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2014年10月26日 (日)

映画「イコライザー」とボラタイルな市場対応策(第746回)

映画「イコライザー」とボラタイルな市場対応策(第746回)

 80年代のTVシリーズ「ザ・シークレット・ハンター」の映画化でデンゼル・ワシントン主演。世の不正を完全に抹消する闇の仕事請負人の物語だ。相手はロシアン・マフィア。

 主人公は元CIA。まだ幼い娼婦がヒモに痛めつけられたのをきっかけに、静かな生活から殺人マシーンに変わってゆく。その殺し方は勤め先のホームセンターに置いている金槌とか机の上のコルクスクリュー。ショットグラスなど。

 読書が好きだ。ヘミングウエイの「老人と海」がきっかけで少女の娼婦が好意を抱く。主人公は言う。「老人は老人 魚は魚 自分以外にはなれない しょせんね。」

 

 このブログで何遍も予告した通り、NY株式市場は高値から10%下げた。その最後ミニ・セリング・クライマックスが10月15日にあり、その後下げ幅の7割戻した。

 小型株中心のラッセル2000が三尊天井で暴落を予見させる。がNYダウの戻り方はかなり強いし、10年もの国債金利は2・3%に。これはリスク・オフ完了を暗示している。

 

 一方東京株式市場はNYにつれ安、つれ高で全く自主性がないが、GPIFの買い出動、補正予算、日銀の追加金融など。安倍政権の株価上昇への意志には手段がある。ちょうど主人公がマーシャル・アーツを身につけているように。

 

 恐らく11月のG20当たりでドイツと日本が世界景気のカタキ役になっているのを打破するために前述の手段を使う旨、公表しなくてはなるまい。株価材料。

 米中間選挙で共和党が上下両院でのマジョリティをとるのも。TPP決着につながり、株高の材料になる。

 

 つまり、NYは三週下げた後先週戻し陽線、今週は月、火と高いあと、週末に下げて週足陰線を引くと再び下げ歩調に。逆に上げで陽線なら(その公算は30%くらいだが)9月の高値を抜くかも。

 東京株式市場はどっちに転んでも上げだが、問題は安倍内閣の安定性だ。

 二人の閣僚の辞任騒動は、私は官僚の反乱かも知れない、と思う。

 

 8月頃から内閣改造は計画されていたから、「身体検査」はしていたはず。ところが公職選挙法に明らかに違反していることは、恐らく安倍首相には報告されなかった。別のルートでマスコミに違反の事実が報じられたのだろう。

 改造前の安倍政権にはまったく閣僚の選挙法違反は出なかった。5→8%への増税までは、官僚側は見て見ぬふりをしたのだろう。

 

 そこに8→10%の再増税におよび腰になった首相に、ブラフがかけられた、のではないか。

 2006~2007年の第一次安倍内閣当時、何人もの閣僚が選挙区にある自分の事務所の違反で辞職したり自殺したり―。ご自分の健康もあり1年で内閣は瓦解し、特に農水省の改革は全く行えなかった。

 私は民主党政権時代、自民党の超大物政治家(現在はリタイアしたが)から、こうした話を聞いた。

 「日本の官僚組織は強固で、旧ソ連のクレムリンのようなもの。現在政権にいる民主党は属国だね」

 「東ドイツ?」

 「まあハンガリーかな」

 「では自民党は?」

 「ポーランドだろ?」

 

 その見方で云うと、カジノ関連株はおすすめできない。

 米国資本が後ろにいる民間資本にカジノをやらせる。なんて、天下り先をずっと維持してきた官僚たちには冗談じゃない、ということに。

 農水省は競馬、経産省は競輪、オートレース、国交省は競艇、総務省は宝くじ、文科省はサッカーくじ。それにパチンコについては出した玉の景品交換所はグレーゾーンで、だから警察の利権がある。11月末までの国会で関連法が通らない限り、オリンピックという大義名分はあっても、カジノはムリだろう。これが強行できれば安倍内閣はすごいが、できるか、どうか。

 

 NYの影響で上下動の激しい東京株式市場でどう対処するか。目先の売り買いがお好きな向きで、腕に自信のある投資家だけ。ソフトバンク、ファーストリティリング、ファナックの日経平均への影響度の大きな御三家を、売りでも買でも。ヘッジファンドが先物を使って日経平均を乱高下させているのでそれを利用する。リスクは大きいのでご投資は自己責任で。それは、という方にはシェール関連とか介護ロボット関連を長期で。

