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2012年1月27日 (金)

映画「サイコ」と世界景気と株価と??(第607回)

映画「サイコ」と世界景気と株価と??(第607回)

 ご存知の「ホラー映画」というジャンルを確立した1作。ヒッチコックが来日したとき「スリラー」と記者が言ったら「ホラー」と訂正したが、通訳がわからなかった、とか。

 シャワーを浴びている最中の若く美しい女性が、突如得体のしれないものに襲われ惨殺される。あまりにも有名はシーンで、映画の本の表紙などにずいぶん引用されている。

 マリオン(シャネット・リー)は4万ドルの金を押領し車で逃げる。愛人のサムと一緒になりたくて走るうちハイウエイからそれてしまい、さびれたモーテルで一夜を過ごす。経営者がノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンス)。ここから後の息苦しくなるほどの恐怖で観客を引きずっていくのは、さすが名匠ヒッチコックだ。

 NY株価はリーマン・ショック後の高値に迫り、東京株式市場も出来高が増え、信用取引の取り組みは良化。何よりも外国人の買いがずっと続いている。

 NYの方はFRBが2014年までゼロ%の政策金利を継続すると決めたし、最近、米国の銀行の貸し出し増加が続いていて、景気の先行きが明るいことを示している。

 実は景気見通しのプロ中のプロで、リーマン・ショック後の景気反転をピタリと当てた三菱UFJ証券景気循環研究所長の嶋中雄二さんが123日のレポートで、世界景気の底入れ反転を予想している。この人の言うことを私はずっと信じている。

 嶋中さんは昨年125日に「米国景気が復活~再び「変化の胎動が聞こえる」~としている。

 「昨年秋以降はずっと失速のシナリオが声高に語られてきた世界景気だが、実際には今、明らかに底入れしつつある兆候がある」と嶋中さんは主張する。①4欧州の債務②イラン核開発をめぐる米国との対立激化③中国のバブル崩壊などのリスクについては、危険因子として否定はできないが「あくまでも想定の問題であろう。」

 映画「サイコ」では、実はモーテル経営者ノーマンは10年前に母親を殺し、その後母親の遺体を掘り返してずっと隠していた。ノーマンの中には彼と母親が同居していた。二重人格だ。今、このノーマンと同じで、私の心の中で強気と弱気が同居している。

 問題の欧州ではECBが昨年12月に5000億ユーロの緊急融資を行って危機を回避したし、2月末には第二次も。それで東京株式市場のイニシアチブを握っている欧州系銀行の日経先物の買いが増えてきた。そこに嶋中さんの言う通り、米国を含めた世界(もちろん日本も入る)の景気が好転してくれるなら、株は買いだ。

 しかし、「サイコ」に出てくる私立探偵のセリフじゃないが「探偵というのは、正直者といわれる人物ほど疑ってかかる商売です」。

 早速、相場研究家の富国生命の市岡繁男さんに聞いてみた。この人は独自の見方で細かい数字をよく集めている。市岡さんによると「米国株高は昨年末ごろからのFRBの“隠れQE”では。」と。FRBの証券保有額はたしかに急増、NY株価に一致している。

 私も米国景気もNY株も、人為的な作戦がかなりあると考えている。

 とくに中国が問題。中国景気がおかしい証拠には私が重視している海運のバルチック指数が安くなっていることが不安。この指数はリーマン・ショック後200812月に663をつけその後反発した。今回は862まで下げ、まだ反発の気配はない。

 それに私が信じるグリーンスパン直伝の景気先行指標の「鉄スクラップ価格」も安い。

 嶋中さん!すみませんが、今回はあなたの見方をまだ信じることはできません。ごめんなさい。あなたは景気、私は市場を見ているんです。

2012年1月21日 (土)

映画「独裁者」とユーロ危機の将来(第606回)

映画「独裁者」とユーロ危機の将来(第606回)

 天才チャップリンの名作。ヒトラーのナチスドイツが第二次大戦を開始する直前の1940年に作られた。徹底的にヒトラーとムッソリーニを嘲笑したこの映画製作に命を賭けた。

 映画ではドイツはトメニア(死体の毒)国でイタリアはバクテリア国。チャップリンは独裁者ヒンケルとユダヤ人の床屋の二役。ストーリーは込み入っているが、ヒンケルが執務室で地球儀の風船を抱いたダンスのシーンが特に有名。淀川長治さんによると米国で有名な裸ダンサーの踊りのパロディだとか。

