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2013年5月26日 (日)

映画「カルテット!」と5月23日の暴落(第677回)

映画「カルテット!」と5月23日の暴落(第677回)

 名優ダスティン・ホフマンの初監督作で、老齢の私には特に味わい深い佳作。英国にある音楽家のための老人ホームが舞台。再会した四人のオペラ歌手たちがヴェルディの「リゴレット」の有名な四重唱を歌う。

 歌うまでに私は老いた自分の声を人様に聞かせたくない、とか、過去のゴタゴタとか。しかし老人ホーム側としてはホーム存続のためのガラコンサートの呼び物にしたいので、どうしても歌ってほしい。これだけのドラマだが、この単純なお話が実に味わい深い。役者たちの演技もうまいし。

 あるテナーはリルケの「芸術は無限の孤独から生まれる」という一節を好むように、本当は集団生活が好きではない。そこで微妙な距離を置いている。トム・コートネイが見事に演じている。

 5月23日のあの大暴落は本当に凄かった。225種先物は瞬間1万6000円の大台をつけた後1万3980円まで。値幅は2000円を超えた。

 また10年もの国債利回りはこの日の前には0・7%台だったが1%がこれまた瞬間ついてしまった。

 株式も債券もプットオプションと言って買い手が途方もなく儲かる水準がついてしまった。仕掛けているヘッジファンドはしてやったり、だろう。

 まず日経平均、だれも見向きもしなかった1万4000円以下の安いプットオプションを大量に買い込む向きがあった。これが23日の11時ごろから一気に大商いとなり大幅に上昇、そこから先物が売られ始めた。中国の購買者景気指数が悪かった、というのはあくまでも理屈付け。

 一方債券の方も債券先物は売買停止となり利回りは1%台乗せ。これで例のカイル・バスとその同調者はこの数年間で初めて大幅な利益が出てしまった。

 カイル・バスは米国FRBバーナンキ議長の発言を契機に米国国債利回りが上昇していたのを利用して日本国債への仕掛けを成功させた。

 せっかくアベノミクスが、株式市場での上昇を契機に、明るいムードを生んでいたのだが、これでダークサイドがチラリと見えてしまった。

「上昇幅が速すぎた」

「企業収益の見通しがいいのだから一時的な下げに止まり、中長期では明るい」

「生保が“この利回りなら日本国債買いを再開したい”と言っている」これらのストーリーが本当に信じられるかどうか、少々疑問だ。

私は以前から6,7月には上昇相場にお休みがあると主張してきたが、下げはそう簡単に一過性のものではないと思う。強気の私だが、ここは慎重に。

映画のセリフから。あるソプラノが言う。「歌うことと人生とは、両方とも同時に手に入らない。ムリ」。金利安と株高を両方狙うのは、もともとムリがあったのでは。 

 

2013年5月20日 (月)

映画「モネ・ゲーム」と今後の金価格(第676回)

映画「モネ・ゲーム」と今後の金価格」(第676回)

 コメディ映画で印象派の巨匠モネの名画をタネに、雇い主に対し詐欺を企てる美術鑑定士の物語。主役は「英国王のスピーチ」でアカデミー賞の主演男優賞を獲得したコリン・ファース。脚本はアカデミー作品賞を「ノーカントリー」で撮ったコーエン兄弟が書いているので、結構笑える小品になった。

 横暴で意地の悪い主人公の雇い主は、億万長者のメディア王で絵画のコレクター。あまりのひどさに堪忍袋の緒を切った主人公は、友人でニセモノ作りが趣味の少佐と完全犯罪をたくらむ。モネの行方不明の名画の贋作を、大変な高値で売りつけようーという作戦だ。

 名画を祖父の代から持っていたということにするテキサスのカウガール(カウボーイじゃない)がキャメロン・ディアスで、その天然ボケぶりが何ともおかしい。ともかく次から次へと予定された計画をブチこわす。終わりはドンデン返しに次ぐドンデン返し。

