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2011年9月29日 (木)

映画「アジョン」とアレレと思う意外な見方(第584回)

 2010年に公開され観客動員数630万人という大ヒットを飛ばした韓流アクション。私の家族がファンのウオンビンが主演し、韓国アカデミー賞主演男優賞を獲得した。

 リュック・ベッソンの名作「レオン」が下敷きになっている。世間を避けるように古いビルで質屋をしている中年男と、隣家の母子家庭の幼い少女の物語だ。

 少女の母親が組織の麻薬を横取りしたため母子は拉致される。男は自分になついてくれている娘を救うため、一人で組織に乗り込んでゆく。「アジョン」とは「おじさん」の意味、孤独な人間同士の愛がテーマだ。

 このところ、ユーロ危機、米国の『日本化』懸念、中国の不動産バブル破裂、それに円高などなど。要するにオッカない話ばかりだ。

 何しろ目端の利くこと、世界でも屈指のジム・ロジャーズ氏でも「今は農作物ぐらいが投資としては妥当」というくらいだ。マーケットにいい話は転がっているご時世じゃない。

 ちょうど映画で主人公が組織と警察の双方から追われて、行き場がなくなったのに似ている。

 しかし、捨てる神あれば拾う神あり、とか。たしかに出口なしと見える現状だが、いくつか、ここいらは目を開いてよく見ておきたいことが出てきている。

 まず第一は問題となっているギリシャ国債の価格。価格は額面の三分の一で、言われている債務の二分の一カット(いわゆるヘアカット)より行き過ぎだ。逆にいうとギリシャ国債にめどがつくと下げすぎの反動が起きること必至。

 第二と第三。日本国内での経済指標だが、まず電子部品・デバイスのハイテク循環の悪化局面を抜け出すメドがつきそう。

 在庫と出荷のバランスだが、20107月に在庫調整局面に入って現在はまだ調整進行中。しかし、去る5月に在庫と出荷のギャップがピークアウトした。経験則では底入れまで6か月なので、この11月がサイクルの底。

 逆にいうと12月か来年1月から鉱工業生産を引っ張るハイテク需要は上向きになる。

もうひとつ。20127月開催されるロンドン五輪もハイテク循環の上昇要因になることも付け加えておこう。

 製造業がらみはまだ大震災前の水準を回復していないが、自動車の生産計画を見ても11月か12月には震災前レベルになる。

 ところで私がアレレと思うのは、内需だけに依存している第三次産業流動指数は震災前のレベルに回復した。

 飲食、宿泊、旅客運送、対個人サービスなどが特にいい。自粛していた反動増か。

 第四.私は会社四季報が出ると徹夜して全部読んで好業績の銘柄を探すが、今回目立ったのは老齢化に絡んだ介護、ケアなどの事業の関連だ。着実に利益が伸びている、また株価収益率も56倍で割安。もう少し研究したい。

 映画のセリフから。少女が窃盗で捕まった時、通りかかった男を父親だと名指しする。

しかし男は警官に調べられたくないので無視して通り過ぎてしまう。その後男は少女に謝る。少女は言う。「もしおじさんが悪い人でも嫌いにならない。おじさんまで嫌いになったら、私の好きな人がいなくなっちゃう。」だから命がけで少女を救おうとする。

 世の中全部が全部マックraではない。

2011年9月24日 (土)

映画「ザ・ウォード/監禁病棟」と世界的株暴落(第583回)