 チャップリンが本当に言いたかったことは最後の演説で、何人もの有名小説家に原稿作成を頼んだが、最後は自分自身で書き上げた。いまでも人の心を打つ。

 「(略)ユダヤ人も黒人も白人も、人類は互いに助け合うべきであるー他人の幸福を念願として。

 お互いに憎みあったりしてはならない。世界には全人類を養う富がある。(しかし)貪欲が人類を毒し、憎悪をもたらし、悲劇と流血を招いた。(略)

 人々よ、失望してはならない。貪欲はやがて姿を消し、恐怖もやがて消え去り、独裁者は死に絶える。(略)」

 いまユーロ危機がヤマ場。正統派の欧州専門家は近く騒ぎが終了するとみている。昨年12月と2月末に行われるECBの緊急融資で、欧州の銀行の多くが資金ショートから救済され、6月末には自己資本比率9%が達成されればーという論理だ。

 しかし私はあるヘッジファンドのマネジャーの示唆でCIAに近いシンクタンクのレポートを読んで、見方を変えた。

 「要するに一発の弾丸も撃たないで、第一次、二次の2回の世界大戦で達成できなかった欧州支配をドイツは達成しようとしている。」

 「現在のEUではEU条約を改定し各国の憲法も改正して、予算編成にEUが干渉することが決められている。自国の主権を放棄するようなことを各国が喜んでするはずがないし、現に英国はこの企てに参加しないと決めた。」

 「しかし、最大の貿易相手国であり、救済資金の出し手であるドイツは、財政支援の打ち切りをチラつかせる。市場はその都度動揺を繰り返す。しかし「ユーロ崩壊」がない形でドイツはEUを自国に有利な形で変革することを目指す。」

 「ドイツにとってはいいことだらけだ。ユーロ安で自動車メーカーなど輸出企業の収益はここ12年で数倍だし、失業率もEU諸国の半分で、しかも低下中だ。

 つまりアンゲラ・メルケル首相は、かつてのドイツ皇帝もヒトラーもできなかった欧州17カ国を制圧。それも戦争によらないで、だ。

 ギリシャもイタリアも、選挙で選ばれた首相は辞任に追い込まれ、元EUの官僚が新首相に。ドイツが工作したことは公然の秘密だ。

 結論。ドイツにとって好ましいこの危機は、まだ当分続く。当面は落ち着くだろうが、その期間は永くない。

 映画のチャップリンの恋人ハンナへの呼びかけ。「ハンナ、聞いているかい?元気をお出し。(略)人間の魂は翼を与えられていた。やっと飛び始めた。虹の中に飛び始めた。希望に輝く未来に向かって!」本当にそうなればうれしいが。現実には政略の世界が支配している。

2012年1月16日 (月)

映画「シェーン」と米国大統領選とNY株(第605回)

映画「シェーン」と米国大統領選とNY株(第605回)

 1953年の西部劇の名作中の名作で、大ヒットした。アラン・ラッドはこれ1作で名を遺したが、ラストシーンの子役の「シェーン・カムバック!」の声や、ビクター・ヤングの美しい音楽も記憶に残る。名匠ジョージ・スティーブンス監督。

 ロッキー山脈の近くのワイオミングの農民スターレットに流れ者シェーンが世話になる。

まあ一宿一飯の恩義、と言っていい。

 南北戦争後、政府は開拓を進めるため、農民が5年間耕作すると、成人一人につき160エーカー(20万坪)の土地を無償で与える、と法律で決めた。ところが農民が入植する前は牧場主が牛を放牧しており、広大な土地と水が必要で、柵で土地を囲む農民は邪魔。そこで起きる対立が映画のテーマだ。

 二つの勢力は戦いに発展、牧場主ライカーは殺し屋を雇い、脅しと暴力で農民を追い払おうとする。シェーンはスターレットの身代わりで殺し屋と戦う。

 殺し屋役のジャック・パランスの黒い手袋、酒は飲まずコーヒーをすする。空軍時代の事故で顔をプラスチックで成形して、ふてぶてしい悪役ぶりが印象に残る。

 西部劇は対立のドラマだが、4年に一度の対立が始まった。

 11月の米国大統領選に向け共和党候補者指名争いが始まった。13日のアイオワ州の党員集会と10日のニューハンプシャー州予備選挙で前マサチューセッツ州知事ミット・ロムニー氏が勝利した。

 二つの選挙以前は対抗馬が有利と米マスコミは囃し立てていたが、候補者を馬に見立てて投票するイントレードでは、他候補が10%以下の掛け率に対しロムニー氏だけが75%。

