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2012年9月30日 (日)

週末公開のダメダメ映画3本と私の買いたい株(第644回)

週末公開のダメダメ映画3本と私の買いたい株(第644回)

 9月最後の週末はアクションの評判作が3本もまとめて公開され私は楽しみにしていた。

 まず監督スティーヴン・ソダーバーグの「エージェント・マロリー」は総合女性格闘家のジーナ・カラーノを主演にして、マイケル・ダグラスやアントニオ・バンでラスをワキ役にした。こいつは面白そうだ。

 つづいて「ボーン」シリーズ三部作が面白かったので、シリーズ最新作「ボーン・レガシー」。ジェレミー・レナーが主演。三部作の裏側で同時進行した極秘プログラムが存在して―というストーリー。こいつは面白そうだ。

 そして「ハンガーゲーム」。何しろ全米オープニング歴代第5位で「アバター」以来というんだから。4月にNYに行ったとき見損なったー。こいつは見たい。

 ところがところが、ところがである。三作とも前田有一さん流に言うと「今週のダメダメ」。そういえば週刊文春のおすぎさんも星の数は少なかったなあ、と言っても後の祭り。

 マロリーはソダーバーグ監督としては凡作でつまらなかったし、ボーンはアクションは良かったがただそれだけ。記憶を失った人間の葛藤が全くないので平板になった。ハンガーは故深作欣二監督の「バトルロワイアル」の完全なパクリだし、映画としても大分オチる。終わりにかけての盛り上がり全くなし。ガッカリだ。

 ガッカリと言えば、株価が示している近未来もあまり期待出来そうにない。

 9月末の日経平均はSQの9076円を下回り、200日線も大きく割り込んだ。その他いくつものテクニカルポイントを割り込み、株価は調整局面に入っていることを示す。

 たしかに周囲を見れば、心配事ばかり。米国やEUの局面打開のための金融緩和は出ているが実体経済の動きは鈍い。チャイナリスクも長期戦必至。何しろ首脳部交代が日中ともにあるので新しい指導部同士の渡り合いになる。首都圏地震とか富士山噴火のコワーい話はしょっちゅうウエブサイトで流れる。企業収益も大幅増益のシナリオは崩れた。債券利回り(10年もの国債)が0・77%と安いのも気に食わない。

 わずかな手がかりは今月で終刊となった東洋経済「オール投資」最終号にある次の比較。89年12月末と2012年末と2012年8月末の時価総額比で3000億円以上のベストテン。3万9000円から9100円への日経平均下落にもかかわらず、すごい増加率だ(カッコ内コード、倍)。

 ヤマダ電機(9831)   29・3

 ニトリホールディングス(9843)   21・7

 日本電気(6594)   8・8

 久光製薬(4530)   8・4

 ユニ・チャーム(8113)   7・0

 キーエンス(6861)   4・5

 しまむら(8227)   4・4

 信越化学工業(4063)   3・55

 シマノ(7309)   3・1

 三菱UFJリース(8593)   3・0

このほかホンダ(7267 2・8倍)、日東電工(6988 2・8)、スズキ(7269 2・7)、キャノン(7751 2・7)、日揮(1963 2・6)、小型のを入れるともっと多いが、私は日揮、シマノ、日本電産あたりに魅力を感じる。予想される市場全体の押し目(11月にかけて)に買いチャンスが来るだろう。そこいらを狙ってみては。

  というわけで、今回は「映画のセリフから」はありません。あしからず。

  なお、それでも三本のダメダメのうち何かご覧になりたい奇得な方には「ボーン」ですな。アクションがいいから。

 

2012年9月25日 (火)

映画「鍵泥棒のメソッド」と日中、日韓問題の今後(第643回)

映画「鍵泥棒のメソッド」と日中、日韓問題の今後(第643回)

 内田けんじ監督は「運命じゃない人」「アフタースクール」など脚本も兼ねて秀作を作ってきた。最新作は前2作と同様、練りに練った良く計算された面白さで、ぐいぐいと引っ張ってゆく。一見をお勧めする。

 35歳にもなっても全く売れない役者(堺雅人)が銭湯に行き、そこで石鹸で滑って転んだ殺し屋(香川照之)のロッカーのカギを盗んで、人生が入れ替わる。殺し屋は完全に記憶喪失。そこへ計画的婚活を推進する雑誌編集者(広末涼子)が絡んで三人の運命は予測不可能の展開。そして何とも楽しいハッピーエンド。

