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2012年10月31日 (水)

映画「アルゴ」と米国シェールガス革命(第648回)

映画「アルゴ」と米国シェールガス革命(第648回)

 ベン・アフレック監督主演というと前作「ザ・タウン」がヒットしたが、今回はもっと出来がいい。アカデミー賞ものではないかと思う。「事実に基づく」という注釈がなければとても信じられない奇想天外な物語。1979年、ホメイニ革命と呼ばれるイランで、当時追放された前国王パーレヴィが米国に亡命した。

 怒ったイランの暴徒が米国大使館を襲撃。52人の大使館員が人質となる。その混乱の中を6人が逃げ出し、近くのカナダ大使の私邸に。

 いずれ捕まって公開処刑される。米国務省はCIAに応援を求め、人質奪還のプロ、トニー(アフレック)が呼ばれる。偽の映画を企画し、6人をカナダの映画クルーに仕立てて出国させるという珍作戦の事務所を開きポスター、記者会見とシナリオの読み合わせ―。本物そっくりにプロジェクト開始。

 ここから先は一難去ってまた一難。次から次への難問が発生し、間一髪の連続。スリル満点の展開になる。

 私が驚いたのはこの救出作戦がすべてカナダの功績で、国務省もCIAもましてやトニーも全くカンケイないとされたこと。18年後クリントン大統領が秘密の公開を認めて明るみに出たこと。だから、こんな話は誰も知らなかった。何だかんだといっても、米国はフトコロの深い国だと思う。

 私がかねてから注目し、このブログでもたびたび取り上げているシェールガス革命。先日NHKのクローズアップ現代でも取り上げたし、秋田県鮎川ガス田でシェールオイル採掘成功のニュースもあって、身近になった実感がある。

 地下3000米の「頁岩(けつがん)」に含まれるシェールガス、シェールオイル、それに液化天然ガス(LNG)を安いコストで採取できるようになったのが、2007、8年ごろから。

 つまりこれまで確認されていた地下1000米ぐらいまでのエネルギー資源より、より広範囲にしかも多量の採掘が見込める。だから「革命」だ。

 私はこのシェールガス採掘技術の発見を「21世紀最大の革命」と2008年に初めて評価したダニエル・ヤーギン氏に先週末お会いするチャンスがあった。同氏は「石油の世紀」でピュリッツアー賞を受けたエネルギーの世界最高の権威。

 新著「探究」にサインをいただいた私は「革命とは技術の革命のことですか?」と聞いて「その通り!」と確認した。

 また「NHKの番組では水道の蛇口にライターを近づけたらボッと燃える画面が紹介された。あれはもう7,8年前のまだ怪しげな業者が開発していた時代のもの。今はエクソンとかシェブロンとは大手がやっているし、規則もはっきりしているので、環境問題は今後の『革命』の進展に重荷にならないのでは」とも聞いた。私のほしかった情報だ。

 国際エネルギー機関(EIA)による採掘可能資源量の推計値をとっても、前記したシェールガス資源の可能性の急拡大が読み取れる。左がシェールガス、右がシェールオイル。単位は兆立方フィートと億バレル。

     2006      83     -

     2007    126     37

     2008    125     37

     2009    267     37

     2010    347    297

     2011    827    315

     2012    482    332

  シェールガスの推計値が2012年に下方修正されているが、前半が楽観的過ぎた修正と見る。それでも6年前比6倍。シェールオイルも9倍だ。

 たびたび述べているように、この革命で①貿易赤字減少②財政収支改善③失業率低下などなどの効果が米国経済にもたらされる。日本にもドル高円安、エネルギー価格の低下などでメリットは少なくあるまい。

 映画のセリフから。トニーが言う。「誰が言ったか忘れたが、歴史は喜劇で始まり悲劇で終わる、とか。今回はその逆だろう」。私は中長期では楽観的だ。

2012年10月24日 (水)

映画「96時間 リベンジ」と「オバマ暴落の予兆(第647回)

映画「96時間 リベンジ」と「オバマ暴落」の予兆(第647回)

 映画「96時間 リベンジ」は、有名な原作もCGもなしで全世界で大ヒットしたりユック・ベッソン製作の続編。試写会で見たばかりだが、アクション映画好きにはお勧めできる快作だ。

 温厚な元秘密工作員ブライアン(リーアム・リーソン)だが、娘キムが犯罪組織にパリで誘拐された途端、冷酷非情な男に豹変し、身につけた特殊な能力で群がる悪党をなぎ倒してゆく。その『96時間』で殺されたアルバニア人犯罪組織のボスが息子の仇討として、今度は元妻レノーアと娘キムも含めた三人を捕える。これが今回の続編だ。

 地下にとらわれた自分がまず脱出し、重傷を負って地下に拘束されているレノーア、そして地上で敵に追われているキムを同時に救出しなければならない。最愛の二人を救う手立てはあるのか。