 やはりロムニー氏は経営コンサルタント業で大成功し、2002年のソルトレークシティ五輪の実行委員長としてこれまた成功。少数派のモルモン教徒というハンデがあるけれども、

経済感覚がある。

21日のサウスカロライナ州予備選挙で勝つと思うし、そうなれば共和党代表として11月の大統領選にオバマ大統領と戦うことになるだろう。

 ただ選挙資金では大差がある。昨年79月の獲得資金はオバマ大統領7000万ドルに対しロムニー氏1400万ドル。10~12月では4200万ドル対2400万ドル。3倍の差だ。たった一人で3人と戦ったシェーンとおんなじ。

 しかし、オバマ大統領にも、現職大統領でありながら敗れた過去の例を分析すると共通点が多い。

 低い成長率②5%を上回る高い失業率③直近の支持率の低下の3点。とくに同じ民主4党で再選を果たせなかったジミー・カーター氏とは共通点がある。①キャピトル・ヒル(米政界)の十分な経験のないまま大統領に就任②議会工作の稚拙なこと③国民への直接呼びかけ志向、以上である。当選当時の幻想がどこかへ飛んでしまった、ともいえるだろう。

NY株はこのところ順調に見えるが、実はダウ30種に影響がある大手銀行株に、アルユアなど素材株が13%も上げているため。実は昨年40%も下落していたが、その買戻しだろう。ヘッジファンドはこれらをもっと買い意向は、恐らく、ない。

 失業率の低下も、季節的な一時的雇用が中心で、まだまだ住宅不況が足を引っ張っている。そこそこ戻るだろうが、年間を通じてみると上げ幅は知れている。

 映画のセリフから。酒場で牧場主ライカー一味と殺し屋とシェーンは対決する。シェーンはライカーに言う「オマエの時代は終わってしまったんだぞ。」「お前はどうなんだ?」「オレは(自分の時代も終わったと)よく分かっているんだ。」私にはオバマ時代が終わりかけているように思えるのだが。

2012年1月13日 (金)

映画「哀しき獣」とヘッジファンドの次の標敵は中国か日本か8第604回)

映画「哀しき獣」と、ユーロの「次」の投機筋の狙い(第604回)

 韓国の気鋭のナ・ホンジン監督の新作。デビュー作「チェイサー」もド迫力のフィルム・ノワールだったが、今回はこれを上回る出来栄えだ。私は堪能した。

 中国の国内に朝鮮族自治州があり、中国人の中にかなり朝鮮人が住んでいる。タクシーの運転手グナムは妻を韓国に出稼ぎに行かせる時に作った借財に加え、麻雀の大負けで首が回らない。そこに裏社会の顔役から「借金を棒引きにしてやるから韓国に潜入して、ある男を殺害しろ」と取引を持ち込まれる。グナムは音信不通の妻に会いたい思いもあって、黄海から密航船で韓国に密入国する。

 ところが狙う男は先に他人に殺され、グナムは警察から犯人と誤認されて追われる。ここの逃避シーンからガゼン面白くスリリングな展開が続く。すでにハリウッドでリメイクが決定しているというが、このオリジナルを超えられるかどうか。激しく暴力的でしかも魅力的な映画だ。

 主人公がいろんな事情で警察だけでなく、裏の勢力ふたつから追われるように、今や欧州国のソブリン危機は、ギリシャに始まってイタリア、フランスにまで拡大。しかし投機としては8分どうりは成功した。

 そこで、ユーロの「次」のヘッジファンドのターゲットがどこか、に関心が集まっている。

 日本だ。という声は結構高い。昨年末ごろからCDSのレートが急上昇、また3月の日本国債の先物買いが7兆円を超える増加。ともにヘッジファンドの欧州ソブリン攻撃の手口だ。これまで3回、日本国債を攻撃して失敗した一部のヘッジファンドが仕掛けを始めている。これはヘッジフアンドの主力は応じまい。

 私はヘッジファンド業界に握っている情報網から、次は中国を狙うと考えている。

 理由は今や米国に中国に対し敵視政策を取り始めており、ヘッジファンド主力はワシントンの意向を読んで動くこと。かつてのクリントン政権の時の超円高による日本叩きがいい例だ。すでにこの業界でジョージ・ソロス氏に並ぶビッグネームのジュリアン・ロバートソン氏のグループがはっきりと顧客に「ユーロの次は中国」という発言を行っている。またジム・チェイノス氏など、中国の不動産バブル破裂に注目し「中国関連は皆売り」というファンドには、新規資金が流入している。中国売りでは11月までで52%の利益を得たファンドもある。

