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2012年11月30日 (金)

映画「カラスの親指」とデフレ脱却気運と安倍相場(第653回)

映画「カラスの親指」とデフレ脱却気運と安倍相場(第653回)

 まことに楽しく良くできたコン・映画で私は2回観た。始めの1回はストーリーを楽しむ、2回目はオチまで知っているのでお話しの展開を深く読め、細部や演技を観る。もちろん原作は読んだうえでだ。かつての「スティング」などの詐欺師物の秀作に並ぶと思う。一覧をお勧めする。後味がいいし私は好きだ。

 原作は直木賞作家道尾秀介のベストセラーで推理作家協会賞受賞作品。人生に敗れた二人の詐欺師タケさん(阿部寛)とテツのところに、突然美人の姉妹とその恋人三人が居候になって、そこに子猫のトサカが加わる。そこにタケさんの暗い過去が絡んで危険な目にさらされる。そこで5人協力してプロのサギ作戦が開始されて―。最後はさらに大きなドンデン返し、となる。

 この映画には5人の人生の底辺に生きるグループと、他人を食い物にして生きるヤクザまがいの貸金業者が出てくる。もちろん現実には後者の方がハバを利かせている。

 現実にもう何年も続いているデフレ=円高を脱却しなければ日本はどうにもならない。5人組が予想を上回るある作戦でワルをやっつけたような思い切った行動が必要だ。

 私は自民党安倍総裁の思い切った発言を好感している。「日銀法の改正も視野に大胆な金融緩和」「2~3%のインフレ目標の設定」などなど。民主党政権のアンチビジネスと日銀のデフレ容認にほとほと呆れていた私には、寒風の中で暖かい部屋に入ったような感覚だった。

 ところが、野田首相や白川総裁の反論も、一部大手マスコミの反応も見当違い。とくに安倍発言として伝えられた「日銀引き受け発言」は完全な誤報だ。そんなことは言っていない。あえていえば、もし日銀引き受けであっても法律的にも政策論から見ても問題ない。今年度の国債発行174兆円だが内建設国債は5兆円に過ぎない。

 安倍発言が為替市場で円安、つれて株高につながったのはご存じの通り。市場がこれだけ好感したのは「輪転機をぐるぐる回して」という発言が、映画と同じで思い切った作戦だったからだ。要するにデフレ脱却のためにマネー増発ことカギなのに、日銀が全く知らぬ顔をしていたのを、鋭く告発した。

 これに対して野田首相は「ハイパーインフレ」とか「インフレでトクをするのはお金持ちだけ」という経済オンチ。

 ハイパーインフレというのは50%以上の超インフレのこと。いまの日本のような需要不足経済でグローバル経済。そんなインフレが起きる状況じゃあない。

 総選挙に金融政策が一つのテーマになるのは空前の出来事でうれしく思う。

 ある人のブログによると、TV局に出演するエコノミストには「必ずハイパーインフレとか日銀の独立性について安倍発言は好ましくない、とコメントしろ」と圧力が来ているとか。冗談じゃない。せっかくデフレ脱却の機運が生まれかけているのだから、その芽を摘まないでほしい。

 映画のセリフから。娘のひとり、まひろが猫を殺されたり火がつけられていやがらせされて「もう我慢するのはイヤ。復讐しようよ」と、泣き、5人が一緒に「だまし」を考える。もうデフレと円高の悪循環に我慢するのはやめよう。

2012年11月24日 (土)

映画「のぼうの城」と財政の崖と円安株高(第652回)

映画「のぼうの城」と財政の崖と円安株高(652回)

 興業行収入ナンバーワンを3週続けているヒット作。歴史スペクタクルの佳作だ。

 400年前。秀吉が関東の北条氏を攻めるにあたって、現在埼玉県の行田市にある忍(おし)城を攻める。担当武将は石田三成で、秀吉は武功を立てさせたく2万の大軍をつけた。 

その忍城では、でくのぼうの意味で「のぼう様」と呼ばれ、領民から親しまれている成田長親が城代。たった500騎の兵しかないが、降伏を迫られ、三成側のなめきった態度に戦争を決意する。誰の目にも絶対不利のはずの戦いが始まる。戦闘、そして三成の水攻め。

主役の野村萬斎がいい。この人がいなければ成立しなかった映画だろう。とぼけた間抜け、しかし将兵からの信頼は厚く総大将の役を立派にこなす。光成が人工堤をつくって城は水没寸前になるが「その堤を造っておるのはだれか。領内の農民なら案ずることはないではないか」と、泰然としている。

