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2011年9月12日 (月)

映画「ハウスメイド」と韓国のダークサイド(第580回)

ある韓国の大財閥のの御曹司の家に、無口で素直、ただしバツイチの若いメイドが、住み込みで雇われる。一流美術品が飾られる超豪華なお屋敷。臨月の若夫人とその母親は、明らかに成形したモダン美人。これに対し若いメイドは土俗型のコリアン顔。

 

 朝ベートーベンのピアノソナタをひいてから出勤する夫は、臨月の妻に不満足で、若いメイドに手をつける、妊娠。

 

 生ませると大金を支払わなくてはならないとみて、2階から突き落したり常用薬に胎児を流産させる毒薬を入れたり。身分の差をひらけかして、人間扱いしない。

 

 前回に続いて韓国を取り上げた。映画の中であからさまな主人一家と、下女の間の身分の差。

 

 これはちょうど現在の李明博政権の大企業重視政策が、韓国の庶民に苦しみを与えている現状と、共通しているように思っている。

 

 どんな庶民の苦しみか。

 

 まず第一は物価高。8月の消費者物価は前年同月比5・3%上昇だが、実感としては8~9%。

 

 第二は不動産。価格も急騰し、賃貸価格はもっと急上昇している。

 

 順序として不動産バブル。年間所得に対する住宅購入価格の比率は2008年で6・26倍。米国の3・55倍。日本の3・72倍よりも高い。現在はもっと高いだろう。

 

 とくにソウルでは何と12・64倍だ。12年間の所得をすべて投入しなくては、109平方米の高層アパートを買えない。

 

 手が届かない庶民は賃貸に回らざるを得ない。ところがこの賃貸料がここ2年で26%も上昇している。

 

 韓国ではチョンセという賃貸契約が一般的だ。2年契約でまとめて一定の金額を家主に払い、契約満了で金額を返してもらう。店子は管理費しか払う必要がない。家主のほうはもらった一時金を運用するか、別の物件を買う。

 

 この契約金がソウルのアパートでは、2009年の6・8万ウオン(3・3平方米当たり)が最近は815万ウオン。実際にはこのチョンセの価格は現物価格の半分以上と重い負担になっている。

 

 インフレと不動産の途方もない高価格。それでもなんとかしたい庶民はデリバティブで一儲けしようと投機する。

 

 韓国証券市場の規模は世界17位だが、デリバティブ市場では世界第1位。それも第2位のシカゴを大きく抜いている。KOSP指数オプションが主力。大儲けしたOLのが喧伝されている。現実には個人投資家トータルでは投資は大損なのだが。

 

 話を戻そう。物価が実感では8~9%、公式統計でも5%を超えているが、韓国の政策金利は3・5%。

 

 これは借金漬けの個人への配慮であり、またウオンを安くするための低金利政策だ。

 

 日経通貨インデックス(2007年1月=100)でみると韓国ウオンは75・4。これに対し円は143・1でざっと6割の円高。

 

 これはサムソン、LG」や現代自動車などの大企業に対日競争力を増やさせるため人為的な為替操作を行ってきたためだ。もちろん政府は公式には否定しているが、世界中で信じている人は、きわめて、きわめて少ない。

 

 いいのはうまい汁を吸っている輸出企業。苦しむのは庶民だろう。李明博政権は就任の直後にリーマン・ショックがあり、どうしても徹底した財閥擁護政策をとらなくてはならない。進出した日本企業がいじめられなければいいが。

 

 映画のセリフから。若い女中を指揮する年老いたハウスメイドが言う。「この仕事は汚らしくて自分はやっていてもヘドが出るわ。」あの国と比べれば、今の日本のほうがずっとましなのだが。それでも、企業は自衛のために逃げ出す。ああー。 

 

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