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2012年7月27日 (金)

映画「野望の系列」と米国大統領選挙(第633回)

映画「野望の系列」と米国大統領選挙(第633回)

 このブログの読者は、恐らく、この映画をどなたも見たことがないだろう。1962年公開のオットー・プレミンジャー監督の名作。日本ではアートシアターチェーンで65年公開。小林信彦さんがベスト100に選び「プレミンジャーの代表作」と高い評価しているので見たかった。先日WoWWoWで、やっとー。期待にたがわぬ力作だった。ズラリとそろった芸達者の演技も楽しい。

 病身の大統領が国務長官の候補にヘンリー・フォンダを指名したが、上院に彼じゃあ共産主義者だと反対する議員のチャールス・ロートンがいて、モメにモメる。原作はピュリッツアー賞を獲得したアレン・ドルーリーの「助言と同意」。米国の政界を表から裏から画いた作品だ。

 当時の劇場のパンフレットは充実していて、映画の脚本、映画評論家たちの批評、それにびっくりしたことに中曽根康弘・芸術議員連盟会長(当時)の感想まで。「面白い映画で見ごたえがある」首相公選制の主張も書いてある。65年だから47年も前だ。

映画がテーマにした米国の政治はいよいよ11月の大統領選挙に向けて最終段階に入った。

 7月下旬に行われた最新の世論調査ではオバマ46・4%、ロムニー44・7%の支持率。またイントレードという選挙の先物でもオバマ5ドル70セント対ロムニー4ドル10セントでともにオバマ有利だ。

 しかしここらが米国大統領選挙の面白いところで「州ごとの勝者総取り方式」が意外に微差ではあるがロムニー勝利のメが出始めている。説明しよう。

 もう、この州はこの党、と決まっている選挙運度不要州がいくつもある。民主党は14州182人の選挙人を固め、共和党は19州と州の数は多いが選挙人143人。大統領になるには270人を取ればいいからリクツ上は民主党が有利で、共和党が勝つときはいつも辛勝になる。

 「スィング・ステート」とか「トス・アップ」つまりコインを投げるように“読めない”州が勝負を決める。

 最近米国でこの“読めない”州が読める材料が出た。ウィスコンシン州の州知事リコール戦で米国政治史上初めて仕掛けられた知事が勝った。 仕掛けた地方公務員労働組合は7%という大差で負けた。各州で問題となっていた公務員への厚遇のし過ぎが、米国民の反感を買っていたことが明らかになった。

 選挙人でみるとウィスコンシンは10人に過ぎないが、トス・アップのフロリダ(29人)、ペンシルバニア(20人)、オハイオ(18人)がこれで共和党に有利になった。

 これに加えて伝統的に共和党有利だったが、前回はオバマが取った州がある。今回は極めて怪しい。ノースカロライナ(15人)、ヴァージニア(13人)、インディアナ(11人)。これら7州合わせて116人。前回選挙時より人口が増えて共和党の選挙人増加が14人あるので、合計273人。ロムニーが勝つ計算になる。

 伝統的に日本に厳しい民主党よりもロムニーの方が日本には有利、と考えていたが、6月15日ロムニー陣営のスポークスマンは「日本のTPP参加が米国経済に多大な恩恵があることは確信しているが、合意達成までの交渉と日本の解放市場へのアクセスの確保に時間がかかる。日本のTPP参加を現時点では支持していない」と。日本のTPP支持のオバマとの差を明確にするつもりなのだろうが、アレレという感じだ。

 映画のセリフから。自信のない副大統領が院内総務の上院議員に聞く。「わしは大統領になる資格があるだろうか?」「誰だって大統領になってから資格が出来てゆくのさ。」そんなものなんだろうなあ。映画では大統領の急死でこの副大統領が昇格する。

2012年7月21日 (土)

映画「ヘルタースケルター」と人工的金融緩和の行方(第632回)

映画「ヘルタースケルター」と人工的金融緩和の行方(第632回)

 題は「しっちゃかめっちゃか」の意で原作は岡崎京子のコミック。蜷川実花監督、沢尻えりか主演の話題作だ。

 芸能界の頂点に君臨するトップスターりりこは、全身整形で「目ん玉と爪と髪と耳とアソコ」以外は全部つくりものの元ブス。

 後遺症で皮膚が崩れ始めたり、トップの座を失う恐怖。焦りもあって精神は「ボロボロになりながら破滅への道を進んでゆく。

 主役沢尻エリカの脱ぎっぷりもいいし、監督のビジュアルな画面作りも美しい。面白さも含めてまあまあの作品だ。

 人工的なものは永続きしない。リーマン・ショック以来の低金利政策はどうもひとつの頂点に達したが、映画のトップスターりりこの地位と同じく、弊害が「次」に起ること必至だろう。

