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2012年3月 4日 (日)

映画「アーティスト」と米国経済の復活とドル高(第612回)

映画「アーティスト」と米国経済の復活とドル高」(第612回)

 先日の第84回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞など5部門を制した、フランス映画としても初の受賞。

 意外や意外。映画はカラーで大画面、3D時代というのに、白黒スタンダードでしかもサイレント。授賞式でアザナヴィシウス監督はビリー・ワイルダーの名前を3回も連呼し、名匠への敬意を示した。作品の中でも名作のオマージュと思われるシーンもずいぶん多い。

 お話は1920年代末のハリウッド。サイレント映画界の大スター・ジョージは新人女優のペピーを見初め、人気女優に導いてゆく。強く惹かれあう二人。

 ところが映画はサイレントからトーキーへの移行時代。オレはアーティストだ、とサイレントにこだわるジョージは没落し、逆にペピーはスターへ。二人はどうなる。

 80年以上も前の時代だが、この映画は世界的な恐慌という意味で現代とダブる。1929年のウォール街の大暴落と世界恐慌は、今回の欧州の銀行の取り付け騒ぎに近い状況と、これも重なる。未公開だが試写を見たのでー。

 実は景気循環論でみると、今回の激変は長期大循環の終末に、これまでもかならず起きていた現象である。これにはエネルギーが深く関与している。

 福田研二九州大教授「エネルギー経済論」によると「エネルギーが係る実質経済がまず破局した後、金融危機(恐慌)が発生している」。

 たとえば1800年前後の産業革命は木炭から石炭への転換期に発生し、その近辺で恐慌。1929年の大恐慌は石炭から石油への移行期に発生した。また2008年リーマン・ショック以来の金融危機は、実は石油の枯渇化のもたらしたものである。

 エネルギーは産業の基盤インフラである。その生産が減少期に入ってエネルギーの追加的な産出が止まるか減少すると、産業全体の生産性は低下し、経済の停滞を招く。

 しかし新エネルギーの台頭によって生産性は向上し、新しい成長期に入る。この説によると現在主に米国で行われている「シェールガス」の開発は、来るべき米国と世界の経済の成長を切り開く。

 このガスは地下3000米の頁岩(けつがん)に含まれるもので、ここ数年、採掘技術の進歩で、安価に供給されることになった。

 埋蔵量は膨大である。米エネルギー情報局の調査によると可採埋蔵量は世界全体で187兆立方米、可採年数は従来の63年が400年に延び、原油の46年、天然ウランの100年をはるかにしのぐ(円居総一日大教授論文)。

 とくに米国経済への寄与は大きい。米国・国家石油諮問会議の調べでは「石油と天然ガス合わせて2035年に日産2200万バレルを超える」。現在世界最大の産油国はロシアで日産1000万バレル、第二位はサウジで950万バレルだから、両国合わせたより大きい。

 現在の米国の貿易収支赤字の半分はエネルギーの輸出入差により赤字なので、シェールガスの国内生産を上回る分が輸出来る2015年以降、ドル高になる。このところの円安ドル高傾向は、材料の裏付けがある、といえるだろう。今後の設備投資ブームも米国経済を支える。

 一方、日本の円の方も安くなる材料はある。経常収支の赤字転落不安。またゴールドマンのジム・オニール氏の「1%未満の日本国債金利は2,3年以内に3・5%に」という予言を受けてか、日本国債のソブリン保証料率が昨年10月と今年1月に152ベーシスポイントをつけるなど不穏な動きだ。昨年11月には100を切っていた。現在でも120と少々高い。ちなみに米国は40、ドイツ60近辺だ。

 まあどこかで揺り戻しがあっても、流れは円安ドル高。これは変わらないとみている。

 いつものように映画のセリフから。ありません!サイレント映画だからセリフがあるわけないじゃあないですか。

 

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