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2014年4月27日 (日)

映画「テルマエ・ロマエⅡ」と私がびっくりしたある指摘(第722回

映画「テルマエ・ロマエⅡ」と私がびっくりした、ある指摘(第722回)

 ローマ時代の浴場設計技師がなんと日本にワープするという奇想天外なアイデアで大ヒットした映画の続編。ヤマザキマリの漫画が原作。大いに笑えるので気楽にどうぞ。女性には阿部寛の裸が、男性には上戸彩のバストが魅力だろう。

銭湯、温泉、指圧、ウオッシュレット、お相撲を含めて日本独特の文化が案外グローバルな内容を持っているのでは―という視点がこの映画のキモだろう。

私が最も信頼している嶋中雄二、三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所長の4月24日付レポートに注目したい。

「観光立国化が日本経済を救う」という題。私はびっくりした。

2014年3月の訪日外国人数は105万1000人で前年同月比22・2%増、単月として過去最高。

昨2013年の訪日は1036万4000人で20%増だったのに続いての記録だ。私は全国を講演して歩いているからわかるが、どこの駅でも外国人が多い。ホテルでも同じだ。

嶋中さんは「旅行業、宿泊業、旅行運送、道路施設提供、自動車レンタル、公園・遊園地等」を観光業として括る。その規模は2012年度と古いが、15兆6000億円。

驚いたことにはこの数字は自動車の16兆5000億円、電機・電子の15兆8000億円に並ぶ。恐らく2013年度か14年度でこれら製造業の主力を抜くだろう。

訪日観光客の政府目標は2030年で3000万人で、一人当たりの旅行中支出は11万2000円。円安メリットもあるし、昨年夏のビザの発給条件緩和も効いている。やはり観光立国に違いない。

大和証券の観光客関連銘柄リストを見ると、デパート株やオリエンタルランド(コード4661)、JR3社、それにホテルの一流どころが入っている。これにカジノ関連でセガサミーHD(6460)、コナミなど。また統合型リゾートの運営に欠かせないショッピングモールの開発・運営で三井不動産(8801)、三菱地所(8802)なども。ご参考までに。どうぞご研究を。

 

オバマ来日で銀座すきやばし次郎で安倍首相が20貫、オバマ大統領が14貫で少なかったとニュースになったら、実はホテルオークラ内の支店でその前に出前をとっていた、とか。なるほど。抹茶アイスと合わせて、日本のおいしいものは、やはりおいしい。

 

TPPの交渉が前進しなかった。もともと妥結しても世界の投資資金が大挙して日本に来るとは思えない。

ただ、靖国参拝以来ギクシャクしていた日米関係は多少は改善したような印象を与えた。円安=株高の流れがピタリと止まったのはあれが原因だったのだから、この方がむしろ大きいプラス材料かも知れない。どちらにしてもこのブログで再三申し上げている通り、今年少なくともあと何か月間かは大したことにならない。個別銘柄に注目したらいい。それも①3年位の長期投資②注文は2回に分けてリスク分散③2倍になって始めて売りを考える、の三原則を守る。

映画のセリフから。主人公が次の仕事を引き受けると事故で死ぬとの予言を聞いて言う。「命を惜しむよりも、すべき仕事に命を賭ける。それがローマ人の誇りだ。」私はマーケットの予測に50年近くをささげてきた。まだまだやる気十分。ヤルゾォー。

 

来週から米国に出張します。4日にはヒューストンにいますが、現地での調査のまとめのため、このブログはお休みします。あしからず。

 

2014年4月20日 (日)

映画「それでも夜は明ける」と株価PKO作戦(第721回)

映画「それでも夜は明ける」と株価PKO作戦(第721回)

 ご存じ去る3月の第86回アカデミー賞作品賞を獲得した作品でスティーブ・マックィーン監督。正直言って出来はイマイチで人種差別問題に絡んで受賞を狙った企画賞ものと思う。これまでアカデミー賞では黒人差別や奴隷制度を正面切って取り扱った作品は、ノミネートはあっても賞はまだなかったから。

 とはいえ同監督前作「シェイム」が傑作だったので、やはり観た。自由黒人のバイオリニストが詐欺にあい南部に奴隷として売り飛ばされ12年間、家族も財産も名前まで奪われて地獄の日々を過ごす。実際にあった話。

 

 南部の農園で主人公は炭のインクで手紙を書き、信用できそうな人に投函を頼む。しかし裏切られ危なくなったので手紙を焼く。紙を燃やす残り火が、無念さを表すように消えてゆく。