 いよいよ米国大統領選が大詰め。現職の優位を生かしてオバマ有利。先物取引のイントレード社でも55対44.選挙人数を予想するエレクトラル・ヴォート社でも過半をオバマ大統領が確保している模様。

 これを見て「オバマ大暴落」を公言するウオール街の人は多い。それは映画と同じく一度にひとつづつしか難問は解けないが、そこに株式市場に増税という難しい重荷が入ったからだ。

 お断りしておくが、私は米国経済は今後何年かで大好況に入ると思うし、NYダウも上昇トレンドは続くだろう。

 しかしごく目先、大統領選挙の後12月、1月に「オバマ暴落が発生する可能性はかなり大きいと考えている。

 ロムニーが勝っても「暴」がつくかどうかはわからないが、上昇基調の中でかなり大きな調整は相当な確率で起きよう。

 これを大げさな表現で弱気博士とあだ名がついている相場の名人マーク・ファーバー氏が先日TVで述べた。「大統領選挙の後どう株式市場は動くと予想しますか?」とアナウンサーが聞いた。

 「オバマならマイナス1万3473ドル。つまり株価はゼロになってしまう。

 ロムニーならマイナス6000ドル。」

 かなりファーバーでなくオーバーだと思うが、感覚としては私も同感だ。

 なぜか。富裕層の投資家の税金アレルギーを私は良く知っているからだ。

  2003年のブッシュ減税をオバマ大統領は否定して「私は金持ち優遇をするつもりはなくブッシュ減税は12月末で失効させる」と明言している。

 そこでキャピタルゲイン税は15%から20%に増税、配当は(現在15%)通常の所得として課税されるが、米国国民の平均から見て30%近い高い税金になる。増税分はその他も含め2800億ドル。いわゆる「財政の崖」の中核部分だ。

 もう10月下旬現在、NY株式市場は1日200ドルを超える大幅下げの日が多い。配当の収入を当てにしていた投資家が現金化し始めている。ミューデュアル・ファンドの残高も8月以降毎週50~60億ドルも減少を続けている。

 ロムニーが勝っても就任は1月だからブッシュ減税の時間切れは変わらない。「エアポケットみたいな下げ」、とヘッジファンドNO・1のブリッジウオーター創業者レイ・ダリオ氏がたとえたが、恐らく不可避と私も考える。

 映画のセリフから。元妻にブライアンが言う。「オレは100%目先のことに集中するんだ。獰猛な犬が骨をしゃぶりつくすようにな。」あくまでも目先だが、私は弱気だ。

2012年10月13日 (土)

映画「アウトレイジ ビヨンド」と米国大統領選とNY株(第646回)

映画「アウトレイジ ビヨンド」と米国大統領選とNY株(第646回)

 北野武監督の新作で只今ヒット中。豪華キャストの群像劇だが、テンポが良く、なんといっても登場人物総てが何とも物騒なことをポンポンと怒鳴り合う。観終わった後に爽快感がある。日頃のストレスのガス抜きにまことによろしい。

 前作の舞台だった関東最大のヤクザ組織山王会が巨大化し、政治まで巻き込み始める。マル暴の悪徳刑事片岡(小日向文世)は昇進したさに古参幹部と山王会トップとの対立をあおり、刑務所の中にいる大友(北野たけし)を出所させる。山王会ナンバー2の石原は大友の部下だったが裏切りしてのし上がった男。当然復讐を怖がり始める。

 古参幹部は関西を牛耳る花菱会に接近するが、食えない親分で山王会会長に「こういう男が来たが、どういうこと」と関東進出の材料に。

 ヤクザ映画だが、残酷シーンはあまりなく女性観客も結構多いが楽しんで観ていた。「全員が常にウラを考えていた、誰が全でだれが悪なのか、わかんなくなる世界なんだ」と北野監督は言っているが、面白く痛快な娯楽作だ。

 ヤクザと政治の世界は良く似ている。壮絶な下剋上の、誰も信じられない世界、と言っていいかも。

 米国の最大の政治ショーが終盤にかかって波乱を起こした。10月3日のオバマ、ロムニーのTV討論でロムニー候補の「歴史的な圧勝」があった。私も見ていたが、ギャラップ調査によるとロムニー勝利72%、オバマ20%。

 そこで支持率が逆転してしまった。10月8に調査によるとロムニー49%とオバマ45%を上回った。9月中旬にはオバマ51%、ロムニー43%だったのだから大きな変化が起きている。その後の副大統領のTV討論でもバイデン44%、ライアン48%と共和党有利。

 ただ、これは米国民の単純な支持率で、大統領選挙人ではそうはいかない。米国大統領選は州ごとに決まった選挙人を、その州で勝つとすべての得点を総取りするシステムで、270人取れば勝ち。