 シナリオが予定通りいかなくなったというのは、マーケットではよくあること。4月以降の金価格の急落がまさにそれだろう。

 金価格のほぼ16年にわたる長期上昇は何と言ってもインフレ・リスク。日米欧の三局中央銀行が空前の超金融緩和を敢行しているのだから、キャッチフレーズとして「ペーパーマネーへの不信」としての金価格上昇が正当化された。要するにドル不信指数、である。

 また中国、インドなど金選好の国の興隆も実需を支えたし、米国の大手年金がETFを通じて金の買い手となった。新興国の中央銀行の外貨準備の一角としての金買いも、需給関係を支えた。

 

 これらのストーリーをブチ壊したのが「シェールガス革命」である。

 エネルギー価格が長期で安くなってゆくなら、インフレにはならない。また米国の貿易赤字縮小は「ドル高」だし、キプロス中銀の売却や中国の実体経済の悪化も金価格へは打撃だ。

 米国経済の重石になっていた住宅市場は好転し、シェール革命への期待でNYダウは新高値。金や債券から株式へのシフトで、米年金のETF買いは売りに転換。年初からNYの金ETFは300トンも減少した・

 4月10日に発表されたゴールドマンの金売り推奨レポートが効いた。4月15日から急落し、4月16日はオンス1321・5ドルの安値が瞬間ついた。昨年10月5日の1798ドルの27%下落である。

 その直後にゴールドマンは売り止めのレポートをだしたし、中国やインドでは個人客の買いが入った。

 また割安になった10分の一オンス金貨は需要急増で在庫がなくなった。まだ将来へのインフレ懸念が市中でなくなったわけではない。

 一時反発した金価格はまた最近1350ドル台まで下げた。私の予測どうり、戻りの後、もう一度安値を試しているわけだ。「シェール革命でQEⅢなどにかかわらず物価は上がらない」というメッセージを金市場が発しているならば、1321・5ドルは、いずれは、また切ってしまうかもしれない。ただし、ごく目先は底値と思うが。

 1995年のオンス250ドルから16年かけて1920ドルまで上げたのだから、整理期間は少なくとも4年かかる。値幅の方よりも時間の方がまだ足りないのでは。

 私の結論。今週来週あたりの突込みは買いだろう。グラム建て円建ての日本の金先物はオンス建てドル建てのNYより買いには有利だ。売りはしない方がいいとみる。

 映画のセリフから。主人公がひどい目にあって言う。「水ブロに放り込まれて、出た後ムチうちの刑になったような気もちだ。」市場の急落の後の安値接近だが、参ったなと思わないことだ。

2013年5月12日 (日)

映画「テルマエ・ロマエ」の原作使用料と株価水準(第675回)

映画「テルマエ・ロマエ」の原作使用料と株価材料(675回)

 興業収入60億円の大ヒットとなった映画「テルマエ・ロマエ」の原作はヤマザキマリさんの漫画。その原作使用料が100万円だったと原作者がTV番組で明かし、安すぎるのでは、と話題になった。

 弁護士でヤマザキマリさんの代理人を務める四宮隆史氏はサンケイビジネスでこう述べている。

 原作者は使用料については出版社が映画製作者と交渉して決める。

 上限は日本文芸家協会の規定では1000万円で下限はまちまち。

 業界慣習として出版社は作家を十分に尊重していると思うが、行き届かない例も存在。

結局「誰が悪いというわけではなく、海外在住の作家が日本の出版社と仕事して生じた意思疎通の齟齬の問題」だそうだ。でも100万円は安いなあ。ボーナスを払ってもいいと思うけど。

そこで傑作オペラの作曲料を三枝成彰さんが調べた〈大作曲家たちの履歴書〉のを引用してみる。モーツアルト。

「フィガロの結婚」が450フローリン。約139万円。「ドン・ジョバンニ」プラハの初演は同じ。へえ、相場はそんなんだったんだ。

あのモーツアルトの死の直前にある貴族が注文を付けた「レクィエム」の前金は50ドゥーカテン、69万5000円!

