今井澂プロフィール

講演・出演など

お問合せ

広告


« 2013年3月 | トップページ | 2013年5月 »

2013年4月27日 (土)

映画「ジャッキー・コーガン」と円安効果(第673回)

映画「ジャッキー・コーガン」と円安効果(第673回)

 ブラッド・ピッド主演最新作。セクシーな二枚目がトシを取ると、かならず挑戦するのが殺し屋の役。ヒゲ面でコワそうな顔をつくり、銃で平然とと殺し屋を演じる。

 映画の舞台は2008年のニユーオルリーンズ。あのリーマン・ショックとオバマ当選がTVに映り、これがストーリーとダブる。これは強盗事件を扱ったクライムものだが、同時にギャンブルで支えられていた犯罪の経済危機、しかも管理体制の失敗を原因としている。

 原作は元地方検事ジョージ・ヒギンズの「killing them softly」。ロバータ・フラックの大ヒットの「やさしく歌って」のモジリ。なかなか面白い出来だ。ただし男性のみ。女性には残酷シーンがひどすぎるのでお勧めできない。

 今回のテーマを書く前に、」どうして外国映画でこんなに犯罪ものが多いのかなあと思って、犯罪発生率を比較してみた。

 2011年の数字だが、

(強盗事件)日本を一として

 米国 39・6、英国 43・1、独 20.4、仏 64.5

〈レイプ〉

 米国 28.8、英国 26.3、独 9.9、仏 17.2

〈殺人事件〉

 米国 5.7、英国 1.3、独 3・2、仏 3・5

人口10万人当たりの犯罪発生をみたもの。一番差のある強盗の件数だと

 日本 3673、米国 354396、英国 78155、独 48021、仏 121038

 文字通りケタ違いだ。テロ、誘拐、のほか、失業率が高止まりしたり貧富の格差が拡大しているのが背景だろう。私は講演で「日本の治安の良さをもっと認識すべきだ」と述べてきたが、改めて数字で見ると、こんなに差があるのか、と考えさせられた。

 本題に入ろう。まだ新聞、TVを見るとアベノミクス批判が数多く報道されている。やれ円安で燃料費が上がったのをどうする、とか、一時的なもの、とか、サラリーが上がっていない、とか。

 私に言わせれば、アホなことを言っている。まだアベノミクスが第一の矢。金融政策が決められたのが4月4日。それでサラリーが上がるはずがない。

 市場での反応をもっと重視すべきだ。特に円レート。

 これで急速に国際競争力を強化している産業、企業が続出している。

 ごく一例。造船。3月に日本が獲得した船舶は49隻、2月の5隻から急増した。円安の寄与だ。LNG運搬船はこれからシェールガス運搬で需要が増える。60~70隻とされる。三井造船、川崎重工、三菱重工が良くなるだろう。

 今治のタオル産業も3月頃から輸出が急増、超多忙とか。

 私は日銀黒田総裁の決意から見て2%の物価上昇は必ず達成されるとみているが、その場合、皆が見過ごしているのが「タンス預金」である。

 2012年12月末のタンス預金は86兆6533億円。前年比3・2%増。2008年当時30兆円の3倍近くだし、マネタリーベース130兆に比べても巨大な数字である。

 これが動き出してくる、と私は確信している。マスコミなもっと明るいニュースを報道すべきだ。

 映画のセリフから。ギャング団の連絡係が言う。「意思決定が出来ないのは、ウチの企業風土だ」。へえ、アメリカでもそうなんだ。ならばアベノミクスの決断の凄さをもっと評価しなくちゃ。

2013年4月21日 (日)

映画「舟を編む」と中国経済に悪化(第672回)

映画「舟を編む」と中国経済の悪化(第672回)

 三浦しをん原作は文芸書部門の2012年ベストセラー第一位。辞書編集に努力する男の物語だ。「果てしなく広い言葉の海、辞書とはその大海に浮かぶ舟」「人は辞書を通じて自分の気持ちを的確に表す言葉を探す」ともにセリフから引用したが、これがテーマだ。

 とてもいい映画でユーモアたっぷり。笑いが絶えない。恐らく今年のベストファイブに入るだろう。主演の松田龍平、宮崎あおいが実に巧い。脇役も芸達者揃い。

 辞書採用分は24万ものことば。数限りなく多い、というと私はお隣の中国を思い出す。漢字とか人口とか。今回は私に情報を提供してくれる富国生命の市岡繁男さんが、日本ではあまり報道されない中国のことを調べてくれた。今回はその要約を番号をつけた部分で紹介。

