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2014年9月27日 (土)

映画「猿の惑星(新世紀)」と急変したHFの円投機(第742回)

映画「猿の惑星(新世紀)」と急変したH-Fの円投機(第742回)

 1968年のチャールトン・ヘストン主演の大傑作は衝撃的なラストシーンが忘れられない。70年代にかけて5本もシリーズ化され、今回の新シリーズは5億ドルも興行収入を挙げた[創世記]に次ぐ。前回作以上の出来栄えだ。中身が深い。

 

 ウィルスのため絶滅寸前の人類は発電施設を使いたい。そこで猿の世界の支配者シーザーに申し入れ、二つの世界は共存。ところが兵器が見つかり好戦的なナンバー2猿のコバが権力を求めシーザーを排除し人間を閉じ込め支配を強めようとする。人間側も反発、対立が激しくなってゆく。

 

 先週のこのコラムで私はヘッジファンドの円安日本株買いの進撃をお伝えした。気の早いマスコミは早くも「1ドル120円は目と鼻の先」(週刊新潮10月2日号)という特集記事まで書いている。

 

 しかし、しかしである。円とドルの関係を支配しているヘッジファンドは、ごく目先は円売り玉の利食いに転じている。シカゴ為替市場の円買い円売りの大口投機玉の推移を示そう。(単位 1000枚)

        円買い    円売り    差引き

8/26   19      122     103

9/2    15      132     117

9/9    17      117     100

9/16   37      120      83

  

 8月下旬にはまだ1ドル102円だったものが先週に109円になった。そこそこの利食いは、ミセス・ワタナベつまり日本のFX参加者の円売りドル買いを利用して、まあブツけたに違いない。映画で平和の共存の時代が急回転したのに似ている。

 

 そこに安倍首相の「円安は地方経済には悪影響」という発言が飛び出した。一国の首相が為替のことを言うのは極めて珍しい。まさか、と驚きつつ喜んだのはヘッジファンドのマネジャーたちだろう。援護射撃そのものなのだから。

 ただし、このヘッジファンドの買い戻しによる円高が大幅なものとは思えない。何といっても米国は量的緩和終了、来年はゼロ金利解除になるし、日本の方は日銀総裁が「物価目標が達成されなければ追加緩和する」と発言した。大勢はドル高円安に決まっている。

 

 ただ、ごく短期では円安日本株買いが逆回転している。寄り付きの外国人買いでは、木、金と買い越しだったが、ザラ場では、売り越しと見ている。

 ちょうどNY市場も、アリババが上場直後とて利食いが入り小安い。ただし木曜日は大きく下げたがこれはタカ派の連銀総裁の批判的な発言やアップルの新製品の悪評のため。すぐほかの地区連銀総裁がカバーし、金曜はかなり大幅に反発した。

 

 結論。回転の速いヘッジファンドの先々週までの円売り日本株買いの反対売買。どこまで続くか。9月末まで、と見るのが常識的なところだろう。私の取材したところ、買いたい弱気だと思う。対米輸出比率の高い銘柄の押し目買いをおすすめしたい。建設の安いところも魅力的だ。

 

 いつもなら映画のセリフから、なんだが今回の猿の惑星はあんまり、いいのがない。そこで、昔々に私が合コン的なパーティでバカ受けしたジョークを。あんまり品が良くないけど。

 「なぞなぞ!チャールトン・ヘストンと猿がオナラをした。片っ方のだけクサかった。どっち?」

 「ワカンナーイ」

 「答えは猿。サルのわ、くせえ!」お粗末でした。

 くだらない話のついでに私が英語でやって、マーチン・フェルドシュタイン教授が笑い転げて椅子から落ちたのを。

 「日本のセイホが英国でグローバル運用のためのファンドマネジャーを雇うため広告を出した。三人の候補者。雇い主は希望する年俸を聞いた。

 第一番目は日本人。5万ポンド。どうして、と聞くと「私はロン・チョンで本国にいる妻と息子二人が4万ポンド、私は1万」

 「次はアメリカ人。10万ポンド。理由は離婚した妻二人に8万ポンド。私は2万」

三番目は香港からきた中国人。15万ポンド。理由は?

