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2012年2月12日 (日)

映画「ヒューゴの不思議な発明」と欧州と「メルコジ体制」の危機

映画「ヒューゴのふしぎな発明」と欧州と「メルコジ体制」の危機(第609回)

 近く決定の第84回アカデミー賞の本命でマーチン・スコセッシ作品。作品賞など11部門でノミネートされている。前哨戦のゴールデングローブ賞で監督賞をすでに獲得。

 2007年のベストセラー小説の映画化で舞台は1931年のパリ。孤児の少年ヒューゴは、死んだ父が残した壊れた機械人形と駅の時計塔に隠れ住む。アル中の叔父が時計の管理と修繕を任されていたのだが、仕事をヒューゴに教えるとサッサと飲みに出かけて2度と帰らなかった。

 ヒューゴは駅の売店で食べ物を盗み、公安警察官につかまって孤児収容所に送られないよう逃げて暮らす。

 父の形見の機械人形の修理は完成しかけており、ハート形の鍵が見つかれば動く。そこに同じ型の鍵を首から下げている両親のいない少女に会ってー。

 これはただの少年少女の冒険物語ではない。少女の祖父ジョルジュ・メリエスの映画。この人は1902年に本格的な最初の映画をつくった人で500本もの作品を発表した。子供のための映画ではなく、映画が好きでたまらない人のための映画。メリエスの言葉「映画は人に夢を与えてくれるものなんだ」がテーマになっている。

 ハート形の鍵を差し込んで機械人形が動き出すと、画が描き出される。これと同じように、今の欧州の危機も、重債務国の債務をEU全体で救う措置がまだ不完全なため解決しない。はっきり言えばEU最強国ドイツがユーロ共同債を発行して、問題国を助けるといえば済む。これがカギなのだ。

 そうは行かないのは、財政規律強化のための新条約の制定と、安定メカニズム(ESM)設立が優先されるべきだ、という独首相メルケルと仏大統領サルコジの「メルコジ体制」のため。

 私は率直に言ってバッカじゃなかろうか、とさえ思う。

 新財政条約は「財政均衡化原則」がひどすぎる。財政赤字の対GDP比は従来の3%から0・5%に厳格化される。ケインズが生きていたら卒倒するだろう。

 いまのユーロ圏の高い失業率をご存知ですか。表面上10・4%だが若年層(25歳未満)は実に21・3%(昨年12月)。重債務国を例にとるとスペインは22・9%、若年層48・7%というひどさだ。

 ここに均衡主義を押し付ければユーロ経済の縮小化は必至で、最終的には恐慌にまで至る。ドイツには優秀で伝統のある経済研究所がいくつもあるのに、こんな簡単なことをアドバイスしないのだろうか。

 目先は3月上旬にギリシャ破綻、ユーロ離脱の方をメディアは注目しているが、この方は債務削減と追加援で妥協が何とか成立するとみている。万一ギリシャ離脱があっても債務危機の連鎖反応は食い止められるだろう。

 問題は「メルコジ体制」にある。メルケル首相の方はユーロ圏のドイツ制覇で高まる威信で支持率上昇。与党キリスト教民主同盟(CDU)は38%と2009年以来最高だ。

 一方サルコジ大統領の方が容易でない。野党社会党のオランド候補の45%に対し支持率は30%に過ぎない。しかもユーロ脱退を訴える右翼ルペン候補が支持率を上げて追い上げている始末だ。

 実は2010年以降の欧州危機で、政権交代が相次いでいる。アイルランド、ポルトガル、ギリシャ、スペイン、イタリア、スロバキアの7カ国だ。サルコジが8番目になるかどうかは4月22日が第1回、5月6日が決選投票になる。

 オランドは国家主権にあたる財政政策をEUに与える政策には反対、このためメルケル率いるCDUは露骨にサルコジ支援、オランド反対の姿勢を表明して、オランドのドイツ表敬訪問にも訪問日程を決めていない。

 いやはや。これでは目先はECBの金融緩和というカンフル剤が効いているうちはいいが、すぐバケの皮がはがれて問題が出てくるのは目に見えている。欧州危機の解決はまだまだ先のことだ。

 映画のセリフから。ヒューゴが言う。「もしこの世界が大きな機械だとしたら、構成している部品に何一つムダなものはない。人間もそれぞれ役割があるんだ。」ドイツがユーロ圏の弱い国にもっと情けをかけてやればいいのに。

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