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2014年8月 9日 (土)

2014年8月号「選択」 オバマ暴落とQEⅢ

選択」2014年8月号原稿

NY市場「オバマ暴落」近しーQEⅢ終了で弾けるバブルー

今井澂

 「何しろオバマは戦後最悪、最低の大統領と、世論が、今や大声で言い出した。国内問題でも国際的問題でも、米国現政権が何もできないと、どんな事件が勃発するかわかったもんじゃない。そこに1987年のブラックマンデー級の下げがあれば、まあ世の中は“オバマ暴落”と呼ぶだろうね。」

 問題は「いつバブルが破裂するのか」だけだというこの人は有力ヘッジファンドの運用担当者。

これまでの運用成績は?と聞くと「実は市場平均に負けた」。

 半分以上の大手ヘッジファンドは年前半、運用に失敗している。大寒波による米国経済の躓き、ウクライナなど悪材料続出にもかかわらず、シェールガス革命の影響や米国企業の積極的な自社株買い、それにもちろんQEⅢによる充分は資金供給の寄与がNYダウは1万7000ドル、S&P500は2000ポイント寸前まで上昇した。売り中心のファンドに利益が出るはずがない。

 しかし、早ければこの8月が転機になり、上昇相場に変調が来る。こう見て手ぐすね引いている投機筋は多い。

 理由の第一は、例えば有力な市場のオピニオン。リーダーの弱気転換。たとえばPIMCOの債券王ビル・グロス氏で7月初めには米国株はバブルではない、と主張していたが、7月下旬に「10月末に予定されるQE3」の終了が、8月に株式市場の波乱を引き起こすかもしれない」とした。

 またゴールドマン・サックスもほぼ同時に大手顧客へのレターで「現時点のNYかアブは30から40%割高。2014年末のS&P500の目標値をこれまでの2050から1900に引き下げる」と述べた。

 さらにイエール大学のロバート・シラー教授は過去10年のPER平均の17倍の適正地に比べて、独自の算出方法で現時点は26倍。バブルの判定25倍を上回っている」と警告した。

 従前から暴落を主張し続けてきた著名投資家マーク・ファーバー氏の「(11日で25%も下落した1987年のブラック・マンデーを上回る」としている。氏は破滅博士(ドクター・ドゥーム)と呼ばれている弱気筋の代表格だが「過去2年間NY株はほぼ1本調子上昇を続け、11%を超える大きな調整はなかった。次の下げは極めて悲惨なものになる」とCNBCで述べた。

 そのきっかけは、やはりオバマ政権の無力化が引き起こす国内外の問題点。原油価格上昇も、と。

 第二の「変調」予測の背景は、何といってもQEⅢの終了時期が迫っていることだ。

 8月下旬には避暑地ジャクソンホールにFRBを含め世界の中央銀行総裁会議があり、当然イエレンFRB議長も記者会見を行う。また9月にはFOMCが開催され10月のテイパリング終了に向けて地ならしが始まる。これで当初850億ドル、現在350億ドルの債券の購入は10月にはゼロになる。

 もちろんイエレン議長が、市場にネガティブな結果を導くとは考えられない。これまでの株価上昇はFRBは米国経済の順調な拡大を見極めてからテイパリング後の展開を行うだろうという市場の信頼感があった。イエレン議長の方も自分のハト派的なイメージに乗ったソフトな説明を続けている。

 「それでもテイパリング完了、利上げ見当が始まれば、FRBは市場から流動性の吸収が必要。利上げの効果が出ないからね。」

 たしかにこのファンドマネジャーの言う通り、恐らく来年にはFRBは利上げの前に民間金融機関がFRBに亜づけている2兆6000億ドルもの超過準備を吸い上げる。いわば「金欠」の受胎にしないと利上げは出来ない。

 では一気に巨額な流動性吸い上げのため、FRBが自分で保有する国債や資産担保証券を市場に売却できるか。出来はしない。長期金利は急伸、株価は暴落し影響が大きすぎる。

 資産を徐々に減らし、超過準備が余り減らせない中で利上げが可能な方法が、ひそかにFRB内部で三つ検討されている。「まあ三つ併用でも開始されれば株安だがね。発動は9月か10月が最も早い線だろう」。

 その三つの第一はリバース・レポ。市場の資金を吸い上げるためFRBが保有する債権を市場に貸し出す。これだと長期金利の上昇への影響は極めて軽度。これにターム・デポという第二の方法を併用する。

 これは現在民間金融機関がFRBに当座預金(金利ゼロ)の形で預けられている準備預金を定期預金(金利は付く)にしてすぐに引き出せないようにする。この方法の難点はFRBの民間金融機関への利益供与といった批判が出やすいこと。従って付与する金利に制限がつく。

 この二つに合わせて第三の方法が取られる。それは「逆ツイスト・オペ」。これまでfrbは短期国債を売却して長期国債を買うツイスト・オペを推進しておりFRBの手持債券は満期の長いものに偏っているので、平準化をはかる。

 「FRBはこの三つの手法で利上げをはかる。さもないと景気拡大で銀行は巨大な準備預金を貸し出しに回し、結局インフレ再燃につながる」と別のFEDウオッチャーが言う。

 しかし、ヘッジファンドの運用担当者が手ぐすね引いているのは、やはり市場の混乱必至と見ているからだ。

 現在NY市場は金融緩和が行き過ぎTも過度のリスクテックが一部で起きている。これはFR備エレン議長も警告している通りだ。

 本来なら質的に不安のあるジャンク・ボンドや、つい先年まで財政危機で金利が急騰していた南欧諸国の国債が明らかにバブルと言われても仕方ないほどの低水準にある。もちろん株式市場でも同じでNYダウが新高値を更新しているのは周知の事実である。

 にもかかわらず市場のボラティリティ指数VIXは市場がリスクに対する恐怖心をどの程度持っているかを示すものだが、」リーマン・ショック直前のいわばバブル期並みに低下している。その前提は、長期間ゼロ金利つまり超金融緩和が続くという市場の確信だ。それがQEⅢの終了時期接近で揺らぐ瞬間、NY株式市場は「オバマ暴落」を起こすだろう。これが投機筋の、これまた「確信」である。

 筆者がワシントンでのある情報筋に聞いたところでは「オバマ大統領が内政、外交にわたり“漂流”し始めたとする見方が広まっている。レトリックと政治的得点優先で、現実的でなく賢明でもない。6月には大手大学の「オバマ氏は戦後最悪の大統領」という世論調査が出た。

 主要政策別にみると不支持率が支持率より高い。外交は不支持率57%支持率37%、経済55%・40%、医療保険58%・40%、テロ対策51%・40%である。何かのきっかけで株式市場が政治不信を織り込み始めるかもしれない。

 NYダウの下げはどの程度だろうか。前記したゴールドマン・サックスは少なくとも30%を示唆している。時期だけが問題、というべきか。

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