、誰が後継者となるかわからない。かわっても、復興後の成長シナリオが打ち出せるのか、どうか。

 第五が「国民は復興のためなら負担増を甘受するだろう」という勝手な思い込みからの増税方針で、これは意図して軽視されている。

 結論。今年から来年にかけて短期的な回復はあるだろうがいずれ「日本復興」ではない。新しい成長が見えてこない以上、「復旧」は落としたボールのリバウンドに止まる。私は当分、弱気だ。

 映画の中では口惜しさと痛みで、声も出せず身体も動かせない主人公は涙を流す。かつてのTV「ヒッチコック劇場」でジョセフ・コットンが涙を流す。死体扱いされても自分が生きていることを他人に伝えられない恐怖を描いた。あれのパクリだろう。今回、国民は政治の迷走で心の中で涙を流しているのではないか。

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