 香川照之が記憶をなくす前と後で、全く別人に変身する男を、まことに名演技で見せるが、ちょうど日中、日韓がこの何ヵ月かでガラリと情勢が変わったのに似ている。

 3年前の鳩山政権が日米関係をガタガタにして以来、中・韓はスキをついてやろうとしていた。そこに中国は経済と高度成長を支えていた国家資本主義が崩壊しかけ、党の要人たちは海外に資産と子弟を逃避させている始末。

 一方韓国は李明博の任期満了まじかで近親、側近のスキャンダルで、歴代の大統領同様来年の逮捕は目に見えている。後任候補で同じ党の朴謹恵に頼まれて竹島訪問、反日扇動の戦略に乗ったのだろう。

 佐藤優氏によると1965年に日韓外務省の交換公文がある。「両国間の紛争はまず外交上の解決。これが可能でないなら両国政府が合意する手続きで調停による解決を目指す。」だから竹島問題が「紛争」と国際的に認められれば、韓国は外交交渉と国際的調停から逃げられない。

 歴史認識や従軍慰安婦問題は、アーミテージ元米国務副長官が日経電子版8月25日でこう言っている。「事実はただひとつ。それは悪いことであり、実際に起こった。そして日本人の何人かが責任を負っている。それで話は終わりだ」。そのとうり。

 では日中は。歴史的認識の問題が「靖国神社のA級戦犯を分祀すべき」という仏の専門家の助言は十分考慮に値する。(日経8月31日)

 尖閣の方は日本個人投資家協会の木村喜由さんが懸念して次のように言っている。

 「中国の方では明確に尖閣諸島を自国領として確保する意思(中略)。スキあらば尖閣に漁民を上陸させ、その保護を名目に軍艦出動(略)。弱腰の自衛隊が手をこまねいて発砲できずにいる間に建造物を建て、なし崩しに居座り続ける」。これがフィリピン領南沙諸島でやった手口だ。(マーケット通信9月22日)海上自衛隊もハラを据えてかかるべきだ。

野田政権は「石原知事を妨害し、中国をなだめる」目的だったのだろうが、バカなことをしたものだ。中国側は待ってました、と全国に配置してある反日デモ用の工作員、プラカード、おそろいのTシャツを使い日当も出した。

 中国側の大失敗はデモが暴動化し、政府の扇動工作と「愛国無罪」つまり治安とか法律が無視される国という印象が世界中のメディアで報道されたこと。外資系の対中投資は激減、急激な成長率低下は必至だろう。現に逃げ出した米有力企業もある。

 私は19日訪中したパネッタ米国防国長官が、何らかの警告を習近平次期国家主席にしたと思うが、内容はわからない。しかし、急速な鎮静化はそこいらが原因だろう。

 前記した佐藤優氏は尖閣に対し外務省が「領土問題は日本には存在しない」という立場をとり続けている。しかし「中国との対話を拒まない」と変更しないと「ダブルスタンダード外交」というプロパガンダを中国が展開するだろう、と懸念している。

 私の結論。まず韓国が悲鳴を上げるだろう。韓国企業が使用している素材、部品の23%は日本製。中国の方は少し遅れるだろうが、困るのは韓国と同じだ。

 どうおさめるか。前述したアーミテージ元米国務次官補は「日米間参加国の有識者の非政府間会合、次に政府当局者と民間人双方が出席する準政府間会合に格上げしながら進展を図る」。これは私も名案と考える。日韓も日中も政権が交代すると外交方針も変えやすい。

 映画のセリフから。お芝居で腹にナイフを刺され血ノリを見せる演技を殺し屋が役者に指導する。「突然腹を刺されたら、事態の把握、緊張、それから痛みだ。」事態はまだ起きたばかりだが、悲観しないで推移を見守ろう。

2012年9月17日 (月)

映画「天地明察」よTPPとQEⅢと金価格(第642回)

映画「天地明察」とTPPとQEⅢと金価格(第641回)

 冲方丁(うぶかた・とう)の130万部のベストセラーを「おくりびと」のオスカー監督滝田洋二郎が映画化した話題作。「明察」とは設問に対しての正解のことを言う。

 17世紀の江戸時代前期、物語の中心になるのは「暦」。中国から導入した暦は800年以上も使われズレが生まれていた。江戸時代の日本人の生活の基盤である以上に宗教、政治、経済に影響を及ぼしていた。暦を司るものが国を治める、という意味もあり、莫大な利権を朝廷が独占。実質的な将軍の会津藩主保科正之は将軍に囲碁を教える名家の安井算哲(岡田准一)に目をつける。まず日本一周の観測旅行、ここで天文へのスキルを修業させ、幕府が暦を司るために算哲の算術の才を使い解析を始めさせる。