1780年代のザルツブルグの物価は①バター773円②牛肉309円③ヌードル927円④1週間当たりのベビーシッターを頼んで労賃と暖房、食費6954円。

そして一人あたりのレッスン料の月謝は8万3000円。だから弟子が4人いれば食べていかれた、と手紙にある。

次にベートーヴェン。あの「第九」の初演の収益は126万円。自分では180万円と評価していたそうな。貴族からもらっていた年金は年408万円。これは47歳当時。39歳のピーク時には三人の貴族から年6000万円ももらっていたが、2年しかもたなかった、らしいい。

オペラ史上最高全額を支払われたのはヴェルディの「アィーダ」。1871年スエズ運河開通を記念してカイロ上演のため15万フラン。

ユーロに換算したら2000万円近い。

何でこんなことをゴチャゴチャと書いたかというと、株価がぐんぐんと上がっているので「アベバブル」だなんていう向きが出ているから。

私は89年12月の3万8900円の直後の暴落開始直後に「週刊東洋経済」に寄稿し、株安が途方もなく大幅下落で長期にわたる可能性大、と指摘した。

理由は「イールドスプレッド」。株価を日経225とし、PERの逆数の「益回り」を長期金利から引いて比較し、これが当時9%以上でメチャ高だと述べた。

すでに日銀は公定歩合を三回も引き上げており、当時の三重野総裁のメチャメチャなバブル退治の勢いを「平成の鬼平」とはやす向きさえあった。

これは大変、と思い、私は浮かれている証券界に冷や水をかけて書いたのである。もちろん袋叩きにあったが、私が正しかったのは歴史が証明する。

 現時点ではどうか。

 東証全銘柄ベースで5月10日現在、益回りは5・23%。一方5年物国債の利回りは0・28%。イールドスプレットはマイナス5%以上あり、いぜんリーズナブルな価格と言える。

ただし、4月中旬から外国人の買いは州によっては売り越しとなり、5月第1週も小幅だが売り越した。

 モーレツな上げは個人の主に信用取引、5月に入り信託銀行と都銀・地銀は買い越したが、生損保の売りが大きく金融機関全体ではまだ売り越しが続いている。

 世界で一番ヘタな日本の生損保が買い始めれば上げ相場は終わりだが、まだ大丈夫。日経の市場欄で「生損保買いで高値更新」という見出しが出始めたら、1か月以内に天井。それまでは大丈夫だ。

 

2013年5月 5日 (日)

米国株式市場に「変調」の兆し(選択2013年5月号)

選択 2013年5月号

NY株式市場に変調の兆し

 「やはり例年のとうり5月は恐ろしい月だね。」。どう考えても大量売りが出そうだから」。

 理由は?と聞くと大手ヘッジファンドの運用担当者は「投資作戦の読み違えで巨大損失を出したファンドがきわめて多い」ことを指摘する。」恐らく解約が第二・四半期末に出るが、その解約の締め切りが5月15日なので、手元にキャッシュを作っておかなくてはならない。」たまたまNYダウ平均は2007年10月の高値を抜いて高水準なので、売りが多くなる、というわけだ。

 その投資戦略の失敗とは①2,3月頃にNYダウは新値を抜かないとみて先物を売る②一方、金、原油などは商品買い、という作戦が、両方ともウラ目に出たことだ。おおざっぱに言って有力ヘッジファンドの四分の一が今回は「負け組」になったといわれている。

 まず株の方は「NYダウは2007年10月の1万4190ドル寸前で10~15%下げる」と読む投資担当者は2,3月頃結構多かった。実体経済の回復がさほど出なかった上財政赤字の削減が成長率を押し下げる。またチャートからも売りを示唆する動きが読めたことも、先物売りが多かった理由である。

 「結局シェールガス革命の効果を過小評価したのだろう」と前記のヘッジファンド運用担当者に言う。また黒田日銀の異次元緩和でリスクマネーが追加されたことも、NYダウの新高値更新を支えた。このため売り方の運用成績はガタ落ち、解約を恐れなければならない状況にある。

 「まあそれ以上に直接の打撃が多いのがSACだ。昨年末から4月まで運用資産の30%以上が流出しているんだ」。SACは昨年まで「最も成功したヘッジファンド」として定評があり、創立者スティーブ・コーエン氏は昨年の個人所得13億ドルでこの業界第3位だ。運用資産も昨年末で150億ドルでこれまたベスト5に入る。

