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2013年3月25日 (月)

オペラ「椿姫」とアメリカで考えたこと(第668回)

オペラ「椿姫」とアメリカで確認したこと(第668回)

 この原稿は帰国機内で執筆している。トラヴィアタ、つまり堕落した女という原題。1853年にヴェニスで初演された。ヴェルディの28ある歌劇の中で「アイーダ」や「リゴレット」「オテロ」と並んで最もポピュラーで、とくに」「乾杯の歌」はご存じだろう。名曲がズラリと並ぶ。

 原作はデュマ・フィス。高級娼婦のヴィオレッタに純朴な青年アルフレードが恋して、ついに自分のモノにする。そこに父が現れ、娘の縁談がこわれそうなので別れてくれ、と頼む。ヴィオレッタは自己犠牲を決意し心にもない愛想づかし。分かっていないアルフレードはヴィオレッタを侮辱して故郷に。その間に結核は進行し、死の床にあるヴィオレッタに、真相を知ったアルフレードが駆けつけるが、時遅しで死んでしまう。

 私は何回観たか分からないほどだが、今回3月18日ニューヨークのメトで観て涙が出た。主演のダムラウが良かったが、父親役のプラシド・ドミンゴが凄かった!もうアルフレード役をやっていた当時の高音は出ないのでバリトンで歌ったのだが、声量も声の質も驚くべき上々の出来。映画やTVでかつてのアイドルが、主人公の母親役になっているのを見て、その老け方に時間の残酷さを感じるものだが、ドミンゴは関係なし。節制と鍛錬を重ねている人だろう。いい年の取り方を感じた。これでなくっちゃ!

 夜会でヴィオレッタがアルフレードに椿の花を渡して「その花が枯れないうちにまたいらして」という。これが「椿姫」の由来だ。黒沢明の「椿三十郎」でも赤と白の椿の花がストーリーのヤマ場で使われた。ドラマのカギに、この豪華な花は良く似合う。ちなみに椿の花言葉は「誇り」。「何があってもリンとした容姿」「完璧な魅力」。なるほど。

 ところでこのブログでご紹介して、早速要望から反響があった「米国東海岸に巨大海底油田」というまさに完璧なオイシイ豪華な話。米国に来た目的の一つで、ある事情通の方に調べていただいた。名前は書かないがブログの愛読者でもあった。お礼を申し上げる。読んでくださいね。

 結論は「まだ本モノかどうかわからない」。つまり花は咲いていない、ということ。しかし、年後半には探査の方針がまとまり大反響がある、と見てもよさそうだ。

 オバマ政権は民主党なので環境保護には熱心だが、それでも1期目から油田、天然ガス電の資源開発を進めている。そこでかつては開発が禁止されていた東海岸のデラウエア州からフロリダ沖まで、現在は地下探査の段階。(ここで、私の推察では凄いことになる、という情報が流れたのだろう。)

 すでに環境重視派の議員8人から、地下探査そのものが海洋生物に悪影響を与える、という探査反対の手紙が1月に大統領あてに出されている。逆に言うと、もうすでに何らかの動きがある、ということだ。」」事情通は「年後半に探査結果はまとまる」と言っておられるのでそこから、ストーリーは急展開することになろう。

 

もうひとつ。私が2月に東洋経済の経済倶楽部で「シェールガス革命で復活するアメリカと日本」の講演を行ったとき、聴衆から「GEが水を使わないフラッキング採掘技術を開発したと聞いたが」という質問があった。私は「使わない」は信じられない、とお答えした。

 その後別の有力な経済倶楽部から講演依頼が2年ぶりにあり、最近のほかの方の講演録が送られてきた。その中に「GEが水を使わないシェールガス採掘技術を確立し、しかもそれを中国に供与する」と述べている部分があった。日本は米中の話し合いが進んでいるのにそんなことも知らないのか、という合意が感じられた。ははあん、この講演を聞いた方のご質問だったんだな。

 結論から言うと、これは間違いだった。GEは2010年に浄化した水をフラッキングに再利用することで水の使用量を減らせるという移動装置を開発したその時のプレスリリースに、利用が考えられる国として「中国」とか「インドネシア」などの国名が出て来るし、ビジネスウィーク誌の昨年11月29日号にもこの技術に言及した部分がある。最近の進展は公表されていない。少なくとも「水を使わない」はオーバーだ。

 

