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2011年9月14日 (水)

映画「ミケランジェロの暗号」と欧州危機の先行き(第581回)

 ドイツ映画の快作。サスペンス・ミステリーとして歴史に残るのではないか。

このスタッフの前作「ヒトラーの贋作」と同じくナチスものなので、どうも暗いかと思っていたら、笑いが絶えず意外や意外の展開。面白いのなんの。

 舞台はウィーンで1938年。富裕な画商一家はひそかにミケランジェロの絵を持つ。しかし息子ヴィクトルは親友ルディに絵の隠し場所を教えてしまう。

 ナチスに傾倒していたルディは独軍での昇進を目当てに密告。

 5年後。第二次大戦が始まっており、ヒトラーは絵を取引材料にイタリアと有利な条約を結ぼうとする。ところがしたたかなユダヤ人画商は、チャンと偽物を作っておいた。

 本物をかくした父親は、すでに収容所で死亡。謎のメッセージを残された息子は、母親の命を救うため、ナチス相手に危険な賭けに出る。ここでも本物のドラマが展開する。

 映画ではミケランジェロの絵の必要性は、イタリアの独裁者ムッソリーニの失脚でいっぺんに価値が下がる。まるで昨今のギリシャ国債の評価のようだ。

 9月13日、ギリシャ10年債利回りは初めて25%を超え、2年債も過去最大の74・88%をつけた。

 ギリシャ国債のデフォルトを市場は非常に近いと判断した、ということだ。

 理由は簡単。ギリシャの1~8月の財政赤字は前年同期よりも拡大。パパンドレウ首相の財政赤字削減公約は少しも守られていない。同首相は赤字削減へ追加措置を決めたが市場は全く信用していない。

 別の懸念材料もある。フィンランドが独自にギリシャと交渉し、追加融資に担保の提供を求めた。オランダ、オーストリアなども同様の要求。これでギリシャ追加支援のメドが立たなくなってしまった。

 またギリシャの民間銀行で預金流出が続いているため資金調達をECBに依存してきたがそろそろ担保が枯渇してしまっている。

 ギリシャ国債がデフォルトになれば市場では「次の標的はイタリアとスペイン」。そして欧州の銀行株全体も巻き込まれると予想している。

 ギリシャのユーロ脱退で問題が解決するという見方は現実的でない。ギリシャの民間銀行は間違いなく取り付け騒ぎが起きるし、EUからの脱退は深刻な混乱を起こす。

 欧州共通債の発行が必要、という見方もあるが実現には何か月もあるいはもっとかかるだろう。それまではECBが問題国の国債を買い支え続ける必要がある。

 恐らくこのECBの方針に反対してだろう。ドイツ出身のシュタルフ専務理事が辞表を出した。

 つくづく、ユーロの闇は暗い、と思う。

 来2012年、イタリアはGDPの25%に上る国債の償還を迎える。これが円滑に進むかどうか。

 円は対ドルだけでなく対ユーロでも高値を更新中だが、この円高はまだ続く。その間は株式市場での主力輸出株は不振だろう

 映画のセリフから。主人公が恋人に言う。「兵士シュベイクがいうだろ?戦後、午後6時に会おう。」カレル・チャペックの有名な小説の引用だ。残念ながら、この混乱はまだまだ続く。なかなか、戦後にはなるまい。

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