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2014年4月20日 (日)

映画「それでも夜は明ける」と株価PKO作戦(第721回)

映画「それでも夜は明ける」と株価PKO作戦(第721回)

 ご存じ去る3月の第86回アカデミー賞作品賞を獲得した作品でスティーブ・マックィーン監督。正直言って出来はイマイチで人種差別問題に絡んで受賞を狙った企画賞ものと思う。これまでアカデミー賞では黒人差別や奴隷制度を正面切って取り扱った作品は、ノミネートはあっても賞はまだなかったから。

 とはいえ同監督前作「シェイム」が傑作だったので、やはり観た。自由黒人のバイオリニストが詐欺にあい南部に奴隷として売り飛ばされ12年間、家族も財産も名前まで奪われて地獄の日々を過ごす。実際にあった話。

 

 南部の農園で主人公は炭のインクで手紙を書き、信用できそうな人に投函を頼む。しかし裏切られ危なくなったので手紙を焼く。紙を燃やす残り火が、無念さを表すように消えてゆく。

 

 4月16日に麻生副首相が衆院財務委員会で公的年金運用について「6月以降に動きが出ると、外国人投資家が(日本株買いに)動く可能性が大きくなる」と述べ、日経平均は420円高で応じた。明確に株価テコ入れを狙ったPKO(プライス・キーピング・オパレーション)だろう。

 

 私はこのPKOは今年中はうまく行かないと考える。ちょうど主人公の手紙のように。外人をアテにした作戦だからだ。

 

 順序として公的年金の株買いの意味を説明しよう。公的年金128兆円(昨年12月末)は年金積立金管理運用独立行政法人が運用している。GPIFと呼ばれ、これに公務員共済など準公的年金が32兆円ある。計160兆円。

 その60%が国内債、外国債が11%。株は日本株12%、外国株12%。

 この運用資産取り分は海外の年金とちょうど逆。株60%、債券35%がノルウエーやカナダ、米カリフォルニア州の平均だ。そこで株式の比重を上げ、デフレ脱却に伴う債券利回り上昇(価格低下)に備えるべきだという議論が行われていた。

従来の見方は有識者会議座長の伊藤東大教授案通り、日本債券35%、外国債20%、日本株、外国株共に20%に改正してで、売買は明年4月から開始。8月頃方針決定と見られていた。6月という麻生発言は随分早い。

 

 GPIFの株買いは8%の比率上昇で12兆8000億円。円売りは外債、外株合わせて18兆円。これで円安=日本株買いの復活が見込めるというのが、麻生発言のココロだろう。

 

 昨年外国人投資家の日本株買いは15兆円。これが日本の個人投資家と金融機関の売り14兆4000億円をカバーして株高となった。日経平均は2012年11月の野田解散時の8664円が、13年大納会の1万6330円へ。外国人が買ってくれなければ1万円も怪しい。

 一方円レートも野田解散時の79円50銭が、去る1月には105円44銭に。これが輸出企業を中心に企業収益を上げ、株高を支えた。アベノミクス第一の矢の異次元金融緩和の成果だ。

 

 さて、PKOの成否だ。安倍=麻生両首脳は昨年末の高値1万6000円ぐらいまでは欲しいのだろう。株高は支持率上昇につながるし。恐らくTPP解決=日銀追加緩和=公的年金の株買いと円安。

 

 問題は15兆円の外国人買いのうち5兆円のヘッジファンド。半分は1月以降の安倍靖国参拝以降に売った。半分残っている。

 アベイズムの方はプーチンの仕掛けでウヤムヤになりかけているが、中国の不安が大きい。ヘッジファンドの運用担当の二人に一人は中国の経済よりも実は日中衝突を懸念している。日本から逃げたいと考えているはずだ。

 

 しかも2015年7月21日には、ボルカー・ルールの完全実施が待っている。米銀のヘッジファンドへの投資も融資も禁止される。

 

 このためジョージ・ソロス氏は顧客から預かった資産のすべてを返還し、現在は自分と家族の資産運用に専念している。追随するファンドも少なくなかろう。

 となると、GPIFの株買いがヘッジファンドの売りを吸収するだけになり、結局PKOは成果なしと可能性も。現に発言後の売買量は急減し、売りも買いも様子見。新規の買い資金が入っている形跡はない。

 

 危ういかな、安倍=麻生のPKO作戦。

 

 映画のセリフから。最後の字幕で云う。「連れ去った二人の男は逮捕され裁判にかけられたが、当時の法律では黒人が法廷で証言することは禁じられていたため、証言以外に証拠がなく、裁判は打ち切られた。」歯がゆい結末だ。PKOもそうならなければ、いいが。

 

 余分な一言。私は2015年以降の長期大幅株高を確信している。しかし、ことしは日光の手前。イマイチと思っている。あんまり期待しない方がいい。

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