このほか、アベノミクスには米国は好意的で、例えばNY大のヌリエル・ルービニ教授は「円安・株高で日経平均は15~20%上昇の余地がある。」

ヘッジファンドの連中も日本株に強気でまだ当分売る気はない、なども。このほか、収穫大量に。犬も歩けば棒にあたる。やっぱり米国は来てこの目で見なくちゃあと感じた次第だ。

2013年3月15日 (金)

女性と2030と日銀と円安(第667回)

女性と2030と日銀と円安(第667回)

 今回は「映画」はなし。最近聞いた興味深いニュースを二つ。

 まず小池百合子自由民主党広報本部長から聞いたアベノミクスの三本目の柱の成長戦略についての話。6月公表の予定なのでこのブログはスクープですゾ。

 その前にひとつ。私は永い間小池さんとは懇意にしていただいている。先日、民主党政権時代に長く伸ばしていた髪を政権復帰で断髪した折、よんでいただいてハサミを入れた。ずいぶんと固いしっかりした髪で(本当は髪の話は私としてはしたくないんだが)切るには力が要った。余分な話だが。

 「成長戦略も3本の矢です」と小池さん。ある研究会での発言だ。第一がIPSに代表される医療関係、2番目がモノづくりに関連した主に規制緩和、そして三番目が「2030、ニーマルサンマル」。

 それは何か。2020年までに30%の女性による指導的立場のシエアを高める。つまり女性の登用による成長戦略。実は小渕政権時代以来の目標だったのだが「出来ていないだけ」。これを本気でやろう、というだけだ、という。

 小池さんのこの発言はIMFラガルド専務理事がさる1月に述べたことと一致する。

 ラガルド専務理事は「高い教育を受けた日本の女性労働参加がほかのG7と同じになると日本の潜在GDP成長は2030年までに最大25%拡大する可能性がある」と述べた。

 小池さんは「労働生産人口が減ってゆく時代で、これを補うには移民を除くと、お年寄りが働くか女性が働くか、しかない」と明快だ。

 政府の入札に女性への待遇(家族手当、産前産後休暇、育児休暇手当などなど)とくに女性の管理職比率を条件にする。これはフランスが2011年から「40%が目標で上場企業は6年以内、非上場企業は9年以内」と義務付けたのにならうものだろう。小池さんは「(女性は)メタンハイドレートです」という。日本の希望だ、という意味だろう。

 「もう自民党では党三役のうち二人は女性でしょ?」と言って小池さんは笑った。

 私は以前から「今井澂の美女と野次ウマ」というTV番組を持って3百回以上放映し、その中でも女性がもっと働きやすくしてやることにより、出生率も高まると主張してきた。

 今回東証が「なでしこ17銘柄」を決めたが、この女性登用をすでに推進して来た企業を挙げている。長期での投資にこの銘柄を加えることをお勧めする。(次のリストは今年の株価騰落率順)

 ファーストリテイリング、三井信託ファイナンシャルグループ、豊田通商、ダイキン工業、積水ハウス、住友ゴム工業、住友金属鉱山、東京急行電鉄、KDDI、花王、アサヒビールグループホールディングス、東レ、日産自動車、ニコン、マルハニチロホールディングス、旭硝子、大同特殊鋼。

 次のテーマは日銀が、すでに1月から量的金融緩和をかなり(まだ多少不十分だが)増加させ、かつての「バレンタイン・ショック」以後に日銀が供給を絞って、なーんだ、になってしまったのとはだいぶ違うことの再発見だ。

 これは嶋中雄二さんの研究会で、心配なので聞いたら、3月1日から12日までの最新数字を含めて、前年同月比の数字を教えてくれた。

 1月10・9%、2月15・1%、3月18.6%。

  嶋中さんは「年率換算」を重視しているが、3月1日から12日までは40・5%で、50%なら合格です、とか。黒田、岩田チームはやりやすいスタート台に立っている、ということになる。中期的に円安は続くだろう。

 17日から24日までアメリカに行ってきます。次回は帰国後に。

 

2013年3月 9日 (土)

映画「アンナ・カレーニナ」とそろそろ、の兆候(第666回)

映画「アンナ・カレーニナ」とそろそろ、の兆候(第666回)

 トルストイの長編小説の6回目の映画化でキーラ・ナイトレイ主演。夫役をジュード・ロウ、不倫相手のヴロンスキーはアーロン・テイラー・ジョンソン。正直言ってイマイチの出来で盛り上がりはないし、役者も大した演技ではない。わずかに舞踏会シーンの豪華さぐらいが取り柄の凡作だ。