 利権を握る守旧派の公家と戦い、ついに「大和暦」という日本独自の暦を作り上げる算哲。亡くなった保科候に代って御三家の水戸光圀が支援する。映画のヤマ場は大和暦のみが予想する日蝕が、本当に起きるかどうか。算哲は自分の命を賭ける。

 守旧派の公家勢力というと、すぐ私はTPPを想い出す。民主党、自民党の党首選候補が農村票をコワがって関税撤廃ならTPP交渉すべきでない、と述べている。世論調査では58%が「参加すべき」としているのに、無視しているのはゲせない。原発ゼロの方は世論に迎合しているくせに。

 私は77歳になったが、永い間「日本開放」で国論が二分されるのを見てきた。1960年代のGATTとIMF加盟、70年代の円切り上げ、80年代の日米経済摩擦、90年代のウルグアイラウンドなどなど。すべて「開放」した方が日本にとっていい結果になった。

 資源やエネルギーなどを外国に頼っている日本は「開放」を国の基本方針にすることが「国益」である。

 それに私はある偏見を持っている。農水省がらみの反対論は極めてオーバーで、悪影響は見当違いのものだったという経験にもとづく。

 ごく一例。97年の米国産サクランボの輸入解禁でも、壊滅すると不安がられていた山形を中心とする国産は高級品となり、その後生産量の1・5倍に伸びた。だから今回の「農林水産物の生産額は4・5兆円減少」も当てにならないと思っている。

 国際交渉で例外が全くない交渉なんてない。現に長期間で段階的に関税を下げることも従来の参加国で認められている例もある。また米USTR(通商代表部)首脳も「コメを例外扱いとする可能性」を口にし、「日本の医療制度の民営化を強制しない」と述べている。

 内閣府の試算だと「TPP参加で増える年間GDPの2・4~3・2兆円」。それにシェールガス革命の恩恵で安価な天然ガスを輸入できるメリットがある。

 2015年から米国はシェールガスの輸出を解禁する。ただし、米国とFTAの締結国しか許可されていないので、インドと韓国にOKが出た。TPPは米国のドアを開けるカギである。

 ついでにQEⅢ.9月14日のバーナンキFRB議長の一問一答をTVで見ていて午前5時近くになったが「雇用が本格的によくなるまでという言葉に注目した。

 住宅ローン担保証券(MBS)を毎月400億ドル買い続ける。終了期限なしで、雇用つまり失業率が60%台まで2%下がるまで。失業率は2012年8・0~8・2%、2013年7・6~7・9%、2014年に6・7~7・3%に、2015年に6・0%から6・8%。

 金融緩和を2015年まで続けるなら、総額1兆4-5000億ドル以上。これならNYダウは2万ドル以上だろうし、金もオンス2000ドルを超えるに違いない。私は2300~2400ドルを見込んでいる。

 映画のセリフから。世界地図の中の日本を見て「こんなに小さいの」と妻が言うのに対し算哲は「世(界)が大きいのだ。天はさらに広大だ」。狭い見方が守旧派を育て国益を損なう。

2012年9月 9日 (日)

映画「夢売るふたり」とシェールガス革命と日本(第641回)

映画「夢売るふたり」とシェールガス革命と日本④ (第641回)

 「ゆれる」や「ディア・ドクター」のヒットで大いに注目されている西川美和監督の最新作。題名には「人生とは、大事なものを引き替えにして生きてゆくもの」という監督の思いが込められている。独特の毒を含んだ、一筋縄で行かない作品だ。

 主人公は火事で小料理屋をなくした夫婦の貫也に里子。再建資金をどうしようかと困っていた所へ焼失した店の客だった女性と貫也は出会う。愛人は事故死しあやふやな手切れ金を押し付けられた女性は泥酔し、駅のホームで隣に座った貫也のズボンにゲロを吐く。捨て鉢の女は貫也に

手切れ金としてもらった札束を押し付けて―。

 日本橋の割烹に板前と仲居として雇われた夫婦は結婚詐欺を始める。里子が糸を引き、貫也が手駒となって身体を張る共犯のコン・ゲームだ。

 松たか子の演じる里子の行動は不可解だ。夢の実現のためとはいえ、夫とほかの女が親密になるよう間を取り持ち、一人、夫の帰りを待つ。女たちから金は巻き上げるが、チャンと借用書を書きカベに貼っておく。「倍にして返そうね」というけなげさがこの映画のテーマだろう。