 どうして頂点なのかを説明しよう。7月11日にECBは政策金利を0・75%に引き下げ、同時にユーロ圏の銀行がECBに預託していた資金の金利を0・25%からゼロにした。

 ユーロ圏の銀行のECB預託資金は80兆円。これが一挙に30兆円に減少し、その分は信用度の高い国も国債に流入した。

 日本も10年もの国債で0・7%台の下の方、米国も10年物国債は1・4%台に突入した。ドイツの2年物国債は何とマイナス0・055%と史上初めてのマイナス金利となった。国債を買った側わがわざわざ金利を支払うという、何とも異常な状態に突入したことになる。

 超低金利政策は貯蓄の魅力を失わせ、企業や個人に設備投資、住宅投資、消費を促して景気を良くする。同時に為替レートの下落につながって輸出増と輸入減がこれまた景気を押し上げる。

 弊害もある。物価上昇が始まると加速し通貨への信認が落ちて為替レートは安くなる。

 現実には日本はそうなっていないじゃないか―といわれそうだが、これは日本銀行が量的金融緩和を怠ってきたため。ここいらはまた別の機会に書くつもりだ。

 ユーロの方は量的にも十分だし、まだ対ドルのユーロのレートは1・2近辺でヘッジファンドの目標としている一対一には間がある。

 キャリートレードという取引がある。金利が安く先安が見込めると通過で資金調達し、何か儲かりそうなものに投資する。ドルキャリーとか円キャリーが行われた時期もあった。今回はユーロキャリーだ。

 目先、日米独などの国債買いが主力だろうが「次」の投資目標が出てくるだろう。候補は次の通り。

 欧州特にドイツの住宅。明らかにバブル開始の匂いがする。関連株も。

 中国。ええっと思われるだろうが、中期では破滅への道だろうが、ごく目先は景気刺激効果がある。ごく一例。6月の自動車販売は年換算1999万台。1~6月期の消費は年率20%増。弱気充満の中でアレレとなるか。

 商品。大豆やトウモロコシは今が盛りだが非鉄や鉄鉱石、それに金など。

 いまQEⅢの催促相場でグズついているが、これが決まればNYダウは2万ドルへ。本当にそうなると信じているマネジャーは結構多い。

映画のセリフから。整形医の違法性を調査している検事にアシスタントが言う。「神様は人間に若さと美しさを与え、それから奪うんですね。」「若さと美は同じじゃないさ。若さを失っても美は残る。別の美も生まれる。」人工の超低金利の方はそうはいかないかも。

2012年7月13日 (金)

映画「クレイジーホース・パリ 夜の宝石」と小沢新党(第631回)

映画「クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち」と小沢新党(631)

 クレイジーホースは、フレンチカンカンのムーラン・ルージュ、大掛かりなショーのリドとともにパリの三大ナイトスポットのひとつ、芸術性の高いヌードショーが特色だ。もっとも偉大なドキュメンタリー映画作家とされるフレデリック・ワイズマン監督が、10週間舞台裏に入って撮影した、「DESIRES」というショーだ。

 ショーの演出はアルベールヴィル冬季オリンピックの開会式と閉会式を手掛けて一躍有名になったフィリップ・ドウクフレ。キュートなダンサーたちのリハーサル、楽屋の様子、オーディション。芸術とビジネスがせめぎ合うミーティングまで、これがクレイジーホースの世界と納得できる。ナレーションもインタビューも入らない記録映画。幻想的なショーの場面と合わせてオトナの鑑賞に耐える作品だ。

 映画の中で総支配人がドウスフレの新しいショーをたたえて「とても斬新な演出で、創業者のベルナルダン氏も“オレが生きていたらこれをやった”と草葉の陰からブラボーを言うだろう。クレイジーホースはキャバレー芸術を完成させた。高度に洗練された芸術。」と。

 観客を十二分に堪能させる美女たちのショーに比べて、今回の日本の政治ショーは随分オチる。だいぶどころか、まあ落第だ。

 まず党名がひどい。国民のためを連呼していたのだから、というのだろうが、押しつけがましさに辟易する。

 

グループの議員数は衆議院から37人、参議院から12人。このうち衆議院議員は小沢氏をのぞくと36人。うち2回以上当選した議員は12人しかいない。残り24人の半分が1回生、のこる12人は同じ1回でも比例による選出だ。この24人はほぼ間違いなく次の選挙でほとんど落選だろう。あの小泉チルドレンも83人もいたが、次の選挙ではたった10人、(うち選挙区選出は4)に過ぎなかった。

