映画「清須会議」とNY新高値と日本株買い・円売りの再開701
映画「清須会議」とNYダウ新高値と日本株・円レートの闘い(第701回)
ただいまヒット中の三谷幸喜監督の新作。時代劇で登場する人物総てが実在し、会議も史実。しかも三谷作品の通例だった哄笑するようなユーモアはあんまり、ない。大変に実験的な映画なのにスリルがあり面白い。
しかも観客は、この会議のあと何が起きたか知っている。それだけに役者の演技合戦が見事。まず一見をお勧めする。これは傑作だ。合戦シーンもなくチャンバラはなおない。ましてやナレーションもテロップもお登場人物の紹介もない。それでいてよく分かり、楽しいのだ。
本能寺の変で信長が死んだあとの織田家をどうするか。筆頭家老の柴田勝家(役所広司)と、光秀を討った功労者羽柴秀吉(大泉洋)が、どう今後の政治を自分に有利に導くか。
ひとりの人物がいなくなって次の時代が始まる。この映画を観て私は今回のバーナンキ→イエレンへのFRB議長人事を連想した。
この原稿を書いている14日ヒル現在、まだ米議会での聴聞会が終わっていないので、恐らく後しばらくしないと詳細は分からない。しかし、一つだけ確かなことがある。
それは現在の米国の金融緩和が、ティパリング必至の声をよそに、かなり永続する、ということ。理由はカンタン。「ティラー・ルール」から「エバンス・ルール」に変わる、とイエレン氏がFRBのレポートに発表しているからだ。
FRBの金融緩和政策の基本は、FFレートの調節である。
FFレートとは日本だと翌日もののコールの金利。これが大昔風に言うと公定歩合にあたり、現在はゼロ金利である。
この決定の仕方はスタンフォード大のジョン・テイラー教授が1992年に提唱して「テイラー・ルール」で広く採用されている。
FFレート=現実のインフレ率+中立の実質金利2%+(現実のインフレ率マイナス目的のインフレ率2%)÷2+(現実のインフレ率-潜在成長率)÷2
この数式でFFレートの誘導目標が決められ、広く行われている。日銀も採用しているはずだ。
ところがイエレン次期FRB議長は「エバンス・ルール」という別の方式でFFレートを決めよと主張している。
このエバンス・ルールとはシカゴ連銀のエバンス総裁が提唱した(当り前だ)。
失業率とインフレ率。この二つで決めよ、というもの。「インフレ率が2・5%以下(現状)なら、失業率が6・5%以下になるまで金融緩和を続けるが、2・5%以上になれば金融緩和を解除)。
イエレン次期総裁は「大幅な需給ギャップが早急に解消しない現状では、このエバンス・ルールを参考にせよ」とした。
日本個人投資家協会の木村喜由さんは、このルールだと適正FFレートはマイナス2・6%であると述べている。これだと今後最低4年間はゼロ金利が続く。
そう見ると最近のNYダウの新高値更新、日本円とドルの為替市場でヘッジファンドが円売りを開始(もちろん)日本株買いもーという一連の市場の動きが説明できる。
日本の場合、5月23日の1万6000円近辺からの大幅下げと円安へのブレーキは、バーナンキ議長のティパリング示唆発言だった。これがイエレン議長でティパリングなし、ならば5月の状態に戻っても不思議はない。
もちろん現時点では1ドル100円は固定し日経平均の三角持合いはいったん下放れると信じている向きは多い。
すでに「円売り日本株買い」と「現状是認、いずれ下がったら――」の2派が戦いを始めた、と考えられる。
そういえば映画の中で秀吉が言う。「これは、いくさじゃ。そう、いくさだ。評定という名の、な」。
この週末、4日間立ちっ放しで故今井満里の展覧会に出ていたので疲れ果て、いつもの週末掲載が出来ませんでした。おわびします。なおこのブログにあったのでーと会場にお見えいただいた方も。会場には上田埼玉県知事も忙しいのに30分も来ていただきました。感謝!!
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