 「夢」というと、いまの日本はダメに見えるが実際には大きな好材料がある。米国発のシェールガス革命で、国として大きな利益が生まれる可能性だ。

 日本の2011年の鉱物性燃料輸入額は22兆円。うち原油11兆円、LNG5兆円。私は3年ぐらいでこれが半減すると考えているので、これで成長率は2%強押し上げる。

 ホントに半減?とお思いになるかも知れない。まずシェールガスを含めた天然ガス。現在百万BTU当たり18ドルだが、韓国の輸入契約価格から見て10ドル。年2兆6000億円の国富の流出回避(日大円居総一教授試算)。

 百万BTUのガスは6倍すると原油と同じ熱量で、現在米国で2ドルを割り込んでいる。シェールガスはバーレル12ドル。原油の八分の一。併産される良質のタイトオイルを含め原油価格全体に押し下げ効果があるだろう。ただし、このいい材料はTPPに入らないとダメ。次期政権に期待しよう。

 第二はドル高円安。国際通貨研究所の購買力平価によると、消費者物価を基にした対ドル円レートは139円。企業物価99円。現実の78円というレートがメチャメチャな円高でこれがデフレと企業収益の圧迫要因だ。

 ところが米国のシェールガス革命は貿易収支と財政収支の赤字を大幅に減少させる。当然ドル高円安になってくる。

 つぃでに。韓国が格付け会社によって日本より格上にランクが引き上げたため、為替市場でウォン安の操作はしにくくなった。日韓スワップ協定ももちろん不要になり、いずれウォン高に苦しみ始める。ザマアミロといえる日はそんなに先のことではない。

 脱原発は日本の大問題だが、シェールガスつまり天然ガスを使った発電所で一挙に解決する。最新のコンバインドサイクルという技術が日本にある。再生可能エネルギーの三分の一の低コストで発電効率を現在の40%弱から60%に上昇できる。すでに重電機メーカーへは発注が増加し始めた。

 映画のセリフから。里子が言う。「夢なんて、ほんの少しで充分よ。少し、少し。少―しだけ素敵な夢を見せてあげれば」。私には夢は少しどころか、大きな夢に思える。

 

2012年9月 4日 (火)

映画「最強のふたり」とシェールガス革命が世界を変える③640回

映画「最強の二人」とシェールガス革命が世界を変える③ (第640回)

 フランス映画で世界的、超大ヒットというと「アメリ」がすぐ頭に浮かぶ。あれに似てハッピーエンディングのユーモアにあふれた佳作。おすすめだ。

 実話をベースにした人情話。事故で全身麻痺となり車いす生活の大富豪フィリップが、介護者を雇ってはすぐクビにしてしまう。面接試験して採用したのは、不採用通知三つで生活保護手当が出るのをアテにしている黒人青年ドリス。同情されるのに飽き飽きしているフィリップは、前科がある男だぞ、と心配する親戚の声を押し切って雇う。

 ふたりの人生は何から何まで正反対。超豪邸に住みショパンを愛する雇い主。一方下ネタとブラックジョーク、スラム出身でクール・ザ・ギャングが好き。母と仲が悪く弟が悪に落ちてゆくのをどうすることもできない無一文。

 ところがこの二人が相容れないはずだが。衝突を繰り返しながら、お互いを受け入れてゆく。そして次第に生き生きとして行くフィリップ。

 今回で3回目になったシェールガス革命だがそもそも「革命」ってなんだろう、と考え直してみたい。

 昔の中国では、文字通り王朝が交代する大変革のこと。「天命が改まる」だ。また英語のレボリューションは天文学用語で「回転」。コペルニクスが言い出した言葉だ、と辞書にある。科学革命が「突然の政治体制の変革」に使用されたそうだ。

 まあそれまで不可能とされていたことが可能になる大変革―。まるで映画のフィリップの生きがいを取り戻すように。180度の大転回だ。

 シェールガス革命のことを、米国で近年、天然ガスの生産が急伸していること、と勘違いしている記事をときどき見かける。間違いだ。

 「シェールガスを安いコストで採掘できる技術革新」こそがシェールガス革命である。

 ダニエル・ヤーギン氏というと名著「石油の世紀」でピュリッツアー賞を受けたこの業界の第一人者。近著「探究」によると「21世紀に入って最大のエネルギー技術の革新」と述べた。