 お話は有名なので簡単に。大臣の妻で美貌のアンナは兄貴夫婦のいさかいを仲裁するためやってきたモスクワで、若い貴族の将校ヴロンスキーに出会い不倫関係に。ついに子供までできるが夫カレーニンはすべてを赦すが離婚だけには応じない。

 宙ぶらりんの不安感からアンナの苛立ちは募り、上流階級サロンからの侮辱や息子と引き離された悲しみも加わる。退役したヴロンスキーは領地経営に熱中し、アンナとの気持ちは次第に離れてゆく。ついにアンナは鉄道自殺してしまう。

 物語は1870年代の帝政ロシアだから、もう現代のセンスから見るとお話しがいま一つ。

 それでも今回取り上げたのは、男女がモーレツに愛し合う状態は永くは続かない、という悲しい事実だ。もう私には(78歳に8月にはなるし)縁がないが。

 というのは、円安と株高がこの4か月間、私の予想通り進んだが、そろそろ一休みになる兆候が出てきたことだ。

 いい話が多すぎる。まず円レートがフシ目の95円をつけたこと。この水準はオプションの一つの関門で次は100円の大台。そこでもうロンドンでは1ドル96円中ほどまで言っている。現実には97,8円あたりまでスーッといくところだ。

 第二.NY株高も援護射撃。失業率も下がったし。日銀新総裁の承認、就任というイベントもある。悪いことはひとつもない。

 ところが相場というのは面白いもので、こんな状況はせいぜいあと2週間ぐらいだろう。3月末の株価が読めて来ると、買い方は手を休めるものだし。

 この種の日柄を読むのはやはりテクニカル・アナリスト、それも下げ相場の予測で実績のある人だ。

 プラザ投資顧問室の伊東秀広さんはこういう相場つきの時、下げへの転換をよく的中させる。この人が3月第2週に入ってこういっている。

 日経平均はNYダウよりもナスダック指数と連動性が高いが、上げ完了が近そう、反転か。

 NYダウは3月18日か25日あたりがサイクルから見ると高値で、その後調整。

 日経平均は「過熱の極み」。週足は先週で仕上げの長大陽線。1万1065円に向かい収束へ。

まあ、毎日毎日200円も300円も上がったら、いつまでも続くもんじゃないというのが私の経験則だ。

 もちろん、中長期では私はまだカンカンの強気。しかし「一休み」は必至だろう。

 小説の中でトルストイは、アンナがほしいものをこう描く。ヴロンスキーのような献身的な態度か、夫が提供するようなぜいたくな生活か、すべてを受け入れながら、どうもそれだけでは満足できない。そこでアンナの独白。「わたしが欲しいのは愛だ。でも愛はない。だとしたら全部おしまい。」自分が言った言葉を彼女は繰り返した。「だったら終わらせなくちゃ。」どうお考えですか。

2013年3月 3日 (日)

映画「ジャンゴ 繋がれざる者」と米中会計戦争(第665回)

映画「ジャンゴ・繋がれざる者」と中国情報(第665回)

 クエンティン・タランティーノ監督の新作。今回はマカロニウエスタンで、舞台は南北戦争前の1858年のアメリカ南部。主人公ジャンゴは鎖につながれて移送中、賞金稼ぎのガンマンでドイツ人の元歯科医のシュルツに奴隷の身分から解放される。

 二人はお尋ね者狩りの旅をつづけ賞金をためる。ジャンゴはガンマンとなり、奴隷市場で売られた妻の奪還を願い、ついに妻のいる大農園に乗り込む。主役のジェイミー・フォックスがいかにもガンマンらしくカッコいい。シュルツのクリストフ・ヴァルツ、大農園の主人レオナルド・ディカプリオ、その農園の黒人執事サミュエル・ジャクソンみんな芸達者で、何回も出てくるヤマ場の盛り上がりも凄い。極上の出来栄えの娯楽作品で、タランティーノ監督最上のヒット作というのもうなづける。

 登場人物総てが悪党でだまし合い、腹の探り合いのユーモアと残虐に満ちた演技合戦。まあこのテの映画がお好きな向きはぜひご一見を。

 とくにコワーいのがサミュエル・ジャクソン演じる執事で、一見従順で間の抜けた黒人だが、実は農場主を支配している。一見、白人対黒人の支配ルールを守っているようで、実は大違い。ルール無視だ。

