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2011年8月30日 (火)

映画「パルプ・フィクション」と野田新政権(第577回)

 鬼才クェンティン・タランティーノが一挙に声価を高めた1作。娯楽映画に徹しながら感覚的には奇妙な新鮮さがあり、物語の意外や意外の展開にも面白さがあった。

 パルプは紙の原料だが、転じてザラ紙とか粗悪な紙に刷られた低俗な雑誌、本という意味もある。意訳すれば「俗悪小説」。

 レストランでの男女二人の強盗に始まり、貸し金取立て屋、しがないボクサーや黒人の大ボス、その情婦などなど。ジョン・トラボルタがこの作品で一挙にカムバックした。

 民主党の代表選で野田佳彦氏が海江田万里氏に逆転勝ちし、第95代総理の座を射止めた。

映画に登場するハーヴェイ・カイテル演じる死体始末屋に似て、前任二人のいわば尻拭い役だ。ご苦労様。

 私は野田氏を知らなかったが、8月18日に幕張ニューオータニで行われた内外情勢調査会で1時間半の講演を聴いた。

 分かりやすく内容も充実していて、ご本人も認めるとおり、ドロ臭く派手さはないが堅実、着実で私は好感を持った。54歳という若さにもかかわらず、発言に気配りがきいているのにも注目した。

 海江田氏はもともと反小沢だったのが、票欲しさにマニフェスト堅持を飲んでしまった。あれでは実質的な小沢氏の代理人かカイライなので投票に二の足を踏む。

それでも興石氏を幹事長にしたが、前任の菅氏が最大の党内派閥による足の引っ張りで、何も出来なかったのを見ていたからだろう。また興石氏では「解散はないナ」というヨミにつながる。

 私は候補5人の演説を聞き比べて、野田氏が最も円高問題に関心が深く、また財政再建と社会保障とのかかわりに、はっきりとしたビジョンを持っていることに留意した。

 私は不況下での増税は気狂い沙汰だと思うが、タイミングを見計らってーと述べていることにも、当然のことながら、現実的と考える。

 民主党政権になって、鳩山、菅の二人の総理がいかに日本というこの国に迷惑をかけたか。国家最大の責任者が一つ覚えのように政治主導を振り回し、ろくに周囲に相談、勉強をしないで思いつきの人気が取れる(かも知れない)発言ばかり、というまことに首相にふさわしくない人物の政権が2年も続いた。

 周囲からの情報も含めて、3度目の正直、で今度の首相は相当やる、と私は思う。何よりも安定感がある。

 大連立。私は自民党のある首脳から「総理の座をよこさなければ大連立に応じない」という言葉を聞いたことがある。

 うっかり閣内に入れると、安全保障、外交がらみで民主党のやることに従がわされてしまう、では政策協定、となるが何年協議しても結論が出るわけがない。だからーという。そこを野田首相がうまく調整できればたいしたものだが。まああまり実現は期待していない。

 それでも復興が進行し、行政も政治的な手配りともキチンと対応するであろう人物が登場する。この方を大いに期待している。

 映画のセリフから。黒人の大ボスがボクサーに言う。「年をとるとワインのように立派になると思っているヤツもいる。しかし、現実には酢になってしまうもんだ。」鳩山、菅より若い総理。人気は高くないが、50代という若さに期待したい。どうぞ、ガッカリさせないでー。

2011年8月29日 (月)

先進国のリスクが高まっている

(東洋経済 株式ウィークリー 2011年8月29日号に掲載)


相場は重大な岐路に差し掛かった。マーケットを熟知する今井澂事務所代表の今井澂氏に今後の世界の相場について話を聞いた。(2回連載。次号では日本株の有望銘柄などについて掲載予定)

