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2014年10月19日 (日)

映画「喰女(クイメ)」と”複合下落”のわけ(第745回)

映画「喰女(クイメ)」と“複合下落”のわけ(第745回)

 書こうかどうしようかと考えながら一カ月以上たち、この「喰女」を書いてみたいと思った。理由はカンタン。いまホラー映画みたいな状況にあるのに、あまりそんな視点で報道されていないからだ。

 市川海老蔵、柴崎コウ主演。三池崇史監督で、かなり長期間公開されていた。私は二回観た。四世鶴屋南北のジャパニーズ・ホラー元祖「四谷怪談」を舞台に合わせて美しい画面で映画にした。私は秀作と思う。

 パンフレットの中で三池監督は「お岩の顔が崩れてゆくのも、あれは加齢によって女性の美しかった容貌 がゆっくり朽ちてゆく。それをぎゅっと凝縮したらああいう表現になる」と。なんて恐ろしい視点だろう。しかし、やはりそうなんだなあ。

 私が見ているところ、今回のNYが発した世界的株安は、表面では語られないいろんな要因が複合している。かつて《複合不況》という言葉がはやったが、今回は「複合下落」だ。

 一応10月15日のミニ・セリング・クライマックスで反騰しかけているが、下落の根は深い。ボールをリバウンドさせた程度で、またNYは下がるだろう。

 ともかくエボラ発熱が不安で下げたとかー。バカ言うな。そんなもので1000ドルも下がるか。以下私の見る下げの理由を。

 第一は11月4日の米中間選挙で上下両院のマジョリティを共和党が握り、2016年の大統領選の準備が始まる。ベンガジゲート、不法移民などオバマをサンドバッグのように叩く。かつてのウォーターゲート事件を知る世代が運用機関のトップにいる。本気で株を買うわけがない。戻れば売られる。

 第二はこの5年半、10%の調整もなくロングポジションが積みあがってきたことの整理。そこにボルカー・ルールや21世紀版グラス・スティーガル法(銀・証分離)などがあり、デリバティブへの規制が強化されている。すでに米銀はこの2,3年のうちに税金を使って銀行を救済し預金者を保護する「ベイルアウト」は止め、その結果、大手米銀はみな投資資格付けは数ノッチ切り下げられ、かつてのAaからBaaになっている。

 第三は10月下旬に行われるEBCによる欧銀130行へのストレステスト。これまでははっきり言っていい加減で問題行を摘発しなかったが、今回は検査官を何百人も増やしている。問題行としてどこかの国の何行が人身御供になるか。すでにイタリア三位のモンテー・ディ・バスキの株価が急落。これまでスペイン1位のサンタンデール、ドイツ2位のコメルツなどが問題となったが、これらはどうか。騒ぎが始まるのを見越して「数日以内にECBは民間銀行の資産買い入れを開始する」と発表している。

 いうまでもなく、金融市場の安定性は銀行が投げ売りが始まった時買い向かう機能を持っていた。ところが、自己資本比率性の強化やボルカー・ルールなどの導入で、こうした安定性維持の機能が空洞化している。だから今回の下げ相場は容易でない。なかなか上昇に向かわないとみる。

もちろん日本の方は違う。NYにつれ安しただけで、早速切り札のGPIFの買い出動を匂わす記事が日経に出ている。

 消費税の第二次の決定に合わせて、恐らく一兆円の補正(財源は税収増)。それに日銀のGPIF保有の日本国債26兆円の市場を通さないクロス商いでの肩代わりか、あるいはマネタリーベースの目標改訂か、両方ともか。今回も相場の出口がわからなくなったら、政策待ちの形になること必至。サービスでNISAの無税の枠拡大も出るに違いない。

 私は以前から、NYはダメ、日本株は大丈夫と言い続けてきた。今回も同じ。

 

 映画で海老蔵の演ずる伊右衛門と長谷川浩介はまことに魅力的。色悪(いろあく)つまり二枚目でしかも悪人を演じてこの人の右に出る者はいないだろう。岩を演ずる女優美雪(柴崎コウ)は浩介の質問。「どうすれば伊右衛門は幸せになれたのだろう」にこう言う。「幸せになんかなれないよ」。

 株は上がってさえいれば皆はハッピー。しかし世の中層はなかなかいかないのが現実だ。

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