 5万ポンドは採用してくれたら、あなたにリベート。私は5万。家族が多いから。

 「それじゃ残り5万は?」

 「有能な英国人のマネジャーを私が雇い、私は寝て暮らす」。

 私はこれをエディンバラで話した時、「イングリッシュ」でなく「スコティッシュ」にしたら大ウケした。ただし国民投票ではあの町の人々は、英国残留に票を投じたらしいが。

 

 

2014年9月20日 (土)

映画「舞妓はレディ」とスタートした円安・株高とNY(第741回)

映画「舞妓はレディ」とスタートした円安・株高とNY(第741回)

 私が日本屈指の名監督と評価している周防正行氏の新作。観る者みんなを明るい気持ちにさせるミュージカルで、また観たいなあ。DVDを待とう。

 映画の題が示す通り「マイ・フェア・レディ」がもとネタ。鹿児島弁と津軽弁を話す少女が京都の花街のお茶屋の老舗に「舞妓さんになりたい」とやって来る。その場に居合わせた言語学者が興味を持ち、訛りを直して見せると宣言する。

 主役の少女が実にいい。800人から選択されただけに可愛く歌唱力があり踊りもうまいし、女将役の富司純子も素晴らしい。音楽もいい。思わず笑ったのは「京都の雨は京都盆地に降る」。

 

 京都の花街は「一見(いちげん)さんお断り」。外界と隔絶されたプロの世界だ。投資の世界ではヘッジファンドだろうなあ。

 

 先週14日付740回のこのブログを、私のファンの方は見直してほしい。

 円ドルレートで110円、日経平均で1万7000円と明確に目標値を示し、その理由としてヘッジファンドの円売り日本株買いが9月第2週から本格的に開始された、と書いた。

 9月18日(金)で、もうこの見通しどうりの展開なことが分かったはずだ。

 

 新刊の拙著「2,014-2015 日本経済逆転のシナリオ」の版元のフォレスト出版を通じてWEBで読者や希望者の方々に有料で「今井澂の相場ウラ読み」を毎週末にご提言申し上げている。20分以上のご説明とご質問への回答(90%以上の質問にお答えしている)。そこでも自信を持って為替・株式市場に転機が来ていることを強調した。

 

 先週のブログで私はアリババ超大型公開を材料としてNY市場が「買い」だと述べた。これも的中。7月の高値を抜いた。

 

 そうなると4600億ドル以上の信用買い残高が回転が効いてくる。利食いで下押ししても、株で儲かったお客さんは逃げ出さないものだ。

 

 以前から「何の理由もないが」と前置きしてNYダウが「99%の人が2万ドルを確信した瞬間、1万8000とか1万9300とか、そこらで天井」と私は申し上げてきた。理由はない。ただのカンだ。

 長期金利、つまり10年物米国債金利がじり高とは言えまだ2・6%台で暴落が起きる経験則の3・3%までまだ十分に間がある。米国の双子の赤字が減少、特に財政赤字が減っているのが効いている。QEⅢが完了しても米国債の需給が弱気筋の言っていたように悪化していない。

 

 もちろん円レートも日経平均もNYダウも、毎日毎日上昇し続けるわけではない。反動安の日もあるだろう。ヘッジファンドが短期で利食うことも。しかし、この動きはまだ始まったばかり。変な弱気の意見は聞かないことだ。

 

 映画のセリフから。「一見さんお断り」の歌詞「ご紹介ない方、堪忍どす。よう知らんお人は入れしまへん。好きも嫌いも知って 始めて おもてなし」。おおきに すんまへん おたのもうします。

 

 例によって個人的な思い出を。日本で初めてのミュージカルと銘打って当時の東宝菊田一夫専務がプロデュースし、江利チエミ、高島忠夫、益田喜頓で上演したとき観た。2回か3回観たと思う。NYでは映画でもヒギンス教授を演じたレックス・ハリスンのブロードウエイの舞台を観た。踊りがうまいのにびっくりした。イライザを誰がやったのかは覚えていない。ジュリー・アンドリュースはこれで名を挙げたのだが、この時は出ていなかった。オードリー・ヘップバーンの映画は汚れ役が似合わなかったなあ。音楽が楽しく駄作がない。そろそろ帝劇でやってくれないか。

 

 

2014年9月14日 (日)

