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2012年3月26日 (月)

映画「栄光への脱出」とイラン攻撃と原油高(第615回)

映画「栄光への脱出」とイラン攻撃・原油高(第615回)

 1961年公開の古い映画だが、イスラエル建国を画いた大作。昨今の情勢からDVDで。若き日のポール・ニューマンのカッコいいこと!共演はエヴァ・マリー・セイント。

 パレスチナは英国の委任統治領だったが1947年の国連総会で土地の57%をユダヤ国家、44%をアラブ国家のものとする決議が成立し、これを根拠に独立宣言。映画はこの時代をユダヤ人の立場から画く。

 英国によってキプロス島に拘留され、祖国を失っていたユダヤ人が団結して島を脱出して自分たちの国家を建設する。脚本は「スパルタカス」や、「ローマの休日」のダルトン・トランボ。自由への憧れを強く描けている。

 このところ米国とイスラエルが連合してイランを攻撃するのでは、という見方から原油が高い。3月上旬にオバマ大統領が「米国がイランの核兵器保有は許さない。米国大統領は嘘をつかない」と述べた。これでオバマ政権がイスラエルの立場に近づいたという見方が強まった。

 しかしこの談話を報じた「アトランティック」誌によると、この認識は少々違う。オバマ大統領の発言は「この3年間とってきた対イラン戦略は成功している」というもの。「イランに対して孤立させ国際社会に復帰する道を指し示した。また拒否すれば深刻な結果になることも。」

 また「イランは核兵器開発には踏み切っていない」とも。7月1日にEUがイラン原油の輸入禁止政策を発動させるという大きな圧力に期待しているように見える。

 3月5日のオバマ大統領とイスラエル首相との会談でも外交優先が説かれたらしい。

 2月に行われた世論調査でも「米国の支援なしでもイラン攻撃せよ。」19%「米国の支持であれば。」42%。「攻撃すべきでない」34%とイスラエル国民は慎重だ。

 一方イランの国内情勢も口では威勢のいいことを言っているが内情は一本化していない。

 3月上旬に実施された国会議員選挙で反大統領派が優勢でアフマディネジャド支持派が苦戦。ただ定数290のうち65議席は一定の得票率に達しなかったため4月末に再投票の予定だ。

 にもかかわらず原油輸送の大動脈のホルムズ海峡封鎖を言っているのは、どうせ米国は大統領選挙で軍事衝突は避けるはず、という読みからに違いない。

同時にイランはテヘラン郊外のパルチン軍事施設への査察を容認した。核協議再開も否定していない。和戦両方ニランだ、したたかな態勢だ。

 これでは原油価格高止まりも仕方あるまい。そうなれば日本にとって輸入が増大し貿易収支は赤字。何しろ原発が動いていないしエネルギー原料の高価格輸入はどうしようもない。やはり円安。84円までの駆け上がり方が激しかったので、80円近辺への反動円高はありうるだろうが、90円以上の円安ドル高になるだろう。時期は年内から明年にかけて。

映画のセリフから。英国の将軍が言う。「考えてみれば(アラブ人もユダヤ人も)おなじ人間だ。人種や宗教はその後に来るもの。まず人間であることに注目しなくては。」本当にそうだと思うのだが、どうして平和が維持されないのかとつくづく思う。

2012年3月18日 (日)

映画「マーガレット・サッチャー」と海底資源大国日本の夢(第614回)

映画「マーガレット・サッチャー」と海底資源大国日本の夢(第614回)

 メリル・ストリープが先日のアカデミー賞で主演女優賞を獲得した話題作。彼女の演技を見るだけでも一見に値する。

 英国史上初めて女性首相となり三度の総選挙で勝利し、11年も在任した。ウィンストン・チャーチルと並ぶ大宰相だ。

 ところがこの映画は、女性監督の作品らしく、亡くなった夫デニスがしばしば現われて、妻としてまた女としてのマーガレット・サッチャーの歴史が画かれる。反共産主義者として「鉄の女」と呼ばれた豪腕政治家としての姿は、フォークランド紛争での主戦派として画かれるだけ。それでも戦いで死亡した兵士に母として手紙を書く。

 私は英国とも合弁会社を二つも証券会社時代と銀行時代に設立した。そこでサッチャー首相が来日した折に英国大使館に呼ばれて話をしたことがある。今回の映画を見て、そっくりの演技に驚嘆した。

 実は1979年にサッチャー首相が出現したときには、75年から始まった北海原油の寄与で、英国がドン底から立ち直りかけていた。

 その後原油の収入が財政の六分の一、輸出の五分の一を占めて英国経済は回復。日本人の製造業の能力を高く評価していたサッチャー首相は日産とNECの工場を招致し、勤勉さを労働者に学ばせた。また北海原油で余裕のできた財政を背景に、ロンドンの金融街シティにビッグバンを実施して金融立国を狙い成功する。