 

 4月16日に麻生副首相が衆院財務委員会で公的年金運用について「6月以降に動きが出ると、外国人投資家が(日本株買いに)動く可能性が大きくなる」と述べ、日経平均は420円高で応じた。明確に株価テコ入れを狙ったPKO(プライス・キーピング・オパレーション)だろう。

 

 私はこのPKOは今年中はうまく行かないと考える。ちょうど主人公の手紙のように。外人をアテにした作戦だからだ。

 

 順序として公的年金の株買いの意味を説明しよう。公的年金128兆円(昨年12月末)は年金積立金管理運用独立行政法人が運用している。GPIFと呼ばれ、これに公務員共済など準公的年金が32兆円ある。計160兆円。

 その60%が国内債、外国債が11%。株は日本株12%、外国株12%。

 この運用資産取り分は海外の年金とちょうど逆。株60%、債券35%がノルウエーやカナダ、米カリフォルニア州の平均だ。そこで株式の比重を上げ、デフレ脱却に伴う債券利回り上昇(価格低下)に備えるべきだという議論が行われていた。

従来の見方は有識者会議座長の伊藤東大教授案通り、日本債券35%、外国債20%、日本株、外国株共に20%に改正してで、売買は明年4月から開始。8月頃方針決定と見られていた。6月という麻生発言は随分早い。

 

 GPIFの株買いは8%の比率上昇で12兆8000億円。円売りは外債、外株合わせて18兆円。これで円安=日本株買いの復活が見込めるというのが、麻生発言のココロだろう。

 

 昨年外国人投資家の日本株買いは15兆円。これが日本の個人投資家と金融機関の売り14兆4000億円をカバーして株高となった。日経平均は2012年11月の野田解散時の8664円が、13年大納会の1万6330円へ。外国人が買ってくれなければ1万円も怪しい。

 一方円レートも野田解散時の79円50銭が、去る1月には105円44銭に。これが輸出企業を中心に企業収益を上げ、株高を支えた。アベノミクス第一の矢の異次元金融緩和の成果だ。

 

 さて、PKOの成否だ。安倍=麻生両首脳は昨年末の高値1万6000円ぐらいまでは欲しいのだろう。株高は支持率上昇につながるし。恐らくTPP解決=日銀追加緩和=公的年金の株買いと円安。

 

 問題は15兆円の外国人買いのうち5兆円のヘッジファンド。半分は1月以降の安倍靖国参拝以降に売った。半分残っている。

 アベイズムの方はプーチンの仕掛けでウヤムヤになりかけているが、中国の不安が大きい。ヘッジファンドの運用担当の二人に一人は中国の経済よりも実は日中衝突を懸念している。日本から逃げたいと考えているはずだ。

 

 しかも2015年7月21日には、ボルカー・ルールの完全実施が待っている。米銀のヘッジファンドへの投資も融資も禁止される。

 

 このためジョージ・ソロス氏は顧客から預かった資産のすべてを返還し、現在は自分と家族の資産運用に専念している。追随するファンドも少なくなかろう。

 となると、GPIFの株買いがヘッジファンドの売りを吸収するだけになり、結局PKOは成果なしと可能性も。現に発言後の売買量は急減し、売りも買いも様子見。新規の買い資金が入っている形跡はない。

 

 危ういかな、安倍=麻生のPKO作戦。

 

 映画のセリフから。最後の字幕で云う。「連れ去った二人の男は逮捕され裁判にかけられたが、当時の法律では黒人が法廷で証言することは禁じられていたため、証言以外に証拠がなく、裁判は打ち切られた。」歯がゆい結末だ。PKOもそうならなければ、いいが。

 

 余分な一言。私は2015年以降の長期大幅株高を確信している。しかし、ことしは日光の手前。イマイチと思っている。あんまり期待しない方がいい。

2014年4月13日 (日)

映画「白ゆき姫殺人事件」とNYに始まる暴落と金(第720回)

映画「白ゆき姫殺人事件」とNYに始まる暴落と金(第720回)

 

 湊かなえの50万部のベストセラーの映画化。若い女性観客が6~7割を占め公開後2週興収上位に。中村義洋監督。

  超美人OLが全身をメッタ刺しにされ、その後火をつけられる。同期入社の城野美姫(井上真央)に疑惑の目が。しかし美姫は行方不明。

 TVのワイドショーで、美姫の周辺が取材され、ツイッターでは犯人と決め付けた投稿が続々と。週刊誌ではついに魔女説まで出る始末だ。

 