映画「フライト・ゲーム」と始まったヘッジFの仕掛け(第740回)

映画「フライト・ゲーム」と始まったH・Fの仕掛け(第740回)

 航空パニック物はハズレがあまり記憶にない。小説だと「大空港(アーサー・ヘイリー)」、映画の方は何本も思い出す。今回は「ノン・ストップ」の原題の方がずっといい。ゲームじゃあないから。結末が少々平凡でガッカリさせられるが。スリルとサスペンスは十分で、おすすめできる。

 

 主人公はかつて警官で現在はスカイ・マーシャルつまり航空機に身分を隠して搭乗しテロや犯罪を防ぐ。JFKからロンドンへの便に乗ったら、フライト中にスマートフォンに見えざる脅迫者から20分ごとに一人、機内にいる誰かを殺す。いやなら1億5000万ドルを用意しろ、と。

 

 機内のどこかで自分は監視され、おどかされている。なにをしてもすぐメールでの脅迫。スリル満点のシチュエーションだ。次の手は全く読めない。

 

 ヘッジファンドが一斉にある戦略を開始するとき、開戦直前はもちろんマル秘だ。映画と同じ。

 

 今回は9月第2週。例によって為替市場から開始された。円ドルレートは105円から107円へ急伸。

シカゴ通貨市場での円売り玉は7月頃の7万枚が最近統計の9月2日の12万枚に増えた。同時にドルの買いオプションも。しかもヘッジつきでなくアウトライトいう買いっ放しの買いだ。腰の引けたスイングでなく大振り。またこの9月第2週の円安ドル高は日本時間の午前4,5時に進行している。これだと1ドル110円以上を明らかに狙っている。

 

 日本株の方は9月11日にシンガポールのSIMEXで日本市場のはじまる前に前日比260円高の気配値をつけた。2週間続けて(と私は想定するが)現物も買っている。

 

 知り合いのヘッジファンドの担当者は「今度、GPIFの担当大臣は安倍の希望している株高に協力するんだろう?」と言ってきた。「もちろん」「なら昨年12月30日の1万3620円より上が目標値になるに決まってるじゃないか」

 となると110円、1万7000円が年内もしくは年度内の目標値になる。それがヘッジファンドの狙いだろうならば、公算大だ。

 

 私の見るところ、二つ、大事と思われるポイントがある。

第一. ヘッジファンドは「売るために買う」種族が運用している。私が予想しているベンガジゲートが騒ぎになれば、NY株は売られ、ドル高は終わり。つれて東京も(一時的と思うが)株安だろう。あと日本の実体経済が悪いとか、売り材料はなんぼでもある。つまり今回の円安=株高の動きは両刃の剣、ということだ。

第二. これはヘッジファンドの連中には、売り仕掛けをいつの日にか開始したとき、GPIFを中心に買い支えするかどうかのテストの準備の買い、ということ。GPIFは運用をパッシブ、つまりJPX400などなどの指数通りの組み入れファンドが中心のはずだ。

第三.  

  まあ要警戒だが、私は19日のアリばば公開に注目している。2兆円を超える超大型公開で、NY市場では2008年のVISAや2010年のGMなみ。資金調達のため公開日の前は市場は弱く、公開後は上昇する。公開日直後の何日から初値の高寄り後利食い安はあるが、その後急上昇が何ヵ月か続く。ベンガジゲートは先の話だし、この公開は経験則からいうと買いだ。

 

 ベンガジゲートの前提となる11月4日の米中間選挙での共和党の上院勝利の公算は大きくなっている。

 私はギャラップの世論調査を必ず見ている。9月7日付の「どちらの党がテロに対し米国を守ってくれるか?」で、共和党55%、民主党32%と大差がついた。どちらの数字も片やここ10年で最高と最低。ちなみに2013年9月には同率45%だった。先行きのワシントンは嵐含み、と見てきたが、これは変わらない。

 

 映画のセリフから。主人公マークスが機中で知り合った美人とのやり取り。「飛行機は嫌いだ。ただ身を任せるのは耐えがたい。」「人間は身を任せるしかないの。もともと思い通りにできることなんて、この世にはないわ」。外国為替市場でのドル円レートも、東京株式市場も。外国人に握られているんだから。どうしてもヘッジファンドの動きをよく見なくては。