 ジョン・カーペンター監督が10年ぶりに作ったホラー映画の佳作。ヒッチコックの名作「サイコ」にヒントを得たと思われる脚本づくりだ。

 若い女性クリステンが農家に放火、警察に拘束され精神病院へ。独房のような病室には同じような年齢の女性が4人いて監禁されていた、この4人が次々と姿を消してゆく。

 脱走を企てるクリステンに恐ろしい姿の女性の怪物が襲いかかる。逃げても逃げても追いかけられる恐怖感。

 FOMC(米国連邦公開市場委員会)でツイスト・オペが決まった途端、世界中の株式市場、商品市場で大幅安。とくに銀行株の下げ方がひどい。

 私がずっと弱気なことはご存じだろう。だから少しもびっくりしないが、ここまで市場があからさまにQEⅡを要求しているとは思わなかった。

 恐らく直前に共和党首脳が「金融緩和しても雇用増加につながらない」と言明したことへの反発だろうか。

 まあ本当にこれまでの金融緩和は失業を解消しなかったから、NY株式市場での大幅下落も市場のロジックとしてはわかる。大手銀行株はメチャ安い。

 しかし、映画で同室の監禁されている4人が実はある関係でつながっていたように、今回の世界一斉下げは、一種の取り付けとみると事態は深刻だ。 つまり、いまの世界のマーケットは複合危機。

米国はドルの価値下落と不況の長期化つまり「日本化」。

 一方欧州はもう時間の問題と思われる「ギリシャの借入金大幅ヘアカット。マーケットは欧州主要銀行の信用問題、ととらえてこれも取り付け騒ぎ。

 まだある。中国には不動産バブルの破裂と景気の減速。そして、これらの結果、起こるであろう世界不況。

 となると日本は、逃避先としての円投機による円高と、外国機関投資家による日本株の換金売り。そして今後起きるに違いない輸出の伸び低下。まあいいことがない。

 G20は金融システム安定のため必要な行動をとると声明したが、実効ある手が打てるか、どうか。すでに欧州主要市場は下落しており、これも不信任。

 えーい。めんどうくさい。私流の結論。

 8月早々から始まった今回の世界の株安は、映画の不思議な怪物と同じように、2008年のリーマン・ショックの後遺症が形になってしまったもの。方々に出現する。

 私の経験では、この手の大騒ぎは少なくとも4か月は続く。リーマンの時は底を入れるまで5か月かかった。同じなら年末に底入れだ。

 今回は?世界の首脳部がヤル気がない。来年は世界主要国の半分は選挙か交代だし、財政赤字の拡大はイケナイという原理主義者が各国、特に米国、欧州で主流になりつつある。

 ということは、株価底入れは、ひょっとするともう少し先かもしれない。要するに、この10月はまだまだ株価の底入れは見えない。

 底入れの見え方に、もう一つ私の経験則がある。2012年世界恐慌というような本が書店の店頭にスラリと並ぶ(もう何冊か出ているが)。これがそろそろ騒ぎが終わり、の合図だ。

 本を1冊書いて印刷し書店に配るには時間がかかる。書くにはチャンとしたストーリーが必要だし。出来上がるころには、現実は一歩先に進んでいる、というわけ。ま、もう少し時間が必要。

 映画のパンフレットにカーペンター監督の言葉がある。「これは死んで生き返った死体が出てくる幽霊の物語だ。」現実もまだ、米国の住宅バブルの時のデリバティブの幽霊が世界中を歩いている、これが本質だ。

2011年9月19日 (月)

映画「女と銃と荒野の麺屋」と私の不安感(第582回)

チャン・イーモウ監督といえば、「初恋のきた道」などの名作、世界的な大ヒット「HERO」「LOVERS」といった豪華絢爛な武闘もので著名。北京五輪の開会・閉会式の演出も手がけた中国第一の名匠だ。

 

その最新作は1984年の米コーエン兄弟の傑作「ブラッド・シンプル」のリメーク。舞台は万里の長城の西の果てに近い荒野にしたが、登場人物は同じ。

 

麺屋のオーナーで金持ちの初老の男は、若い女を金で妻にし、10年間も虐待し続けている。

 

まだ若い妻は耐えかねて夫殺しをたくらむが、密通の相手の若い従業員は臆病で頼りにならない。へそくりで商人から拳銃を買う。

 

身の危険を察知した夫は、悪徳警官を買収、若い二人の殺害を依頼する。ところがこの警官がワルで、夫を妻の拳銃を使って撃つ。

 

そこからのお話は予想をすべて裏切る意外や意外の展開、ノワールものとして大いに楽しめる。

 