― 世界の株式相場の下落は止まったのでしょうか。

 日本経済は復興に向け、懸命に頑張っています。しかし、世界の主要市場である米・欧・中国の地合いは悪い。結論から言えば9月~10月末にかけ、一段の危機が訪れる可能性があります。いま起きていることは20089月に起きたリーマンショックの後始末です。リーマン破綻時には、デリバティブ(金融派生商品)を中心に30兆ドルのマネーのうち、約半分が消えました。公的資金で一部問題は処理したものの、なお14兆~15兆ドルの一部で問題が残っています。より厳しいのはEU域内の複数の主要金融機関です。欧州には米国のTARP(不良資産救済プログラム)のような受け皿がなお不十分です。しかも米国にも住宅の不良債権問題を抱える金融機関がありますし、約3分の2に上る地方政府が困難な財政状況に置かれています。日本の失われた10年、15年が世界の先進国で起きるという、「日本化リスク」が高まっています。

 ―QE2(量的緩和第2弾)は米国経済浮揚に寄与したのですか。

 デフレ対策としては一定の効果を上げました。また、資産家には株高→資産効果という恩恵がありました。しかしQE2は世界的な物価高も招き、中流階級以下にはマイナスが大きかったといえます。QE3(同第3弾、25日時点で未発表)がもし発動されても、効果は疑問ですし、財政刺激策も打ちづらい状況です。05年に続く「HIA2」(本国投資法第2弾、米国企業の海外での利益を米国内に戻す場合、法人所得税を大幅減税する)が実施されても、この資金は設備投資にはまわりにくいと思われます。

 ―中国がもう一度世界経済の牽引役になる楽観的なシナリオは?

 あまり期待できません。リーマンショック時の中国のインフラ整備は世界経済を救いました。しかし無駄な投資が多く、4兆元のうち約半分は生産能力余剰の助長に使用されました。デフレ圧力が増した結果、日米欧での景気の一番底懸念シナリオリスクが顕在化しています。

 ―日本株は書き増益予想の企業も多く、割安感も指摘されます。

 世界経済減速で、シナリオは崩れかかっています。主要国が日本化する結果、リスクを取ることに対する超過収益期待は下がり、「PER1ケタではないと」と、投資尺度が変わる可能性があります。我々はいま「株価革命」の入り口に立っているのかもしれません。

(以下、次号)

映画「ゴーストライター」と中国の経済的・社会的変調(第576回)

「戦場のピアニスト」などの名匠ロマン・ボランスキーの最新作で、ベルリン国際映画祭の銀熊賞(監督賞)を獲得したまことに上質のサスペンス。

 元英国首相の回顧録の代筆、「ゴーストライター」を頼まれた男(ユアン・マクレガー)が、事故死した前任者の遺した原稿を1ヶ月で直してくれ、と破格の稿料を提示される。

 その元首相はあのトニー・ブレアを想起させる。弁が立ち、ハンサムで、スラリとした長身。美しい強い奥さんを持つ。米国の強引な戦略をすべて支持。

 原作者のロバート・ハリスは元BBCのレポーターでブレア元首相と親しく、ポランスキー監督と共同で脚本を書いた。

 ゴーストライターは調べてゆけば行くほど、CIAの影にブチ当たる。前任者の遺稿に書き込まれた秘密とはー。

 映画のウラに見え隠れする「国家と政治」への不信感が強い不安感を生む。

 どうも中国はおかしい、という声は高まっている。

 ごく一例は不動産バブル崩壊。統計を見ると1世帯当たりの借金は少ないが、GDPに対比した融資残高は150%。債務残は200%近い。

 この巨大な住宅がらみの借り入れは、LGFV(地方政府の特別目的会社)が行っている。リーマンショック以降3年間、GDP比の債務残は年30%強の上昇。完全なバブルだ。