三成の水攻めはかつて秀吉の高松城攻めの真似。「一つ間違うと諸将が手柄を立てる機会を奪い、将たちの心が離れてゆく」と助言されるが強行してしまう。

 オバマ再選で私が予告した通り、NY株式市場は大きく下落。理由はオバマの株式投資への冷遇税制だ。無理な作戦を強行しつつあるのはオバマも石田三成も同じ。

 米国の株式配当とキャピタルゲイン課税は現在15%。しかし最近のAFP通信によると配当課税は何と43%に、キャピタルゲインは20%(恐らくほかの所得並みの扱いになるとみるので、これも実に38%)。だから値上げ利幅の大きかった銘柄への売りが多くなるのは当たり前だ。

 オバマとロムニー両候補への人種別の投票率を見ると、株いじめをやりたくなる気持ちは理解できる(各%、CNN調べ)。

 白人(男)   オバマ35対ロムニー62

 白人(女)   4256

 黒人(男)   8711

 黒人(女)   963

 ラテン系(男) 6533

 ラテン系(女) 7623

だから貧困層や移民へ手厚く、富裕層はいじめる。

実はこの流れが、米国系ヘッジファンドを始め機関投資家の新しい「円売り、日本株買い、日本国債売り」につながっている。

米国を除くと、中国はダメ、EUはなおダメ。消去法では日本しかない。だからーというわけ。

 前回のこのブログでも、現役のファンドマネジャーの「23年先に100円」という目標をお伝えした。1120日にはゴールドマン・サックス・アセットマネジメントのジム・オニール会長が「今後大きく円安に向かう」と述べた。同氏は以前から「円は25%割高」としており、当時のレート767円から見るとこれもほぼ対ドル100円。

 理由は①日本の経常収支赤字②安倍発言によるインフレターゲット引き上げ。しかし本当の理由は米国株式市場へのオバマ増税だろう。

 一般には「財政の崖」による米国経済の減速がいわれている。そうではない。私は40年以上株式市場と付き合っているので、投資家の税金へのアレルギーは良く知っている。新聞記者やアナリストは貧乏人(失礼)が多いので、そこいらがワカっていない。

 結論。株価は1万円を突破、11000円ぐらいにあと1年以内に行くだろう。

 映画では成田長親は「決めた!水攻めを破る。わしは悪人になる」。そして水に小舟を浮かべて踊り狂い、三成に自分を鉄砲で狙撃させる。その結果は―。まあ映画をご覧ください。

2012年11月17日 (土)

映画「希望の国」と解散総選挙と中国、NY株(第651回)

映画「希望の国」と総選挙と中国、NY市場(第651回)

 園子温監督の最新作。原発事故を主題にした。私は事故があったからすぐ原発ゼロを叫ぶのは短落的に過ぎると考えるが、放射能の恐怖を正面から取り上げた力作だ。この現実の重みは誰にも否定できない。

 舞台は架空の長島県の町で20××年。東方沖のマグニチュード8・3の巨大地震と原発事故。半径20キロ以内の警戒地域すれすれにすむ酪農一家の物語だ。

 父親は牛へのと殺処分命令、息子夫婦はオナカの中の子供への放射能不安。認知症の母親を抱えた一家に強制退去命令―。

 父親は言う。「人は生きる時、何度も杭(クイ)を打たれる。今回は、放射能だった。国も県も市も、そんなものに1回でも頼っては駄目だ。(中略)逃げろ。逃げることは、強さだ。強い人間だからこそ、逃げるんだ。」

 逃げた若夫婦、故郷を遠く離れた砂浜だが、もう安心と思っていたが、ガイガーカウンターが鳴り、ここでも恐ろしいほどの高い数値が。

 国の発表する放射能数値への不信がこの映画の一つの軸だ。

 公表される大本営発表が信じられない、というような事態が方々にみられる。

 たとえば中国。中国政府は11月に入って景気立ち直りを示す指標を発表。明らかに14日に終わった第18回共産党全国大会に向かっての演出。つれて日本のエコノミストの中に中国経済に「回復の萌芽」を言う向きも出ている。

 たしかに10月の鉱工業生産前年同月比9・6%増、小売売上高14・5%という数字なら好況に違いない。

 しかし、しかしである。鉄道貨物輸送量は6月以降ずっとマイナスで10月もマイナス6%。これで前述の景気指標がウソっぱちなことは明らかだ。中国経済は、当分、ダメ。

 NYの株安の原因のアップルの25%もの大幅下げも、日経新聞は「スマホの競争激化」と説明している。しかし現実にはブッシュ減税の期限切れでキャピタル・ゲイン課税の税率が現行の15%から38%に高まる。そこで9月に最高値を付けたアップルや銀行株などへ利食い売りが殺到した。日経記事は投資家、資産家の心情を全く理解していない。

 ただ、株安が「人質」になって、恐らく問題点の先送りだろうが、クリスマス前には「財政の崖」は現実化しまい。この問題はかつてのコンピュータの2000年問題の騒ぎと同じ、と私は見ている。