予想が裏切られるといえば、米国経済だろう。つい2ヵ月まえの7月、米FRBバーナンキ議長は今年後半3%成長を予想したが、いまや大幅な下方修正。さきごろ発表されたOECDの予想によると米国経済の成長率は前半わずか0・7%。下期も同じ。年間0.7%ということだ。とくに1012月はわずか04%。

 

 欧州はもっとひどい。OECDの前期予想ではユーロ圏17か国の1012月期マイナス04%、うちドイツは実にマイナス14%である。トリシェECB総裁が「第二次大戦後最大の危機」というだけのひどさである。

 

 いったい何がそんなに悪いのか。

 

 米国も欧州も、モトは住宅関連のバブルが飛び、銀行が巨額の不良債権を抱えている。そう、日本がたどったあのコースを、米国も欧州も歩き始めた。

 

 欧州のほうが米国に1年遅れてギリシャなどPIIGS諸国の経済危機が絡んでいるからわかりにくい。しかし本質的には銀行の経営危機なのである。

 

 ユーロ圏の住宅関係の不良資産は、米国もほぼ同じ。11兆ドルが住宅関連証券で、住宅価格の下落と不良債権の発生率も同じぐらいなので、円にして400兆円。これに加えて東欧への貸し付けが2兆ドル、150兆円の不良資産もある。まあ550兆円。これに問題となっているPIIGS諸国の国債の損がある.まあ、現実には2倍かなあ。

 

 これに対し、ユーロ圏と英国の銀行の自己資本は100兆円程度。本来なら広範囲な取り付け騒ぎが起きてもおかしくない。

 

 しかし20089月のリーマン・ショック以降、特定措置として銀行などの時価会計を停止しているため、事態が明らかになっていないためだ。

 

 しかし去る7月、ユーロ圏19行のストレステストつまり資産の査定を行った結果、フィナンシャルタイムス紙は400兆円の損失があると報じた。このあたりでPIIGS諸国だけでなく、フランスの大手銀行の名前もチラホラ出始めた。

 

 9月上旬、ECBは無限に国債を購入する、と宣言した。取り付け騒ぎの防止策としては日本を含めた主要国の中央銀行が流動性を供給することで、何とか取り繕っている。しかし、本質的な問題解決には程遠い。

 

 まだまだ続く危機。私は「いまは資産をふやすことを考える時期ではない。何とか防衛することに専念せよ」と言い続けてきた。日本の株安は外国人売りが止まない限り、続く。

 

 映画のセリフから。麺をつくる職人が言う。「オレはこのままいくと、何か大変なことが起きるような気がするんだ」。映画ではその通り大変なことに。何ごともなければいいが。

 

2011年9月14日 (水)

映画「ミケランジェロの暗号」と欧州危機の先行き(第581回)

 ドイツ映画の快作。サスペンス・ミステリーとして歴史に残るのではないか。

このスタッフの前作「ヒトラーの贋作」と同じくナチスものなので、どうも暗いかと思っていたら、笑いが絶えず意外や意外の展開。面白いのなんの。

 舞台はウィーンで1938年。富裕な画商一家はひそかにミケランジェロの絵を持つ。しかし息子ヴィクトルは親友ルディに絵の隠し場所を教えてしまう。

 ナチスに傾倒していたルディは独軍での昇進を目当てに密告。

 5年後。第二次大戦が始まっており、ヒトラーは絵を取引材料にイタリアと有利な条約を結ぼうとする。ところがしたたかなユダヤ人画商は、チャンと偽物を作っておいた。

 本物をかくした父親は、すでに収容所で死亡。謎のメッセージを残された息子は、母親の命を救うため、ナチス相手に危険な賭けに出る。ここでも本物のドラマが展開する。

 映画ではミケランジェロの絵の必要性は、イタリアの独裁者ムッソリーニの失脚でいっぺんに価値が下がる。まるで昨今のギリシャ国債の評価のようだ。

 9月13日、ギリシャ10年債利回りは初めて25%を超え、2年債も過去最大の74・88%をつけた。

 ギリシャ国債のデフォルトを市場は非常に近いと判断した、ということだ。

 理由は簡単。ギリシャの1~8月の財政赤字は前年同期よりも拡大。パパンドレウ首相の財政赤字削減公約は少しも守られていない。同首相は赤字削減へ追加措置を決めたが市場は全く信用していない。