 

 つまらない話だが、オマケ。映画の中で現役のNYの警官が出てくるがこの俳優が米国TVで20年近く続いている名物番組「LAW&ORDER」の警官役。思わずニヤリ。

映画「フライト・ゲーム」とはじまった

映画「フライト・ゲーム」とはじまった

映画「フライト・ゲーム」とはじまった

2014年9月 7日 (日)

映画「テロ。ライブ」と日本株、NY株(第739回)

映画「テロ、ライブ」と日本株、NY株」(第739回)

 ここ何年も韓国映画という名が付くと絶対に観なかったが、映画評論家の前田有一さんの批評で≪必見≫と勧められたので。

 その理由も面白い。セウォル号の事故で運航会社、海事警察、はては大統領まで信じられない無責任体制が露呈した。その韓国の悪しき国民体質を直前に予見していた、と。

なるほど、面白そうだ。観たら確かに出来栄えは上々。

 

 不祥事でTVからラジオに左遷された元国民的アナウンサーのヨンファが、やる気のない生放送しているところに爆破予告の電話。いたずらといったん切ったら、局の前にかかる大橋が爆破テロ。ヨンファはこの前代未聞のスクープを利用してカムバックを狙う。犯行動機に韓国のあまりにひどいブラックで官僚的な体質が背景になっている。セウォル号事故で明らかになった国民の国家不信がありありと見える。

 

 まったく展開を予想できないこの映画のように、政治も経済も市場でも予想外の動きがずいぶん出てきた。

 

 まず内閣改造。671日も大臣が一人も変わらず、入閣適齢期の議員が60人もいた。前任の野田内閣が1年4か月の間に3回も改造したのと何という違い!ただ党四役も含めて内容、人選を見ていると、早期の解散・総選挙という陣容じゃない。歳川さんはまだこの見方を捨てていないらしいが。

 

 そして経済。がっかりしたのは嶋中雄二・景気循環研究所長が7-9月の成長率予想を7・1%から4%台後半に修正したこと。これでは4~6月のマイナス6・8%から回復できない。8日には第二次で下方修正が発表されるだろうし。まあ麻生さんが補正を言い出したから、恐らく株式市場は催促に入るだろうが。4~6の消費はマイナス19%とひどい。

 日銀の追加緩和もあり得ない話ではなくなった。東大の物価月次指数が今週マイナス1%になり目標達成が怪しい。

 まあ来週は12日のメジャーSQがあるし、経験的には裁定ポジション解消で株価は安い。州の後半に再来週の株価上昇を見込んで、建設株の安いのを狙うといい。

 

 一方NY。私がびっくりしたニュースはウォールストリートジャーナルが報じた「フードスタンプ受給者数が減少」。2年前のピーク時の4780万人が、最新の5月に4620万人に。理由?本当に失業者が職を得始めたから、でしょう。

 ドル高は当然。これにECBの為替安を狙った金利引き下げが加わったんだから、ドル対ユーロは安くなり、つれて円対ユーロも円高にはなった。しかし円は対ドル105円台になりシカゴ市場へヘッジファンドの円売りが急増を始めた。

NYダウは実体経済のウラ付けがある。アリババの大型IPOがあるので7月の1万7150を来週抜くかどうかわからないが、いずれ抜くとみる。NY市場は11月4日の中間選挙後に起きるオバマ弾劾騒動まで一高一低はあっても上昇する公算が大きい。

私はテクニカルアナリストの方々が云う「もう終わりだ」とか、市場関係者の言う「バブル説」も、また「自社株買いで押し上げられた説」も、それぞれもっともだと思う。

 しかし、シェール革命のおかげで実体経済も、財政赤字も好転、貿易赤字問題もいい見通しとなれば、海外からの投資で米国長期債の低金利は変わらない。ワシントンの政治は大問題だが。

 99%の人がダウ2万ドル目標を信じた途端、1万8900ドルとか1万9200ドルとかで天井をつける―。時期はわからないが。これは私のカン。理屈じゃない。

弾劾説とどう符合させる?騒ぎを来年初めと見ると市場は11月か早ければ10月に織り込み始め、現実に辞任となればまた別の話、となるだろう。辞任してから急落が始まったニクソンの時とは少し違うのでは。