 

 映画の冒頭にマーク・トウェインの名言が引用されている。「人生で一番大切な日は、生まれた日と自分が生まれた理由が分かった日だ」。私にとってはアナリストが自分の好きな仕事で一生、死ぬまでやっていたいと分かった日。1968年だった。

 

 映画のセリフから。主人公がマフィアが送った刺客に宣戦布告して言う。「雨が降るように祈ったら、ぬかるみも覚悟しておけ」。NYが本格的に下げ始めたら、容易なことではないだろう。

 対策のもう一つは「金」。昨年6月28日のオンス1179ドルの12月31日の1179ドルのあと、10月6日に1183ドル。これで三回、このあたりが底値になって反発。ドルが安値に向かえば、やはり金は「買い」。資産の3%ぐらいは金で長期に持つべきだ。

2014年10月19日 (日)

映画「喰女(クイメ)」と”複合下落”のわけ(第745回)

映画「喰女(クイメ)」と“複合下落”のわけ(第745回)

 書こうかどうしようかと考えながら一カ月以上たち、この「喰女」を書いてみたいと思った。理由はカンタン。いまホラー映画みたいな状況にあるのに、あまりそんな視点で報道されていないからだ。

 市川海老蔵、柴崎コウ主演。三池崇史監督で、かなり長期間公開されていた。私は二回観た。四世鶴屋南北のジャパニーズ・ホラー元祖「四谷怪談」を舞台に合わせて美しい画面で映画にした。私は秀作と思う。

 パンフレットの中で三池監督は「お岩の顔が崩れてゆくのも、あれは加齢によって女性の美しかった容貌 がゆっくり朽ちてゆく。それをぎゅっと凝縮したらああいう表現になる」と。なんて恐ろしい視点だろう。しかし、やはりそうなんだなあ。

 私が見ているところ、今回のNYが発した世界的株安は、表面では語られないいろんな要因が複合している。かつて《複合不況》という言葉がはやったが、今回は「複合下落」だ。

 一応10月15日のミニ・セリング・クライマックスで反騰しかけているが、下落の根は深い。ボールをリバウンドさせた程度で、またNYは下がるだろう。

 ともかくエボラ発熱が不安で下げたとかー。バカ言うな。そんなもので1000ドルも下がるか。以下私の見る下げの理由を。

 第一は11月4日の米中間選挙で上下両院のマジョリティを共和党が握り、2016年の大統領選の準備が始まる。ベンガジゲート、不法移民などオバマをサンドバッグのように叩く。かつてのウォーターゲート事件を知る世代が運用機関のトップにいる。本気で株を買うわけがない。戻れば売られる。

 第二はこの5年半、10%の調整もなくロングポジションが積みあがってきたことの整理。そこにボルカー・ルールや21世紀版グラス・スティーガル法(銀・証分離)などがあり、デリバティブへの規制が強化されている。すでに米銀はこの2,3年のうちに税金を使って銀行を救済し預金者を保護する「ベイルアウト」は止め、その結果、大手米銀はみな投資資格付けは数ノッチ切り下げられ、かつてのAaからBaaになっている。

 第三は10月下旬に行われるEBCによる欧銀130行へのストレステスト。これまでははっきり言っていい加減で問題行を摘発しなかったが、今回は検査官を何百人も増やしている。問題行としてどこかの国の何行が人身御供になるか。すでにイタリア三位のモンテー・ディ・バスキの株価が急落。これまでスペイン1位のサンタンデール、ドイツ2位のコメルツなどが問題となったが、これらはどうか。騒ぎが始まるのを見越して「数日以内にECBは民間銀行の資産買い入れを開始する」と発表している。

 いうまでもなく、金融市場の安定性は銀行が投げ売りが始まった時買い向かう機能を持っていた。ところが、自己資本比率性の強化やボルカー・ルールなどの導入で、こうした安定性維持の機能が空洞化している。だから今回の下げ相場は容易でない。なかなか上昇に向かわないとみる。

もちろん日本の方は違う。NYにつれ安しただけで、早速切り札のGPIFの買い出動を匂わす記事が日経に出ている。

 消費税の第二次の決定に合わせて、恐らく一兆円の補正(財源は税収増)。それに日銀のGPIF保有の日本国債26兆円の市場を通さないクロス商いでの肩代わりか、あるいはマネタリーベースの目標改訂か、両方ともか。今回も相場の出口がわからなくなったら、政策待ちの形になること必至。サービスでNISAの無税の枠拡大も出るに違いない。