 英TELEGRAPH紙。中国のデベロッパーが当局の規制を回避するために、住宅から商業ビル建設に重点を移した。このため地方のオフィスビルは空室だらけなのだが、それでも建設ラッシュは止まらない。需給関係の悪化は放置されたまま。

 フィナンシャル・タイムス紙。中国の有力監査法人が「地方政府の債務はアウト・オブ・コントロールの状態にあり、米国の住宅バブル崩壊以上の深刻な事態が懸念される」。誰もが懸念していることを公言している。

 これも市岡氏の調査。中国経済の失速は興行されている統計数字ではわからないので、貿易統計は相手国があるのでゴマかしは難しい。

まず輸入。ブラジル・チリ・ロシアからの輸入は昨年8月以降ふたケタのマイナス。一方輸出は前年比ふたケタ増と一見順調だが、香港向けが突出して伸び、これを除くと3月の中国の輸出は前年比マイナス5%である。香港向け輸出が細工されていつ証拠は、中国の輸出全体に占めるシェアが15%(昨年)から今年になり3月26%に急伸している。不自然な伸びで何らかの細工をしたことをうかがわせる。

 

 ついでに私が講演会でお話ししていることを。現在首相になった李克強が7年前に北京駐在米国大使に「私はGDP統計は信用しない」と述べた。理由は「あれは省、市など地方自治体に与えてあるノルマの何%達成されたか報告させて数字をまとめる。誰も自分はかわいいから悪い数字が出てくるはずがない」。

 「では何を信用するのか」

 「鉄道貨物の輸送トン数。各路線ごとの報告をまとめるのでウソがない。」

 このやり取りは7年前だが、ウィキリークスで北京駐在米国大使の本国への報告がバクロされてしまった。以来中国ウオッチャーはこの数字を見ている。

 昨年の鉄道貨物輸送トン数は前年比マイナス0・9%、今年1,2月もゼロ。これで7・8%成長しているはずがない。

 

 中国からの亡命者石平氏によると「中国の地方政府は、リーマンショック以前の時点ですでに債務超過だつた。」なるほど、だから上海株は下落を続けている。株価は中国経済の真の姿を示している。

映画では主人公はホレた女性に何と巻紙に達筆の草書でラブレター。女性の方は読めないので「はっきり言って」と迫る。読めないラブレター。間抜けだ。何となくイカサマ統計と通じている面があるのでは。

2013年4月14日 (日)

村上春樹さん新作と北朝鮮(第671回)

村上春樹さん新作と北朝鮮(第671回)

 「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」を読んだ。駅をつくるのが夢で工科大学に進み現在はその職に就いている36歳の多崎作(つくる)が主人公。名古屋出身で高校時代の仲良しグループ5人は多崎を除く4人は姓に色がついていた。二人の男は赤松と青江、二人の女は白根と黒野。五人は何でも一緒。

 ところが大学2年生、20歳の時多崎は突然グループから絶交を言い渡される。絶望した多崎は死を考える位落ち込む。理由がわからないままに立ち直ってサラリーマンとして生きている。

 そこに大手旅行会社勤務で二歳年上の沙羅が「その問題をあなたは乗り越えなくては」と言って助力してくれる。なぜ四人が絶交を決めたのか。16年前の真相を調べ始める。

 まだお読みになっていない方が多いだろうからネタバレは止めるが、十分に面白く、後味のいい、村上氏の長編の中でも私が好きないい作品と思う。

 いま私は池上彰氏の「緊急生放送 学べるニュース」を見ているが、米国も中国も北朝鮮の金正恩に対応策が全くない状況だ、と憂い顔で述べるだけ。まあ新しいことは中国の北朝鮮駐在大使が、昨年12月2日以来、交流がない、翌日ミサイルを発射してきたためせっかく訪れた特使の顔がツブされた、という点か。他は目新しいニュースはなかった。