 別の懸念材料もある。フィンランドが独自にギリシャと交渉し、追加融資に担保の提供を求めた。オランダ、オーストリアなども同様の要求。これでギリシャ追加支援のメドが立たなくなってしまった。

 またギリシャの民間銀行で預金流出が続いているため資金調達をECBに依存してきたがそろそろ担保が枯渇してしまっている。

 ギリシャ国債がデフォルトになれば市場では「次の標的はイタリアとスペイン」。そして欧州の銀行株全体も巻き込まれると予想している。

 ギリシャのユーロ脱退で問題が解決するという見方は現実的でない。ギリシャの民間銀行は間違いなく取り付け騒ぎが起きるし、EUからの脱退は深刻な混乱を起こす。

 欧州共通債の発行が必要、という見方もあるが実現には何か月もあるいはもっとかかるだろう。それまではECBが問題国の国債を買い支え続ける必要がある。

 恐らくこのECBの方針に反対してだろう。ドイツ出身のシュタルフ専務理事が辞表を出した。

 つくづく、ユーロの闇は暗い、と思う。

 来2012年、イタリアはGDPの25%に上る国債の償還を迎える。これが円滑に進むかどうか。

 円は対ドルだけでなく対ユーロでも高値を更新中だが、この円高はまだ続く。その間は株式市場での主力輸出株は不振だろう

 映画のセリフから。主人公が恋人に言う。「兵士シュベイクがいうだろ?戦後、午後6時に会おう。」カレル・チャペックの有名な小説の引用だ。残念ながら、この混乱はまだまだ続く。なかなか、戦後にはなるまい。

2011年9月12日 (月)

映画「ハウスメイド」と韓国のダークサイド(第580回)

ある韓国の大財閥のの御曹司の家に、無口で素直、ただしバツイチの若いメイドが、住み込みで雇われる。一流美術品が飾られる超豪華なお屋敷。臨月の若夫人とその母親は、明らかに成形したモダン美人。これに対し若いメイドは土俗型のコリアン顔。

 

 朝ベートーベンのピアノソナタをひいてから出勤する夫は、臨月の妻に不満足で、若いメイドに手をつける、妊娠。

 

 生ませると大金を支払わなくてはならないとみて、2階から突き落したり常用薬に胎児を流産させる毒薬を入れたり。身分の差をひらけかして、人間扱いしない。

 

 前回に続いて韓国を取り上げた。映画の中であからさまな主人一家と、下女の間の身分の差。

 

 これはちょうど現在の李明博政権の大企業重視政策が、韓国の庶民に苦しみを与えている現状と、共通しているように思っている。

 

 どんな庶民の苦しみか。

 

 まず第一は物価高。8月の消費者物価は前年同月比5・3%上昇だが、実感としては8~9%。

 

 第二は不動産。価格も急騰し、賃貸価格はもっと急上昇している。

 

 順序として不動産バブル。年間所得に対する住宅購入価格の比率は2008年で6・26倍。米国の3・55倍。日本の3・72倍よりも高い。現在はもっと高いだろう。

 

 とくにソウルでは何と12・64倍だ。12年間の所得をすべて投入しなくては、109平方米の高層アパートを買えない。

 

 手が届かない庶民は賃貸に回らざるを得ない。ところがこの賃貸料がここ2年で26%も上昇している。

 

 韓国ではチョンセという賃貸契約が一般的だ。2年契約でまとめて一定の金額を家主に払い、契約満了で金額を返してもらう。店子は管理費しか払う必要がない。家主のほうはもらった一時金を運用するか、別の物件を買う。

 

 この契約金がソウルのアパートでは、2009年の6・8万ウオン(3・3平方米当たり)が最近は815万ウオン。実際にはこのチョンセの価格は現物価格の半分以上と重い負担になっている。