 ところが意外な犯人の逮捕で城野の無実がわかり、TVではキャスターが頭を下げてオシマイ。週刊誌はひところのナゾをアオッた記事はどこへやら。ネット上では無実の城野のため週刊誌と記者に抗議メールが殺到。いまの日本社会を見事に描いた佳作。ともかく面白いので一見をおすすめしたい。

 

 何かわからないことがあると、ひとつのうわさが無責任に出され、それがどんどんひろがってゆく。TVや週刊誌に書かれるとウソが本当になってゆく。私はマーケットという、噂が支配する怪物をずっと見てきた人間なので、文字や画面になる前の情報を重んじる。噂は結構大事だ。

 

 昨年12月26日の靖国参拝以来、円安と株高の二人三脚が逆回転を始めている。ヘッジファンドが中心だ。

 私は以前から「来年は間違いなく日本株は長期上昇の第二ラウンド開始、だが2014年は要警戒」と述べてきた。

 

 年初から3月末までの世界の株式市場はウクライナ問題、中国経済の不安など弱材料が多いが、日本ひとり負け。下落幅はNYダウ0・7、英FT2・2、上海3・9各%。これに対し日経平均9・0、TOPIX7・6%の大幅下げだ。

 逆に上昇した市場も多く、S&P500はプラス1・7、独DAXはゼロ、イタリア14・4、カナダ5・0、インドネシア11・6各。

 やはりヘッジファンドは①アベノミクス第三の矢の効果不信②消費増税の反動③円安を許さないオバマ政権の意向、その背後には何と言っても靖国参拝。これが大きい。このコラム読者なら先刻ご存じだろう。いくら安倍首相があれは非戦の誓いだといっても、戦後の体制への反逆という見方を否定しきれない。あれは大失敗だった。

 

 私はNYダウの大幅下げが従来は6,7月と見ていたが、先週末から始まったとみている。NASDAQで大崩れしている銘柄が多いし、信用取引の買い残が市場空前。テイパリングというFRBの政策は何と言っても金融引き締めなので、必ず株価にひびいてくる。

 

 そこに「石油の売買代金がドル建てでなくなる」という噂が飛び込んできた。オバマの弱腰外交のツケ回しだ。

 

 シリアのアサド政権に対し、オバマ大統領はいったん決定した攻撃をひっこめた。この結果ロシアはアサド政権を支援し、中東の同盟国イランの影響力(シーア派)は強まる一方だ。

 スンニ派の代表サウジアラビアは米国に厳しい。3月28日G7からサウジに回ったオバマ大統領が、王家を訪問したが、晩さん会を断られ帰国した。

 

 ロシアは米国の存在感の低下に付け込んでまずドイツへの天然ガス代金をユーロ又はルーブル建て、また対中国では人民元を提案。対ロ経済制裁でこのドル離れを現実化させようとしている。プーチンの親友である石油大手ロスネスチ社のトップが推進している。時間の問題、と見てユーロはジリ高だがドル指数はジリ安。

 

 石油代金がドル建てであることは米国の生命線。かつてのサダム・フセインがドルからユーロに切り替えようとして2003年のイラク戦争が始まった例もある。先週のNYダウは1万6026ドルまで下げ、昨年末の最高値1万6576ドルからまだ3・2%下げただけだが、下げの本番はこれからではないか。

 

 「米国にとり不快なことが起きると必ず上昇」する金価格は買いだ。昨年末のオンス1179ドルで私は底値を打ったとみて、誰も買い推奨していないが、一人で強気を言い続けている。

 産金会社の株価は上昇中だし、ETFの減少も止った。何よりもドル安が金価格を支える。日本株?ドル安円高なら、ダメに決まっている。

 

 映画のセリフから。主人公の友人がTV局の取材している男を評して言う。「自分の目の前5センチくらいのところしか見えてねえもんな」。マスコミって薄っぺらなもの。そこをわからなくっちゃ。

2014年4月 6日 (日)

映画「ワンチャンス」と私の待っていた情報②(第719回)

映画「ワンチャンス」と私の待っていた情報2(719回)

 2007年英国の大人気番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」のオーディションで優勝、一躍人気者となったポール・ボッツの物語。

 

 舞台は英ウエールズ。デブで歯並びが悪く内気な主人公はずっとイジメの対象。歌しか才能がなくオペラ歌手になるのが夢。

 