 ところが去る3月、元運用担当者がインサイダー取引で米証券取り委員会(SEC)が摘発し、結局6億1400万ドルという空前の和解金を支払った。信用失墜は言うまでもない。

 摘発されたインサイダー事犯は2件。SACグループのうち2社が、一つはアルツハイマー症薬の臨床実験不調の情報、もう一つはパソコン大手デルの決算内容の発表前の把握で、市場ではコーエン氏にも追求が及ぶか、とも観測されている。SAC側はもちろん組織としての犯意は否認しているが、過去20年間年率30%もの投資収益を上げてきた実績への信頼が揺らいでいることは事実だ。

 ともかく、5月には「負け組」ヘッジファンドによる解約に備えた売りと、これを見越した利益確定売りが出て、一時的とはいえNY株式市場にかなり大幅な下げが出る、-これがかなり広く信じられている。

 具合の悪いことに5月19日に米国連邦政府債務が上限に達する。共和党は歳出削減をオバマ政権に迫っており、この債務上限を交渉材料に利用しようとしている。 2011年8月に債務上限引き上げ問題がこじれて、米国債の格下げが発生、月4日に1日512ドル、翌日小反発したものの週明け8日に634ドルもの暴落が発生した。

 この経験があるので、第二の格下げショック不安が材料となり、それが5月に起きるというシナリオが信じられ始めている。

      金や商品の暴落の意味は

 もっとも弱気な向きは短期間だが10%程度の株価下落。それは新高値を付ける背景になった好材料には、同時に株安要因が潜んでいることだ。

 たとえばシェールガス革命。これは①貿易収支の改善②失業率低下③法人税増収による財政収支好転、といいことづくめ。進展とともに米国経済は成長が高まる。

 難点はある。ダウ採用銘柄30種のうち20以上が海外部門の利益への比重が高いので、ドル高は企業収益ダウンと株安につながること。

 それでも来年にかけてNYダウは1万7000ドルと見る向きが多いのは、このページでも紹介したことのある米国東海底超巨大油田説だ。

 コネチカット州からフロリダ州に至る海底は開発が禁止されていたが、オバマ政権は探査の開始を決めている。すでに地形やな地質どのノウハウが豊富な米国では「すごい埋蔵量だ」との前評判が高い。下半期に正式な探査が開始されるが、サウジを上回るだろうといわれており、「エナジー・インデペンデンス」(外国に頼らないエネルギー独立)が期待されている。最近環境重視派議員8名が開発反対の手紙をオバマ大統領に出したが、前評判の高さを裏書きした形だ。

 このほか米国製造業復活の切り札になるといわれている3Dプリンタ技術もある。これはコンピュータで立体的に印刷のように安価で部品を作れるというもので、政府と産業界がオハイオ州に研究機構を設立、当初は軍事用として開発され、結果としては民生用という技術の確立を狙っている。

 住宅市場が回復し、サブプライムの痛手も消えた。TPP交渉で日本が関税引き下げのメリットを放棄したので自動車大手は市場の回復も享受できる。だからこそ最新のFOMC議事録で2013年末までに量的緩和縮小を支持する意見が顕著になってきた、と報じられた。つい先ごろまで、出口戦略発動は2014年と見られていたので、「ドル安時代は終わった」との見方が強まる。

 金が暴落を始めたのが、ドル信認の高まりを物語る。4月12日から2営業日で金価格はドルベースで10%下落した。

 これに先立ったゴールドマン・サックス社は3月末、金価格はオンス1200ドルまで下降するというレポートを出していたが、予想は的中しかけている。暴落が始まる前は1550~1600ドルのゾーンにいたが、4月12日に63ドル安の1501ドル、週明け15日に140ドル安の1361ドル、16日に1320ドルまで下げた。

 「金価格は通貨への不信任指数」という常識からすると、ドルへの信認が急速に進行したことになる。2011年に1904ドルの史上最高値を付けたが、その後じわじわと米国経済の強さをおりこんでいることになる。