 米中の経済関係が、ある米国企業の中国企業へのM&Aから風向きが変わりつつある。それは中国の監査法人の欺瞞に満ちた不正会計である。

 「フォーブス」や「ビジネス・ウィーク」など米国一流経済誌がこのところ報道しているキャタピラー社の巨額の被害である。

 世界最大の建設機械メーカーのキャタピラーは、昨年6月に鉱山機械の四維機電設備を7億ドルで買収した。これは炭坑機械分野でのシェアを獲得するためで、コマツの手の及ばない分野なため優れた経営戦略と評価されていた。

 ところが今年1月末、キャタピラーが計上した減損額は58000万ドル。買収金額の83%は不良資産で、売上高も利益も不正に過大表示されていた。これは会計監査がいい加減だった、ということだ。

 ここで表面化したのは、中国では個々の企業の経理もおかしいが、米国の大手監査法人傘下の現地監査法人まで怪しい、ということだ。

 当然米国の証券取引監視委員会(SEC)が動く。倒産寸前の米国企業を買収して裏口上場した中国企業50社を上場廃止にし、40人の企業幹部の捜査を行っている。ところが中国の監査法人は問題企業の監査資料を、SECへの提出しようとしない。

 中国側の言い分は「SECに協力したいが自分たちはまず中国の法律に従わなくてはならない」。ついにESCは米国大手監査法人の中国法人を証券取引法違反で告発したが、中国側は会計制度の改革を拒否している。合意不成立ならSECは米国で上場している全中国企業の上場廃止もありうる。制度改革要請を中国は国益への不法介入とみなしているためだ。

 当分、米国SECの動向が注目されるだろう。

 映画のセリフから。シュルツがジャンゴに言う。「君に自由を与えた以上、責任を感じる」。中国も大国になった以上、世界に対し責任を負うべきでは。

2013年3月 2日 (土)

先見経済2013年3月1日号「やはりシェールガス革命は時代をー」

先見経済 経済最前線 NO.85 2013年3月号

やはりシェールガス革命は時代を変える

 昨年年末に「シェールガス革命で復活するアメリカと日本」を出版した。自費出版で関係筋にお送りし、お手元に届いた日が1月7日。ちょうど同日にNHKがスペシャルで報道、関心が高まったせいもあり、第一刷はアッという間になくなってしまった。

このページで私が何回も主張した通り、この「100年に一度」のエネルギー革命の影響は途方もなく大きい。ようやく、世間様がそのことに気が付き始めたらしい。日経ヴェリタスは「シェールの世紀」という特集をしたし、大手銀行の調査部もマクロ分析を中心に分厚いレポートを出し始めている。私に言わせるとだいぶ遅いが。

 最近は「シェール革命」と「ガス」を省略することが多くなったが、米国経済に与える影響がまず注目される。

 貿易収支がまず劇的に改善する。米国の貿易赤字は2011年で5599億ドルで、原油の輸入金額は4393億ドル。8割が主に中東からの原油による赤字だ。

 ついでに言うと米国の中東依存度が下がるにつれて世界の情勢も変わりそうだ。

 また米中の関係も。中国はこれまで「米国の国債を買うのを止めたり売却する」と米国を脅していた。しかし今後、米国の優位が再確認されそうだ。

 貿易収支だけでなく、シェールガス関連ビジネスからの税収で財政収支も改善。さらにまだ7・9%の失業率もシンクタンクの予想では、5%台になると見込まれている。

 すでにガスを産出するテキサス州で6・6%、ノースダコタ州は3・1%の失業率と低い。全米にこれが拡大してゆく。

 これだと米国の「日本化」の不安どころか、ドル高と米国債発行水準の切り下げで、米国の長期繁栄が見込めるという予想が定着する。

 となると「今後10数年で中国は米国に並ぶ大国になり、21世紀は中国の世紀になる」という見方は変わる。世界帝国の再生というと前漢と後漢とかローマと神聖ローマ帝国のように米国も第二の繁栄期を迎えることになる。

 この見方はオーバーだろうか。エネルギーの転換が時代を変えてしまうのは歴史が証明する。

 19世紀に木炭から石炭に熱源が変わり蒸気機関をつくった英国は、産業革命で世界の工場になり七つの海を制覇した。石炭炊きの戦艦が当時の最高のハイテク製品で、全世界に鉄道が普及、巨大産業を形成した。

 20世紀に入ると米国で石油が発見され、ガソリンで自動車、重油で火力発電という現在の文明が形成された。自動車産業やハイウエイ建設が米国の経済成長を支えた。また戦後の冷戦時代は中東の原油が西ドイツと日本の高度成長を支えた。