 ずいぶんと小沢氏はアテが外れたのではないか。鳩が参加しないとカネが入らないし、橋下市長にすり寄るつもりだったのだろうが見事にハズレ。政党助成金が入るのは来年4月だがその間どうするのか。表面に出ない争奪戦が党の職員を舞台であったが、野田党首の圧勝だったらしい。

 小沢グループはずしで、事実上の大連立がスタートしたことも小沢氏の計算外だっただろう。三党は増税法案成立後もすぐ解散する愚を避けること確実。恐らく解散、総選挙は来年の年明けだろう。

 ある事情通は年内の補正予算を、民自公三党が共同して作る、と予想している。来年早々の選挙なら9月の自民、民主の党主戦は終わり、来年度の予算も出来上がって審議の最中、三党合意が新年度の本予算案まで進んでゆくのか、どうか。

 政権担当の政党は強い。小沢氏がアテにしていた鈴木宗男氏の新党大地も「組まない」。北方領土問題が同等の生命線だが、これは与党とのパイプが必要。だからーというわけだ。

 新党スタートの日は上野動物園でパンダの赤ちゃんが死んで、ニュースのトップにならなかったのも何か小沢氏の今後を象徴しているように私には思える。

  映画のセリフから。ショーの衣装の担当者が言う。「情熱だけじゃダメ。クレイジーホースの名誉を守らなくっちゃ。みんなの名誉もね。たかが衣装でも私たちには大事なの。ダンサーをきれいに見せたいのよ。」小沢氏は原発反対、消費税反対で、チルドレン議員が美しく見えると思っているのだろうか。

 

2012年7月 9日 (月)

映画「崖っぷちの男」と米国の財政の崖とシェールガス(第630回)

映画「崖っぷちの男」と米国の「財政の崖」とシェールガス(第630回)

 練りに練った脚本で一気に見せるサスペンスの佳作。ドキュメンタリー出身の監督だが、演出に力があって、何よりも面白いし、後味が爽快、お勧めする。

 元NY市警のニック(サム・ワーシントン)はダイヤ強盗の濡れ衣を着せられ、投獄されていたが脱獄。NYのミッドタウンのホテルの高層階にチェックインしたニックは、窓の外の35センチのヘリに立ち、自殺を匂わせながら無実を訴えて市警の交渉人を呼ばせる。

 ホテルの向かいにある建物はニックが盗んだとされるダイヤの持ち主が所有し、関係者を呼んでいた。そこに屋上から一組の男女が爆薬を使って内部に侵入。地上には野次馬の群れと取材のTVクルー、それに突入と射殺したいらしい刑事、何か秘密のありそうなニックの元相棒―。お話しは何重にも重なって進行し、意外な展開に。

 米国が「財政の崖」に直面しようとしていることは周知のとおり。「崖」とは何の手立ても打たれなければ、2013年初めに発生する大規模な財政緊縮策のこと。バーナンキFRB議長の発言で有名になった。

 米国議会予算局の試算によると「崖」の高さは6070億ドル、GDP比4%相当。カレンダー・イヤーで見たGDPの押し下げ幅は5%となる。

 これは次の措置が2012年末に失効するため。①ブッシュ減税。たとえばキャピタルゲイン税は15%が20%になり所得税率も上昇②AMTパッチと呼ばれるミニマム課税回避措置で①②合わせて2210億ドルの増税③DOC FIXと呼ばれるメディケアの診療報酬削減凍結で110億ドル増税④給与減税と緊急失業給付で1210億ドル増税などなど。

 これに加えて昨年成立の財政管理法に基づく支出の一律削減で650億ドルも加わる。

 11月の大統領、議会選挙後にこの「崖」を回避する攻防が行われる。しかし共和党と民主党の対立は根深いので、議会で共和党が上下両院を押さえ込んで同党案が決まるという解決しかあるまい。

 CBOによる6070億ドルもの「崖」の影響は極端で、現実にはオバマ大統領が2月に予算教書で示した一部延長を盛り込んだ3140億ドルあたりが妥当なところだろう。GDPへのインパクトは0・7%の成長率押し下げが予想される。

 幸い、シェールガス革命による米経済押し上げ効果が見込める。シンクタンクIHSによると2010年のシェールガスの貢献は760億ドルだったが、2015年に1180億ドル。まあ半分ぐらい軽減されよう。