 LGFVなどへの融資額250兆円。そのうち170兆円は不良債権。日本の過去の経験だと1990年から92年ごろの状況に近い。

 上海株式市場の株価もフシ目フシ目を下に切ってきた。リーマンショック後の2300ポイント台しか止り場はない。

 著名なNY大のルービニ教授は「ここ3年、中国経済の成長は緊急対策の4兆元(54兆円)を元手に公共投資と、国有企業の生産能力拡充に使われた。投資効率は悪く、しかも使い果たしたあとで景気浮揚効果はない」として2013年以降のハードランディングが起きると予言した。

 先日の新幹線事故で、中国型の「他国技術を寄せ集め、それを自国技術の新技術として輸出する」というイカサマが明らかになった。

 米国大使館の情報をウィキリークスでみると「次に危ないのは原発」。運営技術が未熟なためだ。原子炉の型も古いし。

 それはそうだろう。「中国モデル」の特徴は、幹部の私利私欲のための道具が新幹線の高速道路、発電所だ。そうなると、新幹線の場合は安全運航の自動制御システムへの巨額投資が省かれたのも当然である。

 鉄道部門の前最高責任者だった劉志軍の収賄額は数十億元、その部下の張曙光の海外銀行の預金は28億ドル。

 「中国モデル」のもうひとつの特徴は「人命と人権を軽視する」。新幹線はケガも入れて200人の被害だったが、原発だったらどうなるか。

 ある中国通が次の変化を指摘している。①新幹線事故で公的メディアが一斉に党中央の支持に背いた②先日の大連の抗議で広場に一日中座り込みがあったが解散させられず、最後は党書記が出てきて要求を呑んだ③温家宝総理が党批判しているが、失脚させられていない、などなど。

 映画では前任者の遺稿の中から、途方もない陰謀が目立たないように書き込まれている。このいくつかの変化は何か大きな変動を予見してはいないだろうか。

 映画のセリフから。前任者の死について原因をたずねたゴーストライターに代理人が言う。「事故か自殺か、どっちでも同じことだ。本に殺されたのさ。」バブルの破裂か、社会的不満の爆発か。どっちでも同じことだ。

 日本人の印象は尖閣のこともあるし、中国の日本叩き日本いじめだが、中国に自国の領土を押えられているのはベトナムとフィリピン。リビアを含めたアフリカでも中国のメチャクチャは及んでいる。世界中が中国を嫌がり始めた。

 

2011年8月26日 (金)

映画「ジャアンツ」と米国のシェールガス革命(第575回)

たまには昔の名作を、という声におこたえしてジェームス・ディーンの遺作を。巨大な州テキサスを舞台にした大牧場主夫妻の一代記。エリザベス・テイラーとロック・ハドソンが主演した。

牧童役のディーンは、気まぐれで遺贈された土地をほっていたら巨大油田にブチ当たる。しかしこの成功でも主人の妻への慕情を断ち切れず不幸な人生を送る。

先週わたしは金価格の目標値を「オンス2300~2500ドル。じきは2012年の恐らく後半」とした。

現実には1900ドルを超えたところで価格は急落。どうみたらいいか、とご質問がきている。

わたしは「まだ上昇期間の終わりではない。まっていた調整期間がやってきた段階です。」とお答えしている。

理由は二つ。中国とインドの個人による金の現物買いが年間生産量の60%以上を占める。それに新興国中心に外貨準備を使った金買い。だからまだまだ上昇基調。

今週のテーマは映画と同じで、米国のあの広大な土地に埋もれている途方もない富。羨ましい限りだ。

2007,8年ごろから「シェールガス」とよばれる新しい天然ガスが米国で大量に産出され始め、世界のエネルギーを変えようとしている。「21世紀の大革命」と呼んでいいる専門家もいるほどだ。

