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2012年5月10日 (木)

映画「テルマエ・ロマエ」とフランス新大統領(第622回)

映画「テルマエ・ロマエ」とフランス新大統領(第622回)

 ただ今ヒット中の娯楽映画で気楽に楽しめる。笑いが絶えない。原作は500万部を売ったヤマザキマリのマンガで「テルマエ」とは大衆浴場のこと。もちろん「ロマエ」はローマの、という意味だ。映画のあいま合間にイタリアオペラの名曲が、ドミンゴの美声で効果的に入る。

 紀元2世紀の古代ローマ。主人公ルシウス(阿部寛)は当時市内に1000あったといわれる浴場の設計技師。新しいアイデアを求めていたら現代日本にタイムスリップ。銭湯、ウオッシュレットを含めた理想郷を見つける-という奇想天外のSF。ルシウスはハイテクにも興味を示すが、覇権国家ローマの傲慢な国民性とは対照的な日本人の国民性に、驚きと共に尊敬の念を抱く。

 かつての皇帝たちが20万人のローマ市民の人気を得るための政策が有名な「パンとサーカス」。それに一度に1000人以上が入浴できる大浴場だった。パンも見世物も、ローマ市民の証としての木札を示せばタダ。また入浴料も10円程度だった。子供や兵士は無料。

 フランスの大統領選挙が終わり、社会党のフランソワ・オランド第一書記が勝利した。

 同氏は60もの公約を発表している。中には「パンとサーカス」「大浴場」的なものが多い。

 たとえば「子ども手当」の増額。9月の新学期から618歳の子供に新学期ごとに、一人268ユーロ支給されているのを25%増額。

 また現行62歳の年金支給を60歳に引き下げるとか、教育分野では今後5年間で6万のポストを新設するとか。我が国の民主党の匂いがする。

 代わりに目の敵にされるのが富裕層。年間15万ユーロ以上の層に45%の税を課する。これが社会保障の財源になる。

 また銀行も同じく敵役だ。①租税回避地での営業を禁じ②銀行の収益への税を15%増税②全ての金融取引への増税を実施、など「社会党流の正義」が公約されている。また地方の中小企業のために公共投資銀行を設立する、とも。

 パリ株式市場では大手銀行株が新安値を更新している。かつてのミッテラン政権のような国有化にまで行かなくても、営業活動のしにくさは明らかで、これを嫌気しての株安だろう。

 ただ金融危機の再燃には至るまい。フランス国債利回りはむしろ低下。CDSプレミアムもほぼ不変で市場は安定している。

 それでも円高ユーロ安に動いたのは、スペインの銀行が不良債権の重荷に苦しみ、スペイン国債のCDS上昇、株価急落と「次のギリシャ」不安があるためだ。イタリアにも不安の声が。

 私はスペインの銀行が経営危機になれば国家資金投入で済むだろうし、イタリアも財政収支のプライマリーバランスは黒字なので、大丈夫、と見ている。夏にはポルトガルが再協議されるだろうが。

 私はもう一つ。オランドは結局「変わる」と見せかけて実は「変わらない」と見ている。反ドイツでないことも明示したし、円の対ユーロレートは今の100円飛び台はユーロ買いをお勧めしたい。

 映画のセリフから。ルシウスがタイムスリップし、現代日本の銭湯の客の秩序だった姿、勤勉無私な老人たちの労働の姿に感動して言う。「この途方もない敗北感を、何と表現したらいいんだ?」堅苦しさと無縁のお気軽コメディだが、お話しにスジが1本、通っている。

わたしは、目先の円高は一時的なもので、流れは円安、との見方を変えない。

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