 

 インフレと不動産の途方もない高価格。それでもなんとかしたい庶民はデリバティブで一儲けしようと投機する。

 

 韓国証券市場の規模は世界17位だが、デリバティブ市場では世界第1位。それも第2位のシカゴを大きく抜いている。KOSP指数オプションが主力。大儲けしたOLのが喧伝されている。現実には個人投資家トータルでは投資は大損なのだが。

 

 話を戻そう。物価が実感では8~9%、公式統計でも5%を超えているが、韓国の政策金利は3・5%。

 

 これは借金漬けの個人への配慮であり、またウオンを安くするための低金利政策だ。

 

 日経通貨インデックス(2007年1月=100)でみると韓国ウオンは75・4。これに対し円は143・1でざっと6割の円高。

 

 これはサムソン、LG」や現代自動車などの大企業に対日競争力を増やさせるため人為的な為替操作を行ってきたためだ。もちろん政府は公式には否定しているが、世界中で信じている人は、きわめて、きわめて少ない。

 

 いいのはうまい汁を吸っている輸出企業。苦しむのは庶民だろう。李明博政権は就任の直後にリーマン・ショックがあり、どうしても徹底した財閥擁護政策をとらなくてはならない。進出した日本企業がいじめられなければいいが。

 

 映画のセリフから。若い女中を指揮する年老いたハウスメイドが言う。「この仕事は汚らしくて自分はやっていてもヘドが出るわ。」あの国と比べれば、今の日本のほうがずっとましなのだが。それでも、企業は自衛のために逃げ出す。ああー。 

 

2011年9月 7日 (水)

映画「80日間世界一周」と日本企業の韓国進出(第579回)

ジュール・ヴェルヌの1873年の空想小説の映画化。1956年のアkデミー賞で作品賞など5部門を獲得した名作だ。

 まだ航空機など夢物語の時代。主人公は英国紳士でクラブの友人と、80日間で世界一周できるかという賭けをして、自ら証明するため下男を連れて旅に出る。

 気球、蒸気船、汽車、象など、あらゆる乗り物を使って時間との競争が始まる。

 お話は単純だが世界の美しい景色と、カメオ出演の当時の大スター達が楽しく豪華な映画だった。ビクター・ヤングの音楽も美しい。

 英国からパリ、スペインからスエズを通ってカルカッタ、上海、横浜、サンフランシスコ、NY。次から次へと忙しい旅。フラメンコ、闘牛、インディアンの列車襲撃など盛りだくさんなサービスつきだ。

 主人公の気球がマルセイユに行くつもりが、何とスペインに降下したように、「世の中スンナリと行かない(映画のセリフ)」。

 このところ、日本を代表する企業の海外特に韓国への脱出のニュースが目に付く。

 昨年後半から財界首脳の韓国に対する見方が、大いに利用すべき、と変わったと聞いたが、やはり現実になってくるとショックだ。

 たとえば東レ。最先端で最重要の炭素繊維の工場を韓国中部の亀尾に建設する。

 同社日覚社長は「電気代、労務費、税金その他を考慮して世界一競争力のある工場ができると判断した」と。

 元東洋経済編集長で私も親しくしていただいている大西良雄氏が、日韓両国の工場立地条件の差を調べている。並べてみれば格差の巨大さに唖然とする。

 法人税 日本40・69、韓国24・20各%

 産業用電力料金 15・8、5・8(米ドル換算で1キロワット時、単位セント)

 最低月間賃金 1386、585ドル

 このうち電力料金は引き上げが確実視されているし、計画停電のリスクもある。

 何よりも大きいのはFTA化率だ。

 大西さんは韓国が日本に先行してEUや米国と自由貿易協定を結んで、FTA比率は36・0%と日本の6・5%の倍以上。これでは東レが米ボーイングやエアバスに炭素繊維を輸出する場合、関税ゼロの韓国から輸出する方が有利だ。