地下の天然ガスがしみこんでいる深い岩盤に地表からドリルを到達させ、その孔を通じて大量の水を注入し、ガスを吸い上げる。「水圧破砕法」と呼ばれる技術だ。

まだ正確な埋蔵量は発表されていないが3030年ごろには米国のエネルギー消費の最大の比重を占めると見られている。

大切なことは「石油はこれから枯渇する。しかし天然ガスのほうは今後100年以上大量生産できる」ということだ。

シェールガスの価格は安い。バーレル当たり原油に換算して18ドルから21ドル。ざっと5分の1だ。あと2,3年すればこの安いエネルギー源が米国の経済に活気をもたらすだろう。

一部で環境問題を重視する向きがある。井戸からくみ上げられる飲料水を汚染するのでは、

という懸念だ。ただテキサス州などの審査では無害、とされている。

米国に次ぐ埋蔵量は中国で、欧州にも大量にある。世界の原油の2倍から3倍の埋蔵量、といわれている。

世界中で天然ガス利用の発電所の大ブームが予想され、すでにIHI,三菱重工などにガスタービンの引き合いが増え始めた。

恐ろしいお話がひろまっているが、たまには明るいことにも注目したい。

映画のセリフから。エリザベス・テイラーが言う。「お金がすべてじゃないわ。」ジェームス・ディーン「持っている人はそう言うんです」持てる国米国はその強みを、あと1,2年したら、世界中に示せるのでは。

2011年8月20日 (土)

映画「この愛のために撃て」と私の金価格目標値、時期(第574回)

 デビュー作「すべて彼女のために」でヒットを飛ばしたフランスのF・ヴァイエ監督のサスペンス・アクションの快作。おすすめしたい。

 看護助手のサミュエルは出産間近の妻を何者かに誘惑され、勤務している産院で監視下にあるある男を連れ出すよう要求される。その男とはある重要事件の容疑者だった。

 何がなんだか訳が分からないまま犯人の要求にしたがっているサミュエルは、警察からもまた犯罪組織からも追われる。必死に逃げ回るうちに、容疑者と次第に信頼感が生まれる。そしてフランス映画に珍しくハッピーエンド。

 金が連日歴史的高値をつけ、私には「どうしたらいいですか」とのお問合せが多い。

 映画のサミュエルと同じように、必死で市場の前途をヨンで、清水の舞台から三度ぐらい飛び降りる気持ちで、結論を申し上げる。

 実はオンス1800ドル大台の上の方、というのは私の金価格の目標値だった。

 2001年9月11日の同時多発テロの事件から金価格がはっきりと上げに転じた。

 テロというのは「終わりのない、途方もなくカネのかかる戦争」である。ドル安の始まり。

 また「金価格はアメリカにとっての“不快指数”」と考えると「金は買い」。

 当時私はまだ日本ではしられていなかったジム・ロジャーズ氏の意見を2000年に聞いて「21世紀の初めの10年間は実物資産」と、金、資源、食料の買い方針に賛成していた。

 当時まだオンス300ドルにも行っていない時代だし、目標値はオンス1000ドルというには勇気が要った。

 その後、1000ドルに達成後「第2目標1300ドル、第3目標1800~1900ドル」とした。

 今回達成したが、外的環境が変わってしまった。

 世界的なバランスシート調整不況とソブリン危機で、安全な投資先を世界の投資家が求めはじめた。

 安全な投資先と考えられているものは四つしかない。

 通貨では①円②スイスフラン③金、それに④米国国債。本当は米国債は格下げなので売られて(債券利回りは上昇)当然だが、実はそうでない。

 三大格付け会社のうちS&Pだけが格下げしただけでムーディーズとフィッチはトリプルAそのまま。それなら別に機関投資家は慌てて売却する必要はない。ユーロの先行きが心配だから資産をドルに転換する投資家は米国債を買う。

 本当は「格下げショック」で米国債が暴落するはずだが、債券は上がり株式が世界的に下がってしまった。

 さて、金の目標値はオンス2300~2500ドル。その理由は、シロウトが買うから。

 クロウトは値ごろ感から、つい売る。87,8年の日本株がそうだったが、個人買いで天井をつけた。

 いまはインドと中国の個人投資家が買っている。かつての日本の主婦の投資家が買ったのに似ている。買うから上がる。「バブル」は短期間に倍の価格になる。これだと2500ドルが目標。

