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2011年5月12日 (木)

映画「ブラック・スワン」とV字型回復説への疑問〈第555回)

 「ブラック・スワン」は第83回のアカデミー賞で、作品、監督など4賞にノミネートされ、ナタリー・ポートマンが主演女優賞を獲得した秀作。ヒット中だ。

 バレエの世界を舞台にした映画というと、あの「赤い靴」を思い出すが、この作品は心理的スリラーでもあり、超一流の才能を持つ美少女の成長過程をリアルに描いたドラマでも。見応えのある作品。監督ダレン・アロノフスキー。

 NYのダンサーのニナは次回の「白鳥の湖」で主役に抜擢されるが、過保護に育てられてまじめなニナは、白鳥役は完璧に踊れるが、魔性のシンボルの黒鳥を表現し切れない。

 才能に期待する芸術監督には厳しく追い込まれ、挫折した元ダンサーの母親も口うるさい。ライバルの奔放なリリーからは突き上げを食らい、徐々に二ナの精神は異常を来たして、現実と妄想の区別がつかなくなってゆく。

 3月11日の大震災から2ヶ月。経済企画協会による43のシンクタンクの経済見通しの平均値は、1~3月期のGDPは前期比率マイナス1・94%で、4-6月期は同マイナス4・54%。これが底で7~9月期1・88%、10~12月期4・59%のともにプラス。(4月12日発表)。

 要するにV字型回復だ。

 ホントにそうなら嬉しいね、という歌があったが、どうしても私には信じがたい。ニナの幻想みたいなものかもしれないとさえ思う。ボールを落として反動で弾むぐらいはあるだろうが。

 私の弱気理由は三つ。第一。3月はたった10日間の震災の影響でも鉱工業生産は15%もダウンし、消費も8%以上の低下で、ともに史上空前の落ち込みだ。その後の街角の景気の寂れようから見て、あと2ヶ月つまり6月でプラス成長に戻るかどうか。自粛の影響は残る。

 第二は電力不足。今度の浜岡原発だけでない。各地方自治体の首長が修理や点検中の原発の運転再開を認めないとすると、コトは容易でない。

 そして第三が、私が最も恐れている「日本外し」だ。

 日本のハイテクによる半導体や電子部品、自動車部品が震災で内外ともに供給が止まってしまった。これをチャンスとばかり、中国や韓国、台湾が狙う。

 5月10日付朝鮮日報は「世界的なスマートフォンの米国、カナダの調達担当者が日本から韓国に転換中」と報じている。一たん市場を失ったら、回復は困難だ。

 たしかに経産省の実態調査では70工場のうち64%がすでに復旧し、7月ごろには90%が復旧する。また「そう簡単においつかれない」という現場の自信も聞こえてくる。

 しかし「また地震やツナミが来て日本のサプライチェーンが打撃を受けたら」と世界のメーカーは考えるに違いない。日本のシェアは下がる可能性大と思う。

 内需がダメ、輸出も回復しなければ、V字型の回復は、ない。私の心配は老爺心(老婆ではなく)だろうか。

 17555年、ポルトガルの首都リスボンにM8・7の大地震と津波が襲った。世界第2位の経済大国でスペインと世界を分けていた大国は6万人が死亡し、リスボン湾が機能不全に陥りGDPの半分が失われ、英国に遅れを取って没落の途を辿った。イヤな前例だが。

 私は証券会社にいたから、一たん天井をつけた株式相場が下げに転じると「もうヤメてくれえ」といいたくなる位、次から次へと悪いことが起きてくるものだと知っている。国の勢いもこれに似ているのかもしれない。これが間違いなら嬉しいが。

 映画のセリフから。芸術監督がニナに言う。「君の前途に立ちふさがっている人物がいる。君自身だ。」早いサプライチェーンの復活を切に願う。

 〈注)ここまで書いた分を読み返してみて、うーん、オレにしては弱気すぎると思った。強気の見方も、勿論、ないわけじゃない。それは次回以降で。

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