 まあ村上春樹さんの新作の主人公つくるが事実関係が全くわからないまま混乱してしまったのに似ている。

 世界の首脳部が金正恩に振り回されているのに、私ごときが不遜に予言するのは気が引ける。また突然ホントにミサイル発射してしまうかもしれない。

 しかし私は、結局ミサイル発射はしないし、戦争を起こすこともない、と見ている。

 なぜか。

 私は1月のドイツの有力紙フランクフルター・アルゲマイネと週刊紙シュピーゲルが報じたニュースを注目している。

 「北朝鮮は経済開放のためのマスタープランを持っている。経済特区を活用した中国モデルでなく、政府が直接外国企業と投資家を選定するベトナム型だろう。」

 「このためドイツの経済、法律の専門家がアドバイスしており、昨年11月にはドイツのホテル企業ケンピンスキー・グループの首脳部が訪朝しある物件を買収した。」

 もちろん米国のグーグルのトップや元州知事、バスケットのスタープレーヤーも訪朝しているが「戦争する気がない、とオバマ大統領に電話してくれ」なんて、冗談でしょうと云いたくなる。

 私は金正雲とドイツ、と聞いた時からこの情報はホントと考えている。1993年から98年まで金正雲はスイスのチューリッヒ近く(ドイツ語圏)のインターナショナルスクールに在学、その後2000年までパブリックスクールでドイツ語で教育されていた。

 今回の騒動は、この経済関係変革の前に、さも譲歩したように見せる演出だろう。平壌での主要国大使館で警告後逃げ出した国はないと聞いている。

 開城工業区の韓国労働者の入国拒否は、韓国朴大統領へのオドシだ。現に4月1日には「強い対処」を口にしていた韓国側は11日は「対話」を言い出した。弱腰だと思うが、まだ就任したてで立場が弱いのだから仕方ないのだろうか。

 しかし、と私は思う。騒ぎを起こしてまた平和を装う、そんな子供だましがいつまで続くと思っているのだろう?

2013年4月 7日 (日)

映画「ヒッチコック」と黒田サプライズの今後(第670回)

映画「ヒッチコック」と黒田サプライズの今後(第670回)

 サスペンスの神様ヒッチコックの主に「サイコ」にかかわる裏話の映画。アンソニー・ホプキンスが似ても似つかないヒッチを演じヘレン・ミレンが夫人アルマ、ジャネット・リーの役をスカーレット・ヨハンソン。私のようなヒッチコック・ファンにはとても面白い小品。

 この映画の主役はヒッチ夫人のアルマ。今としてはホラー映画の古典となった「サイコ」だが陰惨な話だというので製作会社が出資を渋り、ヒッチは自宅を担保にして80万ドルの製作費をねん出。3600万ドルの興行収入という大ヒットになった。しかし製作中にヒッチは発熱、また自信を失いアルマが編集しなおして何とか映画にする。

 この間に有名なシャワーシーン(45秒)に7日間かけた、とか。原作のロバート・ブロックの本はスタッフが買い占めた、とかのトリビアも入る。

 「サイコ」のお話しはご存じだろうが、映画が始まって30分でスターのジャネット・リーが惨殺されてしまう。そこいらで観客は完全に監督のねらい通り、まったくストーリーの展開が読めない状態に入ってゆく。何回観たか分からないくらいだが、ドキドキ、ハラハラ。

 大方の人の想定を大きく上回った「黒田サプライズ」。まるでヒッチコック映画のような4月4日の日銀政策会合だった。

 黒田総裁の発言通り「現在やるべきと思われるものはすべてやった」。まず量的マネタリーベースを目標とし、年60~70%増加させる。またこれまでの買い入れ月額4兆円から7兆円強にし、毎月の国債発行額の7割を買い入れる。

 2年で2倍とか2年で2%とか、プレゼンのやり方も明らかに白川時代と違う。

 やはり株式市場の動きと、大量の売買高が示す通り、円安・株高シナリオの進行が続くことを予想し始めていると考えるべきだろう。

 私は5,6月に上昇相場一休み、というシナリオを取っていたので、日銀発表から1000円以上上がった日経平均の方が、私にとりサプライズであった。

 私は東証一部売買高64億5000万株という新記録の意味は大きいと思う。高値で利食った投資家もずいぶんいたということなので、上昇の動きは止まるまい。

 最大の株高の背景は円安。従前から私は1ドル100円以上の円安ドル高を見込んでいるが、この黒田サプライズは円レートが2014~14年中に110円はつくことを市場に確信させた。

 SMBC日興証券によると、10円の円安が企業の経常利益への影響度は次の通り。

 上昇①電機(65・1%)②鉄鋼(40・7%)③輸送用機器(29・4%)、④卸売業(16・3%)。全産業12・1%。 一方下落組は①石油(マイナス9・4%)②非鉄金属(マイナス7・7%)、小売(マイナス9・4%)。