 老大国で斜陽の英国、しかも今の日本と同じく重い債務に苦しんでいた状況から立ち直らせたのは北海原油だった。

 私はこれに似た立ち直りを、海底資源の開発の日本経済への寄与で期待している。このブログの読者ならご存知の通りだ。メタンハイドレート、海底熱水鉱床からの金、銀、銅、亜鉛、レアメタルなどなど。今年中にメタンハイドレートは愛知県沖でテスト採掘がはじまり2014年に第二次、そして2018年から本格採掘が始まる。

 第二次大戦で負けるまで、日本は明治維新以来の軍事大国を目指した。その夢は英、米に次ぐ第三位の海軍で一応達成されたが、敗戦でパー。

 その後昭和24年にお隣の中国で共産主義政権が誕生、ソ連も当時は隆々とした大国で、米国は資本主義のモデル国家として西独とともに復興、成長させるべく対日政策は変わった。日本は今度は経済大国へ。1989年の株価3万9000円近辺へ、世界第二位のGDP、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と皆が信じた。

 まず株価、次に地価から下落、2003年には本格的デフレに突入。いい気になっていたツケが回ってきた。日本国債が危ないという悲観論は消えない。

 しかし、為替市場での円安は次第に先安観が定着し始めた。つれて超円高で息も絶え絶えだった自動車などの輸出が伸び始めている。やはり2月14日の日銀の「物価上昇1%目途」声明は効いている。原発ストップと原油高はやはり円安材料。一方米国はシェールガス革命でドル高要因が出てきた。今時代は変わろうとしている。そのうちにだれもがそのことに気が付く。あと1年?2年?遅くとも海底資源開発のメドがつく2014年だろう。

 先日若林栄四さんのセミナーを聞く機会があった。私のかねてからの見方と7,8割一致していてびっくりした。「不連続時代」が始まったという主張に私は同感だ。

 最近のユーロ騒ぎは、参加しなかったサッチャーの先見力を裏書きした。「他人の10倍早く、より多くを準備して常に時代の先を行った」サッチャーへの評価は高い。

 映画のセリフから、免許の試験を控えた娘の運転を助手席でみてやりながら言う。「ハンドルを握ったら大胆にやるのよ」。タイミングを見て、攻める時には攻める。

 

2012年3月10日 (土)

映画「戦火の馬」と米国大統領選挙(第613回)

映画「戦火の馬」と米大統領選挙(第613回)

 スティーブン・スピルバーグ監督の最新作で私はものすごく感動した。涙したのは私だけではなかったと思う。アカデミー作品賞にノミネートされたのも当然だろう。

 舞台は第一次大戦時代の英国。貧しい農家の息子アルバートは愛し大切に育てた馬ジョイを、英国軍に軍馬として不本意ながら売られてしまう。ジョーイは戦場の最前線で英独両軍に使われ走り続ける。アルバートも徴兵され戦場へ。巨大な戦争の波に、馬も人も翻弄される。

 戦争は結局どちらかが勝ち、どちらかが敗れるのだが、双方とも傷つく。それも深い心の傷を。

 米共和党の予備選挙のヤマ場で10州が決まるスーパー・チューズディが終わった。全米のほぼ半分の州で予備選挙が終わったが、ミット・ロムニー候補がリードしているものの決定したわけではない。まだ戦争中だ。

 1月末にフロリダ州でロムニー候補が勝った時には、これで決まりと見る向きが多かったが、すぐ2月に入り3州でサントラム候補、それにギングリッチ候補はジョージア州を、押さえ決定力不足が明らかになっている。

 ロムニー候補の経歴はビジネスマンとしては立派なもの。コンサルタントとして成功し、次いでベンチャーキャピタル会社を設立、多くの企業を再生させた。ウオール街でロムニー人気が高いのも当然だ。

 ところが共和党内部の選挙戦では①企業再生の過程で、社員のクビを切った②高額所得(2010年17億円)にもかかわらず低税率(配当収入なので14%)で連邦所得税の35%より低い、などが攻撃された。

 以前からロムニー候補がモルモン教徒なことがハンディとされてきたが、豊富な運動資金をバックに有利な選挙戦を続けてきた。しかしスーパー・チューズディでもまだ決定力不足は否めない。

 現職のオバマ63、ロムニー34、残りの候補はひとケタ、というのが「イントレード」という賭けWEBサイトの賭け率だ。この予想はここ2か月ほど変わっていない。結局ロムニーだがオバマにはかなわない、とみていることになる。

 ではオバマ第2期ならどうなる。一般教書と予算教書で目立つことを。

 まず税制改革を、一種の階級闘争として扇動しているということ。高所得への増税、税優遇措置の廃止で2013年度から財政赤字は改善。著名投資家ウォーレン・バフェット氏が言い出したため「バフェット・ルール」と呼ばれる。ロムニー候補への対抗策。「私のような立場の者は自分の秘書より高い税率を払うべきだ」というバフェット氏の秘書が、一般教書演説の時にオバマ夫人の隣に招待してTVに映した。