 東レだけではない。日本の得手で韓国が立ち遅れていた部品、製造装置でも韓国進出のニュースを聞く。東京エレクトロン、アルパック、それに系列色の薄い自動車部品など、韓国メーカーとの共同開発に乗り出し始めた。

 こうしたコスト面での日韓差は、為替レートで決定的になる。

 円レートはこのコラムで指摘したとおり、何かコトがあると切り上がる。対ドルではカネの緩和の率がFRBと日銀ではあまりに差がある。オウンゴールでもあるのだが。

 一方韓国は北朝鮮が何かコトを起こすとウオン安になる。

 野田首相は財務省在任当時、「韓国はウオンについていつも為替介入している。」と発言しG20で為替レート操作国と見なし、是正を求める発言をしたことがある。

 また円高問題にも正面気って取り組んでいるのは好感が持てるが、円とウオンの格差はここ3年8ヶ月の間に53%も開いており、どうにもならないと危惧している。

 結論。TPPに尻込みしないこと。法人税を含め前任二人の首相のようにアンチビジネスの立場をとらないこと。そうなれば前途に光明が見えて来るだろう。

 映画では賭けの期限に遅れたと思っていたが、東へ東へと1周したので日付変更線を超え、一日もうけて賭けは主人公の勝ち。

 規則がうるさい英国の社交クラブに主人公が、インド人の娘とメキシカンの下男を連れて来たので全員が叫ぶ。「もうお終いだ!」日本を終わりにしないよう野田内閣に努力してもらわなくては。

 

2011年9月 5日 (月)

長期で日本株は魅力的 海洋開発関連銘柄を仕込む

(東洋経済 株式ウィークリー 2011年9月5日号に掲載)


FRB(米国連邦準備制度理事会)が次回FOMC92021日)で追加金融緩和策検討を打ち出したこともあり、米国株は落ち着きを取り戻しつつある。前回に続き、今井澂事務所代表の今井澂氏に今後の有望銘柄などについて聞く。

 ―世界の株式市場がこの秋に調整するなら、いま短期的に調整中の金が、再度買われるでしょうか。

 金相場が再度上昇する可能性はあります。直近はNY先物市場で一時1トロイオンス1917ドルをつけました。実は19801月に金が暴騰したときの高値は、インフレ率を調整して今に引き直すと、約2397ドル程度です。米国経済の先行きにもよりますが、当面はこの程度まで上昇しても不思議はありません。

 ―株は当面見送り、でしょうか。

 そうとは言い切れません。ただ来年は世界の主要国で選挙が集中します。中国でも最高指導者が交代します。たとえばその後中国の不動産バブルが弾ける可能性などもみておくべきです。もし株式市場が激震に見舞われたとき、その後買われる銘柄は何か。ソニーなど、旧来の代表銘柄ではないと思います。未来を切り開くような銘柄でしょう。

 ―そうした銘柄に、長期投資を始める準備をしなさい、と?

 そのとおりです。たとえば、海洋開発関連です。私が注目しているのは、「燃える水」とも呼ばれるメタンハイドレート(水分子とメタン分子が低温高圧の環境下で個体になったもの)開発です。海底からメタンを抽出して天然ガスとして利用するわけです。すでに経済産業省の掘削調査では、東部南海トラフ海域(和歌山県沖から静岡県沖)には日本の天然ガス消費量の13年分の埋蔵量が確認されています。日本近海だけでも100年分の埋蔵量があるとも言われています。英国は75年の北海油田生産と79年のサッチャー政権誕生で一時よみがえりました。日本も資源大国になる可能性を秘めているのです。

 この一大プロジェクトが前進しています。開発主体である「メタンハイトレード資源開発研究コンソーシアム」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構などが主導)は、来年2月産出試験を行う予定で、政府は18年度までに産出技術確立を目指します。この7月には訳60年ぶりに鉱業法も改正、海底資源の管理方法も強化されました。このプロジェクトに加わっている石油資源開発、日本海洋掘削のほか、三井海洋開発、国際石油開発帝石などの銘柄を、長期で仕込むといいのではないでしょうか。折しも、長期波動では日本株は085月に60ヵ月(5年)移動平均線が120ヵ月(10年)移動平均線を上回りました。長期で見れば、日本株は大きなチャンスを迎えているのです。