天井の時期は、上昇が始まって11年間、2012年、恐らく後半。1970年代のときも11年間上昇だった。その他の材料を考えてー。

 まあ、こんなところが私の独断と偏見による金価格の見通し。お断りしておくが、完全に自信を持っているわけではない。それでも勇気を持ってー。

 映画のセリフから。巨悪の秘密が警察にあると知ってサミュエルが犯人の恰好をし、容疑者が警官にバケて大胆にも潜入しようとする。サミュエルは「オレが警官になりたい」「ダメだ。おまえは善人ヅラしているからな。」外見は金価格はバブルといわれているが、本当のバブルはこれからだ。

2011年8月16日 (火)

映画「未来を生きる君たちへ」と米国債格下げ(第573回)

本年度のアカデミー賞最優秀外国語映画賞を獲得した秀作。デンマーク映画で監督は女流スザンネ・ピア。

 二人の男の子が中心に話は展開する。エリアスは医師の母と弟の三人暮らしで、父はアフリカの難民キャンプで働いている。

 歯の矯正でネズミに似ているとバカにされいじめを受けたエリアスは、転校して来たクリスチャンに助けられて親友に。

 クリスチャンは母をガンで亡くしたばかり。ロンドンを離れデンマークの祖母の家に来たが、父親と仲が悪い。

 この映画のテーマは明快。理由もなく自分が暴力の被害を受けたとき、復讐すべきか?アタマでは暴力の連鎖が何も生まないことを知っているがー。

 もう何回も何回も、日本は米国発の金融危機と円高の被害を受けてきた。その都度お隣の韓国はウオンを切り下げ、メリットは大。

 この不条理というか、金融市場からの暴力はどう対処したらいいのか。

 実は、私のファンの方々から「イマイ先生、予想はピタリでしたね」とおほめを頂いた。このブログにもあるが、毎日「エコノミスト」誌1月25日号で87年10月のブラックマンデー再来を予測した。

 その中で「本命」の理由としたのが、「米国債格付けの引き下げ」だったのだから、たしかに大当たり。

 ただし私は不満だ。二つある。

 「秋から年末のどこか」と「株、ドルに加えて債券価格下落(長期金利上昇)のトリプル安」の二つは外れた。反省しています。これ、ホント。

 さて、今後をどう見るか。

 まず、オバマ政権と共和党との妥協で財政赤字に制限がついた。これで来年以降の米国経済が何で成長するか。どうもダメくさいので「日本化」つまりデフレの長期化というヨミが成立する。

 そうなれば格付けはワンランク下がったが、2013年央までは金融緩和だし、債券価格は上がる。

 ドル安円高の方は仕方あるまい。前記した1月25日号「エコノミスト」でも、また私の講演会でも1ドル73~4円という予想を申し上げてきた。とりあえず、まだこの数字は変えない。

 その先は、2005年にやった本国投資法が期待できる。

 これは米国のグローバル企業が海外に蓄積した1兆ドルの資産を本国に送金する場合に大幅減税するというもの。施行の年には対ユーロ15%、対円14%のドル高になった。

 株価のほうは過去に国債の格付けが下がった例を見ると日本、カナダ、オーストラリアなど全て悪材料出つくしで株高。

 日本は1998年11月にムーディズがAaaからAa1に格下げされたあと株高で2割上昇した。

 米国も同じとは思わない。8日連続安というのは6月末に投資家に支配的だった「年後半回復加速」シナリオがダメらしい。となって、巻き戻したためだろう。戻りはあるにしても、5月2日の1万2876ドルには及ぶまい。