 

 今週のこのブログは本当は「ケープタウン」でも良かった。故吉野俊彦・山一証券経済研究所理事長と独IFO研究所の国際セミナーに行った。当時在籍していた日債銀では相当自由が利いて出張を許してくれた。会場のケープタウンの超高級ホテルの数百米先に難民のトタンとベニヤの何十万人もいるスラム街があり、機関銃を乗せたジープが何台もホテルを護衛していた。吉野夫人とセミナーの幹部だけの会合の時に美しい植物園をご案内したのを記憶する。その植物園が映画で出てきた。なつかしい。

 この時セミナーが終わってヨハネスブルグに一人で行き、金鉱山の地底1000メートルの採掘現場を見せてもらった。その折、自費で拳銃をベルトにつけたガードマンを雇って市中見物した記憶がある。大男だったなあ。

 

映画のセリフから。テロの犯人が言う。「俺達作業員3人は働いている最中の事故で川に放り出されたが、誰もおエラいさんの護衛にかまけて助けに来てくれなかった。謝罪してくれ。」セウォル号の被害者と同じ。

2014年9月 4日 (木)

「選択」2014年9月号オバマ弾劾

「選択」2014年9月号

オバマ「弾劾」の現実味

「ベンガジゲート」暴落に備える投機筋

今井澂

 

 「オバマ政権は弾劾問題が大きな騒ぎになればなるほど選挙に有利と、誤認しているんじゃないの?確かにモニカ・ルインスキー問題でクリントンが弾劾された時、98年の支持率は上昇したし、下院議席を五つ増やした。しかし今回はリビア領事を含め四人が死んでいるんだぜ。」

 7月下旬になってミシェル大統領夫人を皮切りにホワイトハウスが一斉に弾劾の恐怖を吹聴し始めた。これに対し共和党が支配する下院は、ベイナー議長にオバマ大統領の憲法侵害で最高裁に提訴する権限を与える決議を、7月30日に可決した。

 この決議に先立って同議長は「共和党には弾劾計画はなく、この説は中間選挙で勝つための“汚い手口”」だ」と述べた。しかし選挙後、共和党が多数を占めれば弾劾が始まるのは必至、と見られている。

 株価の方は7月31日に300ドルを超える下落があった。その後のNYダウは上昇する日はあっても翌日はすぐ下がる、という弱気相場の様相を濃くしている。

 「大手の機関投資家は今やここ数年で最高のキャッシュ・ポジションを持っている。またジョージ・ソロスは売り方オプションを7倍に増やした。ニクソン辞任のウオーターゲート事件を覚えている投資家はみんな一斉に逃げ腰になっている。もちろん11月4日の中間選挙で下院だけでなく上院も共和党の多数を占めることが前提だがね」

 ある大手ヘッジファンドの運用担当者はこう打ち明ける。中間選挙で6議席共和党が取れば過半になるが、選挙のプロの予想は「支持率50%以下の大統領の中間選挙は“必ず負ける”」。ウォール街での賭け率は8対1で11月下旬から弾劾が表面化する」。米CNNの8月下旬の世論調査では米国民の33%が「オバマ大統領の弾劾裁判に賛成しており、クリントン時代の29%を上回った。

 仮に弾劾裁判が上院で開始となれば、ウォーターゲート事件のように「騒がれているうちは株価は売られる日が多くなり、辞任となれば30%は下がった」記憶がよみがえる。共和党支持者の57%は当たり前だが民主党支持者でも13%が弾劾賛成というから事態は容易でない。

 では、何が弾劾の理由なのか。

 「一つは2012年9月11日のベンガジゲート。第二が現在問題化している違法移民への恩赦問題で、どちらもきわめて重要だ」。順序立てて説明しよう。

 ベンガジはリビアの東部の大都市で2012年に駐リビア米国領事を含む四人がアルカイダにロケット弾で殺害された。

 ところが11月に再選を狙っていたオバマ政権は、前年5月にビン・ラディン殺害に成功しアルカイダの脅威は去ったと宣伝していた。このため公式には「ユーチューブに掲載された反イスラム映画への抗議活動が暴徒化し、領事館が襲われた」とした。この虚偽の報告はオバマ大統領が当時のヒラリー・クリントン国務長官に命令して行われた。これがウォーターゲート事件と共通しているためベンガジゲートと呼ばれている。この事件の情報公開が裁判所命令で行われ、下院に5月から特別委員会が設置されていた。