 材料としては①金需要の半分を占める中国とインドの景気減速②インフレ懸念の後退などがあり、これに加えてキプロス中銀の保有金売却(4億ユーロ)の売却懸念があった。しかし根本はドルへの評価の上昇だろう。これが結局NY株高につながることは言うまでもないが、その前の「魔物の住む5月」をどうしのぐか。

 

シェール革命で恩恵を受ける日本企業は(先見経済13年5月号)

先見経済2013年5月号

シェール革命で恩恵を受ける日本企業は

 このコラムで私は何べんもシェールガスによる革命の巨大なこと、産出しているアメリが利益を得るのはもちろんだが、日本も相当にプラスになることを主張してきた。

 円安が引き金になって株高。買い気が出てきた株式市場では早くも「シェール関連」銘柄が動き出した。イマイ先生、教えてくださいとリクエストがずいぶん来ている。

 私は推奨ではないが(というのは随分上がって目先は限界で一休みと思うので)、6,7月に予想される押し目買いで3年持続という条件で、注目される株を挙げよう。

 まずLNG運搬船。世界で現在359隻運行されているが、2014年にパナマ運河拡張工事が完成するし、14万立方米級のLNG運搬船が60~70隻、120~140億ドルの需要が生まれる。円安だし、造船業界は韓国に奪われた新造船市場を取り戻す大チャンスだ。三井造船、川崎重工、三菱重工など。注目は冷蔵するタンク用の6センチのアルミ厚板の古河スカイ。大増産中だ。売上比重は軽いが収益性は高い。

 ガスを液化して運搬し気化するわけだが、このプラントは世界の80%を住友精密、30%を神戸製鋼が握っている。これらは本当に業績が急向上するのは2015年3月期。だから少なくとも2年は持つこと。

 私が困っているのは新日鉄住金だ。これまでのデフレと円高の悪循環は原料を安く購入できるメリットがあった。これが円安でコスト負担は増す。しかしシェールガスは2~3000米掘削してガスとシェールオイル、LNGを地表に上げて来るか、この地圧に耐える鋼管は旧住金和歌山しかつくれない。差引少しプラスの方が多いかも。

 三菱重工、日立、東芝なども私は判断に迷っている。私が聞いたところでは安倍政権は100万キロワット級のシェールガス火力発電所を何と80基作り、日本列島全体にシェールガスのパイプラインをつくる。発電所の方は間違いなくタービンや重電機メーカーを大きく潤す。ただ図体が大きいから、業績への影響度は少ない。まあそれでもこの種の材料は部品や素材の矢や意外性のある中小型株が大化けするのが常なので、勉強したい。

 LNG基地が八戸、福井県若狭、秋田県由利本庄など続々手を挙げているが、恐らくトクをするのは荏原。コンプレッサーが強い。

 このコラムで以前述べた千代田化工、日揮、巴工業、新東工業、太陽日酸、丸一鋼管、みんな期待先行で株価は上昇済みだ。押し目を待ちたい。大手商社の三井物産、三菱商事、住友商事、伊藤忠商事はそれほど上がっていないが、これはシェールガスが格安でせっかくの権益が利益を出せていないためだろう。

 私は米国での安価なエネルギーに注目している。米国のシェールガスの価格は百万BTU当たり最近4ドル(6倍すると原油価格の水準になる)、日本は19ドル、アジア他国は16ドル程度。だからたとえばクラレ。機能性樹脂ポバールで世界の35%を占めるトップだがテキサス州に工場を新設し20%増産する。

 また信越化学は米国子会社シンテックは塩化ビニールで首位だが原料値下がりで収益力は強化される。株価は少々急騰しすぎたので、やはり押し目待ち。逆に東レは炭素繊維の米国での50%増設待ち。シェールガスの圧力容器は巨大市場なので、3年後に期待は十分だ。

 夢としては燃料電池自動車。シェールガスからは高純度の水素が取れるので、トヨタが2015年に発売するのに私は期待している。

映画「藁の楯わらのたて」とこの上げ相場の本質(第674回)

映画「藁の楯」とこの上げ相場の本質(第674回)