 日本はどうか。世界的株安は米、欧、中など主要地域の成長率低下だから、ソニーだトヨタだという国際株は買えない。建設株など復興予算関連はよさそうだ。

 映画のセリフから。アフリカで虐殺を繰り返している暴君が足の傷が悪化し医師のところへ。とりまきの武器に対して医師がキャンプ内への持込をやめろという。「オレがきめる」「いや、医師の私が決めるんだ。」市場は景気見通しで決まる。当分世界の景況に目をこらそう。

2011年8月 5日 (金)

映画「ハリーポッター」シリーズ完結と為替介入、株安(第572回)

2001年の「賢者の石」が刊行されたとき、私はすぐ読んで夢中になった。

 実は私はファンタジー小説が大好きで、あの大長編「指環物語」も「ナルニア国物語」もNYで冬のひとりの暮らしの時によく読んだ。

 しかしハリーポッターはそれまでの、完全に別の宇宙を作った作品に比べ、日常と別世界でつながっている。そこにひかれた。

 ロンドンのキングズクロス駅からカベを突き抜けてゆくと魔法学校に行く汽車が出る。学校生活にも実感があり、無名の主婦が書いたと思えない楽しさがあった。

 あれから全8作。全世界で本のほうは4億5000万部。日本では2500万部という大ヒット。映画も興行収入トップを何週も続けている。3D.

 主人公ハリーは孤児。魔法を勉強しているうちに両親が悪の世界に殺されたことを知る。美少女ハーマイオニーとお人よしのロンの三人組の友情が軸。

 ハリーと悪の宿敵ヴォルデモートの対決が結末にあるが、これまでのナゾが全部解きほぐされる。

 前回のブログで私は円高の理由は日銀の量的緩和が足りないからだ、と書いた。そこに本日(8月4日)日銀は売り介入と資産買い入れ額増額など量的金融緩和を決めた。

 「どうイマイさんはお考えですか?」

 「まず、株式市場の動きから判断しますとたいした効果はなさそうです。」

 日経平均は22円高だったが、TOPIXの方はマイナス0.39.上昇の幅は介入直後に108円高だったが、高値から見ると109円安。今後も1万円大台は見込めまい。

 為替レートのほうも対ドル77円台が79円台になったが、82円に行けば万歳。その可能性は少ない。

 というのは日銀の金融緩和の仕方がセコいからだ。

 資産買い入れ基金を40兆円から50兆円にしたが、試算買い取り部分が10兆円から15兆円にしかなっていない。残りは固定金利の資金供給オペ。これでは効果は少ない。

 三菱UFJモルガンスタンレー証券景気循環研究所長の嶋中雄二さんに聞いてみたが、同じく「不十分じゃないですか」。

 二人が一致したのは「これで市場に76円台で食い止めたいという意志は伝わった」ということだ。 映画のヴォルデモートのように大震災後の日本経済に撮り、円高は「悪」だ。内需の回復が大したことがなさそうなので、輸出に景気の重荷がかかる。

 しかもドルもユーロも切り下がる公算が大きい。それぞれキズを抱えている。高失業率とソブリンリスクだ。

急速に好転する問題ではない。しかも先日の米国財政赤字上限きり上げに絡んで、来年後半あたりから米国景気減速が見えてきた

 結論。私のお好みだった山口百恵さんのヒット曲。「これっきり、これっきりもう。これっきりでぇすかあ」。株も為替もいいことにはなるまい。残念だけど。

ついでに。NY市場からはじまるドル安、株安はわたしが年初から言ったとうり。

 映画のセリフから。ハリーが言う。「勝負に必ず勝つという意志の固さで決まるんだ。」政府としての意志が固い、と市場が受け取れるか。近く退任する総理じゃあ、ねえ。

 むしろ投機筋には、次の目標値を与えただけ、というのが私の見方。悲観的だが,すみません。

2011年8月 3日 (水)

映画「人生、ここにあり」と円高に行方(第571回)

 