 折も折、6月に「血の確執」という本が発売されNYタイムスのノンフィクション部門のベストセラーになった。これはヒラリー・クリントンの主要スタッフからの取材を中心とした本。内容を見ると、領事館襲撃は18時間前に予告され、事件後犯行声明も出ている。また当時デモはなかったし、領事館から再三にわたり警備強化が求めていたのが無視された。また虚偽の報告公表の大統領による強制も書かれている。ヒラリーの反対にもかかわらず、である。

 これでは特別委員会もスタッフやヒラリー・クリントン前国務長官を証人として喚問せざるを得ない。

 なぜヒラリーがこの本の出版を容認したのか。それは2012年にオバマが2016年の大統領選にヒラリーを応援すると約束していたのを反古にしたからだ。「確執」という題の所以だ。

 オバマ政権が叩かれる背景はこれだけではない。

 米内国歳入庁(IRS)が保守系の政治団体に対し税審査を故意に厳格化していた問題、退役軍人の医療が公表されている水準より著しく劣る問題(VA)、さらに司法当局がAP通信社の通話記録を秘密裏に入手していた問題。すべてここ3,4か月の間に表面化し、これらが「オバマは戦後最低の大統領」という評価につながっている。

 しかし、ベンガジゲートと並ぶ最大の問題は違法移民に対する恩赦問題だ。

 ホンデュラス、グアテマラ、エルサルバドルなど中央アメリカからメキシコ経由で違法に米国に入国する未成年者が急増している。14~17歳の子供で「コヨーテ」と呼ばれる運び屋が入国させ、昨年まで年7000人程度だったが今年すでに6万人。母子で入国する移民も今年4万人。母国でギャングに追われていると言えば強制送還を免れる。

 オバマ政権はこれらの未成年、母子を一時的に国境付近の収容所に入れている。その後バスで親族のいる街に送られるが、いない場合は全国各地の学校や軍事基地や教会にバラまかれる。役所からフードスタンプ(生活保護)のプリペイドカードをもらって食料を買って過ごす。

 問題は地元の政治家や住民たちには一切通告なしで強行していることだ。

 これまでは違法移民はメキシコと国境を接する州の問題だったが、このオバマ政権の強硬姿勢で全米の問題となった。ギャラップの世論調査によると、不法移民を米国の政治経済の大きな問題とする意見は5月には3%だったが8月には15%で第2位にはねあがった。ちなみに第一位は「ワシントンの政治」である。

 どうして大統領令ひとつでこんなムチャなことがまかり通っているのか。ゾーニング法で住居、商業などの地域に一昨年、人種の均等化条項が入ったのが曲者で、連邦法が優先されるので州などは口をはさめない。

 民主党としてはラティーノ(中南米系の米国民)の政治団体は同党支持だから違法移民の増加は好ましい。米国には1100万人の違法移民がいるが、オバマ大統領は「人道的な見地」から500万人を恩赦して居住権を与えることを検討している。また7月14日には「オバマケアに加入した違法移民には恩赦が与えられる」という新規定を発表した。これらの一連のオバマ政権の姿勢を憲法違反として下院議長に提訴権限を与えたのが前記した7月30日の決議なのである。

 カギになる中間選挙だが、共和党が下院で議席を増やして多数を維持し、上院でも多数党に返り咲く、と選挙専門家や大学の有権者調査が予想している。

 すでにモンタナ、サウスダコタ、ウエストバージニア州で民主党の議席が奪われるのは確実。両党が互角に戦っている「トス・アップ」州が6,7州あり、そのうち三州とれば、共和党が過半になる。

 「オレたち運用担当者は①S&Pの売りオプションを買う②ユーロを売る③ジャンク・ボンドを売る。日本株?ワシントンの政治混乱は世界中どこでも地政学リスクが起こるということから、あんまりやりたくないね。現金を増やしておくのがいいのはわかってるんだが、それではクライアントに高いリターンを差し上げられないしね。つらい時期だな。いけそうな成長小型株を探すしかないね」

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