今井澂プロフィール

講演・出演など

お問合せ


« 映画「ミケランジェロの暗号」と欧州危機の先行き(第581回) | トップページ | 映画「ザ・ウォード/監禁病棟」と世界的株暴落(第583回) »

2011年9月19日 (月)

映画「女と銃と荒野の麺屋」と私の不安感(第582回)

チャン・イーモウ監督といえば、「初恋のきた道」などの名作、世界的な大ヒット「HERO」「LOVERS」といった豪華絢爛な武闘もので著名。北京五輪の開会・閉会式の演出も手がけた中国第一の名匠だ。

 

その最新作は1984年の米コーエン兄弟の傑作「ブラッド・シンプル」のリメーク。舞台は万里の長城の西の果てに近い荒野にしたが、登場人物は同じ。

 

麺屋のオーナーで金持ちの初老の男は、若い女を金で妻にし、10年間も虐待し続けている。

 

まだ若い妻は耐えかねて夫殺しをたくらむが、密通の相手の若い従業員は臆病で頼りにならない。へそくりで商人から拳銃を買う。

 

身の危険を察知した夫は、悪徳警官を買収、若い二人の殺害を依頼する。ところがこの警官がワルで、夫を妻の拳銃を使って撃つ。

 

そこからのお話は予想をすべて裏切る意外や意外の展開、ノワールものとして大いに楽しめる。

 

予想が裏切られるといえば、米国経済だろう。つい2ヵ月まえの7月、米FRBバーナンキ議長は今年後半3%成長を予想したが、いまや大幅な下方修正。さきごろ発表されたOECDの予想によると米国経済の成長率は前半わずか0・7%。下期も同じ。年間0.7%ということだ。とくに1012月はわずか04%。

 

 欧州はもっとひどい。OECDの前期予想ではユーロ圏17か国の1012月期マイナス04%、うちドイツは実にマイナス14%である。トリシェECB総裁が「第二次大戦後最大の危機」というだけのひどさである。

 

 いったい何がそんなに悪いのか。

 

 米国も欧州も、モトは住宅関連のバブルが飛び、銀行が巨額の不良債権を抱えている。そう、日本がたどったあのコースを、米国も欧州も歩き始めた。

 

 欧州のほうが米国に1年遅れてギリシャなどPIIGS諸国の経済危機が絡んでいるからわかりにくい。しかし本質的には銀行の経営危機なのである。

 

 ユーロ圏の住宅関係の不良資産は、米国もほぼ同じ。11兆ドルが住宅関連証券で、住宅価格の下落と不良債権の発生率も同じぐらいなので、円にして400兆円。これに加えて東欧への貸し付けが2兆ドル、150兆円の不良資産もある。まあ550兆円。これに問題となっているPIIGS諸国の国債の損がある.まあ、現実には2倍かなあ。

 

 これに対し、ユーロ圏と英国の銀行の自己資本は100兆円程度。本来なら広範囲な取り付け騒ぎが起きてもおかしくない。

 

 しかし20089月のリーマン・ショック以降、特定措置として銀行などの時価会計を停止しているため、事態が明らかになっていないためだ。

 

 しかし去る7月、ユーロ圏19行のストレステストつまり資産の査定を行った結果、フィナンシャルタイムス紙は400兆円の損失があると報じた。このあたりでPIIGS諸国だけでなく、フランスの大手銀行の名前もチラホラ出始めた。

 

 9月上旬、ECBは無限に国債を購入する、と宣言した。取り付け騒ぎの防止策としては日本を含めた主要国の中央銀行が流動性を供給することで、何とか取り繕っている。しかし、本質的な問題解決には程遠い。

 

 まだまだ続く危機。私は「いまは資産をふやすことを考える時期ではない。何とか防衛することに専念せよ」と言い続けてきた。日本の株安は外国人売りが止まない限り、続く。

 

 映画のセリフから。麺をつくる職人が言う。「オレはこのままいくと、何か大変なことが起きるような気がするんだ」。映画ではその通り大変なことに。何ごともなければいいが。

 

« 映画「ミケランジェロの暗号」と欧州危機の先行き(第581回) | トップページ | 映画「ザ・ウォード/監禁病棟」と世界的株暴落(第583回) »