 最後に解散、総選挙の日本。17日のテレ東の番組で田原総一朗氏は「自民180、民主120、維新50」と予測。過半に達しない安倍総裁は公明党でなく、石原氏率いる維新との連立を選択する可能性を田勢氏とともに示唆した。

 私も「第三極」つまり野党は、石原氏が選択するはずがないと考える。日本維新の会と太陽の党の合流が決まったということは、石原氏がワンポイントでいいから自分を総理に、という連立を考えているということだ。安倍氏は憲法問題で逆らう公明党より維新の方を選択する公算が大きい。

 日本株について一言。外国人の「円売り日本株買い」が本格化しつつある。金曜日にキャノンに大量買いが入ったのは、外国人機関投資家の買いだろう。このまま上昇が続くのか疑問を持つ向きは多いが常に上昇相場は「疑念のうちに始まる」もの。円安も株高も案外永続きするだろう。

 映画のセリフから。息子の嫁が言う。「見えない戦争なのよ。弾もミサイルも見えないけど、そこいらじゅう飛び交っているの。見えない弾だ。」よくマナコを凝らして情報を深読みしたい。

2012年11月10日 (土)

映画「黄金を抱いて翔べ」と新高値必至の金価格(第650回)

映画「黄金を抱いて翔べ」と新高値必至の金価格(第650回)

 井筒和幸監督の新作。高村薫のデビュー作の映画化で、妻夫木聡、浅野忠信、溝畑淳平、チャンミンそれに西田敏行という豪華メンバー。フィルム・ノワールらしい観応えのある作品になった。

 登場人物もストーリーも一筋縄では行かない。舞台は大阪で時代は20年前。巨大銀行の地下金庫にある金塊を盗もうとする6人組のお話しだ。主人公二人は養護施設で育てられた裏街道をゆく北川(浅野忠信)と幸田弘之(妻夫木聡)。これにシステムエンジニアで銀行内部に詳しい野田(桐谷健太)、北川の弟と北鮮からのスパイだったモモ、それに元エレベータ技師で銀行のビルに精通しているジイちゃん。北川が親分格で「札束でなく金塊を狙う。札束は信用できないが、金塊は永遠だ。だからやるんだ」。

 これに元左翼。地元ヤクザ、北朝のスパイが絡んでお話しは予想を次々と裏切って二転三転。幸田の出生の秘密もひと役絡む。主人公の一人北川は「誰も人がいないところに行きたい」という夢があり、これが犯行を決意させる。

 このブログの読者は米大統領選挙後のNY株の「オバマ暴落」と私が予告していたことをご記憶と思う。見事に的中、自慢させてもらう。まあ下がれば下がるほど、政権と議会は対策をする必要が生まれる。米国経済の大不況説は当たらないと思う。

 ただしオバマ当選で減税が廃止され、税負担は2200億ドルも増える。株のキャピタルゲインは15%から平均30%近くへ増税され、それをイヤ気しての株価下落だから、かんたんにダウ平均1万3000,4000に戻らないとみている。

 ところで金。先日渋谷を歩いていたら私のファンの方からお声がかかって「目先どう見ますか?」。私は目先弱気です」とお答えした。

 理由は市場内部での買い手と売り手の動きが、金価格の目先の上昇に結びついていないから。

 米国では個人投資家スモールトレーダーの買いが7,8月ごろから急増し、10月上旬に市場空前の買い残に達した。10月5日の1798ドルは個人買いで、ついたと思われる。

 一方、プロのトレーダーはこれに売り向かった。1800ドルはテクニカルに見て、抜くのが大変なレベル。売り残の方も10月とこれまた空前の量に達し、結局売り方が、勝って11月2日に1674ドルと1700ドルの大台を割ってしまった。ここは、買いだ。

 私の注目しているのは例年11月後半から1,2,3月頃までの金ETFの買いによる価格上昇というアノマリー(季節性)である。トレーダーたちの空売りは急速に減少中、市場の需給関係は急速に好転しつつある。

 例年米国の年金は9月末までのパフォーマンスを中心に翌年の資産配分をどうするか、を決定する投資委員会を開く。11月後半が多い。その委員会が新しく運用会社を選ぶのだが、噂を聞いて1月からの運用開始も前からヘッジファンドが金買いを始め、3月ぐらいまでETFを中心に金価格は上昇する。

 今回の新高値挑戦は成功すると見る。国際決済銀行(BIS、スイスのバーゼルにある)の銀行規制の「バーゼルⅢ」。金を現金なみもリスクレス資産とし、銀行の自己資本の中のTIER1(ティアワン)の総資産の中での比率を4%→6%とした。2012年から。これは大材料だ。