 これまでの天然ガス田から採取される「在来型」とシェールガスに代表される「非在来型」は別に成分に大きな差があるわけではない。違うのは資源の存在の仕方である。

 在来型のガス(石油も同じだが)、地表に近いところにあるので大半は大気に逃げてしまい、たまたま地中に残った部分が資源になる。だから中東の石油のように地理的に偏在している。

 ところがシェールガスは3000米の深い地中で形成されたものが、そのまま残っている。

 だからこそ在来型を一とすると、少なくとも数倍、よく調べれば10倍。しかも地球上に普遍的にある。

 しかも安価に採掘できる。

 100万BTUの価格は2ドル。6倍するとバーレルあたり原油価格と同じになるからわずか12ドルで原油の八分の一。

 その採掘を可能にしたのが水平採掘とフラッキング呼ばれる破砕法などいくつかの技術の組み合わせ。しかも、これを見つけたエネルギーベンチャーは特許を取らなかった。革命が広がると私が考える理由だ。

 もちろん最大の受益者は米国。しかし日本にも相当な利益があるだろう。それは次回に。

 映画のセリフから。フィリップが言う。「パラグライダーは最高だ。なんでも下に見える。」私は100年に一度の大変化が「見える」。 

2012年9月 2日 (日)

映画「テイク・ディス・ワルツ」とシェールガス革命②(第639回)

映画「テイク・ディス・ワルツ」とシェールガス革命②(第639回)

 変わった題の映画だが、これはカナダのミュージシャン、レナード・コーさんの歌によったもの。不安な現代をよくあらわしている。私は知らなかったが「メンヘラ」という言葉があるほど精神的に病んだ人が多い。女性監督サラ・ポーリーの目から徹底的にリアルに、この「ほとんどビョーキ」の人妻を画いた佳作。

 

 フリーライターのマーゴは取材先でダニエルという青年と知り合う。タクシー相乗りで帰宅しようとするが、驚いたことに隣人だった。

 空港での会話でマーゴは「飛行機の乗り継ぎが怖い。コワいと思うことそれ自体が怖い」。つまり「乗り継ぐ」というのはマーゴが現在の夫からこの青年に乗り換えが、ほんの気まぐれで行われるというテーマ。またアルコール依存症のマーゴの夫の姉とか、同類の女性も登場する。

 誰もが不安で、見通しのつかない現代。とくにリーマン・ショック、ソブリン危機といろんなことが起こりすぎるここ3,4年だ。

 しかし、沈滞している米国経済と世界経済がシェールガスによって救われる。そこにシェールガス革命の意義がある。

 日大国際関係学部・大学院教授の円居総一さんが、きわめて明確にシェールガス革命の巨大な影響を論じた。(週刊エコノミスト2012年2月7日号)

 新しい安価で大量のエネルギーの発見は、時代も変えてしまう。エネルギーこそ産業の基盤インフラだからで、たとえば1800年前後の英国の産業革命は木炭から石炭への転換期に起きた。次に米国は石油が20世紀初頭の大好況を生み、自動車とハイウエイ、電力などの現代文明につながった。

 円居さんによると「新エネルギーの台頭はそれまでの停滞は打ち破られ、生産性の向上と相まって新たな成長期が導かれる」。エネルギーの収穫逓増の法則が働くからだ。

 シェールガスは米エネルギー情報局(EIA)によると、世界のシェールガスの可採埋蔵量は既存ガス田の累計量と同規模で、可採年数は73年から一挙に400年に。使用料の急増を見込んでも250年で、原油の46年、天然ウランの100年(BP推計)をはるかにしのぐ。

 ここから先はワシントンのシンクタンクIHSの予測だが、2010年から2020年までの10年間でシェールガスの寄与分は累計8700億ドル、GDPを6%押し上げる。また雇用は2010年の60万人が2020年に112万人、税収も186億ドルが371億ドルに。

 もちろん貿易赤字削減効果も米国にとっては大きい。エネルギー赤字は55%に達しているが、2015年からのシェールガス輸出も含めると2020年ごろには、半減する可能性が大きい。当然、ドル高だろう。

 ユーロはダメ、中国も怪しい。しかし世界経済の大黒柱の米国経済の見通しがいいことはこの不安な時代の先行きを明るくする。

 テイク・ディス・ワルツの歌詞。「いま、ウィーンに10人の美女がいる。死が泣きにくる肩がある。900の窓があるロビーがある。鳩が死に場所にする1本の木がある。(中略)アイ-アイ-アイ。このワルツをどうぞ。このワルツをどうぞ。」世界中、嫌なことばかりが目につくけれど、前途を信じて明るく生きよう。

 

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