 私は以前から、NYはダメ、日本株は大丈夫と言い続けてきた。今回も同じ。

 

 映画で海老蔵の演ずる伊右衛門と長谷川浩介はまことに魅力的。色悪(いろあく)つまり二枚目でしかも悪人を演じてこの人の右に出る者はいないだろう。岩を演ずる女優美雪(柴崎コウ)は浩介の質問。「どうすれば伊右衛門は幸せになれたのだろう」にこう言う。「幸せになんかなれないよ」。

 株は上がってさえいれば皆はハッピー。しかし世の中層はなかなかいかないのが現実だ。

2014年10月12日 (日)

映画「生きる」とNY株式市場でいま発生していること(第744回)

映画「生きる」とNY株式市場でいま発生していること(第744回)

 モントリオール映画祭で二冠を獲得した「ふしぎな岬の物語」を期待して観に行ったが、残念ながら駄作。よほどのサユリストでないと評価しないだろう。ただ漁師の徳さん(笹野高史)のエピソードで末期の胃ガンの演技がうまかったので、黒沢明の名作「生きる」の志村喬を想い出した。死期を悟った市役所の課長が公園をつくるのに生命をかける。珍しく三船敏郎の出ていない黒沢映画だ。

 「死期」。誰にでもある。株式相場でも同じだ。

 今年これまでのところ、NYダウが前日比200ドル以上の上昇・下落となったのは、12回。うち6回は9月25日以降で発生している。

 

 これだけ荒っぽい値動きを見せるのは私の経験では投資家の心理の不安感、それも強い不安感あるいは恐怖感を示すものに他ならない。事態は容易でない

 現に「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数は10月10日に11・5%も上昇し、20・9%になった。またナスダック市場の出来高は前日比24%の大幅増加で、機関投資家の投げが出ないとこんな大商いにならない。どう見ても9月19日の1万7350ドルが天井で下げ相場に入ったに違いない。ごくごく目先は下げ止まりあり、しかしまた下落に入るだろう。

 

 普通は半年から1年半ぐらい。下値は少なくとも上昇相場が始まった1万4700ドル近辺。断言するには早すぎるが、15%の調整は必至とみる。私はテクニカルアナリストではないので、あくまでもカンだが。

 

 それ以上は?長期金利が2%台の中央のうちは、まず、ないだろう。米国の財政収支の赤字は急速に減少しており、国債の発行に歯止めがかかっているし、ドル高で買い手にも、現在のところは事欠かない。3%を超えてくれば大ごとになるが。

 

 下げの背景は先週申し上げた通り。①銀・証分離法案に絡んだデリバティブ解約不安②ベンガジゲート、不法移民問題によるオバマ弾劾への懸念③QEⅢ完了後のFRBの方策への不安感④欧州、中国の不況、などなど。

 

 問題は東京株式市場。この2週間の外資系証券の先物の手口、現物の売りを見ると海外の機関投資家大手が日本株のポジション減少に動いている。ところがGPIFのストーリーが効いて裁定買い残は24億株を超えており、あと4,5億株減らないと整理は終了と考えにくい。

 それに1ドル110円をつけた後の為替市場ではヘッジファンドの動向をみると105,6円はみておいた方がよさそうだ。となると1万5000円で止るか、どうか。

 

 やはりカギはGPIF。報道によると塩崎厚労相は官僚の抵抗にあって、組織改革法案の提出は遅れている。株価の1万6000円台回復が9月中旬の瞬間風速で止まったのはこの抵抗のせいに違いない。

 株価を重視する安倍政権。総資産130兆円のGPIFの株式組み入れ比率アップを早くから流していたから、現行の17・3%から20%への引き上げは9月に織り込んでいた。となると「25%」とか「18~30%」という比率にしないとサプライズになるまい。恐らくそうなるだろう。

 もうひとつ。事情通に聞くと、「国債保有率を下げる分を日銀がスワップ取引で引き取ることを検討中」という。これも運用改革の進行を投資家に強く印象付けるに違いない。結論。NY株ほどには東京は下げない。

 

 黒沢明全集での「生きる」についての演出前記から。「僕は時々、ふっと自分が死ぬ場合のことを考える。するとこれでは、死にきれないと思って、居ても立っても居られなくなる。(略)「生きる」という作品は、そういう僕の実感が土台になっている。」「残された僅かの時間をあわてて、立派に生きようとする。」