 現在の調査ではオバマ217、ロムニー181で今後はまだ決まっていない140人の取り合いになる。

 これは調査会社クリアリアルポリティクスによるものだが、討論会前と後を接戦州でみると2州がロムニー有利に変わった。しかし8州では依然オバマ優勢で、差が縮小しただけだ。

 10月13日現在、先物取引のイントレードによるとオバマ59対ロムニー41.これもひところよりの75対30よりぐっと差は縮待ったが依然現職有利である。

 16日の第2回討論でどうなるか。失業率が7%台に下がったのが有利に働いている。

 著名投資家マーク・ファーバー氏は口が悪い。先日TVに出て「大統領選後のNY株は?」という質問に答えて

 オバマならマイナス1万3473ドル

 ロムニーならマイナス7000ドル

 いやはや何とも弱気。それでもロムニーの方がマシという見方だ。何しろ「世界の市場は急落が始まった。上海市場のリバウンドぐらいで全部売り」というんだから。私はそこまで弱気じゃないが、少なくとも中国経済の混乱が近いと思うので強気ではない。

 映画でたけし演じる大友と花菱組若頭役の西田敏行とが壮絶な怒鳴り合いをする。「ぶっ殺したるぞコノヤロー」「ガタガタうるせえコノヤロー、撃ってみろバカヤロ-!!」こうして文字にするとすごいが、ストレス解消になるガナリかただ。すごいのは中田を演じる塩見三省。この人には街で会いたくない。

2012年10月 9日 (火)

映画「ツナグ」と中国の今後の混乱(第645回)

映画「ツナグ」と中国の今後の混乱(第645回)

 新直木賞作家辻村深月の連作長編の映画化で、平川雄一朗監督。若手売出し中の松坂桃李と樹木希林、それに助演に仲代達也、八千草薫など。年配の観客に加えて随分若い女性も。後味のいい佳作と思う。

 ツナグとは、一度だけ死んだ人と会わせてくれる案内人のこと。会えるのは月の出る夜で夜明けまでとか、いろんなルールがある。普通の男子高校生歩美は実はこのツナグで、祖母のアイ子からこの仕事を引き継ぐ途中の見習い。

 登場するのはまず中小企業の経営者で、死んだ母に会って本当の病名を伝えなかった決断が正しかったかどうか聞きたい。次はケンカ別れしたまま交通事故で死んだ親友と会いたい女子高校生、最後にプロポーズ直後に失踪した恋人のことを信じて7年間待ち続けているサラリーマン。

 一方歩美は、はたして死者にあったおかげで人は救われるのか、人生は変わるのか、疑問に思う。また不可解な死を遂げた両親にも。

 常識では信じられない死者との対話ができるーと告げられて戸惑う人たち。

 常識外れというと、私は最近の中国の抗日暴動や、それ以前では2年前の漁船衝突事件とその後のレアアース輸出禁止などなどを思い出す。

 9月17日付人民日報は一面に「中国はいつ対日経済制裁を始めるか」のコラムを掲載、人民日報系週刊誌も日本経済への打撃が大きいと特集した。ほかの中国メディアも同様にヤレヤレとあおっている。

 2年前のレアアースが有効だったと考えているようだが、日本側のチャイナリスクの認識後の対策を知らないらしい。中国の対日レアアース輸出は昨年34%減で今年も大幅減。中国のレアアース輸出は上半期で43%減。もちろん価格は暴落し、例えば高性能モーターに必要なサンカジスプロシウムの価格は三分の一。

 業界関係者によると中国の業者からもっと買ってほしい、と懇願されているという。だから中国マスコミが「レアアースの対中依存度49%・3%」と、武器として使えることを強調しているのは実情を知らない。現実には中国企業がもっと打撃を受けるし、WTOからの調査開始が8月に決定している。

 中国側も気が付いたのだろう。税関検査を遅らせて日本の自動車業界は生産を削減または停止に追い込まれ、某大手化学などは原材料が届いていない。

 また中国メディアは「日本への打撃が大きい」証拠として①中国の総貿易に占める対日比率は2002年の16%が2011年9%とほぼ半減②日本の対中輸出比率は30%(そんなにない。せいぜい20%)としている。

 しかし中国の世界への輸出を支えるハイテク製品の素材や部品、その品質を高める工作機械や計測機器の多くは日本からの輸入や現地生産に依存している。

 外国からの対中投資は急減している。1~8月3・4%累計で減った。日本だけが1~7月で19%も増やしていたが今後急減する(当り前だろう)。4~6月の外貨準備高は20年ぶりに減少に転じている。対日制裁どころでなくなる時期は遠くないだろう。

 映画のセリフから。祖母アイ子の兄でツナグの先代(仲代達也)が、歩美(松坂桃李)に言う。「目に見えているものだけが真実じゃない。大切なことは、心で見るんだ。」世界中が、もう文明国として中国を見ない。そこが大事だ。

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