 やっと金を集めてヴェニスの音楽学校に。理事の世界一のテノール・パヴァロッティの前で歌うチャンスをもらえたのに、緊張して声が出ず失敗、退学。

 

 その後も次から次へと不運が続く。虫垂炎、甲状腺腫瘍、交通事故でろっ骨を骨折。せっかく結婚したが仕事は携帯電話のセールス。しがない人生の主人公が、どう幸運をつかむことが出来るか。

 

 本当に永い、永い間の日本経済のスランプだった。私は主人公の不運を思い出した。

 

 株価は89年12月末の3万8915円から、2012年11月の野田解散時の8664円。ここでアベノミクスが宣言され、流れが変わるが、その間に円高と少子化老齢化、デフレが日本の産業をむしばむ。電子工業を中心に韓国は技術を盗み、シェアも取られ、大赤字になった。この間、日銀はまるっきり知らん顔、2012年には「1ドル50円」なんてメチャメチャな弱気が横行していた。

 

 株価が80年代高かったのは、金融機関と事業会社の株の持ち合いで54%もの株が凍結されていたため、これがバーゼル規制で株はリスク資産とされ、「ザ・セイホ」ともてはやされた生保の政策投資はソルベンシーマージン規制でずっと株は売り一方となった。54%(88年3月末)は2010年3月に8%にまで下落。下がるワケだ。

 

 この流れを一変させてくれたのが2012年11月20日のジム・オニールの提唱した「円売り・日本株買いがグローバル最良の投資戦略」という発言だった。

 すぐ応じたジョージ・ソロスは3か月間で90億ドルの巨利を挙げ、2013年3月まで4兆円の外人買いはほとんどがヘッジファンド。9月までの6か月にまた4兆円、外国人は買ったが、恐らくその4割がヘッジファンドだろう。ヘッジファンドは合計5兆6000億円くらい買った。コストは1万1000円より少し下だろう。

 

 昨年12月26日の安倍首相の靖国参拝で、株価は年末の1万6320円、円レートは1ドル105・44銭で天井。円安=株高のストーリーはいっぺんに壊れた。3月まで外国人(主にヘッジファンド)先物を含めて3兆円近く売った。あと2兆7000億円ぐらいの保有になっているだろう。

 

 最近になって円レートは改めて売りなおすチャンス狙いで103~4円になり、株価も1万5000円台を回復した。

 しかしヘッジファンドは「売るために買う」種族。保有株が多少減ったからと言ってとてもとても楽観はできない。日本から逃げ出したい、というのが本心だからだ。「中国」が問題だ。

 

 中国の情勢が容易でないのはだれの目にも明らか。先日の暴動では戦車が15台も動員された。一方オバマの弱腰外交の『成果』で欧州と中東の情勢が不穏な度合いを増す。米国の力が落ちたのでなく、オバマ大統領のレームダック化が早まっているだけなのだが。ウクライナに戦力を送らない米国は、尖閣でコトを起こしても何もしない、と習近平は読んでいるかもしれない。国内で問題の独裁政権が外国で敵を見つけるというのは、歴史上なんぼでも例がある。

 

 中国株じゃ市場は小さくても売れないから、日本株を売りたいと考えているに違いない。

 

 だからこそ公的・準公的年金の株式比率を上げるというのは名案。現在71%の債券比率を下げ、12%の日本株比率を25%に。13%増だと公的年金全体の資産額は明年3月末には160兆円になっているから20兆円を超える購入金額になる。

 

 昨2013年の外国人の日本株買いは15兆円、(これに対し日本勢は14兆5000億円の売り越し!何て情けない!)。20兆円という買いが入ると決まるだけで、ヘッジファンドは売りを止める。中国への不安は残るが、投資のプロのファンドマネジャーたちはその時になってから行動を起こせばいい、と考えるだろう。ここは、ダマしあいだ。

 

 結論。まだ5月のヘッジファンドの中間決算までに、実現益を出したい向きの売りはあるだろう。しかし①公的年金の買い(彼らから見れば大ガモ!)②2015年3月期の企業収益の増益③PERなど株価水準指標は割安④JPX400が公的年金の投資目標、など材料十分。大きな押し目は歓迎だ。

 

 映画のセリフから。パヴァロッティが言う。「テノールは観客の心を盗まなくてはならない。泥棒の図太さがなければ盗めないぞ」。公的年金買いは相場の達人が恐らく助言したのでは。売りの大手をダマすのだから。そのうちにNISAはじめ、国内の買い勢力が強くなってくる。時間かせぎだ。

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