 イタリアでは動員数40万人超。54週ロングランの大ヒット。たしかに面白い作品で、館内は笑いが絶えない。一見をおすすめする

 本来なら重い、重いテーマだ。1983年、精神化病院が廃絶された。患者たちが一般社会で暮らせるように取り組んだある施設の物語だ。

 廃材を使った寄木細工。色も形もさまざまな木片を使って、いわゆる正常なアタマから出ない発想から、ハイセンスで美しい細工を作り上げてゆく。

 精神疾患を持つ人たちの性格描写が面白い。すぐ手を出すキレ男。カレを100人持つ妄想女・・・。大マジメでバク進型のリーダーは悪戦苦闘。そこで合言葉は「やればできる!」これが原題だ。

 いまの世界の通貨はまるで精神病患者のよう。米ドルはデフォルトこそまぬがれたが世界中が、米国景気の前途がマックラか、それに近いことを了解してしまった。

 

 ユーロのほうも容易じゃない。長期国債利回りを見るとー

 ギリシャ27・6%、アイルランド11・7%、ポルトガル15・3%と破綻国の利回りはメチャクチャ。

 瀬戸際のイタリア5・9%、スペイン6・1%と危機ラインの7%にもうチョイ。

 

 これを見てもEUの金融危機が終わったどころかまだまだ、ということがわかる。

 

 となると円。大震災という巨大な悪材料があり、財務省によると「次のギリシャ(プロの世界のファンドマネやーでこれを信じているものはいないが)」。

 

 本来なら円安のはずだが、この原稿を書いている8月3日現在、3月17日の76円25銭に近い円高水準だ。

 

 おかしいな、と誰でも思う。

 

 しかし映画の精神病患者が、イタリアで言われる「誰でもどこかがオカシイけれども、必ず何かを持っている」ように、実は日銀の金融政策に円高の主因がある。しかもそのロジックが日銀独特のものだ。

 

 ここは経済学の教科書をひくまでもない。円とドルとの関係で説明する。

 

 8月2日、日銀が発表した7月の資金供給量(マネタリーベース、月中平均)は前年同月比15%増。

 マネタリーベースとは、民間金融機関の手元資金量(日銀の当座預金残高、まあそういうもんだと思ってください)プラス市中に出回っている紙幣、コインの合計である。むずかしいが、これで為替レートはバッチリ当たる。

 

 例のジョージ・ソロス氏が考え出して「ソロス・チャート」と呼ばれるチャートがある。

 

 「3ヶ月前比で年率換算」という方法。ここに使ったチャートは三菱UFJモルガン・スタンレー証券 景気循環所長嶋中雄二さんの最近作成のものをお借りした。

 

 これで見ると日銀の15%と米国のマネタリーベースの43%と差がひどすぎる。これが円高の真因だ。

 為替レートの90%はこれで説明できる、と聞いた。

 

 嶋中さんは「日銀が現座の金融資産購入規模(10兆円)を倍増(20兆円)して、固定金利オペ(30兆円)と合わせて50兆円の包括的金融緩和の規模へと追加緩和できる」ことが円高に歯止めをかけることが必要、と述べている。

 

 カネを緩めるとすぐ日銀「はインフレになる」とオドす。しかし、大震災後のこの状況で、デフレの深刻化のほうがよほど私は心配だ。

 

 映画の終わりに「いまイタリアに3万人に及ぶ“異なる能力を持つ人々”に働く場が提供されています」。要するにひとは使いよう、ということだ。金融政策も同じ。日銀の人たちがあまりにもインフレ恐怖症に陥っているのではないか、と気になる。デフレ脱出をもっと真剣に考えてほしい。

20110803_4 ※ 画像はクリックで大きく表示されます。

 

2011年8月 1日 (月)

中国経済崩壊の警告

「日経トップリーダー」経営者クラブから出版された『トップの情報CD』に、「中国経済崩壊の警告」というテーマで講演が収録されました。

音声はこちら

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