 米国系ヘッジファンドは、基本的にドル防衛を目的としてほかの基軸通貨を攻撃している。まずユーロが選ばれ、これは成功。軸足を中国に移しつつある。ドル復活には代わりの基軸通貨が消えてゆくことが好ましいからだ。

 すでに上海株はリーマン・ショック時の安値を下回り、底なしの状況に近い。材料は中国の銀行の大量の不良資産だ。2008年から2010年まで中国の銀行は4兆1000億ドルの融資を行った。正式な貸し出しルート以外のも含めると5兆7000億ドル。モルガン・スタンレー推定だ。このうち2兆ドルが不良資産と格付けの会社フィッチは推定している。別に国有企業の不良債権は3000億ドル、合わせると6兆ドルの不良債権で、どうしても今年前半には処理しなくてはならない。

 ある事情通は「すでに中国の実質成長率はマイナスに転落した」という。日本の90年代のバブル崩壊後と同じ流れだ。

 やはり中国はこの20年の猛烈な高成長の反動期に入り、そこがキズ口となるのだろうか。

 映画のセリフから。主人公は韓国に行った妻が苦境にある夢を何回も見る。周囲の男たちが起こしていう。「何の悪夢を見ているんだ?」現実には逆夢で、いいことが起きるゾ。」そこで持ち込まれた殺人請負、それが悲運の始まりだった。一見、高度の成長で財政収支良好だが、外資の流入が止まり、巨大なゴーストタウンになった郊外マンション群などなど。中国の運勢は今や落ち目に代わってしまったのでは。

2012年1月 9日 (月)

映画「おくりびと」と2012年の10サプライズ(第603回)

映画「おくりびと」と2012年のサプライズ(第603回)

 あの黒沢明監督でも獲得できなかったアカデミー賞外国語映画賞、その前にモントリオール映画祭グランプリを。2008年瀧田洋二郎監督、つい先日も]TV放送されたので、ご覧になった方も多かろう。日本映画を代表する傑作だ。

 原作青木新門「納棺夫日記」。本木雅弘が映画化の許可を取り、企画が始まったというが、まさに慧眼だった。物語は念願のチェロ奏者になった途端オーケストラが解散、巨額の借金を抱えて失業した男大悟の職探しから始まる。求人広告を見て、旅行代理店と思い面接に行くと、「旅」は実はあの世への旅。遺体を清め最後の別れを演出する納棺師の仕事だった。

 映画で私は初めて古式納棺の儀を見たが、きりっとした本木雅弘の演技で見せ場になっている。動きにムダがなくまことに美しい。

 1年が終わり、新しい1年が始まった。人間の一生に必ず終わりがあるように、この年もまた次の年に受け継がれる。年初の予想は年末には当たり、はずれが明らかになるが、また新年には次の予想が始まる。

 毎年、市場では予想されていないが自分は50%以上の可能あり、というサプライズを10発表しているバイロン・ウィーン氏の2012年版が発表された。

 2011年は「当たり」が三つ、「外れ」が二つ、あと五つはまあ半分的中。ここ10年ぐらいの平均的中率は70%と高かったがー。

 シェール・オイルとガスの採掘で原油安。バーレル85ドル。米国の中東依存度減少。

 米国株。企業収益上昇でS&P500は1400ポイントを超える。11%の上昇を見込む。

 米国経済の成長率は3%を超え、原油安や設備投資増で消費も上昇。失業率8%以下。

 大統領選はオバマ対ロムニー。民主党は下院で勝利するが上院では敗北。

 欧州は銀行のメルトダウンは回避するが、ソブリン危機の解決に広範な計画を作成。ギリシャとイタリアが債務再編。欧州経済全体は縮小。

 東欧やアジアのハッカーが主要金融機関を攻撃し、G20で対策協議。

 スカンジナビア、豪州、シンガポール、韓国など「自国経済を賢明に管理している国」の通貨は、買い。

 米議会が今後10年間で1兆2000億ドルの財政赤字削減を決め、国防費やメディケアのコスト削減。またブッシュ減税の税控除はカット。

 アラブの春は続き、シリアのアサド大統領は失脚。

 中国、インド、ブラジルの株価は15~20%上昇。

このほか、ウィーン氏はオマケとして①金価格は年平均でオンス1800ドルへ②米国の過剰な住宅在庫は解消③米国国債金利は4%などなど。まあ全体として現在主流の破滅シナリオはとらず、急回復を見込んでいる。