 シェールガス関連事業税収の方も2010年の186億ドルから2015年285億ドルに増加する。

 日大円居総一教授によるとシェールガスを中心とした天然ガスの輸出増で、米国の貿易赤字削減が見込める。

 天然ガス輸出は2035年に2010年時の4倍で年間240億ドル。石油輸入の減少を控え目に2割として、年540億ドルもの輸入減で、輸出増と合算すると800億ドル、現在の貿易赤字の15%の収支改善効果がある。

 結論。事前に分かっている危機は解決する前は不安視されるが、現実にその通りになってしまう可能性は低い。11月の選挙結果に響く材料なので問題視はされるだろうが。私のドル高シナリオに変わりはない。

 映画のセリフから。ホテルの近くの野次馬が叫ぶ。「リーマン・ショックで米国は終わりといわれたが、もう立ち直った。しかし立ち直ったのは金持ちだけ、オレたち貧乏人はまだまだダメだ。」まあここいらが米国市民の実感なんだろうなあ。長期的な先行きが明るいといっても目先はまだ容易でない時期が続く。

2012年7月 1日 (日)

映画「アメイジング・スパイダーマン」と小沢氏と消費税(第629回)

映画「アメイジング・スパイダーマン」と小沢氏と消費税(第629回)

 サム・ライミ監督が作り上げた大ヒットシリーズだが、同監督の降板で一から作り直し。主人公ピーター・パーカーの高校時代からスパイダーマン誕生が画かれる。3Dでびっくりするくらい迫力ある画面だが、映画の出来はいまいち。正直に言って少々退屈だった。

 毎日の小沢氏のTVニュースも退屈だ。三党合意の条件が小沢グループの排除と私は理解しており、野田=小沢の2回にわたる会談もアリバイ作り。8月の衆院選で野田総理-谷垣副総理」に、あるいはその逆か。民主・自民の増税賛成派が大連立を組む可能性もある。

 賛成票365、反対票たった90というのはすごいことだ。

 小沢グループで離党届に署名捺印した議員が47人いるといっても、実際にはとても離党を決意する向きは少ないだろう。総選挙の時のポスターはりひとつとっても個人では大変。

 また「鳩」が参加しない新党ではカネがない。党をつくってはコワして、政党助成金をポケットに入れる得意のテも使えないし。公明党がソッポを向いたままなのも、小沢氏には誤算だろう。私は次の問題はTPPと日銀法改正と考えているから、親米保守勢力の合同はいいことと思う。

 スパイダーマンシリーズの人気が、ヒーローだけどマッチョで強い男でなく、気の弱い普通の高校生。しかも父母が8歳の時失踪したことが心のキズになっている。私は週刊誌で紹介された小沢夫人の手記を想い出した。ニセモノとは思えないがなア。

 消費税が26日衆議院で可決され、その後株は上昇、29日には日経平均は久しぶりに9000円の大台を回復した。まあ2014年4月の3%、2015年10月の2%増税だからまだまだ先のことだし、公共投資をやるのなら、その関連株を買えばいい、ということだろう。

 SMBC日興証券のチーフエコノミスト牧野潤一さんが経済・財政・産業へのインパクトをまとめている。

 マクロ経済でみると、増税前は駆け込み需要が2013年度7・7兆円ありGDP成長率を1・4%押し上げる。何もないときの成長率を1・8%とおくと3・2%成長になる。

増税後の2014年度は9・6兆円の反動減で1・8%押し下げ、年度としてゼロ成長へ。続く2015年度は反動減の継続と次の駆け込み需要が交錯する年になる。1・7%成長。

 消費税率合計5%の引き上げで財政収支はGDP比2・5%改善するが、プライマリーバランスはGDP比6・9%マイナス(2013年度)なので黒字化にはほど遠い。牧野エコノミストは「仮に消費税率の上昇だけでプライマリーバランスを均衡させるには消費税率18%の必要がある」と。

 産業界への影響は商業、建設、不動産、事業所サービスで1兆円を超える。個人消費と設備投資、住宅投資の需要増は10・6兆円、産業界の売上高ベースで16兆円の増収(1・8%)を生むことになる。

 株式市場はこの増税のように前からワカっている悪材料は、事前に嫌気して下げるがいざ実施となると悪材料出尽くしで上昇に転じるのが常識。89年4月、97年4月ともに同じだった。

映画のセリフから。主人公にガールフレンドが聞く。「すごい力を持つようになって、不安にならないの?」あの夫人の手紙を呼んだ私の印象は、やっぱりあの人は不安な人生だったんだなあ、ということだ。

 

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