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2011年7月16日 (土)

映画「サンザシの樹の下で」と米国債デフォルト不安(第568回)

 中国ナンバー・ワンの名監督チャン・イーモウの最新作。「HERO」「LOVERS」の武侠ものでなく「初恋の来た道」に近い純愛路線。かつての今井正監督「また逢う日まで」を想わせるが。

 1970年代初頭の文化大革命時代の中国。町の学生は毛思想で農村に送り込まれ住み込みで実習。女高生ジンチュウは村長宅に寄宿し、そこで村長一家と親しい青年スンと会う。二人は恋に落ちる。

 しかしジンチュウの家は反革命分子として、父は投獄、母は掃除婦として連日迫害を受けていた。自分が教師の職を得られなければ家族が苦難の生活から脱出できない。二人の間は生木を咲かれるように強制的に母によって別れさせられる。

 映画の題「サンザシの樹の下で」の樹は二人の会った農村のシンボル。結ばれない二人だがその樹の下にスンが葬られ、ジンチュウは毎年花を手向ける。美しい画面と音楽。佳作と思う。

 文革時代の中国は、地主や知識人階級は差別を受け、強制して下級労働させられた。問答無用。理由なんかなくても「反革命分子」とレッテルが貼られれば、即アウトである。

 この映画の舞台の文革時代の中国の理不尽な世界に似ているのが、ドタン場に突入した米国の財政赤字の上限きり上げ問題だ。

 すでに財政赤字の累積残高は5月16日に法定上限の14兆1940億ドルに達した。これが赤字上限の決定がなされないままだと、8月2日までの支払いは出来るが、3日以降支出が出来なくなる。

 米国債の元利の返済が滞れば、債務不履行(デフォルト)になる。

 米国の野党共和党は明年の大統領選挙を引けてお互いに妥協しずらい。すでにバイデン副大統領をトップとする委員会ではカタがつかず、オバマ対共和党大物との直の交渉。

 共和党は増税反対で社会福祉は切り捨て、一方オバマ政権は福祉切捨てに反対し金持ちへの増税(時限立法)を廃止―この2点で対立が激しい。

 オバマ政権は共和党が下院の過半を握っているし、その共和党は例の保守的な茶会派が後押ししているのでなかなか引っ込みがつかない。

 共和党の大物ロン・ポール議員は「米国はすでに事実上破産しているのだから、早く宣告したほうが先々のためにいいことだ」とさえ言っている。

 7月22日が財政赤字上限引き上げ問題の事実上デフォルトラインだが、米国下院はロン・ポールのように国際的な責任を考えないのでムチャをする傾向がある。2008年の9月、リーマン・ショック直後に「TAAP」という救済措置を否決、世界中にショックを与え、不安心理はパニック心理に変わってしまった。すぐ翌週には可決して騒ぎは収まったが。日本人としてはドル不信=円高にされるのがなんとも痛い。

 デフォルトになると米国債の元利返済が滞り、公的年金支払い、公務員給与の支払い停止に至る。ほんの何日ですむと思うし、オバマ陣営に「共和党のせい」とわめかれてもこまるので何日間さえいかないと考えられるのだがー。

 映画のセリフから。ジンチュウは結婚が出来ない理由を次から次へと言う。「あと1年1ヶ月しないと教員に採用されないの。」「1年1ヶ月待つ。」「母は25歳になるまでダメと言っているわ。」「25歳まで待つ。」支障は多いが要はアメリカ政界が世界と自分の国民にメイワクをかけるのをやめるなら、すぐ合意。安心感を世界に与えるべきだ。

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