 「藁の楯わらのたて」はただ今ヒット中の三池崇史監督最新作。カンヌ映画祭コンペ部門の公式選出作品だ。大沢たかお、松嶋菜々子主演。犯人役に藤原竜也。

 財界の大物の孫娘が変質者に惨殺された。犯人は8年前にも少女への暴行殺人で逮捕され出所したばかり。行方が分からない。

 財界の大物はひそかに手をまわして、大手全国紙に全面広告が出る。「この男を殺してくれた人に10億円支払います」。人間のクズを殺せば10億円ーと日本中が殺気立つ。未遂者でも破格の厚遇。それならば。

 福岡で自首した犯人を、48時間以内に東京の警視庁に移送しなければならない。SPによAる特別チームが編成され護送が始まるが、次から次へと賞金欲しさにあらゆる人が襲いかかってくる。そのサスペンスがこの映画のキモだ。

 正直言って前半は快調なテンポで、先の読めないスリル満点だったが、後半ダレてしまった。松嶋がどう見ても日頃鍛錬しているSPらしくない。あまりお勧めしない。

 常識では考えられない大手全国紙に全面広告のように、私の永い株式市場とのお付き合いでも、久しく見なかった強い相場だ。

 日本個人投資家協会の木村喜由さんの4月30日付のレターをご紹介する。

 木村さんはTOPIXをギャンアングルというテクニックで分析。このギャン理論というのは占星術と黄金分割など「一日均衡表の米国版」。若林栄四氏のペンタゴンチャートと近縁の関係。

 日経225でなくTOPIXな×は連続性と、時価総額でバランスしている長所を認めたため。

 木村さんは「1000ポイントは重要なフシ目だった」と。

 その通りで、2009年以来何回も挑戦しては、跳ね返されたポイントで、3月10日近辺を木村さんは注目していた。ちなみに、TOPIXの1000ポイントは日経平均1万2000円にあたる。

 現実には3月6日に1000ポイントをつけ、4月2日に一時的にこの水準を切ったが、おおむね続伸、1176まで上伸した。

 「これで9年サイクルまで長期上昇トレンドに転換したことは確実」。つまり新値更新必至と木村さんは言う。

 チャートからは93年6月以来「古今東西、これほど巨大な拡大パターンは見たことがない」と木村さん。

 「いつかはわからないが、上昇パターンの起点1650。(日経平均なら1万9800円)へむかう。いずれは2007年の1823(日経平均2万1800円)を更新する」。

 何とも物凄い強気である。

 ただし、目先は目標達成感があるし、米国株が7月は要注意。素直に下がったら、押し目買い。

 私は米国FRBと日銀が揃ってモーレツな金融緩和をしているのだから、1989年ほどゆかなくても2007年7月の1万8261円はあるのかな、と思い始めた。

 FRBがQEⅢをいつやめるか、だが、バーナンキ議長、イエレン副議長は「労働市場の見通し改善」を資産購入縮小の条件にしている。

 もちろん失業率とか新規失業保険申請件数、民間の非農業部門雇用者数などよく言われる統計もある。

 しかしバーナンキ議長が最も頻繁に引用するのが失業期間、つまり失業者が新たな職を見つけるまでの平均週数である。これは永い間20週がピークだったのか2011年12月に40週。最近好転しているがいぜん35週。

 このほか「u―6」失業率も改善しているがいぜん高水準。これはフルタイムで働く意欲はあってもパートで働かざるを得ない人、職探しを断念した人を含めたもの。2012年の17%より改善しているが、14%で過去の10%未満の水準に比べて高い。

 少なくともこれらの数字が3か月つづけて改善しなければ「早ければ6月のFOMCで」という声もあるが、私は難しいと考えている。

 ヘッジファンドの解約の期限が5月15日、5月19日には米連邦政府の債務上限が来る。悪い数字が出てショック安がなければいいが。

 映画のセリフから。護送され裁判にかかったワルは本当に人間のクズで、死刑判決の後裁判長に聞かれる。「反省し後悔してます。こんな判決ならもっとワルいことをしとけばよかった、と」もっと株を買っておけばよかった、と何年か後に後悔しなければいいのだが。

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