 第二は「シェールガス革命への『信仰』。ウオールストリートジャーナルがこう名付けた。天然ガスを自動車燃料として活用することを「とりわけ重要」とし、カリフォルニア州ロングビーチとユタ州ソルトレークシティを結ぶ初の『天然ガス回廊』第一号を称賛した。

 私がドル高円安を主張していることはこのページをご覧の皆様はご存じだろう。シェールガスの寄与で米国の貿易収支赤字が急減する時期は近いのはドル高要因。円安の要因は日本の貿易収支の黒字転換の遅れや、海外企業に対するM&Aなどなど。私は3年か4年の間に120円ぐらいはあるのでは、と考えている。輸出株特に自動車を注目している。

 映画のセリフから。兵士が言う。「伝書鳩は勇気があるんだ。下を見ると恐怖と死。その上を飛ばなければ、ウチに帰れないんだぜ。」円高恐怖を唱える本は書店にヤマとあるが、外れると私は見ている。結構勇気が要るんだが、私はドル高円安論の方が当たると考える。

2012年3月 4日 (日)

映画「アーティスト」と米国経済の復活とドル高(第612回)

映画「アーティスト」と米国経済の復活とドル高」(第612回)

 先日の第84回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞など5部門を制した、フランス映画としても初の受賞。

 意外や意外。映画はカラーで大画面、3D時代というのに、白黒スタンダードでしかもサイレント。授賞式でアザナヴィシウス監督はビリー・ワイルダーの名前を3回も連呼し、名匠への敬意を示した。作品の中でも名作のオマージュと思われるシーンもずいぶん多い。

 お話は1920年代末のハリウッド。サイレント映画界の大スター・ジョージは新人女優のペピーを見初め、人気女優に導いてゆく。強く惹かれあう二人。

 ところが映画はサイレントからトーキーへの移行時代。オレはアーティストだ、とサイレントにこだわるジョージは没落し、逆にペピーはスターへ。二人はどうなる。

 80年以上も前の時代だが、この映画は世界的な恐慌という意味で現代とダブる。1929年のウォール街の大暴落と世界恐慌は、今回の欧州の銀行の取り付け騒ぎに近い状況と、これも重なる。未公開だが試写を見たのでー。

 実は景気循環論でみると、今回の激変は長期大循環の終末に、これまでもかならず起きていた現象である。これにはエネルギーが深く関与している。

 福田研二九州大教授「エネルギー経済論」によると「エネルギーが係る実質経済がまず破局した後、金融危機(恐慌)が発生している」。

 たとえば1800年前後の産業革命は木炭から石炭への転換期に発生し、その近辺で恐慌。1929年の大恐慌は石炭から石油への移行期に発生した。また2008年リーマン・ショック以来の金融危機は、実は石油の枯渇化のもたらしたものである。

 エネルギーは産業の基盤インフラである。その生産が減少期に入ってエネルギーの追加的な産出が止まるか減少すると、産業全体の生産性は低下し、経済の停滞を招く。

 しかし新エネルギーの台頭によって生産性は向上し、新しい成長期に入る。この説によると現在主に米国で行われている「シェールガス」の開発は、来るべき米国と世界の経済の成長を切り開く。

 このガスは地下3000米の頁岩(けつがん)に含まれるもので、ここ数年、採掘技術の進歩で、安価に供給されることになった。

 埋蔵量は膨大である。米エネルギー情報局の調査によると可採埋蔵量は世界全体で187兆立方米、可採年数は従来の63年が400年に延び、原油の46年、天然ウランの100年をはるかにしのぐ(円居総一日大教授論文)。

 とくに米国経済への寄与は大きい。米国・国家石油諮問会議の調べでは「石油と天然ガス合わせて2035年に日産2200万バレルを超える」。現在世界最大の産油国はロシアで日産1000万バレル、第二位はサウジで950万バレルだから、両国合わせたより大きい。

 現在の米国の貿易収支赤字の半分はエネルギーの輸出入差により赤字なので、シェールガスの国内生産を上回る分が輸出来る2015年以降、ドル高になる。このところの円安ドル高傾向は、材料の裏付けがある、といえるだろう。今後の設備投資ブームも米国経済を支える。

 一方、日本の円の方も安くなる材料はある。経常収支の赤字転落不安。またゴールドマンのジム・オニール氏の「1%未満の日本国債金利は2,3年以内に3・5%に」という予言を受けてか、日本国債のソブリン保証料率が昨年10月と今年1月に152ベーシスポイントをつけるなど不穏な動きだ。昨年11月には100を切っていた。現在でも120と少々高い。ちなみに米国は40、ドイツ60近辺だ。

 まあどこかで揺り戻しがあっても、流れは円安ドル高。これは変わらないとみている。

 いつものように映画のセリフから。ありません!サイレント映画だからセリフがあるわけないじゃあないですか。

 

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