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2011年8月29日 (月)

映画「ゴーストライター」と中国の経済的・社会的変調(第576回)

「戦場のピアニスト」などの名匠ロマン・ボランスキーの最新作で、ベルリン国際映画祭の銀熊賞(監督賞)を獲得したまことに上質のサスペンス。

 元英国首相の回顧録の代筆、「ゴーストライター」を頼まれた男(ユアン・マクレガー)が、事故死した前任者の遺した原稿を1ヶ月で直してくれ、と破格の稿料を提示される。

 その元首相はあのトニー・ブレアを想起させる。弁が立ち、ハンサムで、スラリとした長身。美しい強い奥さんを持つ。米国の強引な戦略をすべて支持。

 原作者のロバート・ハリスは元BBCのレポーターでブレア元首相と親しく、ポランスキー監督と共同で脚本を書いた。

 ゴーストライターは調べてゆけば行くほど、CIAの影にブチ当たる。前任者の遺稿に書き込まれた秘密とはー。

 映画のウラに見え隠れする「国家と政治」への不信感が強い不安感を生む。

 どうも中国はおかしい、という声は高まっている。

 ごく一例は不動産バブル崩壊。統計を見ると1世帯当たりの借金は少ないが、GDPに対比した融資残高は150%。債務残は200%近い。

 この巨大な住宅がらみの借り入れは、LGFV(地方政府の特別目的会社)が行っている。リーマンショック以降3年間、GDP比の債務残は年30%強の上昇。完全なバブルだ。

 LGFVなどへの融資額250兆円。そのうち170兆円は不良債権。日本の過去の経験だと1990年から92年ごろの状況に近い。

 上海株式市場の株価もフシ目フシ目を下に切ってきた。リーマンショック後の2300ポイント台しか止り場はない。

 著名なNY大のルービニ教授は「ここ3年、中国経済の成長は緊急対策の4兆元(54兆円)を元手に公共投資と、国有企業の生産能力拡充に使われた。投資効率は悪く、しかも使い果たしたあとで景気浮揚効果はない」として2013年以降のハードランディングが起きると予言した。

 先日の新幹線事故で、中国型の「他国技術を寄せ集め、それを自国技術の新技術として輸出する」というイカサマが明らかになった。

 米国大使館の情報をウィキリークスでみると「次に危ないのは原発」。運営技術が未熟なためだ。原子炉の型も古いし。

 それはそうだろう。「中国モデル」の特徴は、幹部の私利私欲のための道具が新幹線の高速道路、発電所だ。そうなると、新幹線の場合は安全運航の自動制御システムへの巨額投資が省かれたのも当然である。

 鉄道部門の前最高責任者だった劉志軍の収賄額は数十億元、その部下の張曙光の海外銀行の預金は28億ドル。

 「中国モデル」のもうひとつの特徴は「人命と人権を軽視する」。新幹線はケガも入れて200人の被害だったが、原発だったらどうなるか。

 ある中国通が次の変化を指摘している。①新幹線事故で公的メディアが一斉に党中央の支持に背いた②先日の大連の抗議で広場に一日中座り込みがあったが解散させられず、最後は党書記が出てきて要求を呑んだ③温家宝総理が党批判しているが、失脚させられていない、などなど。

 映画では前任者の遺稿の中から、途方もない陰謀が目立たないように書き込まれている。このいくつかの変化は何か大きな変動を予見してはいないだろうか。

 映画のセリフから。前任者の死について原因をたずねたゴーストライターに代理人が言う。「事故か自殺か、どっちでも同じことだ。本に殺されたのさ。」バブルの破裂か、社会的不満の爆発か。どっちでも同じことだ。

 日本人の印象は尖閣のこともあるし、中国の日本叩き日本いじめだが、中国に自国の領土を押えられているのはベトナムとフィリピン。リビアを含めたアフリカでも中国のメチャクチャは及んでいる。世界中が中国を嫌がり始めた。

 

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