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2012年4月21日 (土)

映画「別離」と日本国債暴落仕掛けの失敗(第619回)

映画「別離」と日本国債暴落仕掛けの失敗(第619回)

 先日のアカデミー賞で外国映画賞、これに先んじてベルリン国際映画祭で金熊賞など各賞を総なめにしたイラン映画の佳作。

 登場するのは銀行員、失業中の労働者の二組の夫婦。ともに女の子が一人。

 銀行員の妻シミンは娘の教育のため国外移住を決意。しかし夫ナデルはアルツハイマーの老父を置き去りにできないと拒む。妻が家を出てしまうので、父のため失業中の労働者の妻ラジェを介護人として雇う。

 ある日ナデルが帰宅するとラジェの姿がなく、老父は縛られて倒れている。怒ってラジェを手荒く追い出すと、その晩入院して流産してしまう。

 19週間を過ぎた胎児を流産させてしまうと殺人罪で何年間か牢獄入り。裁判になってしまう。ラジェがナデルを突き飛ばして階段を転げ落ちたため流産した、と告発したためだ。現実は違うのだが。まるで黒沢明の「羅生門」のようにさまざまに食い違うそれぞれの立場で見方や証言が食い違う。

 つい2,3か月前、あるヘッジファンドの日本国債売り仕掛けが話題になった。ヘィマン・キャピタルのカイル・バスという男で、私が知っているだけで3回は国債売りをしてその都度失敗。

 しかし今回は野田内閣が増税案を出しかけていた時なので、恐らく財務省がけしかけて大きな報道になったのだろう。

 某大新聞のトップ記事で三菱UFJ銀行の日本国債暴落の対策を作っているという報道も、やはり財務省の差し金に違いない。

 たしかに1月中旬には日本国債のデフォルト損失保険料(CDS)の料率は152ベーシスポイントとその直前に比べて急上昇。当時CDSの売買量も前年同期比40%も増加「仕掛け」が始まったことをうかがわせた。

 また1月17日にはゴールドマン・ザックス・アセット・マネジメントのジム・オニール会長が「3年以内に日本国債は現在の1%から3・5%に上昇」と予想し、円売り、日本株買い、日本国債売りを推奨した。

 同氏はあのBRICSの投資シナリオを考え出した超一流のストラテジスト。この人の意見は昨年末のヘッジファンドの電話会議で公表されたといわれる。カイル・バス氏の仕掛けにこのジム・オニール会長の見方がバックにあったとみていい。

 実はこの情報は財務省に入っており、金融機関を呼んで非公開の会議を開いていた。日銀が2月14日の量的金融緩和方針を発表したのは、この会議に影響されたと私は見ている。内容はご存じの物価1%上昇を目途(GOAL)とするというものだが、国債の関連では「資産買受基金65兆円を使い、1年に40兆円の日本国債買いを行う」ところが売り仕掛けに打撃を与えたとみていい。

 CDSのレートはその後大幅に下げて半分になった。また日本国債の売りも3月第4週と第5週にそれぞれ1兆円の大量売りがあったが、国債の金利は一時1・02%に上昇したものの、0・94%に下落した。今回に限っては防戦側の完勝と見ていい。映画で介護人ラジェがナデルのせいだと仕掛けて、結局敗れてしまったように。

 それでも、いつまた暴落仕掛けが始まるか分からない。今回効き目のあった日銀のサプライズが次回も効果があるか、どうか。まだ不安な状況は続くが、それでもまだまだ大丈夫と考えている。

 映画のセリフから。シミンは裁判の最中にラジェに話をつけて示談ですまそうと企む。ナデルが怒って「お前は何か問題があると必ず手を挙げて降参してしまう。」仕掛けが終わっても白旗は誰にも見えない。私のニューヨークの日本クラブでの講演もこの話を入れた。27日の日銀政策決定会合に期待しよう。

 

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