 またロンドンのCMEクリアリングという国際決済機関はもう今年から担保としての金を現金並みに扱うことを決めた。金価格上昇に始めてリクツがついた。目標はとりあえず2000ドル突破。

 映画のセリフから。首領格の北川が宣言する。「初めに金塊ありき。我々とともにありき。我々の結束は肉の欲によらず、人の欲によらず、ただ金塊によって生まれしもつなり」。金への信仰がヒトを動かす。

2012年11月 3日 (土)

映画「終の信託」と円高から円安・株高への転換(第649回)

映画「終の信託」と円高から円安と株高への転換(第649回)

 周防正行監督、草刈民代、役所広司というとあの「SHALL WE DANCE?」のチーム。その新作だけに期待がかかる。

 主人公は呼吸器内科の女医折井綾乃。入院してきた重度の喘息患者江木泰三は綾乃の人柄に全幅の信頼を寄せ、尊敬している。綾乃は年下の医師と不倫関係を持ち、遊び半分だった相手に失望して睡眠薬を飲み過ぎ手当てを受ける。何かあると感じた江木はCDを貸し慰める。

 昔満州で生まれ、ソ連兵の弾丸で妹が苦しんで死んだ経験を話す江木。瀕死の人間は耳だけは聞こえるので両親は子守唄を聞かせて早く楽にと祈った。「だから、私がダメだとわかったら無理な延命治療はしないでください」「え?」「治療費もずいぶんかかりましたしね。私の最後は先生にお任せします。ただ臨終のとき子守歌だけ歌ってください」。

 何年か後、本当に江木は死に、綾乃は約束通りに安楽死させる。ところが内部告発があり3年後に検事に呼ばれ、あれは医師による殺人だとされる。いくら心の絆を言っても通じない。冷酷な法律と人間の情感とは通じ合うはずがなく、綾乃は逮捕され手錠腰縄で引き立てられてゆく。

 パナソニック、ソニー、シャープと日本を代表する電機メーカーが途方もない大赤字。ウオンを人為的に安く操作し、日本側は不当な円高に苦しめられ、市場は韓国勢にとられてしまった結果がこれだ。デフレと円高の悪循環。

 検事が読み上げる調書が綾乃の主張と、細部は事実でも真実とまるで違っていたように、あまりにもひどい格差がこの全滅を生んだ。

 遅すぎたのだが、ようやく政府も日銀もデフレからの脱出に合意し、円の対ドルレートも80円の大台を固めた。やっと、である。

 為替の予想は難しいが、ここから先は82円は早いと思うし、次の84円という目標にリアリティが出るだろう。中長期で100円以上だが、とりあえず。

 材料は私がこのブログで何回も言う通り、シェールガス革命によるドル高と、日本円については貿易収支の悪化、これで充分だ。

 投資のプロたちが円売りを主張し始めたのも大いに注目される。米バロンズ誌の最近号が著名な投資の名人たちを集めて有料の講演会を開いた。スピーカーのうち5人は同誌の新春座談会の常連。海外からの参加2人が、共に円安を主張した。

 スイスのフレックス・ズーロク氏は「日本で注目すべき変化が起きようとしている。円相場はドル高から円安。2,3年中に100円台に乗せ日本の輸出企業に巨大な利益が生まれる。割安な日本株はこれから買いだ」。

 香港を拠点とするマーク・ファーバー氏も「円相場は下落に転じ、私は資産運用の一部を日本株に向ける」。同氏は私への投資レターでも特筆大書して円売りを推奨している。

 米国勢ではハリス・トラストのデビッド・ヘロー氏も「長期間低迷してきた日本株だがPERとROEの水準から見て大いに注目したい」とキャノンとトヨタを例を挙げた。氏レポートフォリオでは日本22・9%、スイス16・8%、英国16・0%。過去10年率10・8%の運用成績で、今年に入ってからも17・4%もの好成績。当たり屋が言うことには乗らなくっちゃ。

 映画に絡んで私の個人的な想いを。平成7年8月に亡くなった母満里が危篤となり、その時私は豪州に中谷巌さんなどと日本代表で経済講演をしていた。急きょ帰国し、成田から蕨の病院に駆けつけたのはもうかなり遅い時間だった。耳元で「帰ってきたよ」と声をかけた。もう口のきけない母の目から涙がにじんだ。

 私の取り返しのつかない失敗は、そのままずっと朝まで枕元にいなかったことだ。姉妹が私の疲労を見かねたのと、朝まで大丈夫と思い込んで(なんで医師に確かめなかったのか!)帰宅してしまった。8月20日の朝、母は亡くなった。なんで耳元で、もっともっと話をしてあげなかったのか!悔やまれて、悔やまれてならない。

 私も77歳。母満里の死んだ82歳にあと少し。あの世であやまるつもりだが。

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