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2012年7月 9日 (月)

映画「崖っぷちの男」と米国の財政の崖とシェールガス(第630回)

映画「崖っぷちの男」と米国の「財政の崖」とシェールガス(第630回)

 練りに練った脚本で一気に見せるサスペンスの佳作。ドキュメンタリー出身の監督だが、演出に力があって、何よりも面白いし、後味が爽快、お勧めする。

 元NY市警のニック(サム・ワーシントン)はダイヤ強盗の濡れ衣を着せられ、投獄されていたが脱獄。NYのミッドタウンのホテルの高層階にチェックインしたニックは、窓の外の35センチのヘリに立ち、自殺を匂わせながら無実を訴えて市警の交渉人を呼ばせる。

 ホテルの向かいにある建物はニックが盗んだとされるダイヤの持ち主が所有し、関係者を呼んでいた。そこに屋上から一組の男女が爆薬を使って内部に侵入。地上には野次馬の群れと取材のTVクルー、それに突入と射殺したいらしい刑事、何か秘密のありそうなニックの元相棒―。お話しは何重にも重なって進行し、意外な展開に。

 米国が「財政の崖」に直面しようとしていることは周知のとおり。「崖」とは何の手立ても打たれなければ、2013年初めに発生する大規模な財政緊縮策のこと。バーナンキFRB議長の発言で有名になった。

 米国議会予算局の試算によると「崖」の高さは6070億ドル、GDP比4%相当。カレンダー・イヤーで見たGDPの押し下げ幅は5%となる。

 これは次の措置が2012年末に失効するため。①ブッシュ減税。たとえばキャピタルゲイン税は15%が20%になり所得税率も上昇②AMTパッチと呼ばれるミニマム課税回避措置で①②合わせて2210億ドルの増税③DOC FIXと呼ばれるメディケアの診療報酬削減凍結で110億ドル増税④給与減税と緊急失業給付で1210億ドル増税などなど。

 これに加えて昨年成立の財政管理法に基づく支出の一律削減で650億ドルも加わる。

 11月の大統領、議会選挙後にこの「崖」を回避する攻防が行われる。しかし共和党と民主党の対立は根深いので、議会で共和党が上下両院を押さえ込んで同党案が決まるという解決しかあるまい。

 CBOによる6070億ドルもの「崖」の影響は極端で、現実にはオバマ大統領が2月に予算教書で示した一部延長を盛り込んだ3140億ドルあたりが妥当なところだろう。GDPへのインパクトは0・7%の成長率押し下げが予想される。

 幸い、シェールガス革命による米経済押し上げ効果が見込める。シンクタンクIHSによると2010年のシェールガスの貢献は760億ドルだったが、2015年に1180億ドル。まあ半分ぐらい軽減されよう。

 シェールガス関連事業税収の方も2010年の186億ドルから2015年285億ドルに増加する。

 日大円居総一教授によるとシェールガスを中心とした天然ガスの輸出増で、米国の貿易赤字削減が見込める。

 天然ガス輸出は2035年に2010年時の4倍で年間240億ドル。石油輸入の減少を控え目に2割として、年540億ドルもの輸入減で、輸出増と合算すると800億ドル、現在の貿易赤字の15%の収支改善効果がある。

 結論。事前に分かっている危機は解決する前は不安視されるが、現実にその通りになってしまう可能性は低い。11月の選挙結果に響く材料なので問題視はされるだろうが。私のドル高シナリオに変わりはない。

 映画のセリフから。ホテルの近くの野次馬が叫ぶ。「リーマン・ショックで米国は終わりといわれたが、もう立ち直った。しかし立ち直ったのは金持ちだけ、オレたち貧乏人はまだまだダメだ。」まあここいらが米国市民の実感なんだろうなあ。長期的な先行きが明るいといっても目先はまだ容易でない時期が続く。

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