 この名作を1968年ニューヨークのカーネギーホールの地下の名作座で観たときの思い出を。ラストに近く主人公が歌を歌いながら雪の中で公園のブランコに乗っているシーンで、周囲のアメリカ人が、みんな、本当にみんなが泣いていた!日本人の誇りを胸いっぱいに感じた。

 黒沢監督はこの時42歳。2年あとに最高傑作「七人の侍」をつくる。40代の私は自分の死なんて考えもしなかったが。

 主人公のセリフ。夕焼けをみて「実に美しい。この30年間、すっかり―。いや、私にはもうそんな暇はない」。私は来年80歳。本当にもう残された時間は少なくなった。

2014年10月 4日 (土)

映画「ジャージーボーイズ」とNY株につれ安した株(第743回)

映画「ジャージー・ボーイズ」とNY株の急落、つれ安東京どう見るか(第743回)

 題の意味はニュージャージーのイタリア人貧民街の青年たちの意。軍隊に入るかマフィアになるかぐらいしか選択のない若者たちたちが大ヒットでスターになり、分裂を経て再び再会。このコーラスの主役ファンキー・ヴァリは私と同じ79歳。監督クリント・イーストウッドは84歳、すごいなあ。とても楽しい音楽映画で「君の瞳に恋してる」のあたりで大いに盛り上がる。

 「ザ・フォーシーズンズ」の最初の大ヒット「シェリー」は60年代を代表する名曲。68年に渡米したときラジオをつけっぱなしにして英語に慣れようとした。彼らの全盛時でヴァリのファルセット・ヴォイス(ウラごえ)をよく聞いたものだ。なつかしい。

 

 フォーシーズンズ分裂のきっかけはマネジャーを兼務していた男の隠されていた巨額な借金。私は今回のNY株式市場の急落でこれを想い出した。

 

 9月22日からこの10月21日まで6回も三ケタ以上の乱高下を繰り返しているNYダウ。しかし日本の新聞はやれアップルの新製品のミスとかエボラ患者が発生したとか、バカな説明しかしていない。

 私が聞いたというか取材した「本音」はいま米議会に上程されている「銀・証分離法案」が中間選挙後に成立しそうだ、ということ。

 すでに英バークレイズは証券部門を分離させることを決めている。このほか米銀で分離を計画しているところが2,3行ある、とか。

 SECはデリバティブ依存経営の証券に極めて厳しいらしい。当然のことだが、デリバティブは8兆ドルの市場だけにちょっとした変動でも株には響く。

 

 このほか①機関投資家の税の納付額を減らすため損切りする「タックス・ロスト・セリング」②アリババ効果の終了もある。

 しかし、5年半もの間、大きな調整なく上昇してきた金属疲労があると思う。まだ10%以上下げてはいないが、10月3日の引け値は来週か来月か分からないが、1万5500ドルはあると思う。

 もしそこまで下がらなければイマイさん、どうみるの?(というのは10年物国債金利が2・4%と少しも上昇していないから)、とお考えになるかも。しかし、私はNY株は弱気だ。ベンガジゲート事件はあるし。一休み、と見るのが常道だろう。

 どうする?ウオール街で私が教えてもらった金言は「落ちてくるナイフを掴もうとするな」。

 

 東京の方はどうか。私はNYにおつきあいするが下げ幅は知れており、年度末には1万7000円という見方は変えない。ストーリーはGPIFとNISAなど「政権の意志」。これが根源で。

 

 私はNY市場の本当の大天井は「99%が2万ドルと言い出したとき」1万8900ドルとか1万9300ドルとか、という見方は変えていない。しかしごく目先は7月の1万4700ドル台が天井で1年か1年半調整する、と見ると2万ドル説は2,3年先送りだろう。

 米国経済は何と言ってもシェール革命のおかげで双子の赤字は急減中。失業率も下がっているし、このコラムで指摘した通りフードスタンプの受給者が減っている。株価が下がるとだから米国はダメという説がまかり通るが、そんなことはない。見て来れば分かる。

心配はいらない 映画の中で歌われるヒット曲「君の瞳に恋してる」から。「君も僕と同じ気持ちなら、これが現実だと分からせてくれ」「君から目を離すことが出来ない」。いまの日米の市場はこれと同じ、目が離せない。

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