 またSMBC日興証券はJIREITとETFの買い入れにも注目している。日銀はそれぞれ年間300億円、同1兆円増安が、従来決定分からの増加は4100億円。1000億円の買い入れ増加で日経平均100円高となるので、今回の分は400円分の押し上げ、となる。

 結論。4月8日以降、勢いづいて市場の上げ足は簡単にはおさまらないだろう。

 映画のセリフから。」遠慮しながら「プールはもう担保に成るので泳げなくなるぞ」とヒッチが言うとアルマは「プールだけでなく家全体もね」。株価は「次」を見越し始めた。

2013年4月 1日 (月)

映画「キング・オブ・マンハッタンー危険な賭け」と米国の3D革命

映画「キング・オブ・マンハッタンー危険な賭け」と米国の3D革命(第669回)

 リチャード・ギアがヘッジファンドの社長を演じる。巨大な資産と幸せな家庭を得ている男が、実はストレスから愛人を囲っている。

 それはそうだろう。表面に出ない巨額の含み損、穴埋めのための借金の期日切迫、買収を持ちかけてきた銀行のいやがらせと会計監査での問題点発見の不安。

 原題の「裁定取引」つまり複数の市場での価格差利用のサヤ取りの方が、ズバリ主人公の苦境を物語る。

 愛人をつれて別荘にゆく途中、居眠り運転で事故を起こし、愛人は死亡し車は炎上。人生のすべてを失いかねない危機が発生する。

 映画の終わりでは、この一見、出口なしの苦境を何と主人公は切り抜けてしまう。そこが見せ場の、まことに面白い映画だ。ビジネスマン必見。

 先日米国に行って何回も聞いた言葉が「リショアリング」。産業の米国内への回帰、という意味だ。ひところ人件費の安い中国など新興国へ生産拠点を移転した「オフショアリング」が終わり、今や米国は製造業世界一の座を取り戻そうとしている。

 昨年秋のマサチューセッツ工科大学(MIT)の調査では米国の多国籍企業大手108社の三分の一が国内回帰の検討を開始、すでに13%が決定した。

 オバマ大統領は昨年大統領再選直後、大手企業30社の首脳を呼んでモノづくりにまい進しマネーゲームは止める。また中国から工場を引き揚げろ」と述べたようだ。その後一般教書で「2016年までに100万人の製造業雇用を創出」を宣言した。

 まるで映画のラスト近くの大逆転のよう。

 理由の第一は「シェールガス革命」。このブログの読者なら先刻ご存じだろう。第二は労組離れによる賃金の低下、そして第三が「3Dプリンタ生産技術」である。

 米国が切り札にしようとしているこの技術は、コンピュータで設計したある部品の三次元データを入力すると、印刷するような感覚で安価にモノが出来上がる。だから「3Dプリンタ」。

 昨年夏オハイオ州ヤングスタウンに、民間企業6割、国防総省など政府機関が4割出資して国立創造系技術革新機構(NAMII)が発足した。今後15か所に研究機関が設立され、軍事利用に始まっていずれは民間に転用する狙いだ。

 米国製造業の大転換を象徴しているのがGEだ。イメルト会長はオバマ大統領の盟友とされるが、金融やメディア、情報サービスなどから本業の製造業への回帰をめざす。

 たとえば去る2月NBCユニバーサルの保有株を売却。メディア事業から手を引き、GEの利益に占める金融業の比率を2012年の5割から最終的に3割まで引き下げる方針。一方シェールガス革命関連ビジネスや、3D技術のパイオニアのモーリス・テクノロジーを買収しジェットエンジン部品を3D生産する。発電設備、医療設備にもこの生産技術を導入する。

 このほか、フォード、ボーイング、キャタピラー、ハネウエルなども3D技術導入に熱心。

 年初来のGE株は25%以上も上昇、ダウ採用銘柄でトップの上昇率。一方、日経平均はファーストリティリングが上昇の主力で225種の内10%以上を占める。

 私の理解ではユニクロは円高のおかげで利益を出してきた銘柄。どこかで円安がマイナスの影響が出るはずだ。同じ上げ相場でもだいぶ違うのではないか。

 映画のセリフから。主人公が娘の副社長に「なんでこんなにソンしたの?」「市場ってものはそうしたものさ。また上がるときは上がる。」時代が変わりつつある。

« 2013年3月 | トップページ | 2013年5月 »