 この人はブラックストーン・グループの副会長。昨年の予想で強気に見すぎたのが外れたので、今年の楽観的予想が当たるか、どうか。

 映画のセリフから。大悟が見たチラシは「年齢問わず。高給保証!実質労働時間わずか。旅のお手伝い。NKエージェント!!」。

 そこで面接。「どんな仕事をすればー」。「納棺」「のーかん?」「ああこの広告、誤植だな。“旅のお手伝い”じゃなく、安らかな“旅立ちのお手伝い”で、NKは納棺のNK」。まあこのあたりで観客は笑う。ユーモアはこの映画の特色だ。

 見込みと違っても割り切って新しい人生に挑戦し生きがいをつかんだ大悟。何かのヒントになりはしないか。

 

2012年1月 1日 (日)

映画「東京物語」と高齢化社会と介護産業(第602回)

映画「東京物語」と高齢化社会と介護産業(第602回)

 再び名作路線。名匠小津安二郎の集大成ともいえる作品で、世界各国で選定されるベストテンでも上位に入る常連作品だ。1953年の作品だが、老齢化の問題点を先取りした。

 たまたまご縁があって昨年私ども夫婦はこの映画の主人公が住む尾道で講演、その翌日市内をご案内いただいた。「同級生」など尾道が舞台の名作が多い。まことに楽しかった。

 映画に戻る。ある尾道の老夫婦(笠智衆と東山千栄子)が東京旅行に。長男の医師も長女の美容師も忙しく両親はほったらかし。二人を慰めてくれたのは戦死した二男の妻(原節子)だけだった。

 ごゆっくり、と熱海へ厄介払いさせられたら団体旅行と一緒で、老夫婦は眠れない。早々に帰京するといい顔をされない。旧友と飲んで泥酔。老夫婦は尾道に帰る。

 帰郷して数日して老夫婦の妻の方が急死。ここで家族という共同体が幻想にすぎない悲しい現実が小津調の画面に描かれるー。

 日本は最速で世界一の高齢化社会に突入しつつあるのはご存じだろう。まだ「業界」として完全に認知されているわけではないが「介護関連」を私は注目している。会社四季報最近版を見ても業績はいいし。

 主要6社(ニチイ学館、メッセージ、ツクイ、パラマウントベッド、セントケア・ホールディングス、ジャパンケア・ホールディングス)の連結利益合計をいちよし経済研調べで書く。(単位%、前年度比)

 2007年度 9・7%減益 84億円

 2008年度 14・2%減益  72億円

 2009年度 2・6倍増益 189億円

 2010年度 36・0%増益 257億円

 そして会社計画によると2011年度 11・5%増益で287億円に達する

 2009年度以降の増益が注目される。2009年4月に介護報酬3%(うち在宅分1・7%、施設分1・3%)引き上げになった。

 同時に介護職員の一人月額1万5000円の給与引き上げのための交付金制度が実施された。このため先行投資で規模拡大を図っていた企業が特に増益率が高い。2012年度も介護報酬は1・2%引き上げが決まっており、介護従事者の待遇改善が図られている。

 デイサービス(通所介護事業)も有料老人ホームも、ともに設備の稼働率を高めることが収益確保につながる。介護サービス価格は介護保険制度が決める公定価格でその水準は低く抑えられている。したがって設備稼働率上昇が大切なわけである。

 いちよし経済研の予想による2012年3月期のツクイの営業利益は60%以上の増益で続いてニチイ学館、セントケアの40%増益と高い伸び。

 デイサービス中心のツクイを例にとると既存店ベースの稼働率は2009年度(2010年3月期)の48・3%が、2010年度(2011年3月期)に57・1%に上昇、2011年度も上伸の見込みだ。

 私が株式市場全体の見通しに弱気なことはご存じと思うが、すべての株がダメと言っているのではない。地味だが今後成長が見込めるものは押し目で買ったらいい。ご研究をお勧めする。

 映画のセリフから。笠智衆と友人の東野栄治郎(名演だった)の二人が酒を飲みながらボヤく。「オヤの思うほど子はやってくれませんなあ。」「わしも不満じゃ。しかし(それは)オヤの欲というもんじゃ。」「子供はいなきゃ淋しいが、だんだんオヤをジャマにするし。」笠は老けて見えるし、役は72歳だったが撮影時は48歳だったとか。私は家族に大事にしてもらって幸せだが、このボヤキは胸を打つ。

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