 今回のシェールガス革命も、恐らく石油からガスへの熱源の転換で、たとえばガス自動車などの新製品、新産業を生むだろう。しかもIEAによると天然ガスの採掘、輸送のインフラ投資だけで世界で8兆6770億ドルの投資が2035年までに行われる。巨大投資が世界経済の活況につながる。

 米国内ではざっと2割にあたる1兆7700億ドルのインフラ投資が行われる。2030年には石油に代わり天然ガスが最も使用される燃料になるとIEAは予測している。

 今の日本はアベノミクスを好感した円安株高でムードは一転している。円安ということはドル高。そのドルがシェールガス革命で今後強くなってゆく。私がこのページで円安が大幅で長期にわたると予想したとき、反響はへえ?という感じだったが、今回も私の勝ちだ。

医薬経済2013年3月1日号「中国経済は危機寸前」

医薬経済 2013年3月号

中国経済は危機寸前

 2012年、中国経済は前年比7・8%成長を遂げ、2013年は8・2%へ伸び率は上昇する。これが先般発表されたIMFの予測で、大多数のエコノミストやマスコミはこの見方に立っている。

 私はへそ曲がりの少数派なので、実際はゼロ成長だったのでは、と考えている。

 ご説明しよう。3月に温家宝氏に代って国務総理になる李克強が今から年前に北京駐在の米国大使に「私は中国のGDP統計は信用しない」と述べた。理由は「あれは各地方自治体の報告を合計しただけ。地方の首長は自分の党中央による評価を悪くしたくないからいい数字しか出ない」。

 では、どんな数字を信用したらいいのか、とトーマス米大使が聞くと「鉄道貨物の輸送トン数。各路線からの報告なのでウソがない。」ほかには銀行からの中長期貸出と電力消費。」

 こんなマル秘がらみの発言は普通外部に漏れないものだが、例のウィキリークスで北京からの公電がバレてしまった。今では中国ウオッチャーがこの見方をとっている。

 この鉄道貨物輸送トン数が2月早々発表されたが、2012年1~12月で前年比マイナス0・9%。貸し出しも2,3年前の45%がひとケタとなり電力消費もマイナス。どう考えても7・8%成長などウソだ。

 恐らく胡錦鋳=温家宝政権が任期最終年に経済政策が失敗した、といわれるのを避けるため「大本営発表」をしたのだろう。

 現に中国主要企業の業績はかなり悪化している。売上高は昨年3・第四半期15%伸びているが、これは見せかけで、売掛金は45%も増加している。押し込み販売と顧客の支払い条件を緩やかにしているためだろう。

 当然、運転資金が必要になり、これが前記した貸し出し増の背景だが、私の調べたところではヤミ金融にも相当依存しているらしい。

 また景気に敏感な鉄鋼、セメント、石油化学製品など基礎資材は、過剰生産能力と需要低下で、操業率は60%以下といわれている。ところがこれらの業界の有力企業は国営なので、機動的な減産や業界再編成は行いにくい。そこで安値輸出で世界中にデフレをばらまいている。

 では中国企業で世界に羽ばたく有力成長企業が出ているかというと、最近の米国シンクタンクの調査では、国際競争力は「全くない」。

 たとえば世界一の通信機器メーカーの華為技術は、競争力の源泉は中国軍部との不透明な裏関係で技術開発力はない。またソーラーで世界最大手の尚徳太陽は、地元政商による強力な財政援助が成長の源で、現在は巨額な負債を抱え経営危機にある。

 中国最大手の自動車メーカー上汽集団も、VWやGMとの合弁ビジネスはうまくいっているが、30年経過した現在でも、ほとんど独自技術は持っていない。研究開発投資は年間売上高の0・1%で、日本勢の10%に比べて劣る。

 唯一の例外は有名な聯想集団(レノボ)で市場への対処の仕方が巧みだったのが成功の背景で技術面ではない。こうした出口なし、のところにジワリと世界の反中国ムードが重石になっている。

 日本に対する排日姿勢を契機に外資の流入は止まり。米国企業で逃げだすところも出てきた。日本だけが対中投資を増やしていたのを反日運動で排撃してしまったのだから、当然の結果である。

 もう紙数がなくなったが、不動産バブルの後始末はとてもとても、日本の91,2年のような状況だ。NY大学N・ルービニ教授の「2013年中国破綻説」は当たるかも知れない。

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