2011年9月 2日 (金)

映画黒澤明「生きる」とインド株(第578回)

私は1968年(昭和43年)まだ1ドル360円の貧しい日本から米国に行った。

 当時勤務していた山一證券は昭和40年の日銀特融をまだ返済しきっていなかったが、米国証券会社へのトレーニーとして派遣されたのである。二人。私と、あとで社長、会長になった故人が選ばれた。

 6ヶ月(パスポートの関係で)のうち5ヶ月はニューヨークで、最後の1ヶ月はロンドン、パリなど欧州諸国で日本株をすすめて講演会をして回った。

 NY滞在中、カーネギーホール地下の名画座で黒沢映画の上映があり、「生きる」を観た。

本当にビックリした!映画の終わりに、主人公渡辺が公園のブランコに乗って「命短し、恋せよ乙女」の唄を歌うところで、映画館(ほぼ満員だった)のほとんどのアメリカ人が泣き出した!

 終わってから何人も日本人(私一人だった)とみて「クロサワはすばらしい」と声をかけてくれた。誇りで胸が一杯になったのが忘れられない。

 映画のストーリーはご存知だろう。市役所の市民課長渡辺は役人仕事で「生きた時間がない」。しかし胃がんの末期と知って、市民のためにあらゆる抵抗を撥ね退けて公園を作るために死力を尽くす。

 長い間、本当の生きがいがなかった渡辺が死ぬ前に何かしたいと考えて、本当の人生を生きる。

私が現在の投資家の中で最もすごいと考えているマーク・フェーバー氏が、最近のレターで久しぶりにインド株を取り上げている。私は渡辺を思い出した。

 インド株の指数SENSEXは2002年1月の2228から2008年1月の2万12060まで、年率46%もの上昇を見た。

 それも成長率から見ると当然だろう。インド経済は1969年から80年代の平均3・5%成長、それが2004年まで6%。それ以降2008年まで実に9%という年平均成長率。

 リーマンショックの2008年は6・8%に落ち込んだが、2009年8%、2010年には8・5%に回復した。

ところが株価も対ドル為替も2008年以降弱含みになってしまっている。

SENSEXは高値比でまだ33%下にあるし、対ドルレートが弱くなった結果、ドル建てでは60%も安い。

好景気の副産物ともいうべきインフレの抑制のための金融引き締めが主因。

 2008年以降、食料品価格はひところ20%近辺の上昇率。消費者物価全体では現在でも8~9%と高い。つれてインド準備銀行は金融引き締めを続けている。目標は6%。

 それでもIT、バイオ、ナノテクなどの分野では世界をリードし、エンジニアの数も多い。また労働コストが安くて人口の50%が労働力で今後この比率が60~70%の予想だ。

 インドの魅力は4点。①民主主義国で政治は安定②シン政権の自由化、民営化、国際化の三つの流れは不変③資源が豊富(世界一の資源は鉄鉱石、石炭、マンガン、ボーキサイト)④英語が国語であることのメリットが、IT産業の基礎に⑤安い人件費。熟練労働者で1月1万5000ルピー、1ルピー1・7円だから2万5500円だ。

 最近外資への大規模小売店への開放が決まった。現在年4000億ドルと推計される小売市場は急伸しよう。インド農村部ではシャンプーや練り歯磨きの普及率は30%。

 家電製品の世帯別普及率も低い。

 中国と比較してみよう(カッコ内中国、単位%)TV45(115)、冷蔵庫18(59)、エアコン3(51)、洗濯機8(70)。

 結論。十分に休んだインド株は、そろそろ、買い。ただし、インフレが収まる見通しがつくこと。

 映画のセリフから。渡辺が空を見上げて言う。「美しい、私は夕焼けなんてこの30年間、すっかりー。」「いや、私には、もうそんなヒマはない」。ずっと昔の日本にあった美しさが、今のインドに見つけられるのでは。

 

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